出産や転勤などライフスタイルが変化すると、現在住んでいるマンションが生活と合わなくなることがあります。そういったときはマンションを買い替えるベストなタイミングです。
しかし「そもそもローンの残債があるマンションは売れるの?」と疑問に思う人はいるでしょう。またどのようにマンションの買い換えを進めていくのか分らないこともあります。
今回は年間50件の不動産売買を経験した私が、ローンの残債があるマンションの買い替えについて解説します。
この記事を読むことによって、「ローンの残債があるマンションはなぜ売れないの?」「最初にやることは?」「買い替える方法はどのようなものがある?」「自分に合っている買い替え方法は?」という疑問が解消され、マンションの買い替えに対処しやすくなります。
マンションを買い替えようと思っている人は参考にしてみてください。
- ローンの残債があるとどのような問題があるか?
- 残債があるマンションの買い替え方法について
- 残債があるマンションを売却して後悔したケースと対策
ローンの残債があるとどのような問題があるのか
仕事や家庭の事情でローン返済中のマンションを売りたい人のなかで、ローンの残債があると売れないと思っている人は多いです。しかし結論から述べると「ローンの残債があっても売却は可能」です。いっぽうでローンの残債があるマンションを売却するには問題があります。
まず残債とはローンに残っている借入残高のことを指し、返さなければいけないお金です。住宅ローンを借り入れるときは購入先となるマンションを担保として差し出し、お金を借ります。担保となったマンションには「抵当権」が設定されます。
抵当権とは
住宅ローンを借りるときに、購入する土地と住宅に対して金融機関が設定する権利のことをいいます。いわゆる「担保に取る」というときの担保のことです。
抵当権が設定されているマンションはローンの返済が滞ったときに、債権者がマンションを強制的に売却してローンに当たる金額を回収します。ローンの返済を終えないと抵当権は外れないため、ローンの残債があるマンションには全て抵当権があります。
仮に抵当権付きのマンションが新しい買主に渡ったとしても、抵当権は元の所有者にあるため、前所有者のローンの支払いが滞ってしまったら、マンションは強制売却されてしまいます。
そのため、ローンの残債があるマンションは買い手が付きません。つまり、残債があるマンションを売却するときは、売却代金でローンを返済して、抵当権を抹消したのちに買主に引き渡す必要があるのです。
残債があるマンションの売却価格を知る
ローンの残債があるマンションを売却することは可能ですが、売却する前にまずマンションの売却価格を知ることから始めます。そのときの売却価格によって対処方法は異なります。
ローンの金額よりもマンションの売却価格が高い場合は「アンダーローン」に該当します。アンダーローンの場合は売却代金からローンを完済できるので、なんの問題もありません。
一方で、ローンの金額よりもマンションの売却価格が低い場合は「オーバーローン」に該当します。オーバーローンの場合は、売却代金だけでローンを返済できないため、預貯金を切り崩して返済するか、つなぎ融資や住み替えローンなどを利用してマンションを買い替えます。
つまりローンを完済できる資金を用意できなければ、そもそもマンションが売却できないため注意が必要です。
アンダーローンに該当する場合
アンダーローンの場合は、売却代金からローンが完済できるためスムーズにマンションを買い替えられます。新しいマンションの頭金や新たなローンを考慮しながら、マンション売却を進めていきましょう。
オーバーローンに該当する場合
売却予定のマンションがオーバーローンの場合、ローンを返済するための資金を準備して売却を進めます。そのため資金を集めなければいけないので、労力がかかるでしょう。
また売却予定のマンションがいくらで売れるかを正確に掴んでおく必要があります。意外と高く売れるのであれば何も問題ないですが、予想よりも低い金額でしか売れない場合に資金を用意しなければいけないので二度手間となります。
住み替えローンやつなぎ融資を利用する場合
住み替えローン・つなぎ融資を利用してローンを完済するという方法があります。
住み替えローン
住み替えローンとはローンの返済と新しいマンションの購入費用のために借りるローンのことです。自己資金が不足していたとしても住み替えローンからローンを返済できる上に、買い替え先となるマンションの費用にも充てることも可能です。
ただし「購入費用+返済するローン」という金額で借り入れるため当然借入金額が多額になります。また審査も厳しくなります。
毎月のローンの返済額も多くなってしまうので、資金計画をより慎重に立てる必要があります。
住み替えローン利用時の注意点
住み替えローンでは、毎月のローン返済額が大きくなりすぎないように借入金額を抑える必要があります。さらに売却と購入のタイミングを合わせなければいけません。
つまり売却の話を進めながら、新しいマンションを探し、ほとんど同時に契約をしなければいけないということです。不動産の売却、もしくは購入するだけでもかなり手間がかかることですが、同時に行うとなると、どちらかがおろそかになってしまう可能性は高くなります。
その結果「金額を妥協して売却した」「条件を妥協して新居を購入した」という状況になることもあります。住み替えローンを利用してマンションを買い替えるのであれば、期間にゆとりを持って取り組むようにしましょう。
つなぎ融資
つなぎ融資とは、マンションの買い換えで新しいローンを組むまでの間に発生する費用の支払いに対して組むことができるローンです。
住んでいたマンションを売る前に新しいマンションを購入する場合はつなぎ融資を活用します。
新しいマンションを先に購入するときは旧マンションの売却費用を新居の購入費用や初期費用の支払いに充てられません。しかしつなぎ融資を使うことによって、諸費用の支払いを済ませることが可能です。
つなぎ融資利用時の注意点
つなぎ融資は便利な制度ですが、通常の住宅ローンよりも金利が高めです。マンションの売却がスムーズに進まないと、高い金利を払い続けることになってしまうので注意しましょう。
残債があるマンションの3パターンの買い替え方法
マンションを買い替えるときの売却方法を大きく分けると3パターンです。
今住んでいるマンションを先に売る「売り先行」、新しいマンションを先に買う「買い先行」、不動産業者にマンションを売却する「業者買取」、3つのパターンの中から自分に合う買い替え方法を確認しておきましょう。
予算オーバーを防げる売り先行
売り先行では、住んでいたマンションの売却先を決めてから、新しいマンションを購入する方法です。
この方法では旧マンションの売却代金が確定した後に、新マンションを購入するので、予算オーバーを防げます。また、売却代金を新マンションの購入費用に充てられるので、マンションを買い替えるときは基本的にこの方法を採用します。
マンションの売却を先に始めてしまうと、「すぐに売れてしまって住むところがなくなるのではないか」と心配されますが、よっぽど好条件でない限りすぐに売れてしまうことはないでしょう。
不動産会社に売却を依頼すると、3ヶ月で売るのを目安に売却活動を行います。これは平均の売却期間が3ヶ月のためです。
その3ヶ月の間で購入したいマンションを探しておきましょう。
メリット
- 売却代金、購入価格が明確なので、資金計画が立てやすい
- 期間にゆとりを持って売却活動ができるので、売却価格を妥協する必要がない
デメリット
- 売却と購入のタイミングが合わなければ、仮住まいを必要になる
資金に余裕がある人にはオススメな買い先行
買い先行は新マンションを買ってから、旧マンションを売却する方法です。
この方法は新マンションを時間をかけて探すことができ、旧マンションの売却も妥協する必要がないので、理想的な方法となります。
旧マンションのローンを完済していたり、自己資金に余裕がある人に向いています。
メリット
- 新マンションをゆっくり選べる
- 仮住まいが必要ない
デメリット
- 売却が遅れるとローンの支払いが二重になる
不動産会社に売却する業者買取
業者買取はマンションを個人ではなく、不動産会社に売却する方法です。売却価格は相場の7~8割程度ですが、買い手が付かないような物件でも確実に売却できるのが魅力です。また買主候補の内覧対応や価格交渉なども必要ないため手間もかかりません。
メリット
- 短期間で確実にマンションを売却できる
- 手間がかからない
デメリット
- 売却価格が7~8割になる
売り先行時のマンション買い替えの進め方
売り先行時のマンションの買い替えは以下のように進めます。
- マンションの売り出し
- 引き渡しと代金の受け取り
- 仮住まいへと移動
- 新居探し
- 新居の契約・ローンの手続き
- 新居へ入居
売り先行のコツと注意点
売り先行ではマンションが売れたものの、新しいマンションがなかなか見つからないことが多くあります。新居が見つからないまま引き渡しになると仮住まいが必要になり、物件探しが長引くほど、仮住まいの家賃を払い続けることになります。
また旧マンション→仮住まい→新マンションと引っ越しをするため、手間とお金がかかります。
売り先行のコツは、「売却期間に3ヶ月以上のゆとりを持つ」ことです。ゆとりを持って売却活動を行うことで旧マンションを高く売ることができ、新マンションも探すことができます。
買い換えのタイミングが良ければ、引越しも1回で済ませることができるため、売り先行時はゆとりを持つことを心がけましょう。
買い先行時のマンション買い換えの進め方
買い先行時のマンションの買い替えは以下のように進めます。
- 新居探し
- 新居の契約・ローン手続き
- 新居へ入居
- マンションの売り出し
- 引き渡しと代金の受け取り
買い先行のコツと注意点
資金に余裕がない人が買い先行でマンションを買い替えてしまうと、二重でローンの支払いをする期間が生まれてしまい、家計を圧迫することがあります。マンションの売買は購入代金だけでなく、仲介手数料や印紙代などの費用もかかるので、費用も考慮して資金計画を立てましょう。
買い先行時のコツは「売却代金を妥協しない」ことです。旧マンションの売却代金が想定よりも低い場合、資金計画が狂う可能性があります。焦らないように旧マンションを売却しましょう。
業者買取時のマンション売却の進め方
業者買取は以下の流れで進みます。
- 買取査定依頼
- 買取金額の算出
- 売買契約の締結
- 引き渡しと代金の受け取り
業者買取のコツと注意点
業者買取の売却価格の相場は仲介の7~8割だと解説しましたが、売却先の業者によって異なります。
できるだけ高く買ってくれる不動産会社を選んで売却しましょう。マンションの買取を専門に行っている不動産会社を利用すると高く買い取ってもらえる可能性が高まります。
売却方法の比較まとめ
上記で3つの売却パターンについて解説しましたが、売却方法のメリット・デメリットをまとめると以下のようになります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
売り先行 |
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買い先行 |
|
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業者買取 |
|
|
マンションの購入諸費用は価格の約10%
新マンションを購入するときには、マンションの購入代金以外に、さまざまな費用の支払いが発生します。その際にかかる費用はマンションの購入価格の約10%と言われています。
2,500万円のマンションを購入した場合、250万円ほどの諸費用がかかります。具体的には以下の費用が発生します。
- 消費税
- 登記費用
- 管理費・修繕積立金
- 固定資産税・都市計画税
- 住宅ローンの諸費用
- 申込証拠金
- 印紙税
- 引っ越し費用
- 家具購入費用
- 不動産取得税
上記の費用はマンション本体の購入費用とは別でかかります。事前に準備しておきましょう。
マンションの売却費用は価格の6%
マンションは買うときだけでなく、売るときにも費用がかかります。この費用は売却代金から差し引けないため自己資金から用意することが必要です。
売却をするときにかかる費用は売却価格の約6%と言われています。そのため2,000万円のマンションを売却する場合は、約120万円の費用がかかります。
具体的には以下の費用が発生します。
- 仲介手数料
- ハウスクリーニング費用
- 引っ越し費用
- 住宅ローンの返済時の事務手数料
- 印紙税
- 抵当権抹消費用
残債があるマンションを売却して後悔したケースと対策法
ローンの残債があるマンションを売却することは可能ですが、コツや注意点を押さえておかないと失敗することがあります。マンションの買い換えは金額も大きいことから後々後悔することになるでしょう。
後悔したケースと対策方法を知っておき、マンションを買い替えるときに備えておきましょう。
安易に売却価格を下げてしまった
売り先行、買い先行のどちらにも共通することですが、売却を焦ってしまい、安易に売却価格を下げてしまう人は多いです。希望よりも安い価格で売却してしまうと、新居の購入費用に充てられる金額が少なくなり、もったいないです。
一般的に不動産の売却には3ヶ月かかると言われています。これより短い期間で売りたい場合、価格を大幅に下げることになります。
売り急いでしまわないように、売却スケジュールにゆとりを持ちましょう。また値下げを見据えて、売り出し価格を相場より高めに設定するのもオススメです。
金額を徐々に下げていけば、マッチする購入希望者が現れるため、なるべく高く売ることが可能です。
会社選びを間違えて、売却までに時間がかかってしまった
業者買取以外の方法でマンションを売る場合、基本的に不動産会社に仲介を依頼して売却を行います。このときに正しい不動産会社を選ばないと売却に時間がかかることがあります。
不動産会社は会社ごとに得手不得手があり、土地やマンション、一戸建てなど得意分野が異なります。マンションの売却を苦手とする不動産会社に依頼してしまうと半年経っても売れないという事態に陥る可能性があります。
マンションを売るときは、マンション売却を専門に行っている不動産会社に依頼しましょう。また不動産会社の中でも相性が良いと感じる担当者に依頼するのがオススメです。
ローンの支払いが二重になり、生活が苦しい
新マンションを買ってから旧マンションを売る場合(買い先行)、一時的にローンが二重の状態になります。単純に2軒分のローンの支払いがあるため、家計を大きく圧迫するでしょう。
資金に余裕がない限りは基本的に売り先行にしましょう。また買い先行時は資金計画をより慎重に立てるようにして、二重ローンの支払いが厳しくならないようにしましょう。
まとめ
これまでの記事の内容をまとめると以下のようになります。
- ローンの残債があるマンションの売却はできる
- ただしローンを完済して、抵当権を抹消する必要がある
- 事前に売却想定価格を把握して「アンダーローン」か「オーバーローン」かを判断する
- 売り先行は最も基本的で、オススメの買い替え方法
- 買い先行は資金に余裕がある人にオススメの買い替え方法
- 業者買取は時間がない人のオススメの方法
- マンションの売買は本体価格に比例した諸費用がかかる
マンションを買い替えるタイミングは結婚や出産などを機に買い替える人が多いため、段取りよく進めていくことがポイントです。
まずは不動産会社の査定を受けて、現在住んでいるマンションの売却価格を把握しましょう。その結果で売り先行か買い先行かを選びます。
旧マンションを売るときには、住宅ローンを完済しなければいけません。そこで、住み替えローンやつなぎ融資など便利な制度を活用して、マンションの買い換えを賢く成功させましょう。
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