近年、投資物件として一棟マンションがワンルームマンションよりも大きな利益が期待できるとして、注目を集めています。
所有している一棟マンションを居住用の賃貸物件として貸し出し、家賃収入を得るのが一般的かと思われますが、売却して利益を得ることも一棟マンション投資の方法のひとつです。
しかし、通常のマンションとは異なる特徴や性質をもつ一棟マンションは、その売却も注意点やポイントが異なるため、注意が必要です。
本記事では、一棟マンションの売却にフォーカスして、その方法や成功させるポイント、売却方法としては仲介と買取どちらがいいか?などについて詳しく解説します。
よりスムーズな売却を実現するために、ぜひお役立てください。
一棟マンションを売却するまでの流れ
一棟マンションを売却するおおまかな流れとしては、以下の通りです。
- 不動産会社に査定を依頼する
- 媒介契約を結んで売却活動開始
- 購入希望者と契約し、引き渡す
- 確定申告を行う
それぞれについて詳しく解説していきます。
不動産会社へ査定を依頼し物件の相場を知る
まずは不動産会社に、一棟マンションの査定を依頼することから始めましょう。
複数社に査定を依頼して、見積書や担当者の対応や態度なども含めて比較検討することが、一棟マンション売却のためには有効です。
とはいえ、いくつもの不動産会社にひとつずつ査定依頼をすることは手間や時間が大きくかかってしまうため、不動産会社の一括査定サイトを利用するのが便利でしょう。
一括査定の名の通り、諸入力が1度で済むため大変効率的です。
査定結果が出ておおよその相場を把握できたら、その物件の目標売却額を決めておきましょう。
媒介契約を結んで売却活動開始
続いて、契約する不動産会社を選びます。
不動産会社を選ぶポイントとしては、
- 一括査定サイトに登録されていて最も高い査定額を出してくれた不動産会社
- 自ら足を運び査定を依頼した不動産会社
などから選ぶのが良いでしょう。
複数の不動産会社から契約を結ぶ会社を選択したら、媒介契約の方法を選んで実際に契約を結びます。
不動産会社と結ぶ媒介契約には一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3種類があります。
複数社と契約を結べるか?自分で買主を見つけることができるか?など、それぞれ異なる特徴、メリット・デメリットがあるため、よく検討してどの契約方法をとるかを選びましょう。
媒介契約や売却の種類について詳しくは、次の章で解説します。
媒介契約を結ぶ際に売出価格も決定されますが、市場に出してからも動きが見られなかった場合には値段を引き下げするケースもあります。
また、購入希望者が値引き交渉をしてくることもあるため、売却希望価格より少し上乗せした金額で売りに出すのがおすすめです。
市場に出た一棟マンションは、不動産会社が閲覧できる流通ネットワークに物件情報を登録したり、不動産ポータルサイトに情報が掲載され、購入希望者を募ります。
購入希望者と契約して引き渡す
購入希望者が現れたら内見をしたり条件を話し合ったりした後、契約を締結します。
売主と購入希望者がすり合わせをおこなう内容は次の通りです。
- 価格
- リフォームの有無
- 設備の管理
- 登記費用
- 支払い方法
- 引き渡し日(支払日)
お互いが合意したら、宅地建物取引士の立ち会いのもと署名と捺印を行います。不動産売買の担当者が宅地建物取引士の免許を持っていない場合、担当者と免許保持者の二人が同席することが多いです。
引渡しの日には清算や抵当権抹消登記などのするの手続きもおこなわれることが一般的です。その後不動産会社への報酬として仲介手数料を支払って売却が完了となります。
確定申告を行う
例えば、令和4年1月1日から12月31日に収入があった場合、翌年の2/16〜3/15までに確定申告をおこない、それに課せられる税金を納めなければなりません。
会社勤めであれば、確定申告をする機会はあまりないかもしれませんが、不動産売却したあとは必ずその分の申告を行う必要があります。
税理士に依頼することも可能ですが、依頼するにはもちろん費用がかかります。
一棟マンションの売却でも、必ず確定申告をおこないましょう。一棟マンションの売却で収益があった場合には、その収入額に応じて譲渡所得税という税金が課せられます。
経費を計上することによって課税対象になる譲渡所得金額が少なくなります。
申告を忘れるようなことがないように、しっかりと確認しておきましょう。
期限後に申告を行うと、原則として、法定納期限の翌日から申告書を提出する日までの日数に応じて、利息分に相当する延滞税が自動的に科せられます。
申告書の提出や納税が遅れれば遅れるほど、延滞税が増える可能性がありますので、注意が必要です。
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一棟マンションの売却方法
仲介(専任媒介)
一棟マンションの売却を希望している売主が、ひとつの不動産会社に一任し買い手探しを依頼する契約です。
売主は他の不動産会社に同じ物件の買い手探しを依頼することはできないので、専任媒介と呼ばれます。
専任媒介契約の大きなメリットは、不動産会社が積極的に販売活動を行ってくれることです。
売主が他の不動産会社に重複して依頼していないことから、売買契約を成立させれば、必ず成功報酬である仲介手数料が受領できます。
そのため、お金や時間をかけた販売活動がしやすくなるのです。
また、専任媒介契約を結んだ場合は、7日以内に不動産流通機構への情報登録や2週間に1回の報告の義務があるので、早く、より確実に売却したいという場合に有効です。
仲介(専属専任媒介)
専任専属媒介は、専属媒介の内容を厳しくした形の契約と言えるでしょう。
専任専属媒介では、売主が自分で探した買主(個人・業者問わず)と直接契約をすることができない、という点が他の2つの仲介方法と大きく異なります。
その他に専任媒介と異なる点として、5日以内に不動産流通機構へ情報登録すること、1週間に1回の依頼主への報告義務があることがあげられます。
仲介(一般媒介)
上記2つの専任媒介とは違って、複数の不動産会社に依頼できる媒介契約です。
売主はどの業者に依頼しても良いので自由度は高いですが、そのことに対して業者が熱心になりにくく、早めの売却を希望する場合には不向きです。
「いつか買い手が見つかれば」という程度の熱意で売りに出すのであれば、一般媒介なら不動産会社を変更するのも自由なので気楽に構えることができます。
買い取り
仲介に対して、不動産会社が買い手となって一棟マンションを売却する方法です。
一棟マンションを専門的に買い取っている不動産会社も多数あり、業者間の競争も活発です。
買い取りのメリットは、仲介と違って確実に買い手が見つかることや瑕疵担保責任がないこと、人に知られることなく売却できることなどが魅力です。
一方、売却価格は仲介よりも低くなります。
市場流通価格の60〜80%程度とも言われているので、売却価格で妥協したくないという場合は難しいかも知れません。
買い取りをおすすめするケースとしては、はやく資金を調達する必要がある場合など、時間に余裕がない売却なら、不動産会社による買取を検討しましょう。
一般的に仲介での売却の場合、不動産会社に依頼してから実際に入金されるまで、平均で約3〜6ヶ月かかるといわれています。
不動産会社による買取なら、不動産会社と直接取引することによって最短で1ヶ月と短い期間で売却を完了することが可能なのです。
しかし前述したとおり、不動産会社による買取では、仲介での売却よりも価格が2割ほど安くなってしまいます。
少しでも早く現金化したい場合以外は、仲介で購入希望者を探したほうが手残り金額が増えることになりますので、状況に合わせて慎重に検討しましょう。
一棟マンション売却に要する費用
一棟マンション売却を完了するまでにかかる主な費用は、以下の通りです。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 抵当権抹消費用
- 測量費用
- 解体費用
- 登録免許税
- 譲渡所得税
その他にも、融資を受けていて売却代金で一括返済をする場合は、繰り上げ返済手数料が必要になります。
仲介手数料
仲介手数料とは、不動産売買の際に不動産会社と媒介契約を結び、購入希望者と売却希望者の間に入り契約を成立させた場合の成功報酬のこと。
仲介手数料は、受領できる手数料の上限が定められており、
売買価格200万以下の部分:売買価格の5%以内
売買価格200万を超え400万以下の部分:売買価格の4%以内
売買価格400万を超える部分:取引額の3%以内
この計算式をもっと簡単にして仲介手数料を算出すると、売主側が支払う仲介手数料は、
『売買代金×3%+6万円(税別)』が相場となります。
印紙税
印紙税は、契約が成立した場合の売買契約において課税される税金のこと。印紙を購入して契約書に貼ることで、納税の証明となります。
印紙税は契約の金額によって税額が異なるため、次の表で確認しておきましょう。
印紙税の額
売買金額 | 印紙税額 |
---|---|
100万を超えて500万以下 | 2,000円 |
500万円を超えて1000万円以下 | 10,000円 |
1000万円を超えて5000万円以下 | 20,000円 |
抵当権抹消費用
不動産にローンがあったり、その不動産を担保に借入れしていると、不動産に抵当権が設定されています。
抵当権とは、ローンの借入先の銀行などが行使できる権利のことで、お金を借りた方がローンの返済できなくなった場合、抵当権を設定している銀行などがその不動産を担保に優先的に貸した金額を回収できる権利のこと。
売買する際には、その抵当権抹消が一般的となります。
測量費用
売却する際、隣地との境界を確定させることと正しい面積を測ることが必要になります。
不動産売却には必須になるため、媒介契約をした不動産会社が手配してくれることが多いです。
測量費用は面積によって異なるため、不動産会社に見積もりをお願いしておくと良いでしょう。
解体費用
一棟マンションを解体し、他の用地として売却する方法もあります。
解体費用は買主側でみてほしいという希望もアリですが、解体更地渡しの方が売れやすくなることも事実です。
解体費用は建物の規模や残存物(植栽)の有無によって異なりますので、数社の解体業者に見積もりを取っておきましょう。
登録免許税
登録免許税とは、売買・相続などによる所有権移転の登記や、所有権保存の登記などの登記手続きを行う際に納める税金のことです。
登録免許税は課税標準に税率を掛け合わせて求められ、申請する登記の種類ごとに、不動産の価額、債権金額、不動産の個数などによって決まります。
登記手続きを司法書士など専門家に依頼する場合は、登録免許税を含めた額を司法書士事務所へ支払うのが一般的です。
消費税
忘れてはいけないのが消費税です。ついつい対象外だと思いがちですが、一棟マンションの売買においては消費税がかかります。
課税対象となるのは、事業用不動産の売買取引においての建物部分で、土地は非課税です。
一棟マンションを売却する際の消費税額の設定や売買価格の内訳は、仲介業者を通して買主や税理士に相談するか、管轄の税務署に尋ねてみても良いでしょう。
一般的には、固定資産評価証明書に記載されている土地と建物の評価額からその内訳比率を算出して、その比率を実際の取引額に適用するケースが多いようです。
譲渡所得税
①譲渡所得税の計算
譲渡所得税とは、土地などの不動産を売却した際に得た利益に課される税金のことです。
利益に対して課税されるため、売却後に税額が決定します。「譲渡所得」とは「売却価格」から「取得費と譲渡費用を足した金額」を引いた金額です。
また、その不動産を長期(5年超)で所有しているかによっても譲渡所得税は異なり、所有期間が5年以下の短期譲渡の場合、所得税と住民税に課税される割合が大きくなります。
そのため、5年弱で短期で売却を検討している場合は、税金の金額をしっかり把握しておいた方が良いでしょう。
もし一棟マンションを相続により取得した場合、ここでいう所有期間とは、被相続人(亡くなった方)からの所有期間のことです。
仮に、物件価格が5000万円の場合のシミュレーションを行ってみましょう。
取得費は当時の取得額(※)もしくは取得額が不明の場合は取得価格の5%を取得費としてみなします。
※住宅・土地の購入の際にかかった費用(手数料を含む)、アパート・賃貸マンションの設備費や改良費、建築費用、住宅設備や改良にかかった費用などを合計したものです。住宅の場合にのみ、購入代金や建築費用から“減価償却費相当額”が差し引かれることになります。
譲渡所得
売却価格 | 50,000,000 円 |
合計(A) | 50,000,000 円 |
譲渡費用
契約書印紙代 | 30,000円 |
司法書士登記費用 | 約 100,000円 |
仲介手数料 | 1,716,000円 |
その他、解体費用、測量費用など | 合計(B) | 1,846,000 円 |
取得費(C):4,500万円 ※不明な場合は5%として計算します。
【譲渡所得税の計算】
課税譲渡所得額(C):A-(B+C)=3,154,000円(a)
長期譲渡の場合(所有が5年超) | 短期譲渡の場合(所有が5年以下) | |
---|---|---|
所得税 | (a)×15%=473,100円(b) | (a)×30%=946,200円(b) |
復興特別所得税 | (b)×2.1%=66,234円 | (b)×2.1%=66,234円 |
住民税 | (a)×5%=157,700円 | (a)×9%=283,860円 |
支払税額 | 697,034円 | 1,296,294円 |
ちなみに、課税譲渡所得がマイナスの場合、税金は課税されません。
なお、上記はあくまで参考目安となり、正確な税額が知りたい場合は税理士かお近くの税務署窓口までお問合せください。
自己が居住していた不動産の売却ではないので、譲渡益が出た場合のマイホームの3つの特例は利用できません。
一棟マンションをできるだけ高額で売却するコツ
一棟マンションを売却するなら、タイミングを見計らうことでより高額で売却が可能となったり、より短い期間で売却することができます。ここでは、一棟マンション売却の好機として主な3つを紹介します。
売却時に満室にしておく
一棟マンションを購入する人も投資家であり、その一棟マンションが収益を生む不動産であることが重要だと思っています。
そのため、売り出し時の稼働率はマンション物件の価値に直結します。
仮に売却時に入居している人が退去したとしても、稼働率の高いマンションは人気が高いと推測できるため、またすぐに新たな入居者が見つかる可能性も高いのです。
稼働率が高い時が売り時であると言われているのもそのためで、稼働率が低下することが予測される場合は、稼働率が高いうちに一棟売却を検討するのもひとつではないでしょうか。
マンション一棟売却に強い業者に絞り込む
不動産会社には、それぞれ強みとしている物件が異なります。
マンションの売却といっても、区分マンションの売却と一棟マンションの売却とでは買い手が異なるため、売却のノウハウも全く違います。
区分マンションを購入するのは、主に個人の居住用が多いといえるでしょう。
しかし、一棟マンションを購入するのは主に投資家で、事業計画が肝と言えます。
そのため、数ある不動産会社の中でも、マンションの一棟売却に強い業者に絞り込みましょう。 その業者が一棟売却に強いかどうかは、実績を見せてほしいと依頼すればすぐに分かります。
売却価格や売却に要した期間など、それぞれの事例で詳しい説明ができれば、その業者は一棟売却に強いと判断できます。
一括査定サイトなどを利用して複数の業者に査定を依頼する
一括査定サイトでは、少ない労力で複数の業者に査定見積もりを出せる便利さが魅力です。
複数の業者に査定依頼をする意味はもちろん、「他の業者のほうが有利な査定なら、そちらに依頼する」という構図を作ることができる点です。
ただし、現地確認や内見を怠ったまま査定を出してくる不動産会社は、信用に値するかしっかり見極めなければなりません。
たとえ高い金額を提示してきたとしても、競合他社に負けないよう査定している可能性もあり、いざ売却の段階になると価格を下げられる可能性もあるからです。
メリットデメリットをふまえ、一括査定サイトを上手く利用するのがおすすめです。
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不動産売却のファーストステップとなる不動産の査定をどこに依頼すればいいのか?一括査定をしてくれるサービスがいくつかあります。査定は売却において重要なポイントなので、信頼できる不動産会社にお願いしたいですよね。そこで、不動産一括査定サービスを提携社数や対応エリアなど項目に沿って、業界の専門家が解説します。
まとめ
一棟マンションの売却には、買取より仲介がおすすめです。
ただし、売却を急いでいる場合は買取の方がおすすめなので、ご自身のケースに沿って検討してみてください。
売却方法については本記事をご覧いただき、ぜひ参考にしてください。