「住宅ローンの返済ができなくなると、最後はどうなるの?」
なにかと不安定な状況が続いている現在、住宅ローンの月々の返済がきついと感じている人や、返済に不安を感じている人も多いと思います。
住宅ローンを滞納すると、最後は家を失うこともあるかもしれません。
これはゆるぎない事実で、皆さんも知っていることだと思います。
そこで今回は以下の3つのポイントに関して詳しく説明していきます。
- 住宅ローンを滞納すると何が起きるのか?
- 滞納の始まりから競売までのタイムスケジュール
- 競売を回避する方法とは?
今回は特に分譲マンションの場合を例に解説しますので、参考にしてください。
住宅ローン滞納したらどうなる
住宅ローンを滞納すると、最後は家を失うこともあるかもしれません。
ではなぜ滞納するとダメなのか?これらを契約の点から見直すところから始めましょう。
契約にあたって専門用語も非常に多く出てきますが、どれも住宅ローンと滞納について知るには大事な用語です。それぞれわかりやすく説明しながら進めていきますので、最後までお付き合いください。
住宅ローンは家を失うペナルティも含めた銀行との「契約」
「借金を返せなければ、担保になっていた自宅を取り上げられておしまい」
端的にいえばこうなりますが、これにも根拠となるものがあります。
そもそも銀行との契約はどうなっているのでしょうか?
まず住宅ローンは銀行との「金銭消費貸借契約」(*)です。
消費貸借とは「なにかしらのモノを借りて、あとからそれと同じモノで返す契約」という意味で、住宅ローンではモノ=お金(金銭)なので「金銭消費貸借」、そして「金銭消費貸借契約証書契約証書(いわゆる借用金証書)」で銀行と契約をするということになります。
つまり、あなたが住宅ローンを借りるということは「お金を借りて住宅を購入(金銭を消費)し、あとから給料などの収入(金銭)で返済していく」という契約を銀行など金融機関と結ぶという意味です。
そして契約なので、約束を守らず返済しなければ約束違反(「債務不履行」と言います)となり、そのペナルティが、家を失うかもしれないということなのです。
ただしローン契約書には「返せなければ家を失います」とは書かれていません。
その代わりに「返せなければ最終的に全額一括返済してもらいます」という契約条項があり、それを承知して契約するので、結果的に住宅ローンは家を失うペナルティ(一括返済できない=家を手放す)も含めて銀行と契約することになるのです。
上記した「返せなければ最終的に全額一括返済」が「期限の利益喪失」と呼ばれるもので、こちらは住宅ローンを滞納するとどうなるか?に関係しますので、次項でわかりやすく解説します。
期限の利益喪失とは?
住宅ローンの契約証書である金銭消費貸借契約書には、さまざまな契約事項(契約条項とも)が記載されています。
その中で特に重要なのが、債務不履行に関する事柄で「期限の利益」についての条項です。
「期限の利益」と書くとむずかしく感じるかもしれませんが「毎回決められた返済日(約定返済日)に元利金(元金と利息)を滞りなく返済してくれれば、35年でも期限までゆっくり返していける権利(利益)」と表現するとわかりやすいと思います。
言い換えれば「毎回返済を滞納しない限りは、住宅ローンの最終期限まで分割して返してくれればいいですよ」と銀行が言っていることになります。
逆に「毎回返済を滞納したなら、ある程度までは待ちますが、限度を超えた場合には全額耳をそろえて一括返済してください!」ともなり、これが「期限の利益を喪失する」という意味です。
こちらも「借金を返せなければ、おしまい」ということに他なりませんが、このあと解説する滞納やその他の内容はこうした原則に則っている点はぜひ覚えておいてください。
保証会社付ローンと保証会社なしローンの違い
滞納を語る上で、住宅ローンと保証会社についてもおさらいしておきましょう。
住宅ローンは大きく「保証会社付住宅ローン」と「保証会社なし住宅ローン」に大別されます。
保証会社なし住宅ローンとは、文字通り保証会社の保証が付かないローンのことで、通常は連帯保証人を付ける場合が多く、「プロパーローン」(プロパー=直接の意味 保証会社を介さず直接融資することから「直接融資」とも)や「保証人扱い住宅ローン」などとも呼ばれます。
いっぽう保証会社付住宅ローンとは、保証会社(住宅ローンの保証をする専門の会社、銀行の子会社などが多い)が住宅ローンの保証をすることで低金利、有利な条件の住宅ローンが借入できるものです。
通常は年収が低い、勤続年数が短いなど審査に通りにくい人でも保証会社の保証が付くことで住宅ローンを借入できる仕組みです。
保証会社は住宅ローンが返済不能になると、ローン残額を一括して銀行に立替払いします。
これが「代位弁済」で、代位弁済してもらえるからこそ、信用度が低い人でも住宅ローンの借入ができるし、住宅ローンを借りるための対価として保証料を払うという図式なのです。
このような仕組みで、住宅ローンを保証する代償として保証料を支払います。
一般的に住宅ローン金利に0.2〜0.4%程度上乗せして保証料を分割払いする形式と、一括前払いで保証料を支払う形式があります。
保証会社付ローンでも、代位弁済のあとは、保証会社から一括返済を求められることになり、そこでも払えなければやはりおしまいになるので、滞納すると最後は家を失うという点は同じです。
競売とは?
では、滞納すると具体的にどうやって家を失うことになるのでしょうか?
それは「住宅ローンの担保になっている家が競売にかけられる」ことです。
それでは、競売について説明していきます。
競売の意味
競売(法律用語や金融機関ではケイバイと読みます)とは「債権者が申立て、裁判所が借主の財産を売却する担保処分手続き」のことです。
また裁判所が競売の対象となる物件を差し押さえることを「競売手続きの開始」と呼び、これがいわゆる「滞納差し押さえ」と呼ばれる状態です。
具体的には、住宅ローンの滞納が重なると、銀行(債権者)が裁判所に競売を依頼(競売の申立て)します。
申立てを受け付けた裁判所は競売の日時を決めて公示(以前は新聞等で定期的に発表、現在は裁判所のホームページから情報が閲覧できる)します。
競売情報を入手した業者(競売物件を専門に扱う不動産業者など、その道のプロ)が購入予定額を入札し、一番高い額を提示したところが購入するという流れです。
ちなみに競売で物件を競り落とすのは「競落・ケイラク」、購入希望者が現われなかったなどで競売ができなかった場合は「不落・フラク」などと表現します。
不動産競売事件のインターネットによる情報提供について
競売不動産ファイル(「物件明細書」,「現況調査報告書」,「評価書」のいわゆる「3点セット」)等をインターネットを通じて提供しています(このシステムを「BIT」と略称しています)。
裁判所/不動産競売/不動産競売事件のインターネットによる情報提供について
競売までのタイムスケジュール
では具体的に滞納から競売までのタイムスケジュールを時系列的に見てみましょう。
(*なお金融機関により手続きまでの時期、滞納の回数などは異なります)
競売までのタイムスケジュール1.「督促」
返済日(約定返済日)の当日(実際は日付が変わった直後)に、返済口座の残高がローン返済額に不足すると滞納(「延滞」とも)のはじまりです。
返済日当日に入金すれば夜に引き落とされ、滞納とはなりませんが、厳密には一日(一瞬)でも遅れれば滞納(この場合は「日中滞納」とも呼ぶ)です。
滞納が翌日以降も続くと「月中滞納」となり、通常は滞納発生の翌日~3日以内に電話で督促されます。
この場合は「返済をお忘れではないですか?」といったソフトな内容ですが督促を受けたことには違いありません。
そして滞納が翌月以降になると「月越滞納」などと呼ばれ、今度は文書で「督促状」が届きます。
文面や題名も最初は「至急のお知らせ」などで始まり
「返済のお知らせ」
「返済のお願い」
「返済をいただけなかった場合の対応について」
と時間が経過するほど厳しい内容に変化していきます。
督促状などの文書をいつ、何回送るかも銀行により違いますが、郵便受けがあふれるほど連日に渡り郵送されるようなことはありません。
競売までのタイムスケジュール2.「通知・催告」
滞納がさらに重なり3か月を超えると、郵送される文書が一括返済を求める「通知・催告」に変わります。
通常は
「〇月〇日までに滞納している返済元利金及び遅延損害金(延滞金のこと)計▲▲円を速やかにお支払いください。」
「上記期日までにお支払いいただけない場合、期限の利益を喪失することとなり、ローン残額を一括返済いただきます」
といった内容でこれを「期限の利益請求喪失通知書」「通知催告書」などと呼びます。
請求喪失とは「約束した日までは待つから、約束を守ってよ 約束を守らなかったら文句ないよね?」という意味合いで、要は競売の予告になります。
またこれらの文書は「内容証明郵便」(文書の内容について郵便局が証明する郵便物で、王的手続きの文書で用いられる)で送られてきます。
競売までのタイムスケジュール3.「競売」
最終的に返済が不可能な場合は競売の手続きが始まります。
ここまでのタイムスケジュールとして一般的には
- 滞納初日からその月内~電話やソフトな文書による「督促」
- 滞納翌月から3か月超~期限の利益請求喪失通知など「通知・催告」
- 滞納6か月以上~競売開始
となります。
競売開始決定通知の見本
競売を回避する3つの方法
住宅ローンを滞納するようになったら、もう後には引けないのでしょうか?
ここからは競売を回避できるかもしれない方法を3つ紹介します。
競売を回避する方法1.「リスケ」
リスケとは「リスケジュール、ReSchedule」の略で、返済を一時的に減らす、住宅ローンの救済措置です。
「金融融円滑化法」という法律に端を発し、銀行などの金融機関では、住宅ローン利用者から依頼があれば、返済減額等に柔軟に対応することになっています。
ただし滞納後も銀行からの連絡、督促に答えず無視したり、転居しても新住所を教えなかったりなど不誠実な態度を取っていると、いくらあとから救済を求めても、対応はしてもらえない可能性があります。
そもそもリスケと次に任意売却は、少なくとも滞納してから銀行との対話だけはしてきた人にしかできない方法なので、その点は覚えておいてください。
【参考出典】
当行住宅ローンをご利用中のお客さま :ご返済条件の変更
ご返済条件の変更
お客さまのご事情に応じて、ご返済条件の変更(返済額の増額・減額、借入期間の短縮・延長)やご出産時の金利優遇(*1)のご相談を承っております。
(*1)金利優遇は女性向け特典利用時に限ります。
ご相談受付内容
ご返済が困難となった場合のご返済額の減額、お借入期間の延長
ライフイベントに合わせたご返済額の増額、お借入期間の短縮
ご出産時の金利優遇(女性向け特典利用時に限ります)
MUFG三菱UFJ銀行/住宅ローン/当行住宅ローンをご利用中のお客さま/ご返済条件の変更
【参考出典】
金融庁/【新型コロナウイルス感染症の影響で、住宅ローンなどの返済にお困りではありませんか?】
競売を回避する方法2.「任意売却」
マンションを保有しているなら、任意売却も選択肢の一つです。
任意売却は一般的な売買と同様、住宅ローンを借りている人が自分で売却する方法です。
ただし、任意売却するには銀行の許可が必要で、売れてもローンが残るなら、任意売却を認めてもらえません。(ローンが残るケースでも、銀行が売却を認める場合はある)
また、売却に時間がかかりすぎると返済の滞納が増えて状況は悪化してしまいます。
信頼できる不動産業者を探すことが重要で、たとえば任意売却を銀行に相談するとき不動産業者の紹介も頼めば、相談に乗ってもらえる場合もあります。
競売を回避する方法3.「ハウスリースバック」
また「ハウスリースバック」という方法もあります。
ハウスリースバックとは、まず専門業者がマンションを買い取ることで一括してお金を受け取り、そのあとは同じ業者と賃貸契約して、引き続きその家に住み続けることができる仕組みです。
ただし住宅ローンは全額返済するのが大前提なので、売却したあと手元にいくらお金が残るか、は人それぞれです。
また、住宅ローン返済は無くなりますが、今度は賃貸なので家賃支払いが必要になります。
ハウスリースバックは、上記したようなデメリットもあり、また始まってからまだ日の浅いサービスでトラブルも報告されているので、注意も必要です。
リースバックのトラブル事例
•強引な勧誘で契約してしまい、後々解約を申し出たら高額な違約金を請求された
•支払賃料の合計額が数年で売却価格を超えることに後々気づいた
•市場での取引価格より著しく低額な代金で売却してしまった
•当初思っていた話と実際の賃貸借条件が違い、住み続けられない
国土交通省/住宅のリースバックに関するガイドブック
まとめ
今回は住宅ローンの滞納でどのような結末となるか?そして不幸な結末を回避する方法について解説してきました。
特に競売を回避する3つの方法では「競売を回避できるかもしれない方法」と書きました。
これは、いずれの方法にも正解・不正解はなく、選択は人それぞれですし、必ず回避できるものでもないからです。
とはいえ、まずは住宅ローンの返済を滞納しないことです。
そして、もしかしたら自分にも起こるかもしれない、万が一の場合にとるべき対処法を知っておくことが、住宅ローンと上手く付き合っていくコツと言えるでしょう。