【法人向け】経費計上できる費用とは?不動産売却時の仕訳についてケースとともに徹底解説!

  【法人向け】経費計上できる費用とは?不動産売却時の仕訳についてケースとともに徹底解説!

この記事では法人の場合の不動産売却時の仕訳について解説していきます。個人事業主の場合と勘定科目が異なりますので注意が必要なほか、税率の違いや売却日の決定など、細かい会計のルールにも触れていますので正しい知識で適切に会計処理をしていきましょう。

手塚 大輔
【執筆・監修】手塚 大輔

地方銀行に10年弱勤務した後、現在は飲食店を起業しており、プロのライターとしてもSEO記事、コピーライティングなどを行なっております。 銀行では、預金業務、カードローン、住宅ローン、企業の運転資金、設備資金、起業開業支援、保険販売、投資信託販売などの他、企業の決算書の審査など経験。

【保有資格】ファイナンシャルプランナー

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法人の不動産売却時の仕訳について解説します。

法人が不動産を売却すると必ず仕訳が必要になりますが、勘定科目は個人事業主と異なるので注意しなければなりません。

また、売却日の決定や消費税の発生についてもルールをしっかりと把握して正しい会計処理を行うことも重要です。

さらに法人は税率が個人事業主よりも優遇されているため、税額の計算方法についても理解しておきましょう。

法人が不動産を売却した際の仕訳や会計処理について詳しく解説していきます。

不動産売却時の仕訳の4つのポイント

法人が不動産を売却して仕訳をする際には、次の4つのポイントに注意しながら会計処理を行わなければなりません。

  • 勘定科目は「固定資産売却益(損)」
  • 売却損益の算出方法
  • 売却日の決め方
  • 土地売却は消費税非課税

特に勘定科目が個人事業主とは異なるので、しっかりと理解しておきましょう。

不動産売却時の4つの仕訳方法について詳しく解説していきます。

①勘定科目は固定資産売却益(損)

法人が不動産を売却して利益が出た際には「固定資産売却益」、損失が出た際には「固定資産売却損」という勘定科目を使用します。

個人事業主の場合には「事業主借」「事業主貸」という勘定科目を売却時の損益に対して使用します。

しかし、法人の場合には「固定資産売却益」という収益勘定と、「固定資産売却損」という費用感情を使用するという点を把握しておきましょう。

なお、個人事業主は「事業主借」を計上して利益が出た場合には、事業所得ではなく譲渡所得として確定申告を行いますが、法人の場合には他の所得と一緒にして事業所得を算出して申告します。

②売却損益の算出方法

不動産の売却損益は簿価を基準にして行います。

つまり、不動産を取得した際に計上した金額と売却額の差額が不動産売却損益となります。

例えば、簿価2,000万円の土地を3,000万円で売却したら1,000万円の売却益です。

売却時には不動産の時価が簿価と大きく乖離していたとしても、売却損益は簿価を基準に算出することを理解しておきましょう。

なお、建物は減価償却後の金額が簿価となります。

③売却日の決め方

不動産を売却した際、売却日は次の2つの日から任意に選択できます。

  • 不動産の売買契約日
  • 不動産の引き渡し日

どちらか任意の日を選んで、売却日として、売却損益を計上できます。

契約日と引き渡し日の間に決算が入る場合には、決算前後どちらかに収益や費用を計上するのかによって、当期利益に影響します。

例えば「利益が出すぎているから、経費を作って利益を抑えたい」という場合に不動産売却損が出ているのであれば、決算前を売却日とするのがよいでしょう。

一方、「来期は売上が厳しそう」と見込んでいるのであれば、決算後を売却日として売却益を計上すれば来期の利益を少なからず補填できます。

売却日は「契約日」と「引き渡し日」から任意に選択できるので、会社の決算にとって最も都合のよい日を選択するとよいでしょう。

④建物には消費税がかかるが土地は非課税

法人が不動産を売却した場合、土地には消費税はかかりません。

しかし建物には消費税はかかります。

そのため、土地と建物を一緒に売却した場合、土地分と建物分を按分し、建物にかかる売却代金に対してのみ消費税の支払いを買い手に求めます。

そして受け取った消費税は「仮受消費税」という勘定科目を使用して、会社で預かっておかなければなりません。

なお、個人が個人用の建物を売却した場合には消費税は非課税です。

建物売却時の消費税の取り扱いについての違いは次のようになります。

個人が売却した場合 非課税
個人が投資用物件を売却した場合 課税
法人が売却した場合 課税

不動産売却時に経費にできる費用とは?

不動産を売った際には、さまざまな費用が発生しますが、その多くが会社の経費とすることが可能です。

主に次の5つの費用は経費にできるので、節税効果が期待できます。

  • 仲介手数料
  • 印紙税
  • 抵当権抹消費用
  • ローン返済手数料
  • 固定資産税・都市計画税の精算金

不動産売却時に発生する5つの経費の意味と、仕訳方法をご紹介していきます。

仲介手数料

不動産会社の仲介で不動産を売却した場合には、仲介手数料の支払いが必要です。

仲介手数料の上限は法律によって次のように決められています。

売却金額 仲介手数料
200万円以下の部分 売買価格の5%+消費税
200万円超400万円以下の部分 売買価格の4%+消費税
400万円超の部分 売買価格の3%+消費税

なお、不動産の売買価格が400万円超の場合は次の計算式で簡易に計算できます。

(売却価格×3%+60,000円)+消費税

例えば、3,000万円の不動産を売却した際の仲介手数料は96万円+消費税となります。

仕訳の際勘定科目は「支払手数料」を使用します。

例)不動産会社へ仲介手数料96万円+消費税9.6万円を支払った

借方 貸方
支払手数料 1,056,000円 普通預金 1,056,000円

なお、消費税は別途計上する「税抜経費方式」で仕訳する場合には、次のような仕訳になります。

借方 貸方
支払手数料 960,000円
仮払消費税 96,000円
普通預金 1,056,000円

「仮払消費税」という勘定科目を立てて、消費税をいくら支払ったのかを把握しておけば、後から仕入額控除を行う際にも簡単です。

印紙税

不動産を売却する際に買主との間で締結する契約書には、契約金額に応じて次のように定められた所定の収入印紙を貼付しなければなりません。

売却金額 収入印紙代
10万円以下 200円
10万円超50万円以下 400円
50万円超100万円以下 1,000円
100万円超500万円以下 2,000円
500万円超1,000万円以下 10,000円
1,000万円超5,000万円以下 20,000円
5,000万円超1億円以下 60,000円
1億円超5億円以下 100,000円

収入印紙代は「租税公課」という費用の勘定科目によって次のように仕訳を行います。

例)不動産売買の際に収入印紙代20,000円を支払った

借方 貸方
租税公課 20,000円 普通預金 20,000円

抵当権抹消費用

抵当権がついている不動産を売却する場合は、抵当権を抹消した上で不動産を売却しなければなりません。

抵当権の抹消にかかる費用は登録免許税と、司法書士に依頼する場合には司法書士報酬で、それぞれの費用は次のようになります。

  • 登録免許税:1,000円/1筆
  • 司法書士報酬:10,000円程度/1筆
  • 謄本費用:300円/1通

登録免許税や謄本費用は法務局へ支払う費用ですので、「租税公課」で処理し、司法書士への報酬は消費税と合わせて「支払手数料」で会計処理を行います。

なお、司法書士へ支払う報酬は源泉徴収税を控除しますので、控除した源泉徴収税は「預り金」で処理します。

源泉徴収税を1,000円と仮定した場合の仕訳は次のようになります。

借方 貸方
租税公課 1,300円
支払手数料:11,000円
普通預金 11,300円
預り金 1,000円

ローン返済手数料

ローンを利用している不動産を売却する際には、売却前または売却と同時にローンを完済しなければ売却できません。

期日よりも繰り上げて返済を行う場合には、繰り上げ返済手数料がかかることがあり、勘定科目は「支払手数料」として会計処理を行います。

例)ローンを繰り上げ返済した際に33,000円の繰上げ返済手数料を支払った

借方 貸方
支払手数料:33,000円 普通預金 33,000円

固定資産税・都市計画税の精算金

不動産に対して課税される、固定資産税は1月1日時点の不動産の所有者に対して課税され、所有者は一括または分割で1年分の固定資産税を前払いします。

年の途中で不動産を売却した場合、不動産を所有していない期間の固定資産を売主が負担するのは公平ではありません。

そのため、不動産を所有期間で按分して、買主が保有する期間に対応する固定資産税や都市計画税を支払います。

買主から固定資産税や都市計画税を受け取った際、売主は「預り金」という勘定科目を使用して会計処理します。

例)買主が所有する期間相当分である固定資産税30万円を受け取った

借方 貸方
普通預金 30万円 預り金 30万円

受け取った預り金を使用して、売主が固定資産税を支払った場合は次の仕訳になります。

例)固定資産税100万円を支払った。

借方 貸方
預り金 30万円
租税公課 70万円
普通預金 100万円

売主が負担すべき固定資産税は預り金として受け取っていない部分だけですので、このケースでは差額の70万円に限って「預り金」という勘定科目を使用して、費用計上します。

その他の費用

不動産売却の際には測量やクリーニングを行うのが一般的です。

この際に発生する測量費や清掃費は「業務委託費」として会計処理するのが一般的です。

例)管理会社にクリーニング費用10万円を支払った

借方 貸方
業務委託費 10万円 普通預金 10万円

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不動産売却時の仕訳

法人が不動産を売却した際の仕訳を実例とともにご紹介していきます。

仕訳の内容は「売却益が出た時」「売却損が出た時」「土地と建物を一緒に売却した時」とそれぞれ異なるので注意してください。

土地売却によって利益が出た時の仕訳

土地の売却によって利益が出た際の仕訳のポイントは次の通りです。

  • 勘定科目は固定資産売却益を使用する
  • 消費税は計上しない
  • 売却益は簿価を基準に計算する

例)簿価1,000万円の土地を1,200万円で売却した

借方 貸方
普通預金 1,200万円 土地 1,000万円
固定資産売却益 200万円

利益が出たため、利益分は「固定資産売却益」で会計処理を行います。

土地売却によって損失が出た時の仕訳

土地の売却によって損失が出た場合の仕訳のポイントは次の通りです。

  • 勘定科目は固定資産売却損を使用する
  • 消費税は計上しない
  • 売却損は簿価を基準に計算する

例)簿価1,000万円の土地を800万円で売却した

借方 貸方
普通預金 800万円
固定資産売却損 200万円
土地 1,000万円

売却によって生じた損失は「固定資産売却損」という勘定科目を使用し、会計処理を行います。

土地+建物売却によって利益が出た時の仕訳

土地と建物の両方を売却して利益が出た際の仕訳のポイントは次の通りです。

  • 建物の売却代金には消費税が含まれる
  • 受け取った消費税は「仮受消費税」という勘定科目を使用する

簿価1,000万円の土地、簿価2,000万円の土地を3,700万円(建物分は2,500万円)で売却し、税込3,950万円を受け取った

借方 貸方
普通預金 3,950万円 土地 1,000万円
建物 2,000万円
固定資産売却益 700万円
仮受消費税 250万円

このケースであれば建物分の2,500万円に相当する消費税が250万円です。

250万円の消費税は「仮受消費税」として会計処理を行います。

土地+建物売却によって損失が出た時の仕訳

土地と建物を売却して損失が出た場合も、建物分の売却代金に対して課税される消費税は「仮受消費税」として会計処理を行います。

例)簿価1,000万円の土地、簿価2,000万円の土地を3,000万円(建物分は1,800万円)で売却し、税込3,180万円を受け取った

借方 貸方
普通預金 3,180万円
固定資産売却損 400万円
土地 1,000万円
建物 2,000万円
仮受消費税 180万円

損失分は「固定資産売却損」として会計処理を、受け取った消費税は「仮受消費税」として会計処理を行います。

土地に利益が出て、建物に損失が出た時の仕訳

土地の売却には利益が出たものの、建物の売却で損失が生じた際のポイントは次の通りです。

  • 損益は土地と建物の利益と損失を合算して計上する
  • 建物の売却代金に課税される消費税は「仮受消費税」として会計処理を行う

例)簿価1,000万円の土地を1,200万円で売却し、簿価2,000万円の土地を1,900万円で売却し、税込

借方 貸方
普通預金 3,290万円 土地 1,000万円
建物 2,000万円
仮受消費税 190万円
固定資産売却益 100万円

土地の売却で200万円の利益、建物の売却で100万円の損失が出ているため、トータルでは100万円の利益です。そのため「固定資産売却益」を100万円計上します。

不動産売却時に手付金を受け取った場合の仕訳は?

不動産を売却する際には、契約時に手付金を受け取ることがあります。

手付金を受け取った場合には「前受金」という勘定科目を使用して会計処理を行います。

例)不動産売却の契約時に手付金500万円を受け取った

借方 貸方
普通預金 500万円 前受金 500万円

残りの代金を受け取り不動産を引き渡した場合の仕訳は次の通りです。

例)売却代金の残金である1,500万円を受け取り、2,000万円の土地を引き渡した

借方 貸方
前受金 500万円
普通預金 1,500万円
土地 2,000万円

売却時には「前受金」という勘定科目を取り崩す会計処理を行います。

不動産売却の仕訳における注意点

法人が不動産を売却する際の仕訳は次の3つの点に注意してください。

  • 法人の減価償却は任意償却が可能
  • 経費の領収書は7年間保管する
  • 投資用物件は日割りするものが多い

法人の減価償却は任意償却が可能

建物の価値は減価償却によって経年とともに少しずつ価値を取り崩して減価させて行かなければなりません。

法人の減価償却には「任意償却」という減価償却方法が認められています。

任意償却とは「償却期間内(耐用年数期間内)であればいつ減価償却してもよい」という法人だけに認められている制度です。

例えば、売上が増加している年度に、任意償却によって多額の減価償却費を計上すれば、その年の収益を抑えることができます。

反対に売上が減少している年度に、減価償却費を少なく計上することによって赤字へ転落するリスクを軽減できます。

個人は強制償却と言って、毎年決まった金額を減価償却しなければならないため、法人が任意償却できるのは大きなメリットです。

その年度の収支状況に応じて、上手に任意償却を活用しましょう。

経費の領収書は7年間保管する

不動産売却時だけでなく、法人が経費計上した際の全ての領収書は7年間の保存義務があります。

税務調査などが入った際には提出を求められるので、必ず領収書は保管しておくようにしてください。

投資用物件は日割りするものが多い

不動産を売却する際に、所有期間に応じて按分するものは固定資産税や都市計画税だけではありません。

次のような費用も所有期間に応じて買主との間で按分します。

  • 前払賃料
  • 駐車場や駐輪場利用代金
  • 自動販売機などの土地利用料
  • 広告看板を設置しているときの広告料

まとめ

法人が不動産を売却した際に利益が出た場合は「固定資産売却益」、損失が出た場合には「固定資産売却損」という勘定科目を使用します。

法人の場合には、土地には消費税は課税されませんが、建物の売却には消費税が課税されます。

買主から受け取った消費税は「仮受消費税」という勘定科目を使用します。

不動産売却時の会計処理は個人事業主と法人で大きく異なるため、正しく会計処理を行いましょう。

参考:不動産売却時の仕訳方法を解説!土地や建物の売却にかかる仲介手数料は?
法人が不動産を売却したときの処理方法や、税金について徹底解説

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