マンションを売却するときにはさまざまな費用がかかり、その額はおおよそマンション売却額の5%から7%だと言われています。
本記事ではその費用の内訳だけでなく、費用を抑えるポイントについてもまとめていきますので、マンション売却を検討している人はぜひ参考にしてみてください。
マンション売却にかかる費用一覧と内容
マンション売却を不動産会社に依頼するのであれば、仲介手数料をはじめとしていろいろな費用がかかります。
かかる費用を合計すると「マンションの売却額の5〜7%」になると言われています。
マンションの売却にかかる費用の項目・金額・支払い時期は下記の通りです。
項目 | 金額 | 支払い時期 |
---|---|---|
仲介手数料 | 売買価格×3%+6万+消費税 | 売買契約成立後や決済時 |
印紙税 | 数千〜数万円(売買価格による) | 売買契約時 |
印抵当権抹消費用紙税 | 2〜3万円 | 所有権移転時(決済時) |
住宅ローン返済費用 | 数千〜数万円(金融機関による) | ローン完済時(決済時) |
譲渡所得税 | ・短期譲渡:売却益×39.63% ・長期譲渡:売却益×20.315% |
確定申告後 |
必要書類の取得費用 | 数百〜千円程度 | 書類発行時 |
司法書士費用 | 8,000~30,000円程度 | 契約完了時 |
引っ越し費用 | 3〜20万円(荷物や距離による) | 引っ越し時 |
仲介手数料
仲介手数料とは売買契約が成立した後に仲介会社へ支払う成功報酬で、売買契約が成立した後に支払うのが一般的です。
マンションの売却時にかかる費用は、マンションの売却額の5〜7%に及びますが、仲介手数料はそのうちの大半を占めます。
以下は不動産会社が行う売却活動の一例です。
- 売却するマンションの広告作成・ポスティング
- 購入希望者の内覧の立ち会い
- 買主と結ぶ売買契約書の作成
不動産会社は売却に必要な人件費として、仲介手数料が必要です。
仲介手数料の計算方法
仲介手数料は売却価格が400万超えの場合、以下の式で求めます。
「売却価格✕3%+6万円」
上の式を使うことで、マンションの売却金額から仲介手数料の「上限金額」を割り出せます。仲介手数料は値引き交渉も可能です。
売却価格が400万円以下の場合は次の式で仲介手数料を求めますが、特例により売却活動にかかった費用をプラスして18万円(税抜き)までに上限が変わります。
- 200万円以下の部分:5%+消費税
- 200万円超~400万円以下の部分:4%+消費税
売却価格が300万円であれば、
200✕5%=10万円
100✕4%=4万円となり、
仲介手数料は14万円ですが、特例により18万円(税抜き)まで請求できるようになりました。
参考:公益社団法人不動産流通推進センター|低廉な空家等の売買取引における媒介報酬額の特例
仲介手数料の早見表
以下は仲介手数料の早見表です。
物件金額 | 仲介手数料の金額(税込) |
---|---|
200万円 | 19万8,000円※ |
300万円 | 19万8,000円※ |
400万円 | 19万8,000円※ |
1,500万円 | 56万1,000円 |
2,000万円 | 72万6,000円 |
2,500万円 | 89万1,000円 |
3,000万円 | 105万6,000円 |
3,500万円 | 122万1,000円 |
4,000万円 | 138万6,000円 |
4,500万円 | 155万1,000円 |
5,000万円 | 171万6,000円 |
5,500万円 | 188万1,000円 |
6,000万円 | 204万6,000円 |
7,000万円 | 237万6,000円 |
※低廉な空家等の売買取引における媒介報酬額の特例により上限が変わります。
印紙税
印紙税とは売買契約書に貼付する印紙で納付する税金です。日本では課税文書に印紙を貼付しなければなりません。
印紙を貼付しなければ、印紙税の3倍の過怠税が課されるため注意しましょう。
マンションの売買価格に応じた印紙代は、下記のように異なります。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円以下のもの | 200円 | 軽減措置なし |
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え 1,000万円以下のもの | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円を超え 5,000万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5,000万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
なお、上記の印紙税額には現在軽減税率が適用されており、令和9年3月31日までに発行された契約書に有効です。
令和9年4月1日以降の売却を検討している場合、金額が異なる可能性があるため注意しましょう。
抵当権抹消費用
抵当権抹消費用とは、金融機関等からの抵当権を抹消するための費用です。
購入時に住宅ローンを利用して購入した場合、必ず対象不動産に抵当権がついており、抵当権を抹消しなければ不動産取引ができません。
買主に所有権が移転する前までに、もしくは同時に抵当権を抹消するのが一般的です。
既に住宅ローンを完済している場合でも、抵当権抹消の手続きをしなければ抵当権は消えていません。
抵当権抹消手続きは自分で行うことも可能ですが、手続きが複雑なため司法書士に依頼することをおすすめします。
自分で手続きをしたものの、不備があり所有権移転日までに抵当権が抹消できていなかった場合「違約」になってしまうケースもあるからです。
司法書士に依頼する際には2〜3万円程度の費用がかかりますが、確実性を高めるためにも司法書士に依頼しましょう。
住宅ローン返済費用
住宅ローン返済費用とは、マンション購入の際住宅ローンを借り入れていた残額を、売却益で一括返済するのにかかる金融機関の事務手数料です。住宅ローンの残債がなければ必要ありません。
売却代金によって住宅ローンを一括返済する際には、その旨を金融機関に伝え、繰上げ返済の手続きをしてもらう必要があります。
金融機関によって金額が違うことに加え、同じ金融機関でも窓口や電話、インターネットといった申請方法によっても金額が異なります。
自分が住宅ローンを組んでいる金融機関の住宅ローン返済費用について調べてみましょう。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、売却時に購入時よりも利益が出た場合に課せられる税金です。
譲渡所得税は、所得税・復興特別所得税・住民税の3種類があります。
利益は単純な不動産価格だけでなく、購入時の諸費用や売却時の諸費用を含めて計算しなければなりません。利益を求める計算式は下記の通りです。
【利益を求める計算式】
譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用
【計算例】
2,500万円の不動産を購入・購入諸費用170万円、3,200万円で売却・売却諸費用120万円
3,200万円-(2,500万円+170万円)-120万円=410万円
計算して求められた利益410万円に対して、所有期間に応じた税率がかけられます。所有期間に応じた税率は下記の通りです。
- 短期譲渡(所有期間5年以下):税率39.63%(所得税30%・住民税9%・復興特別所得税0.63%)
- 長期譲渡(所有期間5年超え):税率20.315%(所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%)
先程の例で求めた利益410万円に税率をかけた納税額は以下の通りです。
- 短期譲渡:410万円×39.63%=1,624,830円
- 長期譲渡:410万円×20.315%=832,915円
上記のように短期譲渡か長期譲渡で納税額が倍近く変わるため、必ず所有期間を確認しましょう。
また所有期間は1月1日が起算日になるため、年末に売却する場合などは特に注意が必要です。
必要書類の取得費用
マンション売却時に必要な書類は以下の通りです。
- 印鑑証明書:300円
- 住民票(購入時と住所が変わっている場合):300円
- 固定資産税評価証明書:300円
印鑑証明書は決済時に司法書士による本人確認書類として必要です。
購入時と売却時で住所が変わっている場合、契約前に住所変更登記しておきましょう。
印鑑証明書は役所、住所変更登記は法務局での手続きが必要です。
営業している平日に取得する必要があるため、スケジュールには余裕をもって取得しましょう。
固定資産税評価証明書に関しては委任状で仲介会社が取得するケースもあります。仲介会社と相談をし、どちらが取得するかを明確にしましょう。
司法書士費用
マンション売却で司法書士の存在は欠かせません。司法書士は売却予定の不動産で以下の手続きを行います。
- 所有者移転登記
- 箇条書きリスト(改行あり)
- 売主の抵当権抹消
- 買主の抵当権設定
基本的に買主を見つけた不動産会社と提携している司法書士に依頼するため、自分で手配する必要はありません。かかる費用は8,000〜30,000円程度です。
引越し費用
引越しの大まかな費用は下記の項目によって異なります。
- 荷物の量
- 引越し先までの距離
- 引越し先の階数(マンションの場合)
その他にも荷造りから引越し会社に依頼したり、荷解きを依頼したりとオプション料金によって異なります。
一般的には3〜20万円程ですが、インターネットなどで簡単に見積もりができるため、不安な場合は見積もりをし、費用の目安をつけておきましょう。
マンション売却にかかる費用を安くする特例
マンションを売却して利益が出た場合、翌年に確定申告が必要です。
その際条件が合えば税金が安くなる、以下の特例を利用できる可能性があります。
- 3,000万円の特別控除
- 所有期間が10年以上の軽減税率の特例
3,000万円の特別控除
自分が住んでいたマンションを売却する際には3,000万円特別控除を利用することで、多くの場合において譲渡所得税を0円に抑えられます。
本来であれば売却時に購入時よりも利益がでた際には、利益に対して短期譲渡で39.63%、長期譲渡で20.315%の税金がかかります。
しかし、3,000万円特別控除を利用することで、3,000万円の利益までは税金がかかりません。
不動産を売却して3,000万円もの利益が出るケースは少ないため、多くの場合で譲渡所得税が0円になるでしょう。
3,000万円特別控除を利用する際には一定の要件があります。
- 住まなくなった日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売る
- 3年以内にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例を受けていない
- 売主と買主親子や夫婦など特別な関係でない
所有期間が10年以上の軽減税率の特例
マンションの所有期間が10年を超える際には10年超所有軽減税率の特例が利用可能です。
通常、譲渡所得税は短期譲渡(所有期間5年以下)で39.63%、長期譲渡(所有期間5年越え)で20.315%の税率ですが、マンション(マイホーム)の所有期間が10年を超える場合には、下記のように税率が軽減されます。
- 売却益6,000万円以下の部分14.21%(所得税10%・住民税4%・復興特別所得税0.21%)
- 売却益6,000万円越えの部分20.315%(所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%)
さらに、10年超所有軽減税率の特例は、3,000万円特別控除との併用が可能です。しかし3,000万円特別控除と同様に、利用には以下のような一定の制限があります。
- 売却した年の1月1日において所有期間が10年を超えている
- 住まなくなった日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売る
- 3年以内にこの特例を利用していない
引用元:国税庁|№3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
マンション売却にかかる税金以外の費用を安くするコツ
節税以外で売却にかかる費用を安くするコツは、おもに以下の6つです。
- リフォーム費用を仲介手数料から引いてもらう
- 設備分を仲介手数料から引いてもらう
- 専属専任媒介契約を結ぶ
- 利用したことのある不動産会社を選ぶ
- 仲介手数料が安い不動産会社を利用する
- 固定資産税と都市計画税を清算する
リフォーム費用を仲介手数料から引いてもらう
マンション売却の際に、傷んでいる箇所をリフォームすると物件に強みができるので、不動産会社としては売りやすくなります。
リフォームの代金は売主負担になるので、その代わりに仲介手数料を安くする材料になるでしょう。
ただし不動産会社の相談もなしにリフォームをして、「仲介手数料を安くして」というのはNGです。売却を依頼する不動産会社の了承を得てからリフォームしましょう。
勝手にリフォームしてしまうと、「リフォーム費用は支払ったのに売れない」という状況に陥ってしまいます。
設備分を仲介手数料から引いてもらう
壁掛けのテレビやエアコンなどの設備がついている場合、その設備を材料に仲介手数料の値引きを打診できます。または物件価格を上乗せするかのどちらかが可能です。
専属専任媒介契約を結ぶ
不動産会社と結ぶ媒介契約には、以下の3種類があります。
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
仲介手数料を安くしたいのであれば、専属専任媒介契約を結びましょう。
専属専任媒介契約は最も規制が多い契約で、売主は3ヶ月間他社に売却を依頼できなくなり、自分で買主を見つけることもできません。
しかしその一方で、不動産会社は期間中に買主を見つければ、確実に仲介手数料を得られるので、売却活動のモチベーションが上がります。
不動産会社としては買主から仲介手数料を得られるので、売却予定のマンションがかなり魅力的であれば、売主側の仲介手数料が無料になることもあり得ます。
利用したことのある不動産会社を選ぶ
以前に利用したことがある不動産会社で売却を依頼すると仲介手数料を値引きできる可能性があります。
実際、一部の不動産会社ではリピーターの仲介手数料を安くしています。
仲介手数料が安い不動産会社を利用する
仲介手数料は上限について決められていますが、下限については決められていないため、最初から売主側の仲介手数料を半額や無料にしている不動産会社も存在します。
不動産会社としては売る物件がないというのは、在庫がないのと同意義ですので、抱えている物件数は多いほど良いのです。
そのため売主側での仲介手数料を安くしてでも在庫を確保したいと考える会社は多く存在します。そういった会社を利用すると手数料を安く済ませられるでしょう。
ただし仲介手数料の安い不動産会社全てがしっかり売却活動してくれるとは限りません。
中には手数料を安くすると言っておきながら別の項目で回収する場合もあります。また熱心に売却活動を行わない可能性もあります。
仲介手数料が安い不動産会社を利用するのであれば、評判や口コミについては調べておくべきでしょう。
固定資産税と都市計画税を清算する
翌年に納税する固定資産税と都市計画税を清算することで、受取金額を増やせます。
売却したマンションの固定資産税と都市計画税は、前年の1月1日に所有していた人が納税者のため、その分を買主が負担するのが一般的だからです。
清算金は売買代金の一部とみなされるため、確定申告の際は注意しましょう。
清算の方法は日割りや月割りなど双方合意の上、任意で決められるため、不動産会社に相談するなどして売買契約書に盛り込むことが重要です。
マンション売却にかかる費用を安くする注意点
マンション売却にかかる費用を安くする際の注意点は以下の3つです。
- 仲介手数料の値引き交渉は要注意
- 手残り金額の把握が重要
- プロに相談がおすすめ
仲介手数料の値引き交渉は要注意
不動産会社によっては仲介手数料の値引き交渉に応じてくれる場合もありますが、注意が必要です。
仲介手数料を値引きしてもらうことで、以下のようなデメリットが生じる可能性があるからです。
- 他の物件より後回しにされる可能性がある
- 営業マンのモチベーションが下がる
- 質の良いサービスを受けられない可能性がある
仲介手数料は成功報酬であり、売却活動に要した広告宣伝費や人件費は仲介手数料で賄われます。
手数料を下げることで、営業マンの報酬が下がったり、宣伝広告費が削られたりする可能性があります。
サービスの質や高く速く売ることを優先するのであれば、値引き交渉は得策ではありません。
手残り金額の把握が重要
不動産売却では多くの費用がかかるため、金額をしっかり把握しなければ、思っていたよりも手残り金額が少なかったという事態になりかねません。
売却益で次のマイホームを購入したり、老後の資金として確保したりという目的を達成するためにも、手残り金額の計算をして売却プランを立てることが大切です。
プロに相談がおすすめ
マンションをスムーズに安心して売却したいなら、プロに相談することをお勧めします。
マンションの売却は、金額が大きいだけでなく計算も複雑で、間違った申告をするとペナルティを受ける可能性もあるからです。
素人考えで売却を進めると、なかなか売れなかったり、買いたたかれたり、節税できなかったりといろいろなリスクがあります。
仲介手数料を支払う分、それに見合うサービスを受けられて安心できるので、良い仲介会社に相談することが大切です。
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この記事では不動産担保に長年携わってきた経験をもとに、抵当権抹消登記申請書に関して解説ていきます。「不動産を売却する前に抵当権を抹消しておきたい」「ローンは完済しているが抵当権の消し方がわからない」という方のお役に立てれば幸いです。
まとめ
この記事では以下のような内容について解説しました。
- マンション売却には仲介手数料などさまざまな費用がかかる
- 費用はおよそ売却額の5~7%になる
- 仲介手数料は費用の大半を占める
- 特例の利用でマンション売却にかかる税金を安くできる可能性がある
- マンション売却の費用を安くするコツがある
- 不動産の売却はプロに相談するのが得策である
マンションの売却費用についてしっかり把握していないと、最終的な手残り金額が想像よりも少ないという事態にもなりかねません。
この記事を参考にしていただき、マンション売却にかかる費用について理解を深め、無駄な費用を支払うことなく、効率的にマンションの売却を進めていただけますと幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。