不動産売却と贈与税:税金対策完全ガイド|発生するケースや計算方法も解説

  不動産売却と贈与税:税金対策完全ガイド|発生するケースや計算方法も解説

この記事では不動産を売却したときに贈与税の課税対象になるケース、贈与とみなされる可能性のあるケースなどをわかりやすく解説していきます。合わせて贈与税の計算方法や節税方法もご紹介していきますのでぜひ参考にしてみてください。

濱田 真理
【執筆・監修】濱田 真理

阪神大震災で全壊した実家の再建をきっかけに、宅地建物取引士の資格を取得しました。 不動産会社勤務を経て、現在は不動産系SEOライターをしております。 分かりやすい解説と確かなエビデンスにより、信頼される記事の執筆が可能です。

【保有資格】宅地建物取引士

不動産を贈与すると、贈与された人に贈与税がかかり、贈与した人に税金はかかりません。

時価より著しく安い金額で売却した場合は、その差額分が贈与とみなされ課税の対象になります。

しかし年間の贈与額が110万円以下であれば贈与税はかかりません。

その他にも税負担を軽減する方法がいくつかあります。

この記事では不動産を売却したときに贈与税の課税対象になるケース、贈与とみなされる可能性のあるケースなどをわかりやすく解説するとともに、贈与税の計算方法や節税方法についても詳しくご紹介します。

この記事を最後まで読んでいただき、ご家族への不動産相続時だけでなく、売却時における税務対策にお役立てください。

不動産の贈与税とは

不動産の贈与とは無償で不動産を譲ることです。

財産を渡す人を贈与者、受け取る人を受贈者といい、個人から個人へ贈与されると贈与税がかかります

贈与税は、その不動産の相場価格(時価)を基に課税される税金です。

具体的には以下の3つの条件が揃ったとき、贈与が成立します。

  • 無償で譲る
  • 受け取る側は一切責任を負わない
  • 贈与者と受贈者の双方が贈与に合意している

いっぽう譲渡とは売却して不動産を譲ることです。

贈与と譲渡では以下のような違いがあります。

贈与 譲渡
対価 なし あり
税金 贈与税 譲渡所得税
契約 贈与契約 売買契約
登記 名義変更(贈与)
贈与契約書が必要
名義変更(売買)
売買契約書が必要

不動産売却などで贈与税が発生するケース

不動産を譲渡して贈与税が発生するのは以下の4つのケースです。

  • タダで不動産をもらうケース
  • 時価より著しく安く購入するケース
  • 借金を免除してもらうケース
  • 扶養義務以上の援助を受けるケース

それぞれ解説します。

タダで不動産をもらうケース

タダで不動産をもらった場合、もらった人に贈与税がかかります。

不動産をもらうとは不動産をもらった人の名義に変更することを意味します。

不動産の名義は贈与する人と贈与を受ける人の双方が合意していれば自由に変更可能です。

不動産の名義変更があった場合、法務局から税務署へ通知され、税務署は税金が納められたか確認します。

無償で不動産を受け取った人は、翌年の確定申告の際、贈与の申告と納税が必要です

時価より著しく安く購入するケース

時価より著しく安く不動産を購入すると、贈与税の対象になります

時価とは通常の取引金額に該当する金額のことです。

親族間で売却により譲渡したような形をとっても、時価より著しく安い金額で売却すると贈与税の対象になります。

参考元:国税庁|№4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき

借金を免除してもらうケース

通常他人の借金を肩代わりしたり、第三者のために借金を返済した場合、借金をしていた人はその借金がなくなったことによる利益(債務免除益)を得たとみなされ、贈与税がかかります

不動産の場合、通常不動産を譲渡したら受け取る譲渡益に対して譲渡所得税がかかります。

しかし借金を返済した人が譲渡所得税を納めていない場合、返済してもらった人に債務免除益があったとみなされ贈与税がかかります。

ただし、借金をしていた人に実質的に弁済能力がない場合、贈与税は課税されません

参考元:国税庁|№4424 債務免除等を受けた場合

扶養義務以上の援助を受けるケース

親子など親族間では、扶養義務が民法上課せられており、扶養義務の範囲内の贈与分は贈与税の対象にはなりません。

しかし、不動産を贈与するのは扶養義務の範囲を超えていると捉えられ贈与税の対象になります。

参考元:国税庁|扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A

不動産の売却で贈与とみなされる可能性があるケース

贈与税は個人が個人へ贈与する場合にのみかかる税金ですが、個人間以外のケースでは以下のような税金がかかります。

贈与者 受贈者
個人→個人 非課税 贈与税
個人→法人 みなし譲渡所得税※ 法人税
法人→個人 法人税 所得税
法人→法人 法人税 法人税

※みなし譲渡所得税:企業や個人がタダかタダ同然の低い価額で資産を譲ったとき、時価で譲渡したとみなして税額の計算を行う税制上の規定

対価を提供して譲渡する場合でも、以下の3つのケースでは贈与とみなされる可能性があります。

  • 親族間の取引
  • 関連法人間の取引
  • 代表者と法人間の取引

それぞれ解説します。

親族間の取引

親子や孫と祖父母など親族間での不動産取引は、適正な価格で売却しないと譲渡された親族に贈与税が課せられる可能性が高くなります。

時価が数千万円の不動産でも、息子に数万円で譲るといったことが容易にできるため、税務署は特に親族間での取引をマークしているからです。

この場合前章で解説した「時価より著しく安く購入するケース」に該当するため、受贈者である息子に贈与税が課せられます

関連法人間の取引

関連法人間とはグループ会社間や親会社と子会社の関係を指し、親族間の取引の法人版といった意味合いがあります。

法人間であっても価格操作がしやすいため、税務署からマークされやすい取引です。

贈与にあたるとみなされた場合、贈与者にも受贈者にも法人税が課せられます

不動産を取得したときの価格より高く売却した場合、通常の売買取引となるため贈与者には法人税、受贈者には不動産取得税が課せられます。

代表者と法人間の取引

代表者と法人間取引とは、社長が所有する不動産を会社名義に変えたり、会社が所有していた不動産を社長の個人所有に変えたりする場合のことです。

価格操作がしやすい関係のため、やはり税務署から厳しくチェックされます

法人が著しく安く、または無償で個人に不動産を譲渡した場合、法人も個人も時価で売却したとみなされます。

適正価格で売買が行われた場合は問題ありません。

不動産売却の贈与税を計算する方法

贈与税の計算方法には以下の2種類があります。

  • 暦年課税
  • 相続時精算課税

それぞれ解説します。

暦年課税

暦年課税は1月1日〜12月31日の1年間に受けた贈与の合計金額を元に計算する方法です。

基礎控除として110万円を合計金額から控除できます。

計算式は以下の通りです。

贈与税額 =(1年間に受けた贈与額 ー 基礎控除110万円)× 税率 ー 控除額

税率には以下の2種類があります。

一般贈与財産用
(一般税率)
直系尊属※以外の親族や他人から贈与を受けた場合
直系尊属※から子や孫が財産の贈与を受けた年の
1月1日時点で18歳未満の場合
特例贈与財産用 財産の贈与を受けた年の1月1日時点で
18歳以上の子や孫が、父母または祖父母から
贈与を受けた場合

※直系尊属:自分より前の世代で父母・祖父母・養父母など直通する系統の親族

それぞれの税率と控除額は以下の通りです。

基礎控除後の
課税価格
一般贈与財産用(一般税率) 特例贈与財産用
200万円以下 10% 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円 15% 10万円
600万円以下 30% 65万円 20% 30万円
1,000万円以下 40% 125万円 30% 90万円
1,500万円以下 45% 175万円 40% 190万円
3,000万円以下 50% 250万円 45% 265万円
3,000万円超え 55% 400万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超え 55% 640万円

例えば、父が20歳の子に4,000万円の不動産を400万円で贈った場合、特例贈与財産用の税率と控除額が適用されるため、以下のような計算式になります。

4,000万円ー400万円=3,600万円
贈与税額=(3,600万円ー110万円)×50%ー415万円=1,330万円

参考元:国税庁|№4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

相続時精算課税

相続時精算課税とは、60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子または孫に財産を贈与したときに2,500万円の控除を選択できる制度です。

生前贈与として選択できますが、相続の際贈与を受けた時の価額を加算して相続税額を計算します。

相続時精算課税は以下の点に注意する必要があります。

  • 第三者間では選択できない
  • 一度選択すると変更できない
  • 110万円の基礎控除は受けられない

計算式は以下の通りです。

贈与税額=(1年間の贈与額ー特別控除額2,500万円)× 20%

相続時精算課税は、将来値上がりが予想される不動産を贈与する場合には有効です。

しかし将来値下がりしたり、将来相続する財産が多くなったりする可能性を十分見極める必要があります。

参考元:国税庁|№4103 相続時精算課税の選択

不動産の贈与税を軽くする方法

不動産についての贈与税を軽くする方法には以下の3点があります。

  • 毎年110万円以内で贈与する
  • 相続時精算課税を利用する
  • 配偶者特別控除を利用する

それぞれ解説します。

毎年110万円以内で贈与する

年間110万円までの贈与に関しては非課税のため、不動産を売却したお金を毎年110万円以内の金額を毎年贈与すると大幅な節税ができます

そのためには銀行振込にするなどして、しっかり送金の記録を残しておくことが重要です。

ただし不動産を現金化しなければ利用できないため、不動産そのものを贈与したいのであれば有効ではありません。

相続時精算課税を利用する

「不動産売却の贈与税を計算する方法」で紹介したように、相続時精算課税は1年間に受けた贈与が2,500万円分が控除される制度です。

値上がりする予定が確定している不動産であれば、贈与した時の評価額で税金が算出されるため、値上がりしてからの税率より抑えられます。

ただし以下のような5つの注意点があります。

  • 60歳以上の父母又はソフトが18歳以上の子または孫へ贈与するケースに限られる
  • 値下がりした場合高い税率で納税する必要がある
  • 2,500万円の控除分は将来財産贈与を受ける際合算される
  • 110万円の基礎控除は利用できない
  • 一度選択するとあとで解除できない

このように相続時精算課税はリスクがある節税対策のため、専門家に相談しながら検討するのがおすすめです。

配偶者特別控除を利用する

夫婦間での贈与は2,000万円の特別控除が利用できます

基礎控除の110万円にプラスできるので、1年間に最大2,110万円が非課税になります。

ただし配偶者特別控除は以下の条件をクリアしないと利用できません。

  • 婚姻期間が20年以上
  • 贈与された翌年3月15日までに当該不動産に住んでいてその後も住み続ける見込み

なお配偶者特別控除を利用できるのは一生に1回だけです。

参考元:国税庁|№4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除

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まとめ

贈与税は無償または著しく安い価格で不動産を贈与した場合に課せられますが、適正価格での売買取引であれば贈与税の対象にはなりません

個人間や関連法人間などで不動産の名義を変更すると、贈与の疑いがあるため税務署が厳しくマークしています。

適正価格での取引でない場合申告しないと、延滞税などの追徴課税が課せられることがあるので注意が必要です。

適正価格の算出や贈与税の対象になるかなどについては、専門知識と経験のある不動産会社に相談することをおすすめします

この記事を参考にしていただき、無駄な税金をかけずに上手に不動産の贈与を成功させるヒントになれば幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

参考元:不動産売却で贈与税はかかる?発生するケースや計算方法を解説
不動産売却の教科書
不動産の贈与と譲渡、相続の違い 法律から税務上の扱いまでわかりやすく解説

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