不動産売却時の譲渡所得税とは?計算方法から節税のポイントまで徹底解説!

  不動産売却時の譲渡所得税とは?計算方法から節税のポイントまで徹底解説!

本記事では譲渡所得に関する基礎知識と不動産売却時の譲渡所得税の計算方法、節税の方法をご紹介していきます。詳しい事例とともにご紹介していきますので、ぜひ最後までご覧になってください。

宮本建一
【執筆・監修】宮本建一

金融機関に30年あまり在籍し、預金業務や融資業務、経理事務および内部監査業務、審査管理業務を経験しました。 これらの知見をもとに、金融関連(ファクタリング、資金調達、運転資金)、FP関連(保険、不動産、介護)、および法律関連(債務整理、遺産相続)を中心に執筆しています。 また、金融機関行職員を対象とした通信講座の教材執筆にも携わっています。

【保有資格】・FP2級 ・AFP ・金融内部監査士 ・簿記2級

不動産売却時に利益が出れば、税金を支払う必要があります。一方で、不動産売却における特例や控除があり、該当すれば節税できるかもしれません。

本記事では、不動産売却時に発生する譲渡所得税について解説します。

譲渡所得や譲渡所得税の算出方法について、および、譲渡所得を計算する場合に控除できる特例等について紹介します。

不動産売却時にかかる税金に関して関心のある方はぜひ参考にしてください。

不動産売却時の際には譲渡所得税が必要

不動産を売却し、利益が出た場合、譲渡所得が発生し、同時に税金もかかります。ここでは、譲渡所得および譲渡所得税の計算方法について解説します。

譲渡所得とは?

国税庁のHPによると、譲渡所得とは、一般的に土地・建物・株式・ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得と定義されています。

一方で、事業用の商品などの棚卸資産や山林などの譲渡による所得は、譲渡所得には該当しません。

特に、事業として土地や建物を売買する場合、譲渡所得には該当しないので注意が必要です。

引用:国税庁|No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき

譲渡所得の計算方法

譲渡所得は、以下の計算式で算出できます。

課税譲渡所得金額=収入金額-( 取得費 + 譲渡費用)-特別控除額

引用:国税庁|No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)

計算式を構成している項目についてそれぞれ説明します。

収入金額

収入金額とは、買主から受け取る総収入額をいいます。

取得費

不動産の取得費とは、不動産を購入した際に支払った金額、および、設備費や改良費のことをいいます。

土地の場合、購入した時の金額や購入手数料などの合計額です。建物の場合は、購入した金額を取得費として計算しません。建物は、年数が経過することで、資産価値が減少するからです。

建物の取得費を計算する場合、購入時の金額から、経過年数により価値の減少相当金額を差し引きます。経過年数により建物の価値が減少した金額のことを「減価償却費」といいます。

(参考)減価償却費の計算方法

減価償却費を計算する場合、以下の計算式で算出します。

減価償却費=取得価額×0.9×償却率×経過年数

(経過年数において、1年未満の経過年数において、6ヶ月未満は切り捨て、6ヶ月以上は1年で計算します。)

償却率は、建物の構造により国税庁が定めています。

【償却率】

建物の構造 耐用年数 償却率
鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造 70年 0.015
れんが造、石造またはブロック造 57年 0.018
金属造 骨格材の肉厚4mm超 51年 0.020
骨格材の肉厚3mm超4mm以下 40年 0.025
骨格材の肉厚3mm以下 28年 0.036
木造又は合成樹脂造 33年 0.031
木造モルタル造 30年 0.034

引用:国税庁|「減価償却費」の計算について

譲渡費用

譲渡費用とは、不動産売却時にかかった費用です。

例えば、不動産業者への仲介手数料や、所有権移転する際に必要な登記費用などが該当します。

特別控除額

土地や建物を譲渡した場合の特別控除額は以下のようになっています。

ただし、特別控除は一定の要件を満たす場合に適用されます。

  • 収用等により土地建物を譲渡した場合   5,000万円
  • マイホーム(居住用財産)を譲渡した場合   3,000万円
  • 被相続人の居住用財産(空き家)を譲渡した場合  3,000万円
  • 特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合  2,000万円
  • 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合   1,500万円
  • 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡した場合 1,000万円
  • 農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合   800万円
  • 低未利用土地等を譲渡した場合   100万円

引用:国税庁|No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)

譲渡所得税の計算方法

不動産の譲渡所得税は、以下の計算式で算出します。

譲渡所得税=譲渡所得×税率

計算においての注意点として、土地・建物の譲渡による所得は、給与所得等、他の所得とは合算せずに、分離して計算する分離課税制度を採用している点があります。

税率

税率は、売却した不動産を所有していた期間により異なります。

【課税所得金額に対する税率】

所有期間 所得税 復興特別所得税 住民税 合計
短期譲渡(5年以下) 30% 0.63% 9% 39.63%
長期譲渡(5年超) 15% 0.315% 5% 20.315%

復興所得税:2013年から2037年まで適用される所得税額に対する付加税。所得税額に2.1%をかけて算出。)

所有期間

所有期間が5年以下であるか5年超であるかによって税率が変わります。

売却時期について慎重に見極めを行うことが必要です。

注意すべき点として、所有期間を計算する場合、売却した年の1月1日時点で5年を経過しているかどうかで判断します。

例えば、2018年10月1日に所有した不動産を、2023年10月31日に売却した場合です。

所有期間は5年を超えています。

しかし、売却した年の1月1日、この場合2023年1月1日時点ですが、5年を経過しておらず、短期譲渡に該当することになります。

単純に所有期間が5年を超えているといって不動産を売却した場合、短期所有に該当し、高い税率で譲渡所得税を納税するケースがあるので注意しましょう。

譲渡所得税を節税するための控除・特例

不動産を売却する場合、以下の控除や特例に該当する場合、譲渡所得が減額でき、節税につながることが見込まれます。

  • 所有期間10年超の場合の軽減税率
  • 居住用財産の売却による3,000万円特別控除
  • 居住用財産の買い換え特例
  • 相続した居住用財産(空き家)の売却による特例
  • 相続した不動産の売却における取得加算の特例

引用:国税庁|No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)

順を追って紹介します。

所有期間10年超の場合の軽減税率

所有期間が10年を超える不動産(マイホームに限る)を売却し、一定の要件を満たせば、長期譲渡所得の税額より税率が軽減されます。

【軽減税率表】

課税長期譲渡所得金額 所得税
(復興特別所得税を含む)
住民税
6,000万円以下の部分 10.21% 4% 14.21%
6,000万円超の部分 15.315% 5% 20.315%

引用:国税庁|土地や建物を売ったとき

引用:国税庁|No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例

居住用財産の売却による3,000万円特別控除

マイホーム(居住用財産)を売却した場合、一定の要件に合致していれば、所有年数の長短にかかわらず、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できます。

居住用財産が共有名義の場合、おのおの最大3,000万円の控除が受けられます。

引用:国税庁|No.3302 マイホームを売ったときの特例

居住用財産の買い換え特例

マイホーム(居住用財産)を売却し、代わりのマイホームを購入した場合、一定の要件のもと、譲渡所得に対する税額を繰り延べできます。

ただし、非課税になることではないので注意が必要です。

具体例として、2,000万円で購入したマイホームを6,000万円で売却した場合、4,000万円の譲渡所得が課税対象となります。

しかし、8,000万円のマイホームを購入した場合、特例の適用を受けると、売却した翌年には譲渡所得に対する課税はされません。

新しいマイホームを譲渡するまで繰り延べされます。

特例の適用を受けるには、売却代金が1億円以下であることや、居住期間が10年以上、買い換え物件の建物の床面積が50平米等の要件があります。

引用:国税庁|No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例

相続した居住用財産(空き家)の売却による特例

相続または遺贈により取得した居住用財産を売却し、一定の要件に該当する場合、譲渡し所得から最大3,000万円の控除が受けられます。

対象となる「相続または遺贈により取得した居住用財産」とは、以下の要件の全てに当てはまるものをいいます。

  • 1981年5月31日以前に建築されたもの
  • 区分所有建物登記がされている建物でないこと
  • 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと

対象居住用財産は戸建てであり、マンションは該当しない点に注意が必要です。

引用:国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

相続した不動産の売却における取得加算の特例

相続または遺贈により取得した土地や建物等の財産を、一定の期間内の譲渡した場合、相続税額のうち、一定金額を譲渡資産の取得費に加算が可能です。

一定の期間内とは、譲渡財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの期間をいいます。

取得費に加算する相続税額は次のように算出します。

取得費に加算する相続税額=その者の相続税額×(その者の相続税の課税価格の計算の基礎とされたその譲渡した財産の相続税評価額)/{(その者の取得財産の価額)+(その者の相続時精算課税適用財産の価額+(その者の純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産の価額)}

引用:国税庁|No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

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譲渡所得税以外に不動産売却において必要な税金

不動産を売却する場合、必要な英金は、譲渡所得税以外に以下のものがありますので、順を追って解説します。

  • 住民税
  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 消費税

住民税

住民税は、所有期間により税率が異なります。

【住民税率】

所有期間 住民税率
5年以下 9%
5年超10年以下 5%
10年超
(課税譲渡所得金額6,000万円以下の部分)
4%
10年超
(課税譲渡所得金額6,000万円超の部分)
5%

譲渡所得税が発生すると住民税も納税しなければなりません。

住民税においては、特段の手続きは必要ありません。

5月以降に住民税の納付書が送付されるのが一般的です。所得税とは納付時期が異なるので注意しましょう。

印紙税

印紙税は売買契約書に貼るために必要な印紙です。

印紙税は売買契約書に記載される金額によって異なりますので注意が必要です。

【契約金額における印紙税額】

契約金額 印紙税額
1万円未満 非課税
10万円以下 200円
10万円を超え50万円以下 400円
50万円を超え100万円以下 1,000円
100万円を超え500万円以下 2,000円
500万円を超え1千万円以下 10,000円
1千万円を超え5千万円以下 20,000円
5千万円を超え1億円以下 60,000円
1億円を超え5億円以下 100,000円
5億円を超え10億円以下 200,000円
10億円を超え50億円以下 400,000円
50億円を超えるもの 600,000円
契約金額の記載のないもの 200円

引用:国税庁|No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで

登録免許税

登録免許税とは、所有者が変更される際の登記に必要な税金です。

売主は、住宅ローンに残債のある不動産を売却する場合、抵当権の抹消登記を行います。

抵当権を抹消する際に登録免許税を負担します。

抵当権の抹消の登記に必要な登録免許税は1筆1,000円です。

土地、建物を売却する場合、2筆の場合、2,000円となります。

抵当権の抹消をする場合、司法書士に依頼する場合が一般的です。

司法書士に抵当権の抹消を依頼する場合、登録免許税以外に司法書士への手数料が必要となります。

5,000円~20,000円が相場とされています。

消費税

不動産仲介業者に依頼して不動産を売却した場合、売主は仲介業者に仲介手数料を支払わなければなりません。

そして、仲介手数料には消費税がかかります。

仲介手数料は、売却価格が400万円以上の不動産の場合、以下の式で計算できます。

仲介手数料=不動産売却額×3%+6万円

売却価格が400万円以上の不動産の場合、以下の式で消費税額を算出します。

仲介手数料消費税=(不動産売却額×3%+6万円)×10%

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不動産売却時に利益が出ると確定申告が必要

不動産を売却し、譲渡所得税が確定した場合、譲渡所得税を納める必要があります。

譲渡所得は給与所得等と違い、他の所得と合算して計上できません。

譲渡所得税を納めるには、「確定申告」を行います。

確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額と、それに対する所得税等の額を計算して確定させる手続きです。

通常、翌年の2月中旬~3月中旬に確定申告を行います。

確定申告の際に必要な書類として、以下のものがあります。

  • 確定申告書B、確定申告書第一表および第二表、譲渡所得の内訳書
    不動産売却による譲渡所得などについて記入します。税務署で入手できます。または国税庁のサイトからダウンロードできます。
  • 不動産売却関連書類
    売買契約書や領収書等、不動産売買に際して発生した入金や支出が証明できる書類です。

引用:国税庁|No.2020 確定申告

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まとめ

不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得が発生し、同時に譲渡所得税を納めなければなりません。

譲渡所得税を計算する場合、特例や控除等に該当すれば、譲渡所得税額を節税できるかもしれません。場合によっては、所得税額がゼロになる可能性もあります。

不動産売却時には、後悔しない、おトクな不動産売却を心がけましょう。

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