住み替えにより実家が空き家になった場合や、相続により空き家となった実家を相続した場合には実家を売却して処分することが必要です。
空き家となった実家は、草刈りや雪下ろしなどの管理にかかる手間や、突風や積雪による家屋の損傷のリスクを考えると早期に売却することが望まれます。
この記事では、実家を処分する際の流れやポイント、注意点について説明しています。
現在実家の処分を検討している方や、実家を将来利用する人が誰もいなくなる予定の方はぜひご覧ください。
実家を売却して処分する流れ
実家を売却して処分する場合には、いくつかの手順を踏むことが必要です。
また、様々な売却方法があるため、それぞれの方法のメリットとデメリットを比較して検討する必要があります。
処分する不動産を確認する
実家の売却を検討する際には、処分をする不動産の地番や場所、面積を把握しておくべきです。
自治体の役所で固定資産税課税台帳を取得することで、実家を所有している人が所有する全ての不動産に関する情報が記載されています。
記載されている主な情報は以下の通りです。
- 所在地
- 用途
- 面積(土地の場合)
- 評価額
- 固定資産税額
- 築年数(建物の場合)
記載されている情報や具体的な所在地がわからなくても、固定資産税課税台帳を取得することで不動産会社に売却依頼をする際にスムーズに依頼することができます。
売却を依頼する不動産会社の選定
固定資産税課税台帳を取得することにより、処分する実家の土地や建物が明らかになったら、売却を依頼する不動産会社を選定します。
実家を処分する際には、空き家に強い不動産会社を選定すべきです。
選定の際のポイントは3つあります。
少額の物件の取扱がある
実家の売却を依頼する不動産会社を選ぶ際には、400万円以下の不動産の取扱いがある不動産会社を選ぶべきです。
不動産会社が売買を仲介した際には仲介手数料という費用が発生します。
この仲介手数料は売買代金に応じて決定され、売買代金が高ければ高いほど不動産会社が受け取る仲介手数料は高額となります。
そのため、不動産会社は不動産を高く売ろうとするため、実家や空き家の場合、金額が高くいつまでも売れ残るケースがあります。
400万円以下の不動産を取り扱っているということは、査定額が低くなる状態の悪い不動産も取り扱っているという証拠であり、実家の処分や空き家の売買の経験が豊富な不動産会社であることを示しています。
実家の所在する地域の不動産会社に依頼する
実家が所在する地域の不動産会社に依頼することもメリットが多くあります。
地域に密着して活動している不動産会社であればその地域に合わせた売却方法の提案や、地域の需要を加味した査定が行えます。
また、すでに物件を探している顧客が不動産会社に相談に来ている場合もあるため、そういった顧客に素早く物件を紹介してもらえます。
不動産買取業者に依頼する
不動産を買い取ってくれる業者に依頼することで早く実家を処分できます。
不動産の買取の場合、通常の売却よりも売買代金は低額になりますが、不動産業者が購入することになるため間違いなく売却ができます。
ただし、不動産買取業者は田や畑などの農地、山林といった宅地以外の土地は買い取らないケースがほとんどです。
そのため、売却した不動産の中に宅地以外の土地がある場合にはそれらの処分方法を別途考えなければならないことに注意です。
不動産会社の査定と媒介契約
不動産会社に依頼すると、不動産会社が以下の観点から土地と建物の金額を査定します。
- 固定資産税評価額、路線価などの評価額
- 建物の傷み具合
- 築年数
- 権利関係
- 前面の道路と敷地の関係
- 土地の広さや形
- 近隣の不動産売買の相場価格
この他にもさまざまな情報をもとに不動産会社が根拠をもって査定を行います。
不動産会社には、査定価格を述べる際には根拠について説明することが法令により義務付けられていますので必ず査定価格の根拠を説明してもらいましょう。
また、早く売買したい場合は査定価格より低い金額で売買を始めることもおすすめです。
不動産会社による販売活動
売買したい金額が決定したら、その金額で不動産会社がインターネットや新聞などに広告を出します。広告を見ての問い合わせや、物件の案内などは全て不動産会社の方で行います。
ただし、不動産会社が問い合わせの対応や案内を行っている間も物件の所有権は所有者にあるため、草刈りや除雪などの管理行為や清掃、修繕に関する負担や責任は全て所有者が負いますので注意が必要です。
また、電気や水道について、使用可能としておくか止めてもいいかは不動産会社に事前に確認しておきましょう。
冬季に電気や水道を止めると凍結により、配管の破損や漏水の可能性があるため個人の判断で止めないでください。
ちなみに不動産買い取り会社に依頼した場合には、当然販売活動が行われず、金額が決定次第契約と引き渡しが行われます。
契約と決済、引き渡しと所有権移転手続き
不動産会社の販売活動の結果、実家の土地と建物を買ってくれる人が見つかったら不動産の契約に入ります。
契約の際には、一般的には所有者と購入者が同席して不動産会社が土地と建物に関する説明を行い、お互いが署名捺印をします。
その後、売買代金の支払いが行われると同時に司法書士が所有権移転登記を行い、物件の鍵が引き渡されます。
売買代金の支払いと所有権移転登記は同時に行われますので、所有権移転登記に必要な書類は契約当日忘れずに持参しましょう。
書類を忘れたために、当日の決済ができなかった場合、契約の履行を妨げたものとみなされ損害賠償が請求される可能性があります。
事前に用意する書類を不動産会社に確認しましょう。
特に、実家の土地と建物を売買する際には、土地や建物の権利証が紛失しているケースが多く見られます。
権利証の有無については、早めに確認し、ない場合は不動産会社に必ず伝えて指示を受けましょう。
電気や水道、ガスの名義変更を確認
不動産を引き渡す際には、電気、ガス、水道の契約名義の変更を必ず行いましょう。
不動産会社が代行する場合と、所有者が行う場合、購入者が行う場合がありますので、事前に不動産会社に確認しましょう。
また、引き渡しが冬の場合は、凍結による配管の破損や漏水の可能性があるため注意しましょう。
実家の処分の際にかかる費用
実家の処分の際にかかる費用について、必ずかかる費用と場合によってはかかる費用に分けてご紹介します。
必ずかかる費用
仲介手数料
売買が成立した際に、不動産会社に売買代金に応じて仲介手数料を支払います。
金額は以下の通りです。不動産売買価格 | 仲介手数料の上限額 |
200万円以下 | 売買価格×5%+消費税 |
200万円~400万円以下 | (売買価格×4%+2万円)+消費税 |
400万円超 | (売買価格×3%+6万円)+消費税 |
引用:不動産売買の仲介手数料はいくら必要?計算方法や値引き交渉の可否などを徹底解説!
また、400万円以下の宅地又は建物の取引に関して、不動産会社は上記で定められた上限に関わらず、最大で税抜き18万円まで受領できることが法令により定められています。
売買代金が400万円となる場合は、事前に不動産会社に仲介手数料がいくらになるか確認をしておきましょう。
譲渡所得税
実家を売買により処分した際に、売買により利益が出た場合にはその利益に対して譲渡所得税が発生します。
譲渡所得の計算方法は以下の通りになります。
収入金額 – ( 取得費 + 譲渡費用) – 特別控除額 = 課税譲渡所得金額
引用:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁
この場合の取得費とは実家を購入または建築したときの金額を表しており、売買契約書や住宅ローンの証書など取得した時の金額がわかるものが必要です。
実家を処分する場合、ほとんどが取得費よりも売買代金が安い場合なので課税されることはありませんが、取得費がわかる書類がないと取得費は売買代金の5%にされてしまうため注意が必要です。
この譲渡所得金額に対して、取得してから5年以下の場合は30%、5年を超える場合は15%が譲渡所得税額となります。
また、処分する実家が住まなくなってから3年以内であれば、譲渡所得から3000万円を控除できる精度があるため、住まなくなってすぐに売却をすることで税制上のメリットがあります。
場合によってかかる費用
解体費
実家の建物を解体して、更地にして売買する際には解体費用を所有者が負担しなければなりません。
更地で売り出すことで、住宅の新築を希望する方からの需要に応えることができ、建物がないので、トラブルが少ないというメリットがあります。
ただし、アスベストが含まれたり、建物が大きかったりすると解体費用が高額になる可能性があるため注意が必要です。
残置する家財の処分費用
実家の建物や倉庫内に置いてある家財道具が多い場合には、家財道具を処分することで実家を売りやすくなります。
置いてある家財道具が少量であれば置いてあるまま売却できるケースがありますが、大量の家財道具が建物内に残置している場合は、内見に来た方の印象が悪くなったり、購入者が処分に時間と費用をかけなければならなかったりするので実家が売れにくくなります。
家財道具の処分は所有者が自身で行う場合と業者に依頼する方法があります。
自治体によっては業者に依頼して家財道具を処分する場合に補助金を出しているところもあるので積極的に使いましょう。
登記の住所や名前の変更手数料
所有権移転登記にかかる費用は原則として購入者が負担しますが、所有者の現住所氏名と登記情報に登録されている住所氏名が異なる場合には所有者が費用を負担して変更する必要があります。
事前に法務局で登記簿謄本を取得して確認しておきましょう。
事前の確認を忘れずに
実家を処分する際には、上記以外にも予想もしなかった費用が発生する場合があります。
最悪の場合、実家の処分をする際に売買代金よりも諸経費の方がかかってしまう場合もあるため、事前に不動産会社に相談して可能であれば概算の見積もりを行ってもらいましょう。
オススメ記事
近年空き家の数が年々増加していることが問題視されています。本記事では空き家の賢い売却戦略としていくつか対策方法をご紹介していきます。今後相続などで突然空き家を手にする可能性もありますので知識として身につけておきましょう。
まとめ
実家の処分の流れや注意点、かかる費用について説明しました。
実家を売却する場合は、不動産会社が中心となって動いてくれますが、所有者も書類の準備や、実家の管理などを責任をもって行うことが求められます。
また、仲介手数料や譲渡所得税などの費用も発生するため、実家の処分は慎重に進める必要があります。
また、売買が長期化すると税制上のメリットが受けられなくなることや、管理費用がかさむこと、さらには、実家が災害等により損傷するリスクがあるため、不動産会社の選定はさまざまな情報を比較検討して選定しましょう!