親子リレーローンは、親子二代で住宅ローンを返済できる制度のため、二世帯住宅や、親又は子単独の住宅ローンでは手に届かない高額の住宅を購入することができます。
親子で同居することが借り入れの条件になっていることもありますが、フラット35なら、同居しない場合も使えます。
ただ、親が住宅ローンを返済する前に亡くなってしまった場合は、子の負担が重くなってしまったり、子に兄弟がいる場合は相続トラブルとなったりして、後悔してしまうこともあります。
親子リレーローンには様々なメリットがある一方、デメリットもあることをこの記事で解説します。
親子リレーローンとは
そもそも親子リレーローンとは何なのか、誰が申し込めるのか、同居しない場合は使えないのかについて、フラット35をベースに解説します。
親子リレーローンは親子二代で返済する住宅ローン
親子リレーローンとは、親子で一本の住宅ローンを借りて、親子二代で返済できる制度です。
リレーのように「住宅ローン」という一本のバトンを親から子に渡します。
最初に走るのは親で、子がバトンを受け継いで走るイメージです。
フラット35の住宅ローンは最長で35年組むことができますが、完済時の年齢が80歳以下という制限があります。
住宅ローンを借り入れる時に60歳になる人は最長で20年しか借りられません。
親子リレーローンを使えば、この期間を延長することができます。
例えば、住宅ローンを借り入れた時に、親が60歳、子が30歳になるのであれば、 親が80歳になるまで、20年間かけて住宅ローンを返済する。
その後、50歳になった子が引き継いで、15年間かけて住宅ローンを返済する。
このような形で、35年間の返済計画を立てることができます。
親単独では高齢のため、住宅ローンを組める期間が短かく、借り入れできる額が少なかったり、そもそも、住宅ローンを組めなかったりすることもあるでしょう。
子と手を組むことで、子の年齢や返済能力も考慮したうえで、より長い期間の住宅ローンを設定したり、借り入れできる額を増やすことができたりするわけです。
親はもちろんのこと、子にとっても、住宅ローンの一部を親に負担してもらえるメリットがあります。
親子リレーローンを申し込める人
親子リレーローンでは、まず、親が返済するため、申込者(主たる債務者)は親になります。
子は連帯債務者として親と同様の返済義務を負いますが、後継者として住宅ローンを引き継ぐまでは返済しなくてよいことになります。
つまり、住宅ローンは一本化されています。
- 親の条件
フラット35では、申込時の年齢が満70歳未満であることが条件とされていますが、親子リレーローンを使う場合は、この年齢制限がありません。
そのため、親が高齢で住宅ローンを使えない場合でも使えるわけです。 - 子の条件
申込者である親の子又は孫等の直系卑属であることが条件です。
また、フラット35の場合、子が結婚していれば、子の配偶者で定期的収入のある人でも構いません。
申込時の年齢が満70歳未満であることも条件です。
親子リレーローンを使える親子はそれぞれ一人ずつになります。
例えば、両親がペアで親子リレーローンを使うことはできませんし、子に兄弟がいても、親子リレーローンを使えるのは一人だけです。
親子リレーローンの審査基準は子が厳しめ
親子リレーローンの審査は、親と子の双方に対して行われます。
年収、勤続年数、健康状態等から返済能力が審査されますが、一般的には、親よりも子の返済能力が重視される傾向があります。
親の方は、定年になっていて、年金収入しかなくても審査が通ることもある一方で、子の審査は厳しめで、例えば、転職を繰り返していて、収入が安定していないとか、他のローンを組んでいて、借入額が多いような場合は、子の返済能力に問題があるため審査が通らないこともあります。
また、子の年齢も重要です。
制度上は子が80歳になるまでに返済すればよいことになっていますが、実際には、子が定年を迎える前に返済を終えることを求められることも多いです。
親子リレーローンは同居しないと使えないのか?
親子リレーローンを使うことで、通常の住宅よりも価格が高く広めの二世帯住宅を購入することが想定されています。
では、親子リレーローンを使った場合、必ず、親子で同居しなければならないのでしょうか?
この点は、金融機関により異なります。
民間では、親子の同居又は同居予定であることを条件にしていることも多いです。
一方、フラット35の親子リレーローンならば、同居しなくても使えます。
今の時代、親と子の世代が同居するのは、結構大変なことです。
完全に世帯分離された二世帯住宅ならば、同居しやすいかもしれませんが、分離されていない場合は、うまくやっていけるのかよく考えましょう。
また、二世帯住宅でも、両親が亡くなった場合、空いた住居をどう使うのかも、あらかじめ、計画しておくべきです。
孫が大きくなったら二世帯住宅として使うのか、賃貸兼用住宅にするのか、それとも、二世帯住宅を一世帯住宅にリフォームするのか等、様々なプランが考えられますが、いずれの計画にするかにより将来必要になる資金も異なります。
親子リレーローンと似ているペアローン、収入合算とは?
親子リレーローンと似ている住宅ローンの仕組みとして、ペアローン、収入合算があります。
それぞれどのような制度なのか確認しましょう。
ペアローンとは
ペアローンとは、住宅ローンを二人で借りてお互いに連帯保証人になる仕組みです。
親子でペアローンを使う場合は、親子が別々の住宅ローンを二本借りていることになります。
住宅ローンを借りるための審査基準も親子が別々に満たしている必要があるため、親又は子の単独の収入のみで住宅ローンを借り入れることが難しい場合は使えません。
また、住宅ローンの返済も親子で同時にスタートします。
後述する団体信用生命保険(団信)に親子そろって加入できるため、親が亡くなったとしても親の返済分を子が負担しなくてよい点がメリットと言えます。
収入合算とは
フラット35にはペアローンはありませんが、似た制度として収入合算があります。
収入合算は、申込者本人の親、子、配偶者等のうち、一人の収入を合算できる制度です。
合算される人は連帯債務者となりますが、住宅ローンの借り入れ名義人にはなりません。
つまり、住宅ローンが一本である点は、親子リレーローンと同じです。
また、ペアローンとの違いでは、合算される人は正社員等である必要はなく、安定した収入があれば、パートやアルバイトでも可能な点です。
ただ、収入合算を使うためには、申込者本人と親、子、配偶者等が同居していることが条件になります。
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親子リレーローンで親が死亡してしまった場合はどうするのか?
親子リレーローンでは、親が80歳になったら子が引き継ぐ形になりますが、80歳になる前に親が亡くなってしまうこともあります。
その場合、親子リレーローンはどうなるのでしょうか?
住宅ローンを返済している人が途中で亡くなった場合や高度障害状態になった場合は、生命保険金により一括返済する制度があります。
団体信用生命保険(団信)です。
団体信用生命保険は親子リレーローンでも使えます。
フラット35の場合は、親を団体信用生命保険に加入させることもできる点が特徴です。
そのため、親が団体信用生命保険に加入していれば、80歳になる前に亡くなっても、生命保険金により一括返済できるため、子が債務を引き継がなくてもよいことになります。
親が80歳まで生きて、親の返済期間が終わると団体信用生命保険から外れるため、代わりに子が団体信用生命保険に加入します。
一方、民間の親子リレーローンの場合は、団体信用生命保険に加入できるのは子だけで、親が加入できないこともあります。
この場合、親が亡くなっても、親の債務部分を生命保険金により一括返済できないため、親が支払う予定だった分も子が返済しなければならないことになり、子の負担が重くなってしまいます。
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親子リレーローンのメリット
親子リレーローンのメリットは借り入れできる金額が高くなるため、より高額な住宅を購入できる点です。
具体的に見ていきましょう。
借り入れできる金額が高くなる
親子リレーローンでは、親と子の年収を合算した金額で返済能力を判断するため、親だけ、あるいは子だけで住宅ローンを使う場合よりも借り入れできる金額が高くなります。
そのため、立地条件の良い住宅や二世帯住宅等の大きな間取りの住宅を購入できます。
長い返済期間を設定できる
親子リレーローンは、一本の住宅ローンを親と子の二世代で返済する計画になるため、長い返済期間を設定できます。
その分、月々の返済額を低く抑えることができます。
もちろん、返済期間が長い場合は、トータルで支払うべき金利が多くなる点に注意が必要です。
親と子がそろって住宅ローン控除を使える
親子リレーローンを使った場合、親と子のどちらも住宅ローン控除を使えることがあります。
具体的には、購入した住宅を親子の共有とし、親子双方で持分を有している場合です。
住宅の名義が親単独の場合、子は住宅ローン控除を使えないので注意してください。
親は年金収入しかない。または子の収入が十分でない場合も使える
親が高齢の場合、年金収入しかないこともありますが、一般的には、年金収入だけでは、住宅ローンを使うことはできません。
その点、親子リレーローンならば、子が安定した収入を得ていれば、親が年金収入しかなかったとしても、住宅ローンを使える場合もあります。
逆に子が就職や転職したばかりで、収入が安定していない場合も住宅ローンを使えないこともありますが、親が現役世代で十分な収入を得ているなら、親子リレーローンにより住宅ローンを使える場合もあります。
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親子リレーローンのデメリット・後悔する場合
親子リレーローンにはデメリットもあり、そのために後悔してしまうこともあります。
具体的に見ていきましょう。
親が80歳前に亡くなった場合、子の負担が重くなることもある
親が団体信用生命保険に加入できない場合は、親が返済期間の途中で亡くなった際に一括返済できないため、親が支払うはずだった住宅ローンを子が引き継いで負担しなければならなくなります。
子の負担が重すぎて、住宅を手放さなければならなくなる事態になってしまうこともあります。
親が団体信用生命保険に加入できない場合は、その代わりとなる生命保険に加入する等の対策を講じるか、親の返済を当てにしなくてもよい返済計画を立てる必要があります。
子が他のローンを使えないこともある
親の返済期間中は、子はローンを返済しなくてよいわけですが、連帯債務者なので親と同じローンを負担しています。
つまり、子も住宅ローンを既に使っていることになるため、他のローンを使おうとしても難しいことがあります。
転勤や親と別居するために、住宅を購入しようとしても、住宅ローンを使えない可能性があることに注意が必要です。
贈与税や相続トラブルのリスクがある
親子リレーローンを使う場合、親子の購入資金の負担割合と購入した住宅の持分の割合を一致させるのが基本です。
例えば、5000万円の住宅を購入し、親が3000万円、子が2000万円の負担割合で親子リレーローンを使った場合、住宅の持分を親が5分の3、子が5分の2とします。
このような持分にせず、いずれ子が相続するのだからということで最初から、子の単独所有としてしまった場合、親が子に対して3000万円相当の生前贈与を行っているのと同様の状態になります。
そのため、贈与税の対象となり高額な納税が必要になってしまうこともあります。
また、親の持分は遺産相続の対象となります。
一緒に親子リレーローンを使った子、つまり後継者である子以外にも兄弟がいる場合は、相続開始時に、親の持分について、兄弟で遺産分割の話し合いが必要になります。
そのため、遺産分割後に、後継者である子と他の子が住宅を共有する状態になってしまうこともあります。
そのような事態を避けるためには、親の持分を後継者である子に遺贈する旨の遺言を書いておく等の対策が必要です。
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まとめ
フラット35をベースに親子リレーローンの特徴と、メリットデメリットを紹介しました。
親子リレーローンならば、借り入れできる金額が高くなるため、親又は子が単独で住宅ローンを使う場合よりも、良い条件の住宅を購入できます。
一方で、親が急死した場合は子の負担が重くなったり、子に兄弟がいると相続トラブルになることもあります。
ただ、これらのデメリットは対策を講じることで回避することもできます。
この記事を参考に親子リレーローンの仕組みを理解して、うまく使ってください。
参考:フラット35
参考:みずほ銀行 親子リレーローンとは?メリット・デメリットとよくある質問