取引先へ顧客と契約書を締結する際などは、収入印紙を貼付しなければなりません。
収入印紙は購入時に仕訳を行うのが一般的ですが、購入場所によって仕訳が異なりますし、期末に手元に収入印紙を持っていると別の会計処理が必要になるので注意が必要です。
事業と収入印紙は切っても切り離せない関係にあるため、収入印紙の貼付方法をしっかりと理解しておきましょう。
この記事では購入場所ごとの収入印紙の仕訳の方法や、使用する勘定科目、決算時の処理について詳しく解説していきます。
事業者の方は必ず収入印紙を貼付する場面があるので、正しい会計処理を理解しておきましょう。
収入印紙とは
収入印紙とは、課税文書である契約書や受取書(領収書)などの経済的な取引に伴い作成される文書に課税される印紙税を納付する際に使用する証憑です。
具体的には課税文書に収入印紙を貼付することで、印紙税を納付することになります。
収入印紙を貼付すべき課税文書や、記載金額ごとの印紙税について詳しく見ていきましょう。
収入印紙を貼付すべき書類とは?
収入印紙を貼付すべき書類は課税文書という書類です。
国税庁によると課税文書とは次のような文書と定義されています。
- 印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること。
- 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
- 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。
国税庁は課税文書かどうか判断する際に次のように、明記しています。
『課税文書に該当するかどうかはその文書に記載されている内容に基づいて判断することとなりますが、当事者の約束や慣習により文書の名称や文言は種々の意味に用いられています。そのため、その文書の内容判断に当たっては、その名称、呼称や記載されている文言により形式的に行うのではなく、その文書に記載されている文言、符号等の実質的な意味を汲み取って行う必要があります。』
契約書の名称ではなく、文書の内容に基づいて収入印紙を貼付するかどうか判断します。
記載金額ごとの印紙税
契約書に収入印紙を貼付する場合、印紙税は契約金額に応じて異なります。
例えば不動産売買契約を行う場合の印紙税は次の通りです。
売却金額 | 収入印紙代 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円超50万円以下 | 400円 |
50万円超100万円以下 | 1,000円 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 10,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 20,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 60,000円 |
1億円超5億円以下 | 100,000円 |
印紙税は文書の内容によって異なるので、不明な場合には税務署などへあらかじめ確認しましょう。
収入印紙の2つの勘定科目
収入印紙を購入した際の勘定科目には次の2つの種類があります。
- 租税公課
- 貯蔵品
どちらを使用しても問題ありませんが、それぞれの勘定科目の使用方法や意味の違いについてしっかりと理解しておきましょう。
貼付した際は「租税公課」
基本的に収入印紙を課税文書へ貼付して、印紙税を納めた場合は「租税公課」という費用の勘定科目を使用します。
また、収入印紙をある程度まとめて購入した際も「租税公課」という勘定科目を使用しても問題ありません。
ただし、期末に使いきれない収入印紙が余ってしまった場合には別の仕訳が必要になるので注意しましょう。
買い置きする際は「貯蔵品」
収入印紙をまとめて購入し、買い置きする際には「貯蔵品」という勘定科目を使用することもできます。
「貯蔵品」として資産計上した収入印紙を、使用する都度「租税公課」として費用計上し、取り崩していきます。
あらかじめ「貯蔵品」として資産計上しておくことによって、買い置きした収入印紙が余ったとしても、期末に会計処理をする必要はありません。
収入印紙を購入する際には「租税公課」「貯蔵品」どちらの勘定科目を使用しても間違いではありません。
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購入場所ごとの収入印紙の仕訳
収入印紙はどこで購入したのかによって仕訳方法が異なります。
基本的に、収入印紙は非課税ですが、金券ショップなどで購入した場合には消費税が課税され、会計処理も異なるので注意しましょう。
郵便局やコンビニで購入した場合
収入印紙は基本的に非課税です。
ただし、収入印紙が非課税になるのは、収入印紙を次の場所で購入する場合に限られます。
- 郵便局
- 郵便切手類販売所
- 印紙売りさばき所
コンビニは郵便切手類販売所ですので、郵便局やコンビニで収入印紙を購入する場合は、非課税です。
購入時の仕訳は次の通りです。
例)収入印紙10万円を郵便局で購入した
借方 | 貸方 |
---|---|
租税公課 10万円 | 現金 10万円 |
金券ショップで購入した場合
収入印紙は金券ショップなどで、額面よりも安く買える場合があります。
しかし、この場合は消費税が課税されます。
額面10万円分の収入印紙を9万円で、金券ショップで購入した場合の仕記は次の通りです。
例)額面10万円分の収入印紙を金券ショップで9万円で購入した。
借方 | 貸方 |
---|---|
租税公課 9万円 仮払消費税 9千円 |
現金 9万9千円 |
租税公課として費用化できるのは、税抜分だけで、消費税は「仮払消費税」として仕入額控除の対象です。
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貯蔵品として処理する場合の仕訳方法
収入印紙を「貯蔵品」という勘定科目を使用して会計処理する場合は、購入時、使用時と、段階的に会計処理を行わなければなりません。
購入時の仕訳
収入印紙を購入した際には、貯蔵品という勘定科目を使用して次のように会計処理を行います。
例)買い置きを目的として収入印紙10万円を購入した。
借方 | 貸方 |
---|---|
貯蔵品 10万円 | 現金 10万円 |
購入してすぐに使用しないのであれば、貯蔵品という資産を購入したと解釈して会計処理を行います。
収入印紙使用時の仕訳
買い置きしておいた収入印紙を使用する場合の会計処理は次の通りです。
例)買い置きしておいた収入印紙から1万円を使用した
借方 | 貸方 |
---|---|
租税公課 1万円 | 貯蔵品 1万円 |
使用した際には「租税公課」という勘定科目で費用計上し、その分、貯蔵品を取り崩す会計処理を行います。
使い切らなかった収入印紙を決算時に手元に保有している場合は、決算の際に「貯蔵品」として資産計上しなければなりません。
購入時に「貯蔵品」として処理しておくことで、決算時に処理をする必要がないのがメリットです。
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購入時に租税公課として処理した場合の決算時の仕訳
収入印紙を購入時は「租税公課」として会計処理したものの、決算時に使用せずに手元に余っていた場合には、「貯蔵品」として会計処理を行う必要があります。
購入時に「租税公課」として会計処理した収入印紙が期末に余った場合の会計処理は次の通りです。
例)期末に5万円分の収入印紙が余った
借方 | 貸方 |
---|---|
貯蔵品 5万円 | 租税公課 5万円 |
余った収入印紙を貯蔵品として資産計上し、租税公課という費用を取り消す会計処理を行います。
機首には、上記の反対仕訳を行い、再度費用計上することも可能です。
収入印紙に関するよくある質問
収入印紙や収入印紙の勘定科目についてよくある質問をご紹介します。
電子書類なら収入印紙は貼付不要ですか?
電子契約を行う場合は収入印紙は不要です。
2005年の国会答弁で、当時の総理大臣は次のように回答しています。
「文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである」
収入印紙は紙で作成した契約書には貼付しますが、電子契約では必要ありません。
収入印紙代を節約したい場合には、電子契約で取引先などと契約を締結しましょう。
収入印紙の正しい貼り方は?
収入印紙を貼る場所に法的な決まりはありません。
しかし収入印紙には消印を押印する必要があります。
消印とは収入印紙と貼付した契約書などの課税文書にまたがるように押印することです。
消印は再利用を防止するために必ず必要になるものです。
なお、収入印紙が2枚になる場合には、2枚にまたがるよう押印しても問題ありません。
収入印紙が貼られていない契約書は無効?
収入印紙が貼付していなくても契約書の効力には全く影響はありません。
収入印紙が貼られていない契約書も有効です。
しかし収入印紙が貼られていないということは、収めるべき税金を納めていないということですので、印紙税法違反となります。
印税法違反になると、本来の印紙税額に加えて、本来の印紙税額の2倍の過怠税を支払わなければならない可能性があるので注意してください。
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まとめ
課税文書を作成する場合には印紙税が課税されます。
印紙税は課税文書に収入印紙を貼付することで納付するものです。
収入印紙を購入する際には「租税公課」という勘定科目を使用して会計処理する方法と「貯蔵品」という勘定科目を使用する方法に分かれます。
どちらの勘定科目を使用しても構いませんが、決算時に収入印紙が手元に余った場合は「貯蔵品」として処理することを忘れないようにしてください。
なお印紙税は電子契約をする場合は非課税ですので、印紙税を節約したい方は電子契約で取引先と契約することも検討しましょう。