広瀬武の履歴書(5)中学校時代

春、中学生になった。

小学校よりも中学校のほうが家から断然近くなり、歩いて5分程度の快適な通学が始まった。

立川市立第二中学校には、周りの3つの小学校から生徒がやってくる。
私立に進んだ友達は別として、小学校の殆どの友達がそのまま2中に進んだ。
他の小学校にも知り合いはポツポツといた。
幼稚園が一緒だった子や、小学校は違うが通っていた水泳教室が一緒だった子と合流。

クラスの初めての班は、名前順で編成された男3女3の6人組。
僕以外の5人は隣の小学校から来た子達。
ただ、そのうち4人は幼稚園が一緒。
僕に当時の面影は無いものの(太っているから)、すぐに馴染めた。
さて、隣の小学校から来た子のうち、幼稚園も違う、本当に初めて出会った子が班の中に1人いるのだが、この子がのちに僕の人生初の彼女になった。
彼女など出来るのだろうかという心配は、おかげさまでとりこし苦労に終わり、入学して早々、中学1年生で彼女が出来るという幸先の良いスタートを切った。

振り返ると、他人との折衝、物事が円滑に進むよう段取りする不動産仲介に必須のスキルは、案外恋愛から得たのかもしれない。
そう考えると、過去の恋愛経験は自分を形作る重要なピースの1つなのだから、「私の履歴書」に書かざるを得ないだろう、と。
後で妻に怒られるかもしれないが、そこは最後の女にしか出来ない「高みの見物」ということで許しを請う。

初めての彼女になったA子は、僕が理想としていた「主人公を隣で支えるしっかり者で賢い女の子」とは全く真逆の女の子だった。
目立ち、ガヤガヤとうるさく、背が高いので、照れ隠しの意味も込めて男子からゴリラと呼ばれていた。そして学校の成績がずば抜けて悪い。
なんなのだろう、この理想とは全く裏腹のものを好んでしまう生粋の天邪鬼な性分は、大人になってからも変わらない。

A子はわがままで、天真爛漫そのもの、喜怒哀楽の激しい子だった。
「女は、神と悪魔の共同製作品」とはよく言ったもので、女神のような日もあれば、終日ムスッとしている日もあり、鼻くそをほじる短パンTシャツ姿からそのまま中学生になった僕からすれば、女という生き物は一体何を考えているのか全く分からなかった。
ただ1つだけ理解したのは、男は単純だが、女心は複雑かつ繊細で、そして女は強い生き物だということを知った。ここで言う強さとは、おしくらまんじゅうしても簡単に動かず倒れないような芯の強さというか、図太さというか。

A子に対する周囲の評価は「少し変わった子」というものが多く、実際かなり変わった子だった。
周りの男子からは、あんなやつとよく付き合えるよなと度々小馬鹿にされた。
ただ、僕からすれば、A子は他の人間よりも感受性が強く、日頃よく書いていたA子オリジナルの詩にはセンスを感じた。
顔が可愛いだけの女の子よりも、何か光ったものが1つある子のほうが僕は好きだ。
また、休日にA子がソロボーカルとしてライブに出ることもしばしばあり、歌う前の挨拶や作った曲に対する想いを人前でマイクを使い話す姿は立派だった。
同じ中学生の僕には出来ないと尊敬していた。
A子の休日の姿を知っているのは校内でも数人だけだったが、これは彼氏の楽しみとして皆には内緒にしていた。

ただ、恋はいつまでも続かず、中学生特有の「茶番劇」で付き合っては別れるというサイクルを繰り返した。
そのようなサイクルの間には、自分が最も理想としていた「しっかり者で賢い女の子」と付き合うこともあった。
成績優秀、運動神経抜群、彼女として本当に申し分のない子だったが、その子にも彼氏を選ぶ権利が当然あるわけで、しばらくすると時と共に自然消滅してしまった。
そうこうしているうちに、先述のA子とヨリを戻すという腐れ縁が続いた。

勿論、ダメゼッタイなのだが、自販機で初めて買ったお酒はカクテルパートナーズのスクリュードライバー味だった。
飲んだ瞬間はオレンジジュースに似ていてゴクゴク飲んでしまったのだが、後からガツンと酔いが回り、恥ずかしながら自分の部屋で独り苦しんだ。良い思い出だ。
初めて買ったタバコは赤のマルボロ。
何故マルボロにしたかと言えば、小さい頃大好きだったアイルトン・セナが乗っていたマクラーレンに、マルボロのロゴが書いてあったから。それだけ。
初めて吸った時は一体これの何が旨いのかちっとも分からなかったが、後々ヘビースモーカーになってしまい、高校の時のX線検査で影が映ってしまった。

ということで中学時代、別にグレたわけではないのだが、若気の至りで「酒、タバコ、女」の表面的な部分をとりあえず経験してみた。
外見も変わり、太かった眉毛は殆ど剃ってしまい眉ペンで描くようになり、背が高くなると共に自然と痩せた。
小学生の頃、あれだけ出来なかった逆上がりも出来るようになった。人生1周目といったところだ。

この頃、先述のA子の家や他の女友達の家に遊びに行っては、家主ほったらかしで少女漫画を読み漁った。
矢沢あい作品にどっぷりとハマった。
女心とはこういうものなのか、と少年は知った。
天ない・パラキス・ご近所の代表作も面白いが、僕は下弦の月が一番好きだった。
下弦の月は小説のような面白さがあって、この漫画だけはブックオフで自分でも買った。

使っていたピッチ(PHS)はツーカー。
当時はまだ画面がカラーではなくオレンジ単色。
あゆがCMに出ているというだけでツーカーを母親に推奨した。ショートヘアのあゆは尊い。
母親名義で契約したものをほぼ常時借り続けていた。長電話で料金が跳ね上がり、度々怒られた。

中学生になっても歴史漫画は相変わらず好きで、その延長線上で中学生の時に初めて司馬遼太郎作品と出会う。
初めて読んだのは梟の城で、当時、中井貴一主演の実写版映画が公開されてその作品名を知った。
事ある毎に男女の絡みの記述があり、中学生にはかなり刺激的だった。
単にするより、そこに至るまでの過程を愉しむのが大人の男女なのだな、と少年は学んだ。

やがて中学3年生になり、高校受験のため塾に入った。
科目によって得意・不得意にかなり偏りがあり、数学はまるでダメ。
反対に社会だけはいつも内申点が5。歴史漫画のおかげだ。

我が人生で唯一「日本一」になったという細やかな自慢話を一つ。
高校受験のためenaという塾に通っていたのだが、enaの全国模試で1000人中4位をとったことがある。
ただ、上に同率1位が3人いて、その3人はケンブリッジ校の在籍生で帰国子女枠。
なので、日本国内の学校に通っている日本人の中では僕が日本一だ。
泊まりで行う夏合宿でもMVPをもらった。
MVP効果で、違う校舎に通う女の子と合宿後に後日遊ぶというオマケ付き。
今ではもうアルコールで脳細胞がやられて、覚えていた年号や人物名は全て忘れてしまった。

そうこうしているうちに冬になり、高校受験本番がやってきた。
科目の得意・不得意の偏りは結局直らず、そこそこ進学率の良い公立に進学した。
卒業アルバムには友達の寄せ書きと、桜の木の下で撮った彼女との写真。
楽しい3年間だった。

続く

>不動産の仲介手数料が定額33万円(税込)

不動産の仲介手数料が定額33万円(税込)

もしかしたら、従来から存在する不動産業界の商習慣を少し変えれば、より多くの人の役に立てるかもしれない。 そう思い、不動産を高く売れて・安く買えて、経費が安く済み、大手と変わらない高品質なサービスで安心して取引を任せられる「理想の不動産仲介」を世の中に生み出す為に、私は勤めていた大手企業を飛び出しました。 そして、自分自身が、お客様の役に立ち信頼できる不動産実務家になろうと考え、このサービスを立ち上げました。

CTR IMG