「不動産担保ローンって何?」
「不動産担保ローンと不動産投資ローンはどう違うの?」
この記事にたどり着いた人は不動産担保ローンに興味を持っているのではないでしょうか?
そこで今回は、不動産担保ローンについて、初歩的な部分から解説する記事にしました。
不動産を担保に活用して、必要な資金を手に入れる不動産担保ローンは「評価」が重要です。
今回は融資の現場でローンや事象資金など融資を審査し、また不動産担保にも関わってきた銀行員がわかりやすく解説します。
資金調達の方法を探している人や、不動産担保ローンの具体的なメカニズム・リスクを知りたい人など、ぜひ参考にしてください。
不動産担保ローンの定義と基本的な仕組み
まず不動産担保ローンとは?などの定義と、その基本的な仕組み、つまり「基本スペック」を見てみましょう。
不動産担保ローンとは?
不動産担保ローンとは、不動産を担保にすることで、自分に必要な資金を調達できる融資のことです。
この場合の「自分」とは個人も会社(法人)も当てはまり、その両方で利用することができます。
不動産担保ローンは銀行などの金融機関と、専門の事業者(不動産担保ローンを専門に取り扱う貸金業者や、消費者金融・信販会社などのいわゆるノンバンク)で取り扱っています。
個人と言っても、商店主やフリーランスなど確定申告をしている「個人事業主」や法人で事業に必要な資金を調達する場合には「事業資金融資」となります。
いっぽう、会社員など一般的な個人の場合はカードローンやフリーローンと同じ「消費性ローン」(*)に当てはまります。
「ローン」といえば、住宅ローンなどがイメージされますが、個人事業主や法人向けの事業資金の場合でも「不動産担保ローン」と呼んでいます。
これは「不動産担保融資」ではかた苦しく、またなんとなくネガティブなイメージも伴うので、もう少し柔らかい表現の「ローン」を使っているのではないか?と考えています。
ちなみにこの表現は事業資金融資の一種である「ビジネスローン」も同じ意味合いでしょう。(個人的見解です)
*消費性ローン:個人が自分のために、自宅や住宅用土地などの不動産や、車・家財などの購入、あるいは自由に使えるお金をカードローンで借りるなど「消費する」という意味で「消費性資金」と呼び、こうした使いみちのローンが「消費性ローン」または「消費者ローン」となる
担保評価と相場・路線価の関係
担保の評価に関して、俗に「担保の評価は相場の6割程度」とよく言われます。
それはなぜかというと、土地の相場が路線価の1.2倍程度なのに対して、銀行の評価は路線価の8割程度だからです。
こちらについて、この項ではケーススタディを用いて解説します。
まず、土地の価値を示す指標として路線価(相続税路線価と固定資産税路線価の2種類・相場は相続税路線価を基本にするのが一般的)があり、路線価は「1㎡あたり◯千円」で公開されていて、参考までに東京駅前・令和5年現在の相続税路線価は1㎡あたり2千200万円(!)です。【参考①】
一般に土地の相場(「実勢価格」とも・実際に売買される価格の目安)は相続税路線価をもとに「路線価÷0.8✕1.1(または1.2)」などで計算されます。
また大まかに「路線価の1.2倍」など目安はいくつもありますが、この記事では私が普段使っている「路線価÷0.8✕1.1」で計算します。
そして銀行の担保評価も相続税路線価(*相続税路線価がない土地は固定資産税路線価、路線価がまったくない場合は他の評価方法)を基本にしています。
実際には土地の形状や立地などさまざまな要素が影響し、またどのような根拠で評価を出すのか?などは極秘事項なので詳しくお話しすることはできませんが、ここでは(あくまで参考ですが)「銀行の担保評価は相続税路線価の8割程度」とします。
ケーススタディ
- 前提条件:土地Aの相続税路線価は1㎡あたり10万円・面積は1,000㎡
①土地Aの相続税路線価にもとづく評価額:1億円(10万円✕1,000㎡)
②土地Aの相場:1億3千750万円(①1億円÷0.8✕1.1)
③土地Aの銀行担保評価:8千万円(①1億円✕0.8)
④銀行担保評価は相場の約6割:58.1%(③8千万円÷②1億3千750万円=0.581)
上記は銀行の場合、さらにあくまで参考であり、実際の担保評価は物件によっても異なります。
またノンバンクや不動産担保専門の事業者などもそれぞれの基準で担保評価をします。
こちらの水準や評価方法などは残念ながら不明ですが、銀行に比べると評価が柔軟になっていると、銀行員の私は考えています。
【参考①】全国地価マップ/東京駅・相続税路線価
不動産担保ローンの基本スペック(借入額、金利など)
ここで不動産担保ローンの基本スペックを、銀行系不動産担保ローンとノンバンク系の比較表で解説します。
<不動産担保ローンの基本スペック・銀行とノンバンクの比較表>(筆者調べ)
銀行系 | ノンバンク系 | (補足) | |
---|---|---|---|
融資対象者 | 会社員など一般個人 (消費性資金) または 個人事業主、法人 (事業資金) |
会社員など一般個人 (消費性資金) または 個人事業主、法人 (事業資金) |
銀行系では個人事業主や法人向けの取り扱いが無いところもある |
資金使途 | 事業資金以外の健全な消費性資金 (一般個人) 消費性資金以外の事業資金 (個人事業主、法人) |
事業資金以外で自由 (一般個人) 消費性資金以外の事業資金 (個人事業主、法人) |
(後半で詳しく説明します) |
年収(一般個人) | 前年年収(税込)200万円以上 | (年収について明記なし) | ノンバンク系では年収条件は明記されていないところが多く、また個人事業主・法人は、あとで決算書により審査する |
勤続年数 | 勤続年数1年以上(一般個人) 営業年数1年以上(個人事業主・法人) |
(明記なし) | 年収と同様、ノンバンクは明記なし |
団体信用生命保険(注1) | 取扱あり・ただし加入は任意 | 取り扱いなし | 団体信用生命保険は銀行系で取り扱いあり |
年齢制限 | 借入時:満20歳以上満70歳未満 最終返済時:満80歳未満 |
借入時:満20歳以上満70歳未満 最終返済時:満85歳未満 |
団体信用生命保険に加入する場合は年齢制限が異なることも |
保証会社の保証(注2) | 必要 | 不要 | 銀行系は保証会社保証付きが主流 |
借入限度額 | 100万円〜1億円 | 100万円〜5億円 | 借入限度とは別に、原則として担保の評価額が上限となる |
(注1)団体信用生命保険:ローンを借りる本人が加入する生命保険で、保険料は金利に含まれている。本人が死亡や高度障害など一定の状態になると保険金が支払われ、ローン残額は完済される仕組み。なお銀行系不動産担保ローンでは団体信用生命保険に加入しない場合、金利が▲0.3%程度低くなる場合もある
(注2)保証会社の保証:住宅ローンや不動産担保ローンの一部では、保証会社(銀行の子会社や、提携する信販会社など)が融資の保証をする。保証会社の保証がつくことで融資を受けられる反面、対価として「保証料」が必要になる。
代表的な活用方法
不動産担保ローンの資金使途をもう少し詳しく、具体的な活用方法で紹介します。
事業資金調達
個人事業主や法人の事業に必要な資金(運転資金、設備資金)の調達が可能です。
業績が悪化して、銀行などの事業資金融資を受けるのがむずかしい場合も、不動産担保融資なら資金調達できる可能性があります。
もちろん審査はあるので、すべての事業者が借入可能なわけではありませんが、不動産担保という後ろ盾があるので、たとえば赤字でも事業資金調達が可能なケースもあります。
個人の「前向きな」使い道~消費財購入資金など
個人が自分のために使う(消費する)お金を総称して「健全な消費性資金」と表現しています。
言ってみれば「前向き」なお金の使い道で、不動産担保ローンの利用が可能です。
とはいえ住宅なら住宅ローン、車ならマイカーローンなど、それぞれの目的に応じたローンが準備されているので、それらに当てはまらない使いみちになります。
例1.ヨットなど趣味の船舶購入
例2.庭に防音完備オーディオルームを設置する
そのほか別荘(住宅ローンで対応可能な場合もある)購入も、不動産担保ローンを活用する選択肢の一つとなります。
個人の「後ろ向きな」使いみち~遊興費、債務の一本化
こちらは上記した、健全な消費性資金以外の使い道になります。
例3.自分が自由にできる遊興費
例4.カードローンなど消費者借入金の一本化(おまとめ)
これらが不健全とは言いませんが、銀行系不動産担保ローンでは消費者借入金の一本化が不可の所も多いので、あえて「健全な消費性資金」といった表現を使っています。
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不動産担保ローン3つのメリット、3つのデメリット
次に、不動産担保ローンのメリットとデメリットをそれぞれ3つずつ説明します。
メリット1.大きな融資も可能
無担保の借入と比べて、大きな金額で融資利用できる可能性があるところが、メリットの一つです。
個人のカードローンやフリーローン、そして事業資金融資でも最近は無担保が多いので、融資額はある程度制限される傾向にあります。
その点、不動産担保ローンでは担保評価額に応じて、数千万円から億単位の融資も可能な商品設計となっているのです。
もちろん資金使途や、返済能力など審査に通ったうえでの可能性ではありますが、大きな融資も可能になっているところは、不動産担保ローンの魅力です。
メリット2.低金利で利用できる可能性がある
一般に担保がある融資の方が、無担保融資より金利は低くなる傾向があります。
それは、文字通り融資の担保があるので、無担保に比べて銀行やノンバンクなど融資する側から見ればリスクが押さえられるからです。
もちろん金利は利用する人によって様々ですし、不動産担保ローンでも実際に適用される金利は審査次第といった部分はあります。
しかしながら同じ人、同じ法人が無担保融資と不動産担保ローンを利用すると考えれば、無担保より担保ありのほうが、金利は低くなるのが原則です。
このように、低金利で利用できる可能性があるところも不動産担保ローンでは大きなメリットになっています。
メリット3.総量規制の対象にならない場合も
総量規制とは「借り過ぎ」を防止するため、個人が貸金業者から借金するときには年収の3分の1を超えてはいけないというものです。
これは貸金業法という法律に基づく、貸金業界の自己規制で、カードローンやフリーローンなどの個人ローンが主な規制対象となります。【参考②】
不動産担保ローンも個人ローンなのですが、一定の条件下では総量規制の対象にならない場合もあるので、資金調達の制限を受けないというメリットがあるのです。
それが「総量規制の除外貸付と呼ばれ、自宅以外の不動産を担保にした借入は総量規制の対象外になる(除外される)というものです。【参考③】
たとえば自分名義の貸駐車場や、所有するアパートなどを担保にすれば総量規制の対象とならず、不動産担保ローンで資金調達できる可能性があるのです。
ちなみに総量規制は貸金業者(ノンバンクや不動産担保ローン専門の事業者など)を対象にした規制なので、銀行はもともと規制対象になっておらず、銀行系不動産担保ローンも総量規制とは無関係です。
しかしながら、銀行も借り過ぎ防止の観点から総量規制に準ずる考え方をもっており、自宅を担保にした不動産担保ローンは利用できないケースもあります。
このあたり、総量規制の内容とともに、法律に関わる部分でもあるので、具体的に利用を検討する際はご自身で必ず確認してください。
【参考②】金融庁/貸金業法Q&A/総量規制に関する質問/(1)総量規制とは
【参考③】日本貸金業協会/貸金業法について/総量規制が適用されない場合について
デメリット1.返済できなくなると不動産を失う可能性も
返済できなくなると、最悪の場合は不動産を失う可能性もあるところが、デメリットの一つです。
これはある意味当たり前といえばその通りではありますが、一つに厳格な事実である点を忘れてはいけません。
そもそも不動産担保ローンというものは、融資する銀行やノンバンクが不動産を取り上げようと、担保にしてお金を貸しているわけではありません。
あくまで融資をするうえで返済の押さえ(これが「担保」本来の意味です)として、不動産を担保にしているのです。
とはいえ返済ができなくなれば、最終的に不動産を手放さなくなりますので、この点はぜひ忘れないでください。
返済を普通に続けている場合でも、原則として不動産を売却したり、新しく他人に貸したりすることはできません。
これは法的に規制されているなどの意味ではなく、自分名義の不動産でも融資の担保になっているあいだは、債権者(融資している銀行など)に無断で処分することはできない契約になっているからで、このことは不動産担保ローンの契約条項などに明記されています。
もっとも、無断で売却したり、建物を壊して別の目的物を新築したりなど勝手に「動かす」ことはできますが、その事実が判明した場合、最悪のケースでは融資残額を一括返済するよう求められる恐れもありますので、この点も注意が必要です。
デメリット3.不動産担保ローンの利用には費用が必要
不動産担保ローンもタダでは利用できません。
たとえば事務手数料や契約用紙への収入印紙などが必要になりますし、不動産を担保にする登記費用として数万〜数十万円の費用が必要になるのです。
このあたり、個人のカードローンなど無担保で手軽に利用できる融資商品に比べると、費用面のデメリットも忘れてはいけない部分です。
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不動産担保ローンは「評価」が重要〜まとめ
今回は不動産担保ローンの基礎的な部分から説明をしてきました。
大事なことは、不動産担保ローンについてしっかりと理解し、メリットやデメリットも把握したうえで、自分にあっているか?など慎重に検討することだと思います。
この記事が皆さんの参考になれば幸いです。