僕の本業である不動産業界では、IT勢による動きがいよいよ加速してきました。今のこの変化のことを「不動産テック革命」と呼ぶそうです。
不動産業者に支払う仲介手数料は、賃貸なら無料が当たり前、売買なら定額が当たり前になる日が近くまで来ていると僕は思います。
一方で、手数料コストに対する下方への圧力が強くなればなるだけ、専門家としての高い付加価値のあるコンサルティング業務に関しては今までの3%+6万の上限を超えてでも支払って依頼したいと考える人が逆に増えるのでは?とも僕は思います。
そしてもう1つ。不動産テック革命によって
「自分で売る人」
「不動産屋に頼まずに自分の力で売ります、の人」
が、少数派ながらきっと増えます。
不動産屋としては寂しいかぎりですが、必然の流れですねー。
では実際に、不動産屋に頼まずに自分で自分の不動産を売るとしたら、具体的にどのようなことをするのか?
例えば自分で自分の「マンション」を売る場合を想定し、自分で売る人のために文章を書きたいと思います。
【販売開始価格の決定 】
不動産テック革命によって大きく変わるのがおそらくこの「価格の決定」だと思います。
不動産屋に聞かなくてもだいたいの「相場」がスマホ・PCを使えば自分で調べられるようになる。今までよりはるかに細かく、具体的に。
だとしたら、わざわざ不動産屋に一括査定を依頼する必要はなくなります。
媒介期間内にできれば売り切りたいと願う、不動産屋の思惑が見え隠れする価格ではなく、自分のお財布と相談して自分が売りたい価格で売りに出す。
そんな時代になります。(売れるかは別)
【販売図面作成、調査 】
価格が決まったら販売活動が始まります。
まずは販売図面の作成。A4横サイズが一般的。
これがないと、買ってほしい人に物件のことを説明するのがかなり面倒です。エクセルを使えば個人でも作れます。
●●マンション●階
●●㎡の間取り●LDK
●●●●万円!
日当たり良好!!!!
もしくは、A4縦サイズで物件概要書としてスペックを淡々と羅列したペラ1枚を作ります。
ここで大きな問題にぶつかります。
売却不動産に関する調査をしないと販売図面も物件概要書も作成できません。
いやそもそも、売ると決めた最初の時点で調査が必要です。
価格の相場を調べるのと一緒にその不動産が本来どの程度の価値があるのかを把握する為に調査が必要になります。
まずは現地調査。
雨漏り・シロアリ・給排水管の故障がないか、
水回り等の設備に不具合がないか等をチェック。
次、役所に行き調査。
都市計画課に行き用途地域を調べたり
都市計画道路が敷地にかかってないか等を調べる。
※ちなみに東京23区内ならネットでも調べることが可能です。
その他に…
接道する道路を調べたり
建確・検済番号を調べたり
建築計画概要書を取得したり
埋蔵文化財包蔵地内か調べたり
固定資産評価・公課証明を取得したり…
あ、ちなみに!
証明書関係の資料は無料でくれません。
1通あたり200円~300円ぐらい。
上記評価・公課証明は1件400円、2件目以降1件100円なので土地1筆、家屋1棟の場合、土地・建物の評価・公課証明を各1通ずつ取るとそれだけで1,000円。
役所調査だけで丸一日かかりお金も積もり積もって3,000円程度かかるのは不動産調査あるあるです。
次、法務局調査。
権利関係や地歴等の調査です。
マンション規約共用部分の謄本まで取得したら余裕で1万円以上かかります。
次、マンション管理会社の調査。
重要事項に係る調査報告書という書類を管理会社に作ってもらうと、
マンション全体の修繕積立金総額や、管理費・修繕積立金の改定予定の有無等を調べられます。
あと、管理規約の写しや長期修繕計画書の写しを取得することができます。
…これが結構高い!!!!
調査報告書作成費用だけで1万円ぐらい。
管理規約の写しで3,000円ぐらいはかかります。
管理会社の中には
・調査報告書作成費用
・管理規約写し
・直近3期分の総会議事録
・その他分譲時資料
の合計で3万円近くかかる管理会社もあり、管理会社さん、いい商売してはるなと感じるはずです。
ということで、他にも水道・ガス・下水の調査等がありますが、結論としては調査はかなり面倒くさい、かつお金がかかるということです。
【販売活動】
調査を終え販売図面を作りいざ販売!個人がすぐに着手できるのは…
不動産テック革命で生まれた新興不動産サイトに掲載する
のぼり(旗)を作って部屋の前に置く
(通行の邪魔だな笑)
&
バルコニーの手すりに紐でのぼりを括りつける
※管理人さんにバレたらきっと怒られます。
販売図面を貼り付けたA型看板を部屋の前に置く
販売図面を大量に印刷してマンション内のメールボックスに投函
&近隣のマンションにも投函
※不法侵入で怒られないよう注意してください。
マンションの掲示板に販売図面を貼らせてもらう
マンションのエレベーター内に販売図面を貼らせてもらう
エレベーターで遭遇した人に営業をかける
マンション内の住民にピンポンしまくる
個人がここまでしたら精神的に病むか、マンション内でかなり有名な存在になり、口コミで買い手が見つかるかもしれません。
ちなみに、某不動産サイト●UUMOに掲載したい場合、掲載枠を買う必要がある為、マジで?っていうレベルでお金かかります。
※そもそも宅建業者でないと掲載枠を買うことが出来ませんが。
新聞折り込み広告チラシを入れたい場合は最低でも
印刷代と折り込み代がかかります。
大量発注による単価割引のある大手不動産屋で1部あたり5円前後、5000部単位で発注可能。
これプラス、広告デザインまで依頼すると…
個人が単発で出す広告だと割引なしで1部あたり単価がめちゃくちゃ高くなったら1万部で10万円かかる異常事態かもしれません。
1万部だと、そのマンションが所在する「~町」が大きな町であるなら、朝日・読売・産経・日経新聞に少しずつ入れて終了の可能性有り。
↓
隣町にも広告を入れるなら2万部以上は必要です。
※ちなみに大手不動産屋は1回で10万部入れたりします。
一方、折り込み広告に比べ、
フェイスブック広告
リスティング広告
なら費用を抑えつつやり方によってはインパクトのある宣伝ができるかもしれません。
(YouTubeもいいかも)
【物件案内】
ここまでやって初めての問合せ。
内見のアポイントを取り部屋を見てもらう。
感触はいまいち。あまり気に入ってなさそうだ。
そして見送り。
自分の部屋を目の前で見送られたら不動産屋の僕でもちょっとへこむと思う。
でも、ここでめげずに、かかってくる問合せ電話やメールに、懇切丁寧に応対する。早朝も仕事中も、夜遅くでも。
【価格交渉】
その後、数組内見してもらいやっと購入希望者が出てきた。
が、売主の感情を逆なでするような価格交渉が入り価格が全く折り合わない。
1円でも高く売りたい人と
1円でも安く買いたい人が
直接話しても、交渉上手じゃないと話が進まないかケンカになる。
【契約締結】
心をすり減らしながらなんとか合意。
じゃあ契約しましょう、ということに。
…?
契約書、誰が作るの?
ってことになります。(普通の個人だと)
で、契約書作成を結局不動産屋にお願いすることになり、正規の仲介手数料に比べたら安いがそこそこ高い金額を支払うことになります。
※司法書士でも契約書は作成可能ですが、「重要事項説明書」の作成・説明・交付は不動産屋でない限り出来ません。
★まとめ
ここまでの労力や費用を考慮すると正直なところ…
自分で自分のマンションを売ることは費用対効果、時間対効果どちらも全然割に合わない気がしませんか?
こんなんなら、多少お金を払ってでもはじめから不動産屋にお願いしたほうが気楽でいいや、と考える人のほうが多いのではないでしょうか?
と、思って…
正規手数料よりはるかに安くかといって手抜き仕事をするわけではなく、正規手数料と同じ内容のサービスをきちんと提供し、
書類作成の仕事
プラス
各種調査や販売活動の労力とかかる費用、
会社の運営に最低限必要な利益
を考慮して…
当社は売買の仲介手数料を定額制にしています!
ということで、最終的に会社の宣伝になりましたが
「自分で売る人」派の方、お問合せお待ちしてます!
尚、親族間売買及び自己発見取引(個人間売買)に関しては、不動産メディアの「マンション売却カレッジ」さんのインタビューでも答えています。
よければ参考にしてください。
インタビュー記事はこちらになります↓
https://fudousancollege.com/masters
おわり