不動産を売却すると税金がかかる場合があります。
しかし「税金がいくらかかるか分からない」と、不動産譲渡の際に発生する税金について知りたい方も多いのではないでしょうか?
不動産は売買金額が高額になるため、場合によっては税金も高額になることもあります。
不動産譲渡所得税は売却するパターンによって税金が課税される場合と、税金がかからないことがあります。
また不動産譲渡に関しては特例措置も多いので、税金がかかるケースや特例措置などについて理解をしておくことも重要です。
この記事では、不動産譲渡所得税の計算式をシミュレーションとともに解説するとともに、譲渡所得税を節税する方法について詳しく解説していきます。
不動産売却にかかる4つの税金
不動産を売却するには次の4つの税金が発生します。
- 譲渡所得税
- 印紙税
- 登録免許税
- 消費税
これらの税金は売却時に必ずかかるものと、状況によって発生するものに分かれます。
それぞれの税金の詳細と課税されるケースはどのような場合なのかについて詳しく解説していきます。
譲渡所得税
譲渡所得税は不動産の売却によって得た所得に対して課税される税金です。
譲渡所得税には次の3つの税金が含まれています。
- 所得税
- 住民税
- 復興特別所得税
また、売却する不動産の所有期間が5年以下か5年超かで短期譲渡所得と長期譲渡所得に分かれ、それぞれの税率は次の通りです。
短期譲渡所得:所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%=合計39.63%
長期譲渡所得:所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=合計20.315%
なお、譲渡所得税は毎年2月半ばから3月半ばにかけて行う確定申告によって納税します。
印紙税
不動産の売買契約書には、印紙税が課税されます。
印紙税は契約金額に応じて次のように異なります。
売却金額 | 収入印紙代 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円超50万円以下 | 400円 |
50万円超100万円以下 | 1,000円 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 10,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 20,000円 |
印紙税は収入印紙を購入し、契約書などに貼付することによって納税します。
登録免許税
登録免許税は不動産、船舶、航空機、会社、人の資格などについての登記や登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定および技能証明について課税されます。
不動産売買の際には、売買に伴う名義変更などの際に登録免許税が課税されますが、所有権移転登記の登録免許税は買主が負担する税金です。
売主は売却する不動産にローンがついていた場合、ローンの返済に伴い抵当権を解除する際の抵当権抹消登記にかかる登録免許税を負担します。
抵当権解除に伴う登録免許税は、不動産1筆につき1,000円です。
司法書士に抵当権解除を依頼する場合は、司法書士報酬として別途1万円〜2万円が必要になります。
消費税
不動産売却の際には、消費税を支払うこともあります。
売主が支払う消費税は不動産売却に伴い発生する次のような費用に対してです。
- 仲介手数料
- 司法書士報酬
仲介手数料の上限は次の計算式で算出します。
仲介手数料=売却金額×3%+6万円+消費税
不動産譲渡所得税は次の計算式で算出します。
所有期間 | 5年以下 | 5年超 | 10年超 所有軽減税率の特例 |
---|---|---|---|
居住用 | 39.63% (所得税30.63% 住民税 9%) |
20.32% (所得税15.315% 住民税 5%) |
①課税譲渡所得6,000万円以下の部分14.21% (所得税10.21%・住民税4%) ②課税譲渡所得6,000万円超の部分20.315% (所得税15.315%・住民税5%) |
非居住用 | 39.63% (所得税30.63% 住民税 9%) |
20.32% (所得税15.315% 住民税 5%) |
20.32% (所得税15.315% 住民税 5%) |
譲渡所得は以下のように計算します。
譲渡所得=売却価格ー取得費用ー譲渡費用
また譲渡所得税は次のように計算します。
譲渡所得税=(譲渡所得ー特別控除額)×税率
例えば、5年超所有した不動産を売却して、400万円の所得が出た場合(特別控除なし)の譲渡所得税は次のようになります。
500万円×20.315%=1,015,750円
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譲渡所得税をケース別にシミュレーション
不動産を譲渡した際に、どの程度の税金がかかるのか、次の3つのケースで譲渡所得税がいくらになるのかシミュレーションしていきます。
- 3,000万円で購入した土地を3,500万円で売却
- 3,000万円で購入したマイホームを3,500万円で売却
- 購入額不明の土地を3,000万円で売却
3,000万円で購入した土地を3,500万円で売却
次の条件で不動産を売却した場合の譲渡所得税をシミュレーションしていきましょう。br>
売却価格:3,500万円br>
譲渡費用:40万円br>
取得費用:3,000万円
所有期間:8年
譲渡所得=3,500万円ー40万円ー3,000万円=460万円
譲渡所得税=460万円×20.315%=93万4,490円
3,000万円で購入したマイホームを3,500万円で売却
売却価格:3,500万円
譲渡費用:40万円
取得費用:3,000万円
所有期間:8年
特別控除額:3,000万円
譲渡所得=3,500万円ー40万円ー3,000万円ー3,000万円=ー2,540万円
譲渡所得税=ー2,540万円×20.315%=0円
マイホームを売却する場合には、譲渡所得から3,000万円を控除できる、「3,000万円の特別控除」が適用されます。
このケースでは3,000万円を控除すると課税所得はマイナスになるので譲渡所得税はかかりません。
購入額不明の土地を3,000万円で売却
売却価格:3,000万円
譲渡費用:50万円
取得費用:150万円
所有期間:8年
譲渡所得=3,000万円ー50万円ー150万円=2,800万円
譲渡所得税=2,800万円×20.315%=568万8,200円
取得価格が分からない場合は、「売却価格の5%」が不動産の取得費用になります。
この場合、譲渡所得が非常に大きくなってしまうため、できる限り取得費用は明確にした状態で売却すべきでしょう。
5,000万円で購入したマンションを6,000万円で売却
売却価格:6,000万円
譲渡費用:80万円
取得費用:5,000万円
所有期間:8年
特別控除額:3,000万円
譲渡所得=6,000万円ー80万円ー5,000万円ー3,000万円=ー2,080万円
譲渡所得税=ー2,080万円×20.315%=0円
居住用のマンションを売却する場合には、譲渡所得から3,000万円を控除できる、「3,000万円の特別控除」が適用されます。
このケースでは3,000万円を控除すると課税所得はマイナスになるので譲渡所得税はかかりません。
5,000万円で購入した投資用マンションを6,000万円で売却
同じ条件で投資用マンションを売却する場合には譲渡所得税が発生します。
売却価格:6,000万円
譲渡費用:80万円
取得費用:5,000万円
所有期間:8年
特別控除額:なし
譲渡所得=6,000万円ー80万円ー5,000万円=920万円
譲渡所得税=920万円×20.315%=186万8,980円
投資用マンションを売却する場合には「3,000万円の特別控除」が利用できません。
そのため、このケースでは180万円を超える高額な譲渡所得税が発生します。
購入額を証明できる書類を用意する
購入額を証明できる書類を用意しましょう。
売却する際に取得価格が不明な場合には、「売却価格の5%」というかなり低い金額が取得費用として計算されます。
親から相続した不動産などは取得費用が分からない場合も少なくありません。
売買契約書が見つからないのであれば、不動産を購入した際の通帳のコピーなども証明書類になるので、できる限り購入額が分かる書類を用意しましょう。
節税できるタイミングで売却する
不動産は、節税できるタイミングで売却しましょう。
例えば不動産を5年超所有すれば長期譲渡所得になるので税率は下がりますし、マイホームは住まなくなってから3年以内に売却すれば3,000万円の特別控除が適用されます。
また不動産市場が活発なタイミングで売却することで、手元に残る資金が多くなります。
しっかりと節税ができ、売却価格が高いタイミングを慎重に見極めることが重要です。
節税できる特例措置をフル活用する
不動産売却には、節税に活用できる特例措置が数多く用意されています。
売却の際には特例措置をフル活用して、できる限り税負担を軽減することが重要です。
以下、どのような特例措置があるのか解説していきます。
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不動産譲渡所得税を節税できる特例措置
不動産譲渡の際には次のような特例措置が用意されています。
- 3,000万円の特別控除の特例
- 10年超所有している場合の軽減税率の特例
- 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
これらの特例措置を活用することによって、税負担を完全に無くすことも可能です。
不動産譲渡所得税を節税できる3つの特例措置について詳しく理解しておきましょう。
3,000万円の特別控除の特例
購入または相続したマイホームを売却した際に次の条件に合致すれば、売却した際の譲渡所得から3,000万円を控除できるというものです。
- 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
- 売った年の前年および前々年にこの特例(「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」によりこの特例の適用を受けている場合を除きます。)またはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。
- 売った年、その前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。
- 売った家屋や敷地等について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
- 災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
- 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。
なお、3,000万円の特別控除と、住宅ローン控除は併用できないので注意しましょう。
10年超所有している場合の軽減税率の特例
10年超所有したマイホームを売却する場合、軽減税率が適用され、税率が低くなる制度です。
譲渡所得6,000万円以下 | 譲渡所得6,000万円超 | |
---|---|---|
所得税 | 10% | 15% |
復興特別所得税 | 0.21% | 0.32% |
住民税 | 4% | 5% |
合計 | 14.21% | 20.32% |
本制度は3,000万円の特別控除と併用できるため、10年超所有したマイホームを譲渡した場合の譲渡所得税は非常に低くできます。
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続財産を相続から3年以内に譲渡する場合、相続税額かのうち、一定額を不動産の取得費に含められる制度です。
計算方法がかなり細かいので、詳細に知りたい方は、税務署や税理士などへ確認してみましょう。
相続税額を取得費に加算できるので、相続財産を売却する際には譲渡所得税を抑えられます。
その他の特例措置
売却によって損失が出た場合には次のような特例措置が活用できます。
- マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
- 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
マイホームを買い換える目的で売却し、新しい住宅の購入額が古い住宅の売却額を上回り、買い替えによって損失が出た場合、所得から控除できる制度です。
また、住宅ローンが残っている住宅を売却し、売却額が住宅ローン残高を下回った場合にも その損失額を所得から控除できます。
不動産の売却は、損失が出た場合には、他の所得にかかる税金を節約できる可能性があるため、必ず確定申告は行いましょう。
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まとめ
不動産を売却し所得が出たら、譲渡所得税が課税されます。
譲渡所得税は譲渡所得に税率を乗じて計算され、譲渡所得は次の計算式で算出します。
譲渡所得=売却価格ー取得費用ー譲渡費用
譲渡所得税を節税するためには、譲渡所得を抑えることが重要です。 使用できる特例をフルに活用し、税額が低くなるタイミングを適切に見極めて売却しましょう。