物件を売却しようと思ったときに、「どれだけ多くの人が内覧にきてくれるか…」ということは、心配事のひとつなのでははないでしょうか。
売却活動における内覧対応の重要性は認識しているが、どこから手を付けていいのかピンとこない…。
そんな悩みを解決して大切な内覧対応をしっかりとこなせるようにするためには、情報収集が必要となります。
今回はファイナンシャルプランナーである筆者が、円滑な不動産売買を行う上で必要なアドバイスとして、最近流行の内覧方法をご紹介していきたいと思います。
物件の販売活動が始まり内覧希望者を募り始めようと考えている方から、既に内覧対応が始まった方にまで、タメになる情報がたっぷりと詰まった内容になっています。
ホームステージングについて
ネットや広告などで物件の内部を見た購入希望者や、内覧に来た購入希望者に、「ここに住みたい!」と思わせる方法として、ホームステージングがあります。
ホームステージングは、1970年台頃から、アメリカを中心にして世界に広まりました。
日本よりも中古物件の販売・購入が盛んに行われていた欧米では、早くからホームステージングをすることの効果が評価されていたのです。
アメリカでは、ホームステージングをすることで、しない場合に比べて販売スピードが3倍近くにまでアップするとも言われているそうです。
このことから、「ホームステージングをすることで、より高く、より早く中古物件が売れる」という考え方が定番になり、費用を負担してまでも利用することが当たり前になっていきました。
「ホームステージング」の考え方は、2010年台に入ってから、日本に輸入されてきました。
日本人の認知度はまだ低いサービスですが、中古物件市場が活発になるにつれて、各方面から注目が集まるようになってきています。
ホームステージングを行って売りだした物件は、問い合わせも内覧希望も増え、1ケ月以内に成約する割合も高くなるという調査結果もあるのです。
※ホームステージング白書2020より
筆者の取引先である大阪の不動産仲介会社でも、2020年頃からホームステージングを行っています。
ホームセンターで購入した家具をベースに、100均などで購入した季節のインテリアをアレンジしただけのホームステージング。
そんな気軽さにも関わらず、内覧者数は目に見えて増加しているそうです。
ホームステージングとは何か
ホームステージング
「HOME(家)」と「STAGING(演出する)」を組み合わせた名称で、その名の通り室内を演出して、物件をより魅力的に見せることを目的としています。
売り出し中物件の室内を、家具や照明、小物やグリーンで装飾するサービスで、空室や居住中の売り出し物件を、まるでモデルルームのように演出することができます。
ホームステージングすることで、物件に対する印象を良くすることができるので、購入希望者に「ここに住みたい!」という意欲を高めてくれます。
これが、高値売却や早期売却へのサポートへと繋がり、売却がよりスムーズになります。
ホームステージングが注目されるようになった理由
日本に入って来て10年余りのホームステージングですが、いろいろな業界で話題になることが多くなってきています。
物件を扱う仲介会社はもちろん、雑誌やメディアなどでも特集されるようになっています。
なぜ、こんなにもホームステージングが注目されるようになったのでしょうか。
それには、以下のような理由があります。
理由1:オンラインで様々な情報を収集できるようになった
ホームステージングが注目されるようになった理由の一つに、オンライン上で様々な物件を閲覧できるようになったことが挙げられます。
さらに、コロナ禍を経験することにより、多数の物件を直接訪れることが難しくなり、インターネットで物件をしっかり見てから見学したいという方が増えてきました。
また、オシャレな部屋の情報をインターネットから入手しやすくなったことから、購入希望者の目が肥えたということがあります。
テレワークが推進されたことにより、快適に過ごせる自宅を求める人が増えてきたことも関係しているのです。
ホームステージングによってモデルルームのようにコーディネートされた物件は、ネット上でもリアルな生活を想像しやすいので、購入検討者に好印象を残しやすくなり、その必要性が高まってきたのです。
理由2:費用対効果に優れている
さらに、費用対効果に優れていることも、ホームステージングが注目されるようになった理由として挙げられます。
ホームステージングを行うには、費用が掛かります。
空き家なのか居住中なのかといった物件の状況や、広さなどで金額は異なりますが、自分で行ったとしても一般的には数万円程度の費用が掛かります。
しかし、ホームステージングをすることで、費用以上の効果を上げることができるのです。
まず、ホームステージングをすることで、成約するまでの期間を短くできます。
購入希望者が現れずに時間ばかり経ってしまうと、建物はどんどん劣化していき、物件の価値はどんどん下がっていきます。
さらに、住宅ローンや固定資産税など、保有していることで発生するコストもかさんでいってしまいます。
ホームステージングして成約するまでの期間を短くできると、このようなリスクと費用を削減することができます。
また、物件を売り出しても購入希望者が現れない場合、数十万円から数百万円の値下げをすることが一般的です。
しかし、ホームステージングを行えば、当初の売り出し価格を維持したまま販売活動を続けられ、そのままの金額で成約できる可能性が高くなります。
値下げの金額は決して小さなものではないので、ホームステージングに費用をかける方が、トータル的にお得になることが多いのです。
このような理由から、ホームステージングに費用をかけても、費用対効果に優れているといえるのです。
ホームステージングの効果について
ホームステージングを行うことによって、具体的にどのような効果があるのでしょうか。
- 内覧者を増やすことができる
- 高価売却の可能性が高まる
- 購入希望者の意思決定を促進
内覧者を増やすことができる
ホームステージングを行うことによって、内覧者を増やすことができます。
購入希望者の方に実際に足を運んでもらわないと物件は売れないので、物件を売却するためには、内覧者を増やすことが重要になります。
購入希望者の方は内覧をする前に、まずはインターネットや新聞広告などで、物件の情報を確認します。
その際には、間取りや価格といった情報も重要ですが、視覚から入る情報はもっと重要になってきます。
室内の写真等を掲載すると、購入希望者の方に興味を持ってもらうことができます。
同じ物件でも、演出されていないそのままの状態の写真に比べて、インテリアで演出された部屋の写真のほうが、購入希望者の方には魅力的に映ります。
他のライバル物件に差をつけることもでき、購入希望者に「ここを見てみたい」と強く思わせることができます。
すると、問い合わせが多く集まり、内覧者の数を増やすことができるのです。
高価売却の可能性が高まる
相場はあると言っても、不動産の価格は購入希望者と売主が納得しなければ、決まるものではありません。
とくに購入希望者の方に「この価格を払ってもよい」と思わせることが大切になります
さらに、売却物件について、購入希望者の方によい印象を与えられれば、高価で売却することも可能になります
ホームステージングが一般的に行われているアメリカにおいては、ホームステージングを行った物件は、行っていない物件に比べて6%以上高く売れるという調査データがあります。
日本でも、ホームステージングで演出した効果によって、相場よりも売却価格を高くできる可能性が高まっています。
「日本ホームステージング協会」の調査によると、ホームステージングによって売却価格は、平均約23万円アップして売れたというデータもあるのです。
購入希望者の意思決定を促進
購入希望者の方が内覧に訪れたとき、家に入ってからたった6秒で買うか買わないかを決めてしまうといわれています。
そのくらい、内覧には第一印象が重要なのです。
ホームステージングをしておしゃれな家具や小物を置くと、何もない状態で売却されているよりもイメージがよくなります。
さらに、入居後の生活を具体的に想像しやすくなるので、購入希望者に「ここに住みたい!」「こんな生活がしたい!」と思わせることができるのです。
また、購入候補の物件の内覧をするとき、購入希望者の方は1日の内に何件かの物件を見て回ることが一般的になります。
ホームステージングを実施した物件は、実施していない物件に比べて、記憶に残りやすいものです。
ですから、後で検討する際に思い出してもらえることも多く、「あの物件に決めよう」という決断をしてもらいやすくなります。
ホームステージングの方法とメリット・デメリット
ホームステージングにはいくつかの方法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
メリット
- 方法1:自分自身で行う・安価に行える
・手軽に行える - 方法2:業者に依頼する・手間がいらない
・大きな効果が期待できる - 方法3:バーチャルで行う・ネットで完結する
・納期が短い
デメリット
- 方法1:自分自身で行う・センスが問われる
・初心者には難易度が高い - 方法2:業者に依頼する・費用が高額
・設置までに時間がかかる - 方法3:バーチャルで行う・リアルに比べて訴求力が弱い
・効果が未知数
自分自身で行う
ホームステージングで最も安価に手軽にできるので、人気がある方法が自分で行うDIYになります。
ホームセンターや100均でも道具を揃えることができるので、かかる費用をかなり抑えることもできますし、1日で終了させてしまうこともできます。
しかし、自分自身のインテリアのセンスが問われるので、初心者の人にとっては難易度が高くなってしまうことも多いです。
業者に依頼する
プランニングから設置・撤去まですべてをお任せできるので、いちばん手間がかからない方法になります。
さらに、インテリアなどのプロが行ってくれるので、専門家の技術で物件の魅力を効果的に引き出し、高い効果が期待できます。
しかし、依頼内容や部屋の広さなどによっては、費用が高額になる場合があり、設置までの時間が長めになるというデメリットもあります。
バーチャルで行う
申し込みから納品までネットですべて完結できて、納期が他の方法に比べて短く低価格で行えることが特徴です。
何もない部屋に家具やインテリアを配置してもらうことや、部屋にある家具を消去した画像を作成してもらうことが可能です。
ただし、依頼する業者によってCGのクオリティに差があるため、リアルに比べて訴求力が弱いこと、新しいサービスのため効果が未知数というデメリットがあります。
ホームステージングの利用ステップ
ホームステージングを実際に利用する際のステップについて、ご紹介していきたいと思います。
ホームステージングを頼むタイミング
ホームステージングの目的は内覧者を増やすことなので、ホームステージングを頼むタイミングは、物件の売却を考えたときに行うことがベストになります。
実際にホームステージングを行う場合は、実施してもらえるまでに1ケ月近くかかることも多いです。
物件を販売する場合には早期に販売することが重要になるので、早めにホームステージングを頼んで、時間のロスをなくすようにしましょう。
また、既に内覧対応しているにも関わらず、内覧希望者が集まらない場合にも、ホームステージングの実施を検討する良いタイミングになります。
ホームステージング業者に依頼した時の流れ
ホームステージングを業者に依頼する時のおおまかな流れは、以下のようなものになります。
実際のホームステージングを行う場合の、それぞれの項目について、内容や注意点を詳しく見ていきましょう。
- 業者探し
- 相談
- 予定物件の調査
- プランニング・見積り
- 契約
- 写真撮影
- 成約・家具撤去
業者探し
まずは、相談や見積りをお願いする業者を探します。
業者に依頼する場合でも、実際にホームステージングを希望するのか、バーチャルホームステージングも導入するのかを、事前に決めておきましょう。
近場にホームステージング業者がない場合は、ネットや情報誌などで検索するという方法があります。
相談
ホームステージングを依頼したい業者を見つけたら、問い合わせを行い、ホームステージングを行いたい物件の詳細や希望予算などを相談します。
「空室のホームステージングか?在宅のままのホームステージングか?」などの状況や希望するテイストなどは、できる限り初回の相談時に伝えておきましょう。
予定物件の調査
依頼予定の物件を実際に訪れてもらい、ホームステージング業者に現地調査してもらいます。
物件の雰囲気や間取りなどを確認して、コーディネートの方向性やレンタルすべき家具の種類や量を考えてもらいます。
プランニング・見積り
予定物件の調査を踏まえ、ホームステージング業者から、料金とプランが提示されます。
この段階までの作業は無料で行ってもらえることが多いので、できるだけ多くのホームステージング業者に相見積もりを取り検討するようにしましょう。
契約
ホームステージング業者が提示したプランニング・見積りに納得できれば、契約に進むことになります。
契約をする際には、下記のことが契約書に盛り込まれているかどうかを、しっかりと確認しましょう。
- 追加で発生する費用について
- 延長する場合について
- 家具を破損させた時の保証について
- 家具買取りの可否について
写真撮影
家具や照明、小物やグリーンなどの搬入・セッティングを行い、販促に使用する写真撮影をします。
撮影する時間や天気によっても部屋の印象は大きく変わってくるので、最高の状態を写真に残せるよう、撮影環境にも注意するようにしましょう。
成約・家具撤去
購入希望者が見つかり物件が成約となれば、レンタルで使用していた家具やインテリアが撤去され、ホームステージングは終了となります。
ホームステージングの契約期間を過ぎても成約とならなかった場合、ホームステージングをそのまま利用するかについては、契約前に決めておくようにしましょう。
ホームステージングでの注意点
ホームステージングは資格がなくても行えるので、たくさんのホームステージング会社の他、不動産会社が行っている場合もあります。
歴史が浅い文化のため、よくわからないで依頼してしまって、失敗をするケースも多数あるので、次のような注意点に気をつけるようにしましょう。
- ホームステージャーがいるかどうか
- 本来の目的を見失わないこと
ホームステージャーがいるかどうか
どの業者にホームステージングを依頼しようか迷った場合は、「ホームステージャー」が在籍しているかどうかを判断の基準にしましょう。
ホームステージャーは、「日本ホームステージング協会」の認定を受けた、ホームステージングの知識と技術を身に付けた有資格者になります。
ホームステージングは日本に導入されて日が浅いため、よくわかっていない人が多いことを利用して、悪質なホームステージングを行う業者もあります。
そのような業者に依頼しても成果を挙げることはできないため、資格を持っているホームステージャーのいる業者に依頼するようにしましょう。
本来の目的を見失わないこと
ホームステージングをすることで「短期間に物件が売れた」「高値で物件が売れた」などという話を聞くと、前のめりになってしまう方もいるでしょう。
そのため、より早く、より高く売れるような素敵な部屋にしようとこだわるあまり、費用をかけ過ぎてしまうことがあります。
物件を販売するためにはリフォーム代金や広告宣伝費など、他の費用も必要になりますし、物件が売れなければかけた費用は結局ムダになってしまいます。
ホームステージングの目的は、あくまでも「物件を販売するため」だということを忘れずに、トータル的なコストに注意してかける費用を考えるようにしましょう。
サービス提供会社のご紹介
ホームステージングを提供している会社は多数ありますが、実際にホームステージングを行ってくれる会社と、バーチャルホームステージング会社についてご紹介していきたいと思います。
ホームステージング会社と施工事例
ニトリ
プランと料金例
- ◆家具を借りる場合
<シンプルプラン>
・写真のみ:6.5万円~
・1ヵ月レンタル:8.5万円~
・3ヵ月レンタル:10万円~
<スタンダードプラン>
・写真のみ:11万円~
・1ヵ月レンタル:15.1万円~
・3ヵ月レンタル:18.5万円~ -
◆家具を買う場合
予算35万円の場合
販売金額29万円+家具小物配達・設置料4万円+プラン作成料2万円=35万円
ホームステージングTOKYO
プランと料金例
- ワンルーム:88,000円
1LDK:99,000円
※1LDK以上は別途お見積り
ニトリ
オシャレな家具がお手頃な値段で購入できる、家具販売で有名なニトリでも、ホームステージングを実施しています。
家具のテイストを選ぶだけで、物件のタイプに合わせてプランニングしてもらえるので、慣れていない人にとっても手間いらずで安心です。
いつでも最新の家具でホームステージングができることが特徴で、ニトリネットや広告で鍛えた撮影力・編集力で、デジカメ写真等とは印象がまったく変わる写真も低価格で提供してもらえます。
導入事例:ニトリさんのホームステージング事例へ
ホームステージングTOKYO
一般社団法人「日本ホームステージング協会」の開催する、ホームステージングコンテストの売買部門でグランプリを受賞している会社です。
ビジュアルマーチャンダイジング、テーブルやフラワーコーディネーションに精通したカラーコーディネーターの指導の下、シンプルで美しい商業店に匹敵するホームステージングを提供してもらえます。
玄関・リビング・居室・水周りが対象となり、ホームステージング後に撮影した写真データは無料で提供してもらえます。
※ビジュアルマーチャンダイジング…購買率を上げる目的で、戦略的に設定された計画(マーチャンダイジング)に沿って、商品の演出方法を工夫すること。
※フラワーコーディネーション…クライアントの希望に沿う形で、花を使用したコーディネートを空間に行うこと。
参考:ホームステージングTOKYO
https://soleil-hs.com/
バーチャルホームステージング会社と施工事例
カラーアンドデコ
プランと料金例
- バーチャルインテリアおまかせパッケージ:1枚8,480円~
バーチャルリノベーションおまかせパッケージ:1枚11,480円~
REPMP(リプンプ)
プランと料金例
- バーチャルフォトステージングルーム静止画像:8,000円~
写真の家具消し加工_静止画像:8,000円~
バーチャルフォトステージングルーム360画像:10,000円~
バーチャルステージングルーム 360°パノラマ画像:50,000円~
カラーアンドデコ
一番人気は、バーチャルインテリアおまかせパッケージで、9割以上の方がオーダーしています。
物件写真を送るだけで、プロのインテリアプランナーが物件ターゲットに合わせたインテリアをコーディネートしてくれます。
実際の家具画像を使用するのでリアルな演出が可能になり、配置されたCG家具は購入設置することも可能です。
参考:カラーアンドデコさん
https://order.coloranddecor.co.jp/list.php
REPMP(リプンプ)
バーチャルステージングに適した画像補正や、インテリアコーディネーターによる日本住居に適したインテリアコーディネートを、低価格で提供してくれる会社です。
超高品質なCGクオリティで、本物と見間違えるほどの室内CGイメージと360°パノラマサービスを作成してもらえ、物件を魅力的に演出することができます。
間取り図とお部屋の構造が確認できる写真を用意するだけで、モデルルームのようなリフォームイメージ画像を、最短3営業日~で提供してもらうことが可能です。
参考:REPMPさん
http://vrvs.peevee.jp/
まとめ
今回はホームステージングの基本から、ホームステージングやバーチャルホームステージングの施工会社や導入事例まで、幅広い情報をお届けしました。
まだまだ認知度が低いホームステージングですが、今の時代、そしてこれからの時代にぴったりのサービスだと言えます。
メリットいっぱいのホームステージングを上手に活用して、物件の売却をスムーズに成功させるようにしてください。