「相続した土地を売りたいけれど、一体いくらで売れるんだろう?」
「その前に、土地の値段ってどう決まるのかわからない」
「路線価、相場、実勢価格など、いくつもキーワードがあってよくわからない!」
この記事にたどり着いた方は、このような理由で検索されたかも知れませんね。
私は勤続30年以上の銀行員ですが、読者に役立つ情報を提供したいと思い、ライティングをしています。
仕事の中で、多くの不動産売買や担保評価に携わってきましたので、そうした経験から不動産と売買への疑問にお答えしようと、この記事を書いています。
「土地の売却価格がどのくらいになるか?」は自分で計算できます。
そのためには「路線価」と「実勢価格」「相場」の関係を知る必要があるのです。
そこで今回は、不動産価格を構成するこれらの用語解説と、「自分で土地の売値を予測計算する方法」を銀行員がわかりやすく説明します。
不動産業者に依頼する前に、ある程度の価格が見えてくるなら、そのあとも安心して動けると思います。
不動産価格が決まるプロセスの説明なので、売却を考えている方も、また不動産投資を検討している方も、ぜひ参考にしてください。
- 路線価の意味がわかる
〜そもそも何のために発表されているのか?といった基本から説明 - 路線価と実勢価格、相場の関係がわかる
~土地の売却には路線価が深く関連している - 売却価格を自分で計算する方法がわかる
不動産業者に査定依頼する前に、自分でも大まかな価格を掴むことができる
路線価と実勢価格~基本説明から始めましょう
この記事では、自分の土地がいくらで売れるか?を自分で予測し計算する方法も後半で説明しています。
そこでスムーズに理解できるように、土地の売却に深く関係する路線価や、その意味と何のために発表されているのか?についてなど、基本説明から始めましょう。
路線価とは?
路線価
路線価とは土地の価値を示す指標の一つで「その道沿い(つまり路線)の土地はいくら?」で表現され「相続税路線価」「固定資産税路線価」の2種類があります。
単位は1㎡あたりで表示され「路線価100万円」なら、その土地は1㎡あたり(大きめのコタツくらい)100万円する土地、という意味です。
ちなみに1坪は約3.3㎡、畳1畳は約1.5㎡(江戸間)なので、路線価100万円/㎡の土地なら1坪約330万円、畳1畳は約150万円になりますね。(*)
(*「坪」や「畳(「帖」とも)」には、他にも計算方法や表記があります)
相続税路線価
相続税路線価とは、土地の相続税を計算するとき基準になる価格のことです。
公示地価の80%程度を目安に国税庁が公表しています。(公示地価についてはのちほど詳しく説明します)
不動産業界では路線価と言えば、相続税路線価のことを指し、固定資産税路線価(後述)より良く使われています。
たとえば不動産の売却価格を決める場合や、銀行が担保の評価をするときなどには相続税路線価を使い、相続税路線価がない場合に固定資産税路線価を使う、といった具合です。
なお路線価は、国税庁のサイトで確認できます。
【参考出典】
国税庁/報道発表/国税庁発表分/令和4年分の路線価等についてhttps://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2022/rosenka/index.htm
固定資産税路線価
いっぽう固定資産税路線価は、固定資産税を計算するための価格で、こちらは公示価格の約70%を目安に、市町村が公表しています。
相続税路線価が設定されていない道路や、細い路地などで使われて、原則としてその価格は相続税路線価より低くなる傾向です。
役所で確認できますが「全国地価マップ」というサイトで、相続税路線価・固定資産税路線価の両方を調べることができますので、興味がある人はご自身で調べてみてください。
【参考出典】
一般財団法人資産評価システム評価センター/全国地価マップ
公示地価と基準地価~路線価以外の指標
土地価格の指標には、路線価以外にも「公示地価(「公示価格」とも)」と「基準地価」があります。
公示地価
公示地価とは、適正な取引のため基準となる価格のことです。
地価公示法という法律に基づき、1月1日時点での標準地の価格を国土交通省が公表しています。
【参考出典】
国土交通省/地価・不動産鑑定/地価公示https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_fr4_000043.html
基準地価
基準地価とは、公示地価と同じく基準となる価格で、都道府県知事が公表します。
なお、対象となる土地を公示地価では「標準地」、基準地価では「基準地」と呼びますが意味は同じで、たとえば公示地価の標準値と基準地価の基準地が同じ土地、という地域もあります。
【参考出典】
国土交通省/地価・不動産鑑定/都道府県地価調査https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_fr4_000044.html
土地価格の指標を一覧表で整理
指標 | 利用目的・用途 | 管轄部署 | 公示地価との関係 | 具体例 |
---|---|---|---|---|
公示地価 | 適正な地価を決める基準となる | 国土交通省 | ― | 公示地価・10万円/㎡と仮定) |
基準地価 | (公示地価と同じ) | 都道府県 | 公示地価と同格で、独自の水準 | ー |
相続税路線価 | 相続税の計算根拠 | 国税庁 | 公示価格の80%程度 | 8万円/㎡ |
固定資産税路線価 | 固定資産税の計算根拠 | 市町村 | 公示価格の70%程度 | 7万円/㎡ |
実勢価格 | 土地売却価格の目安 | なし | 公示価格の1.1~1.2倍程度 | (*詳細後述) |
実勢価格とは?
ここまで説明した公的な指標とは違い、実勢価格とは、現実に土地の売買取引が成立する(成立した)価格のことで、つまりその地域の相場です。
また取引に基づく点から、実勢価格は「取引事例」とも表現されます。
ちなみに不動産広告などで「販売価格」とあったら、こちらは売主側の希望価格であり、実勢価格とは一致しませんので、注意してください。
なお実勢価格は、国土交通省が提供する「土地総合情報システム」で取引事例を調べることができます。
そして、参考となる取引事例がない場合は、なるべく近い地域の取引事例や路線価から実勢価格を計算するのですが、計算方法は次項で詳しく説明します。
国土交通省/土地総合情報システム
実勢価格の計算式~売却価格を自分でつかむ方法
では、実勢価格の計算方法を解説します。
ここまでの説明で用語の理解ができていれば、決して難しいものではありません。
実勢価格の計算式
一般に実勢価格は公示地価の1.1倍(または1.2倍)程度と言われており、これを数式にして、路線価からでも計算できるのです。
それはなぜかというと「相続税路線価は公示地価の80%程度」(前述)なので、路線価から公示地価を導き出し、その公示地価を1.1倍したものが実勢価格になるわけです。
そのため、具体的な計算式は以下のようになります。
実勢価格の計算式
相続税路線価÷ 0.8 × 1.1(または1.2)=実勢価格
(例)相続税路線価10万円÷0.8×1.1=13万7,500円が実勢価格
<計算過程>
1. 相続税路線価10万円÷0.8=12万5,000円→公示地価に相当
2. 公示地価12万5千円×1.1=13万7,500円→実勢価格
なお1.1倍するか1.2倍するかはまちまちで、厳密な決まりはありません。
私の勤務する銀行では1.1倍を用い、相続税路線価がある場合のみ実勢価格を試算し、固定資産税路線価からは計算しません。
このあたりも統一基準が無く、あくまで目安としての計算です。
まとめ
ここまで、用語解説から計算式までわかりやすく説明させていただきました。
実勢価格の計算はあくまで目安とはいえ「ざっくり」でも土地の売却額が見えて来れば、ある程度は安心感を持てるでしょう。
なぜなら「高いなあ」「安すぎるんだけど」と考えるのは、比べる対象があって、初めて感じられることだからです。
- 自分の土地がいくらになるか、見当もつかないから業者にお任せ
- ある程度の相場は掴んだうえで業者の意見も聞いて見る
どちらが自分にとって有利に進むでしょうか?私は間違いなく後者だと考えますので、この記事が、参考になれば幸いです。
土地の売却価格を自分で査定する方法については以下の記事でも詳しくご紹介していますのでぜひ参考にしてみてください。
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