専属専任媒介契約がおすすめできる人とは?契約を結ぶ前に知っておきたい3つの注意点!

  専属専任媒介契約がおすすめできる人とは?契約を結ぶ前に知っておきたい3つの注意点!

「専属専任媒介契約」は、1社の不動産会社としか媒介契約ができず、売主が買い手と個人間取引することを禁じている媒介契約です。この記事では専属専任媒介契約のメリット、デメリット、契約前の注意点について解説していきます。

宮本建一
【執筆・監修】宮本建一

金融機関に30年あまり在籍し、預金業務や融資業務、経理事務および内部監査業務、審査管理業務を経験しました。 これらの知見をもとに、金融関連(ファクタリング、資金調達、運転資金)、FP関連(保険、不動産、介護)、および法律関連(債務整理、遺産相続)を中心に執筆しています。 また、金融機関行職員を対象とした通信講座の教材執筆にも携わっています。

【保有資格】・FP2級 ・AFP ・金融内部監査士 ・簿記2級

不動産を売却する場合、売主は不動産会社に仲介を依頼するのが一般的です。

物件売却に際して交わす契約を媒介契約といい、3つの方法があります。

「専属専任媒介契約」をはじめとして「専任媒介契約」や「一般媒介契約」と呼ばれています。

「専属専任媒介契約」は、1社の不動産会社としか媒介契約ができず、売主が買い手と個人間取引することを禁じている媒介契約です。

本記事では、専属専任媒介契約に適している人はどのような人なのかについて解説します。

専属専任媒介契約を結ぶ場合のメリットやデメリットや、契約を結ぶ際の注意点について解説するので、不動産売却を予定するものの、どのような媒介契約を結ぼうか検討する際の参考にしてください。

媒介契約について

不動産会社に仲介を依頼して、買い手を探してもらうことが、不動産売買において一般的とされています。

売主が不動産売却を不動産会社に依頼するときに、取り交わす契約が媒介契約です。

媒介契約を結ぶことで、依頼者は不動産会社との依頼関係が明確になり、仲介業務に関するトラブルを未然に防ぐことが可能です。

契約を締結すると、不動産会社は、売主に代わって広告を打ったり、営業を行ったりして買主を見つけるように努めてくれます。

専属専任媒介契約とは

専属選任媒介契約とは、不動産の売却や販売活動を1社のみに委任する契約方法の一つです。

ここでは専属専任媒介契約の特徴について解説していきます。

専属専任媒介契約の特徴

主に3つの特徴があるので、それぞれ解説します。

  • 1社の不動産会社のみの契約可能
  • 不動産会社の手厚いサポートが受けられる
  • 売主が買い手と直接取引が不可

1社の不動産会社のみで契約可能

専属専任媒介契約を行う場合、売主は2社以上の不動産会社と契約できず、1社の不動産会社としか契約を結べない取り決めとなっています。

不動産会社の手厚いサポートが受けられる

不動産会社は契約を締結した日から5日以内に、「レインズ」への登録義務があり、1週間に1回以上、販売状況に関しての報告を受けられ、売主は不動産会社の進捗状況が把握できます。

「レインズ(REINS)」とは、国土交通省より指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムのことです。

売主が買い手と直接取引が不可

売主が買い手と直接取引を禁じている点も専属専任媒介契約の特徴としてあります。

不動産会社を通す必要があるので、、売主は買い手を見つけても、契約を結んだ不動産会社を通して売買契約を行わなければなりません。

専任媒介契約および一般媒介契約について

他の2つの媒介契約である「専任媒介契約」「一般媒介契約」についても簡単に触れておきます。

専任媒介契約

複数の不動産会社と契約できない点および、「レインズ」への登録義務は専属専任媒介契約と同じです。

ただし、専任媒介契約の場合、レインズへの登録は、契約を締結した日より7日以内となっています。

販売状況報告も義務付けられていますが、頻度は2週間に1回以上です。

売主が買い手を見つけ、直接取引ができる点は 専属専任媒介契約と異なる点があります。

例えば、物件に関心を示してくれた知り合いがいた場合、直接取引により不動産を売却することが可能です。

一般媒介契約

専任媒介契約と違って、2社以上の不動産会社と結ぶことが可能な媒介契約が一般媒介契約です。

売主が買い手を見つけてきて、直接取引ができます。

他の2つの媒介契約と異なり、「レインズ」への登録義務がありません。

物件売却を周りに知られない一方で、情報が広く流通されず限定的となる点があります。

売主は、2社以上と媒介契約を結んでいるため、自社が仲介手数料を受け取れるかどうかがわかりません。

そのため、率先して不動産会社が販売活動を行ってもらえない恐れがあります。

以上、3つの媒介契約の特徴を表にまとめると以下のようになります。

  契約可能件数 レインズ登録義務 依頼主への報告 売主の直接取引
専属専任媒介契約 1社 あり 1週間に1度以上 できない
専任媒介契約 1社 あり 2週間に1度以上 できる
一般媒介契約 複数 なし なし できる

専属専任媒介契約がおすすめできる人とは

「売却に時間をかけたくない人」「売りにくい物件を所有している人」は、専属専任媒介契約を締結することがおすすめできますので、各々解説します。

売却に時間をかけたくない人

専属専任媒介契約は、物件売却に時間をかけたくない人に向いているといえます。

不動産会社との契約は1社だけで済むので、手間がかからないのが理由です。

一般媒介契約の場合、複数の不動産会社と契約を結べる一方、現状報告が義務付けられていないので、売主が直接不動産会社に直接確認しなければならず、手間がかかります。

また、不動産会社にとっても、不動産取引を他の不動産会社に取られるケースもあるので、積極的な販売活動を行ってくれない恐れがあります。

そのため、結果的に取引までに時間がかかることになるかもしれません。

売却に時間をかけたくない人にとっては、専属専任媒介契約を不動産会社と結ぶことによって、短期間で売買取引に結びつくでしょう。

売りにくい物件を所有している人

所有不動産が駅から遠かったり、築年数が長かったり等、売りにくい不動産を所有している人にとっても、有効な媒介契約です。

売却予定不動産は、レインズで登録されるため、全国の不動産会社の間で不動産情報が共有されるため、比較的早期の不動産取引が期待できます。

取引が成立した場合、他の不動産会社には仲介手数料は入らず、自社に入金されるため、販売活動を熱心に行ってくれる傾向にあります。

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専属専任媒介契約のメリットとデメリット

売主が、専属専任媒介契約を結んだ場合のメリット、およびデメリットについて解説します。

メリット

専属専任媒介契約を結んだ場合、次の3点がメリットとして考えられます。

  • 不動産会社に売却を一任できる
  • 不動産会社からの報告頻度が高い
  • 不動産会社の積極的な販売活動が見込まれる

それぞれについて解説します。

不動産会社に売却を一任できる

売主は、売却にかかる一切を不動産会社に任せられます。

手間がかからず、不動産売買に発生するかもしれないトラブルに関しても、不動産売買のプロが仲介してくれるので、安心して売却が見込めます。

不動産会社のからの報告頻度が高い

不動産会社からの販売報告が頻繁に行われていることも、専属専任媒介契約として利点があると考えられます。

不動産会社は依頼主に、1週間に1回以上、活動報告が義務付けられています。

依頼主は売買に関する進捗状況を容易に把握することが可能です。

不動産会社の積極的な販売活動が見込まれる

専属専任媒介契約を結ぶメリットとして、不動産会社の積極的な販売活動が見込まれることがあります。

専属専任媒介契約は1社しか結べない媒介契約なので、取引が成立すれば、他の不動産会社に仲介手数料は入りません。

契約を結んだ不動産会社のみが受け取れます。

不動産売買取引に結びつくよう、不動産会社はさまざまな工夫をこらして、取引に結びつくよう販売活動を努めてくれることが期待できるでしょう。

デメリット

専属専任媒介契約を結んだ場合のデメリットとして、「売主が買い手を見つけた場合であっても、不動産会社を通す必要がある」「仲介手数料を支払わなければならない」があります。

売主が買い手を見つけた場合であっても、不動産会社を通す必要がある

専属専任媒介契約を結んだ場合、仮に売主が買い手を探してきたとしても、個人間取引はできず、必ず不動産会社を通さなければなりません。

同じ1社の不動産会社しか媒介契約できない専任媒介契約であれば、個人間取引は可能ですが、「専属」がつくと、個人間取引は禁止となっているので注意しましょう。

仲介手数料を支払わなければならない

不動産取引は必ず不動産会社を通して行われるため、専属専任媒介契約において、売主は仲介手数料を支払わなければなりません。

仲介手数料は、以下の計算式で算出します。

仲介手数料(消費税別)=取引価格×3%+ 60,000円(速算式)

【3点】専属専任媒介契約を結ぶ前に知っておくべき注意点

専属専任媒介契約を結ぶ前に依頼者はどのような点に注意するべきでしょうか。

注意点として、次の3点があるので、それぞれ紹介します。

  • 不動産会社選び
  • 契約期間中に売却できない場合がある
  • 囲い込み

不動産会社選び

専属専任媒介契約は1社の不動産会社との媒介契約であるため、不動産会社選びを慎重に行う必要があります。

不動産選びのポイントとして、以下の点があるので参考にしてください。

  • 物件査定金額およびその理由を明確に回答できるか
  • 売却する物件が得意物件であるか
  • 取引顧客が多いか

契約期間中に売却できない場合がある

専属専任媒介契約は、契約期間は最長3ヶ月です。

買い手が見つかる前に契約期間が終わってしまう恐れがあるので注意が必要です。

契約終了となると、専属専任媒介契約は自動での更新ができません。

引き続き同じ不動産会社と契約するかどうかを含め、今後の予定を再検討する必要があります。

囲い込み

不動産会社は、不動産の売却または購入を仲介することにより、仲介手数料が発生します。

売主・買主双方の仲介を行えば、どちらからも仲介手数料が受け取れます。

囲い込みとは、他の不動産会社が連れてきた買主を紹介や契約をさせずに自社で売買を完結させる、仲介手数料のしくみを悪用した手口です。

不動産会社の囲い込みにより、売主は、不動産売却の機会を損失する恐れがあるので注意が必要です。

囲い込みを見分けることは難しいのですが、「仲介手数料が半額」や「仲介手数料が今だけ無料」といった宣伝文句には注意しましょう。

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まとめ

専属専任媒介契約とは、1社の不動産会社と売却や販売活動を一任する媒介契約です。

売却に時間をかけたくなかったり、売りにくい物件を保有していたりする人におすすめできる媒介契約です。

報告頻度が高く、積極的な販売活動が期待できる半面、売主が買い手を見つけた場合であっても、不動産会社を通さなければなりません。

この記事を読んでいただき、専属専任媒介契約に関する理解が深められ、円滑な不動産売却が行われるきっかけとなれば幸いです。

参考:宅地建物取引業法 | e-Gov法令検索

参考:REINS TOWER

参考:仲介手数料の計算(速算式)

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