固定資産税を支払えば会計処理を行わなければなりません。
しかし「固定資産税の勘定科目や仕訳がわからない」という人も多いのではないでしょうか?
また固定資産税は何も税金対策をしないと高額になる傾向があるので、しっかりと税金対策することも重要です。
この記事では固定資産税の勘定科目や会計処理、さらに節税方法や特例措置などについて詳しく解説していきます。
固定資産税とは?
固定資産税は、その年の1月1日時点で所有する固定資産に対して課される税金で、住民税と同じように、各市町村に納付する地方税に分類されます。
固定資産税は次の2つの資産に対して課税されます。
- 土地や建物などの不動産
- 事業を営むために所有している償却資産
一般的には、不動産に対して課税される税金を「固定資産税」、償却資産に対して課税される税金を「償却資産税」と呼びます。
固定資産税の計算方法や支払いについて、償却資産税との違いも詳しく解説していきます。
固定資産税の計算方法
固定資産税は次の式で計算します。
課税評価額×1.4%
固定資産税の税率は1.4%です。なお資産の種類によって課税評価額の算出方法は次のように異なります。
- 土地:土地の面積や路線価、土地の区分に基づいて算出
- 家屋:家屋の評価点や床面積などに基づいて算出
- 償却資産:取得価額や耐用年数などに基づき算出
不動産が都市計画税の対象区域内に所在する場合には、固定資産税とは別に都市計画税も課税されます。
固定資産税の支払方法と納期
固定資産税の納期は基本的に年4回にわかれており、おおよそ次のようなタイミングで支払います。
- 第1期:6月
- 第2期:9月
- 第3期:12月
- 第4期:2月
詳細な納期は地方自治体によって異なるので、詳しくは自治体へ確認してください。
もちろん、1年分を一括で支払うことも可能です。
会計処理のタイミングは2つ
固定資産税の会計処理は次の2つのタイミングがあります。
- 賦課決定日
- 固定資産税の支払いを完了したタイミング
賦課決定日に会計処理する方法
自治体から固定資産税の納付通知が来たタイミングで次のように仕訳を行う方法です。
借方 | 貸方 |
---|---|
租税公課 10万円 | 未払金 10万円 |
実際に固定資産税を支払ったら、その都度未払金を取り崩していきます。
1期目の固定資産税を支払った
借方 | 貸方 |
---|---|
未払金 2.5万円 | 普通預金 2.5万円 |
固定資産支払日に会計処理する方法
実際に固定資産を支払ったタイミングで会計処理する方法は次の通りです。
借方 | 貸方 |
---|---|
租税公課 2.5万円 | 普通預金 2.5万円 |
支払ったタイミングで費用計上した方がわかりやすいですが、賦課決定日に全ての固定資産税を費用化することで、一度に多くの経費を計上できるメリットがあります。
賦課決定日が決算前であれば、節税効果が高いでしょう。
償却資産税との違い
固定資産税と償却資産税はどちらも固定資産に対して課税される税金ですが、次の点で異なります。
- 申告が必要か否か
- 課税される資産の種類
不動産は取得する際に登記を行なっているので申告が不要です。
一方、償却資産は取得する際に登記などが必要ないため、申告が必要になります。
自治体から「償却資産申告書」が送付されるため、1月1日時点の償却資産を記載して1月31日までに提出することで申告は完了します。
租税公課とは何?
固定資産税を支払った時の費用の勘定科目は「租税公課」を使用します。
租税公課は「租税」と「公課」という2つの公的機関への支出を合わせた言葉です。
- 租税:国税や地方税などの税金
- 公課:国や地方公共団体へ支払う手数料、罰金、会費など税金以外の支出
法人や個人事業主などの事業者が行う事業にかかる支払いであれば「租税公課」として経費処理できます。
固定資産税以外の租税公課としては次のようなものがあります。
- 印刷税
- 印紙税
- 法人事業税
- 個人事業税
- 不動産取得税
- 登録免許税
税金や国や自治体へ収める支出は、それが事業に関わるものであれば「租税公課」として経費処理できると理解しておきましょう。
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法人が固定資産税を払った時の勘定科目と仕訳
法人が固定資産税を支払った時の仕訳や勘定科目などについて詳しく見ていきましょう。
全額損金算入できる
法人が支払った固定資産税金のうち、事業に使う不動産や償却資産にかかる税金は全額損金算入できます。
損金算入すれば課税所得が少なくなるので、節税対策として固定資産税の支払いは活用できます。
法人が固定資産税を払った時の会計処理
実際に法人が固定資産税を支払った場合の会計処理を行なっていきましょう。
10万円の固定資産税を、固定資産税を支払った日に会計処理する場合は次のような仕訳になります。
借方 | 貸方 |
---|---|
租税公課 25,000円 | 普通預金 25,000円 |
10万円固定資産税のうち、1期目分の25,000円を支払った固定資産税は一括で支払うこともできます。
一括で支払った場合の仕訳は次の通りです。
借方 | 貸方 |
---|---|
租税公課 100,000円 | 普通預金 100,000円 |
なお、固定資産税は賦課決定日に会計処理を行うこともできますが、賦課決定日に会計処理を行う場合は、固定資産税全額を「租税公課」として費用化し、相手の勘定科目を「未払金」として処理します。
実際に固定資産税を支払ったら「未払金」の勘定科目を取り崩していきます。
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個人事業主が固定資産税を払った時の勘定科目と仕訳
個人事業主も、事業に使用する不動産や償却資産に係る固定資産税は「租税公課」として費用計上、損金算入することが認められています。
基本的な仕記や勘定科目などは法人と同じです。
しかし個人事業主は生活と事業活動が一体化していることが多いため、その場合には家事按分が必要になる点に注意しましょう。
個人事業主は家事按分が必要なケースも
生活と事業が一体化している個人事業主は、経費を家事按分しなければならないケースがあります。
例えば、自宅と事務所が兼用になっている場合の自宅に係る固定資産税の扱いです。
この場合は、1日の中で仕事に使用している割合に応じて家事按分を行います。
家事按分とは、支出のうち、生活で使っている部分と仕事で使っている部分を按分するというものです。
具体的には面積か時間によって按分します。
例えば、1日のうち8時間を自宅での仕事に充てているのであれば、自宅に課税される固定資産税の3分の1を「租税公課」として経費計上できます。
固定資産税以外にも、プライベート用と仕事で使用している自動車が同じであれば、自動車税も使用時間や使用距離などに応じて家事按分を行います。
個人事業主が固定資産税を払った時の会計処理
個人事業主が固定資産税を支払った際の会計処理は、法人の場合と同じです。
支払った税金は「租税公課」という勘定科目を使用して費用計上していきます。
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固定資産税の節税方法
固定資産税は次の3つの方法で節税ができます。
- 免税点の資産を保有する
- 一括償却資産を保有する
- 分筆して評価額を下げる
全ての資産で節税できるわけではありませんが、比較的簡単に実践できる方法です。
固定資産税の3つの節税方法について詳しく解説していきます。
免税点の資産を保有する
免税点とは、一定の金額に達しなければ課税されない金額のことです。
固定資産税であれば同一市町村区域内資産について、次の資産評価額が免税点です。
- 土地:30万円
- 家屋:20万円
- 償却資産:150万円
例えば、償却資産であれば150万円までは課税されないため、会社へ導入する備品を150万円以内にすることで固定資産税(償却資産税)はかかりません。
一括償却資産を保有する
一括償却資産とは、10万円以上20万円未満の固定資産のことです。
一括償却資産は、使用を開始した年から3年間にわたって取得価額の合計額の3分の1を経費計上できます。
一括償却資産には固定資産税は課税されません。
取得価格が20万円以上か20万円未満かによって、固定資産税が課税されるかされないかの違いが生じるため、固定資産税を支払いたくないのであれば、20万円以下の資産を取得して、一括償却資産として計上しましょう。
分筆して評価額を下げる
土地を保有しているのであれば、文筆して1筆あたりの面積を小さくするのも税金対策としては有効です。
1筆の土地であれば、土地の一部が広い道路に面しているだけで、土地全体が「広い道路に面している有望な土地」と評価されます。
しかし文筆してしまえば、広い土地に面している土地は1筆だけで、その他の土地は評価が下がる可能性が高くなります。
実際に売却する際にも安値になる可能性はありますが、広い土地を保有しているのであれば、土地を分筆しましょう。
固定資産税の特例措置
固定資産税を節税するための次のような特例措置も実施されています。
- 中小企業を対象とした固定資産税の特例措置
- 固定資産税等(土地)の負担調整措置
- 新築住宅に係る固定資産税の減額措置
- 認定長期優良住宅に関する特例措置
個人事業主であれば、個人用の住宅の特例措置も使用できます。
法人や個人事業主が利用できる固定資産税の特例措置について詳しく解説していきます。
中小企業を対象とした固定資産税の特例措
中小企業が所定の条件に合致する設備投資を行った際に、固定資産税が0〜2分の1まで減税される特例です。
この特例は先端設備導入計画に該当する設備投資を行った際に適用されます。
先端設備導入計画とは、設備投資を通じて労働生産性の向上を実現する ための計画で、労働生産性が年3%以上の向上が見込まれることが条件です。
この軽減措置は全ての自治体が講じているわけではないので、あらかじめお住まいの自治体における導入の有無を確認しておきましょう。
新築住宅に係る固定資産税の減額措置
良質な新築住宅の建築を促進するため、新築住宅の建築から3年間(マンションは5年間)固定資産税を2分の1に減税する特例措置です。
個人事業主が自宅で仕事をする場合には、家事按分によって事業の支出になる固定資産税を節約できます。
認定長期優良住宅に関する特例措置
耐久性などにおいて、一定の基準をクリアしている住宅を建設した場合、固定資産税や不動産取得税などが優遇される制度です。
戸建て住宅は5年間、マンションの場合は7年間、固定資産税が軽減されます。
やはり、自宅で仕事をする個人事業主は活用できる制度です。
まとめ
固定資産税は事業に使用した資産に対して課税されるものは経費処理、損金算入ができます。
経費として処理する際には、「租税公課」という勘定科目を使用しましょう。
基本的には法人も個人事業主も同じ仕訳を行いますが、個人事業主が会計処理する場合は、プライベートに使用した分と仕事に使用した分を分ける「家事按分」が必要です。
また固定資産税には、さまざま節約方法や特例措置があるので、上手に活用し税負担を抑えましょう。