マンションの売却を検討するなかで「いまは売り時なのだろうか」「賃貸のように時期の影響はあるのだろうか」と、疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
大切な資産であるマンションを売るのであれば、少しでも高く売りたいと思う気持ちは多くの方に共通しています。
そこで本記事では売買仲介の営業として数多くのマンション売却をサポートしてきた筆者が、マンションの売り時を判断するポイントや2022年の市況を解説します。
本記事を読んでいただければ、マンションを売るのに最適なタイミングを判断できるようになるでしょう。
マンションの売却を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
- マンションの売り時を判断する8つのポイント
- 2022年はマンションの売却に適しているのか?
- マンション売却する際の注意点
マンションは売却するタイミングが重要
マンション売却でタイミングが重要な理由は、売却するタイミングで価格が変動するためです。
築年数が経過するほど建物の資産価値は下がりますが、土地の値段は変動しています。つまり、経済情勢や売却時期によっては築年数の経過したマンションであっても高値での売却が期待できます。
とくに都心のアクセスが良い立地にあるマンションなどは需要が高く、築年数が経過していても高値で取引されるケースが多いです。
マンションに限らず価格は需要と供給によって変動します。マンションの需要と供給に影響を与えているポイントを理解すれば、売却のタイミングを見極められるようになるでしょう。
次章以降で、マンションの需要と供給に影響を与えているポイントや売却時に考えるべきことを解説します。
マンションの売り時を判断する8つのポイント
マンションの売り時を判断する8つのポイントは以下のとおりです。
- 不動産市況
- マンションの築年数
- 売却する時期・季節
- 大規模修繕工事のタイミング
- 周辺環境の変化
- 住宅ローン金利の推移
- マンションの所有期間
- 競合物件の有無
これらのポイントを理解すると、マンション価格を左右する「需要と供給」の関係や、売却時に考えるべきことが明確になり、適切な売却時期を判断できるようになります。
POINT 1: 不動産市況
不動産市況とは「不動産取引が活発に行われているか」「不動産価格が上昇しているか」などの市場動向を指します。
不動産市況を判断するための具体的な指標は以下のとおりです。
- 公示地価
- 不動産価格指数
公示地価とは全国の標準地の価格です。毎年1月1日時点の価格を国土交通省が3月に発表しています。
公示地価は不動産取引の指標となる価格であるため、公示地価が上昇していれば不動産市況が良い状態と言えます。
また、不動産価格指数とは年間約30万件もの不動産取引情報をもとに、不動産価格の動向を指数化したものです。
住宅地や戸建て住宅、マンションなど、種別毎の指数を確認できるため、不動産のなかでもマンション価格がどのような状態かを判断できます。
POINT 2: マンションの築年数
建物の価値は築年数とともに減少します。
公益社団法人東日本不動産流通機構のデータによると、首都圏における築年数別の中古マンション平均成約価格は以下のとおりです。
〜築5年 | 〜築10年 | 〜築15年 | 〜築20年 | 〜築25年 | 〜築30年 | 築30年〜 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
成約価格 | 6,486万円 | 6,083万円 | 5,358万円 | 5,045万円 | 4,109万円 | 2,782万円 | 2,108万円 |
※参考:公益財団法人東日本不動産流通機構
また、これらのデータをもとに「〜築5年」を「1」として考えると、首都圏における築年数毎の中古マンション価格推移割合は以下のとおりです。
〜築5年 | 〜築10年 | 〜築15年 | 〜築20年 | 〜築25年 | 〜築30年 | 築30年〜 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
価格推移割合 | 1 | 0.93 | 0.82 | 0.77 | 0.63 | 0.42 | 32 |
このように見ると、築25年を超えてからの下落率が最も大きいため、なるべく築25年を超える前に売却した方がいいと言えます。
POINT 3: 売却する時期・季節
マンション売却は賃貸物件と同じく、新生活の準備期間である2〜3月の取引が活発になる傾向があります。
公益財団法人不動産流通機構によると、2020〜2021年の首都圏における中古マンションの取引件数は以下のとおりです。
2020年 | 2021年 | |
---|---|---|
1月 | 2,680 | 3,480 |
2月 | 3,749 | 3,587 |
3月 | 3,642 | 4,228 |
4月 | 1,629 | 3,428 |
5月 | 1,692 | 3,297 |
6月 | 3,107 | 3,262 |
7月 | 3,156 | 3,002 |
8月 | 3,053 | 2,615 |
9月 | 3,328 | 3,176 |
10月 | 3,636 | 3,440 |
11月 | 3,620 | 3,416 |
12月 | 2,533 | 2,881 |
取引が活発になるということは、競合物件の数が増えることも予測されるため価格などは吟味したうえで設定する必要があります。
POINT 4: 大規模修繕工事のタイミング
マンションは大規模修繕工事が終わってから売却したほうが売れやすい傾向にあります。
理由は大きく分けて2つです。
- マンションの見栄えが良くなる
- 大規模修繕工事前の不透明な部分がなくなる
マンションの外観は購入検討者の第一印象に大きな影響を与えます。第一印象が良いいと前向きに検討してもらえるようになるため、より成約に近づくと言えるでしょう。
また、大規模修繕工事の前は修繕積立金の不足によって、一時金の負担が発生したり、金融機関から借入を検討したりと、マンション経営において不透明な部分が多くなります。
購入検討者にとっては、購入した直後に大きな支出が発生する恐れもあるため、今後の動向が不透明なマンションは敬遠されてしまいます。
その点、大規模修繕工事が終わっているマンションは購入検討者にとって安心と言えるでしょう。
POINT 5: 周辺環境の変化
マンションを売る際には、商業施設の建設や再開発などの周辺環境の変化にも目を向けましょう。
周辺環境の変化は、そのマンションにプラスの影響もマイナスの影響も与えます。たとえば、近隣で大規模な再開発がある場合は、マンションの生活利便性が向上するため需要も高くなります。
一方で、大型の建物が建つ場合は室内からの眺望が遮られるといった影響を受ける可能性があるため、どのような建築計画になるのかを注視しなければいけません。
大規模な再開発は事前に説明会が開催されるため、どのような影響があるのかを購入検討者に伝えられるように資料を保管しておきましょう。
POINT 6: 住宅ローン金利の推移
マンションの価格は住宅ローン金利に左右されます。
住宅ローン金利によって借入可能額が変わるためです。
たとえば、以下の条件でローンを組む場合の最大借入額を見てみましょう。
- 年収:500万円
- 金利:0.6%
- 返済期間:35年
- 返済比率(金融機関が定める年収に占めるローン返済額の割合):30%
- ボーナス返済:なし
この場合の借入上限額は約4,730万円です。
一方で、金利を1%にした場合の借入上限額は約4,420万円となります。
金利が上がることで借入可能額は減るため、年収が変わらない限り購入物件の目線を下げて検討しなければいけません。
つまり金利が上がると高値のマンションを購入できる人が少なくなるため、市場全体の価格が下がってしまいます。
より高値で売却したい方は、低金利のタイミングでの売却を検討しましょう。
POINT 7: マンションの所有期間
マンションを売って利益が出た際には譲渡所得税が課されますが、所有期間によって税率は異なります。
- 短期譲渡所得(所有期間5年以下):39.63%
- 長期譲渡所得(所有期間5年超え):20.315%
短期譲渡所得と長期譲渡所得で2倍近く税率が異なるため、最終的な手残り金額に大きな差がでます。
また、売却するマンションがマイホームであり、所有期間が10年を超えている場合は「所有期間10年超えの軽減税率の特例」を受けられる可能性があります。
「所有期間10年超えの軽減税率の特例」とは、利益6,000万円以下の部分の税率が14.21%に軽減される特例です。
いずれも所有期間の判定は1月1日時点であるため、年末に売却する方はとくに注意しましょう。
POINT 8: 競合物件の有無
マンションの売却時に注意しなければならないのは競合物件の有無です。
近隣で似たようなマンションが販売に出ている場合、購入検討者の比較対象になってしまいます。とくに同じマンション内でほかの部屋が販売に出ている場合は注意しましょう。
同じマンション内で販売に出ていると、その部屋の価格が1つの基準(相場)として捉えられてしまいます。
つまり、現在販売に出ている部屋よりも高値での成約は、その部屋が先に売れない限りは難しいでしょう。
もちろんマンションは部屋によって間取りや眺望が異なるため一概には言えませんが、比較対象にされることは覚えておきましょう。
より高値で売りたい場合は、競合物件が販売に出ていないタイミングを狙うのがおすすめです。

2022年はマンションの売却に適しているのか
マンションの売り時を判断する8つのポイントを解説しましたが、2022年はマンションの売却に適しているのか気になっている方も多いでしょう。
結論として2022年はマンションの売却に適していると言えます。
理由は以下の3つです。
- 不動産市場における新型コロナウイルスの影響は収束している
- 不動産価格指数は上昇している
- 住宅ローン金利が微増している
それぞれについて解説します。
不動産市場における新型コロナウイルスの影響は収束している
2022年現在において不動産市場における新型コロナウイルスの影響は収束していると言えます。
公益財団法人東日本不動産流通機構の調査によると、1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月の首都圏における中古マンション取引件数は、前年同月比-50%まで落ち込みました。
しかし、その後はV字回復し、2021年4月は前年同月比110%まで回復しています。成約単価も上昇傾向にあるため、新型コロナウイルスによるマイナスの影響はないと言えるでしょう。
不動産価格指数は上昇している
2012年以降、不動産価格指数は右肩上がりに上昇しています。
とくに住宅地や戸建て住宅と比べて、マンションの価格指数が大きく上昇していることがわかります。

※引用:国土交通省 不動産価格指数
今後の価格指数の推移は誰にも予測できませんが、2022年現在は高値での成約が期待できるチャンスであるとわかります。
住宅ローン金利が微増している
1990年中旬から住宅ローンは低金利で推移してきました。しかし、2022年に入ってからは固定金利が微増しています。

引用:住宅金融支援機構 民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)
2022年の金利上昇は、アメリカでのインフレや金融政策の引き締めが影響していると考えられています。
先述のとおり、住宅ローンの金利が上昇すると住宅価格は下がる傾向にあるため、今後住宅ローン金利が上昇していくとすれば、売却価格は徐々に下がっていくでしょう。
マンションを売却する際の注意点
マンションの売り時を判断する8つのポイントや2022年現在の市況について解説しましたが、これらはあくまでも「高値成約」を重視した考え方です。
マンションを売却する際には、価格だけでなく以下の注意点も考慮する必要があります。
- 余裕を持ったスケジュールを組む
- 個別の売却事情を考慮する
それぞれについて解説します。
余裕を持った売却スケジュールを組む
マンション売却で失敗しないためにも、余裕を持った売却スケジュールを組みましょう。
不動産取引は2〜3月の新生活シーズンが活発ですが、その時期に売り出してすぐに売れるわけではありません。
公益財団法人東日本不動産流通機構の調査によると、2021年における中古マンションの平均成約期間は72.1日です。
これはあくまでも売却を開始してから売買契約が成立するまでの期間であるため、査定にかかる時間や引き渡しまでの期間を踏まえると、さらに多くの日数が必要です。
余裕を持ったスケジュールを組まないと、希望の時期に売れない恐れがあるため注意しましょう。
とくに住み替えの場合は売却した後に新居を購入するスケジュールを組むのが一般的です。売却の時期が後ろにずれると、購入の時期もずれることになります。
個別の売却事情を考慮する
マンション売却は人それぞれ事情があり、売却の目的が異なります。
たとえば、転勤や子どもの進学がきっかけの売却であれば、売却の期限が定まっているでしょう。一方で、相続税を支払うための売却であれば、金額の下限を設定しなければいけません。
さらに、離婚で売却する場合はなるべく早期に、かつ周囲の人に知られずに売却したい方もいるでしょう。
このようにマンション売却では個別の売却事情を考慮した売却計画を立てる必要があります。
まとめ
本記事では、マンションの売り時を判断するポイントや2022年の市況を解説しました。
マンション価格は需要と供給で変動するため、売却の時期によって手元に残る金額が異なります。
少しでも多くの金額を手元に残すためにも、本記事で解説した8つのポイントを参考にしてください。
また、2022年現在は取引件数や不動産価格指数から見ても、売却に適した時期と言えます。住宅ローン金利の今後は不透明であるため、高値成約が期待できるいまのうちに売却を検討してもいいでしょう。
- マンション売却には不動産市況、マンションの築年数、売却する時期・季節、大規模修繕工事のタイミング、周辺環境の変化、住宅ローン金利の推移、マンションの所有期間、競合物件の有無といった8つのポイントがある
- 8つのポイントを理解することでマンション価格を左右する「需要と供給」の「関係や売却時に考えるべきことが明確になる
- マンションを売却する際には余裕をもったスケジュールを組むことと個別の売却事情を考慮する必要がある
