仲介手数料の勘定科目とは?詳しい仕訳方法をケースごとに徹底解説!

  仲介手数料の勘定科目とは?詳しい仕訳方法をケースごとに徹底解説!

この記事では仲介手数料の勘定科目はどうなるのか、売却、購入、賃貸のそれぞれのケースで解説をしていきます。同じ仲介手数料でも、仕訳処理や勘定科目は大きく異なるので、正しく仕訳ができるよう知識をつけていきましょう!

手塚 大輔
【執筆・監修】手塚 大輔

地方銀行に10年弱勤務した後、現在は飲食店を起業しており、プロのライターとしてもSEO記事、コピーライティングなどを行なっております。 銀行では、預金業務、カードローン、住宅ローン、企業の運転資金、設備資金、起業開業支援、保険販売、投資信託販売などの他、企業の決算書の審査など経験。

【保有資格】ファイナンシャルプランナー

※この記事はPRを含みます。

不動産を売買したり賃貸する場合には、不動産会社へ仲介手数料を支払わなければなりません。

法人や個人事業主が事業で不動産を売買したり賃貸する場合には、仲介手数料を仕訳する必要があります。

仲介手数料を正しく仕訳するためには勘定科目を把握しておく必要があります。

ただし、法人が仕訳する場合と、個人事業主が仕訳する場合には会計処理が大きく異なるので注意しなければなりません。

不動産の仲介手数料の勘定科目と仕訳方法について詳しく解説していきます。

この記事を読むとわかること
  • 仲介手数料の勘定科目と仕訳について
  • 仲介手数料の家事按分とは
  • 不動産に関連する費用の勘定科目と会計処理

不動産の仲介手数料とは

不動産の仲介手数料とは、不動産を売買したり賃貸する際に相手方を不動産会社に探してもらう際に不動産会社へ支払うための成功報酬です。

不動産の売買や賃貸相手を探すためには、不動産会社のネットワークを活用したり、ポータルサイトへ掲載する必要があるので、売却活動にかかる経費として、売却活動や賃貸活動に成功した場合のみ、成功報酬として仲介手数料が発生します。

仲介手数料の上限

仲介手数料には上限が定められており、売買の仲介手数料は次のように定められています。

売買金額 仲介手数料
200万円以下の部分 売買価格の5%+消費税
200万円超400万円以下の部分 売買価格の4%+消費税
400万円超の部分 売買価格の3%+消費税

このように価格の中でも手数料率が異なるので、400万円超の物件を売買する場合には、仲介手数料は次の速算式でも求めることが可能です。

売買価格×3%+6万円 + 消費税

例えば、不動産売買価格が4,000万円の場合、仲介手数料は次のようになります。

4,000万円×3%+6万円+消費税=138.6万円

売買の際の仲介手数料は、売主と買主の双方が不動産会社へ支払いをしなければなりません。

賃貸の仲介手数料

賃貸の仲介手数料は、法律によって『借主と貸主それぞれから受け取れる手数料の上限は「賃料の0.5ヶ月分以内」』と決められています。

ただし依頼者からの承諾があれば、『売主か買主どちらか一方のみから賃料の1ヶ月以内』の手数料を受け取ることも可能です。

賃貸の場合には、不動産会社が受け取れる手数料の上限は、売主、買主から受け取れる合計額が家賃の1ヶ月分だと理解しておきましょう。

仲介手数料の勘定科目と仕訳

仲介手数料の勘定科目と仕訳について、不動産を購入した場合と賃貸した場合に分けて解説していきます。

不動産を購入した場合

不動産を購入した場合には、仲介手数料は不動産の取得価格に含まれます。

そのため、仕訳をする際の土地や建物の価格は、仲介手数料を含めた価格を計上しなければなりません。

例)仲介手数料300万円を支払って、1億円の建物を購入した

借方 貸方
建物 103,000,000円 普通預金 103,000,000円

このように、不動産の購入時には、仲介手数料を含めて取得価格を正しく求められるようにしてくおきましょう。

また、決算時には、仲介手数料も含めた建物の価格を減価償却していきます。

上記建物を残存価格10%、償却期間10年で定額法で減価償却した場合の仕訳は以下の通りです。

借方 貸方
減価償却費 9,270,000円 建物 9,270,000円

建物の購入時に仲介手数料は経費にすることはできませんが、減価償却時に段階的に経費にすることが可能です。

なお、土地は減価償却ができないので、土地購入にかかる仲介手数料は経費とすることはできないと把握しておきましょう。

土地と建物の按分

会社の貸借対照表には、土地と建物は別々に計上しなければなりません。

そのため、土地と建物をセットで購入した際に支払った仲介手数料も土地分と建物分に按分して取得価格を求める必要があります。

土地分と建物分に仲介手数料が分かれているのであれば、土地と建物の取得価格にそれぞれの仲介手数料を含めて計上します。

しかし土地分と建物分に仲介手数料が分かれていない場合には土地価格と建物価格の割合に応じて仲介手数料も按分します。

例えば、土地価格が6,000万円、建物価格が4,000万円の土地付き建物を1億円で購入し、仲介手数料を300万円支払ったとすると、仲介手数料の300万円は6:4に按分し、土地分が180万円、建物分が120万円となり、次のように仕訳を行います。

借方 貸方
土地 61,800,000円 普通預金 61,800,000円

事業用に取得した不動産の仲介手数料が取得価格に含まれるので、仲介手数料は土地分と建物分に分けて仕訳をしなければならないと理解しておきましょう。

不動産を賃貸した場合

不動産を賃貸した場合の仲介手数料は経費となります。

この際の仲介手数料は「支払手数料」という勘定科目で処理を行います。

仕訳の事例は次の通りです。

例)事業用に使用する不動産を賃貸し、仲介手数料として普通預金から10万円を支払った

借方 貸方
支払手数料 100,000円 普通預金 100,000円

なお、賃貸の場合は、不動産を借りる側も貸す側も不動産会社へ仲介手数料の支払いが必要になることがあります。

借りる側も貸す側も、「支払手数料」という勘定科目を使用して経費処理を行います。

不動産を購入する場合には、仲介手数料は取得価格に含まれるので、処理は大きく異なるので注意しましょう。

不動産売却にかかる仲介手数料は課税仕入

不動産を売却する場合、仲介手数料は「課税仕入」となります。

つまり、不動産会社へ支払う仲介手数料には消費税がかかり、消費税の納税額の支払時に仕入額控除を行う対象になります。

2023年10月のインボイス制度開始以降は、インボイス制度に対応している業者でないと、仲介手数料にかかる消費税の仕入額控除ができないので十分注意してください。

仲介手数料の家事按分とは

個人事業主が不動産を売買したり、賃貸する場合には、仲介手数料の按分が必要になることがあります。

仲介手数料の按分とは、事業の用途として使う割合と、生活として使う割合に応じて仲介手数料を分けることです。

個人事業主が会計処理を行う場合には、仲介手数料の家事按分を行わなければならないという点に注意しましょう。

個人事業主の仲介手数料は家事按分が必要

個人事業主は、購入したり借りたりする不動産について「自宅兼オフィス」として、生活にも仕事にも使用することがあります。

この際に、経費として認められる仲介手数料は、仲介手数料のうち仕事に使用している分だけです。

そのため、不動産会社へ支払った仲介手数料を「生活に使用している分」と「仕事に使用している分」に按分しなければなりません。

これを家事按分と言います。

例えば1日のうち、8時間を事業に使用して、残りの時間をプライベートに使用しているのであれば、8時間/24時間つまり仲介手数料のうち3分の1を事業の経費として計上し、仕訳を行います。

賃貸物件の仲介手数料が12万円の場合であれば、3分の1である4万円を経費計上することができ、次のように仕訳を行います。

借方 貸方
支払手数料 4万円 普通預金 4万円

事業と私生活やプライベートが一体となっている個人事業主は、仲介手数料をはじめとしたさまざまな費用を家事按分しなければならないという点に十分注意しましょう。

不動産の仲介手数料以外の初期費用とは

不動産を賃貸する場合には、仲介手数料以外にも敷金と礼金が発生します。

不動産賃貸の際に発生する仲介手数料以外の初期費用の会計処理について詳しく解説していきます。

敷金の扱い

不動産を賃貸契約した際に支払う敷金は「敷金」または「差入保証金」という勘定科目を使用します。

敷金を使用する場合の、仕訳の事例は次の通りです。

例)不動産を賃貸契約する際に、敷金10万円を支払った

借方 貸方
敷金 10万円 普通預金 10万円

また、不動産を退去する場合には、敷金が返却されてくることがあります。

敷金が返却された際の仕訳は次のようになります。

例)賃貸不動産を退去する際に、敷金10万円が返却された

借方 貸方
普通預金 10万円 敷金 10万円

敷金が返却された場合には、敷金を支払った時とは反対の仕訳をすればよいだけですので、会計処理は非常に簡単です。

礼金の扱い

不動産を賃貸する場合には、礼金の支払いが必要になることもあります。

礼金の勘定科目は「地代家賃」か「支払手数料」を使用して経費処理するのが一般的です。

仕訳は次のようになります。

例)不動産賃貸契約することに伴い、礼金を10万円支払った

借方 貸方
地代家賃 10万円 普通預金 10万円

礼金は敷金と異なり、返却されることがない費用です。

そのため「地代家賃」として家賃に含めて経費処理を行うか、仲介手数料と同じように「支払手数料」として経費処理を行います。

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この他の不動産に関連する費用の勘定科目と会計処理

ここまで仲介手数料を中心として勘定科目の処理方法と、仕訳について解説してきました。

最後に、その他の不動産に関連する費用の勘定科目と関係処理の方法ついて解説していきます。

原状回復費用

オフィスを退去する際に原状回復をするためにかかる原状回復費用は「修繕費」という勘定科目を使用して、次のように仕訳を行います。

なお、原状回復は敷金から行う場合と、別途支払う場合で仕訳が異なります。

例)原状回復費用として敷金から10万円を支払った

借方 貸方
修繕費 10万円 敷金 10万円

例)現金で原状回復費用10万円を支払った

借方 貸方
修繕費 10万円 現金 10万円

内装工事の費用

賃貸物件で店舗などを営むのであれば、内装工事が必要になることもあります。

この際に支払う内装工事の費用は「建物付属設備」という勘定科目を使用します。

例)賃貸物件の内装工事を行い、工事費用として500万円を支払った

借方 貸方
建物付属設備 500万円 普通預金 500万円

建物付属設備は資産項目です。

賃貸物件であっても、内装工事などを行った場合には資産が形成されることになり、決められた期間に合わせて減価償却を行っていきます。

まとめ

  • 不動産を購入した場合には、仲介手数料は不動産の取得価格に含める
  • 不動産を売却した場合には、仲介手数料は課税仕入
  • 不動産を賃貸した場合の仲介手数料は経費となり、支払手数料という勘定科目で処理

不動産を売買した際、仲介によって借りた時には、不動産会社へ仲介手数料の支払いが必要です。

不動産を購入した場合には、仲介手数料は取得原価に含めて資産計上しますが、賃貸の場合には「支払手数料」として経費処理を行います。

不動産を買ったのか、売ったのか、賃貸で借りたのかによって、同じ仲介手数料でも、仕訳処理や勘定科目は大きく異なるので、正しく仕訳ができるように準備してください。

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