2025年問題と不動産価値の関係性!投資と売却の判断基準を専門家が解説

  2025年問題と不動産価値の関係性!投資と売却の判断基準を専門家が解説

団塊世代が75歳となり、高齢化社会にさらに拍車がかかるとされている2025年問題。一見不動産とは関係ないと思われがちですが、本記事では2025年問題がもたらす不動産業界への影響を解説していきます。

宮本建一
【執筆・監修】宮本建一

金融機関に30年あまり在籍し、預金業務や融資業務、経理事務および内部監査業務、審査管理業務を経験しました。 これらの知見をもとに、金融関連(ファクタリング、資金調達、運転資金)、FP関連(保険、不動産、介護)、および法律関連(債務整理、遺産相続)を中心に執筆しています。 また、金融機関行職員を対象とした通信講座の教材執筆にも携わっています。

【保有資格】・FP2級 ・AFP ・金融内部監査士 ・簿記2級

不動産の売却や投資において、2025年問題が大きく影響するといわれています。

2025年問題とは、団塊の世代が75歳となり、高齢者社会に拍車がかかることで発生しうる問題のことです。

本記事では、2025年問題が及ぼす不動産の価値の関係性について解説します。

不動産の売却や不動産投資を検討されている方はぜひ参考にしてください。

2025年問題の概要

2025年問題の概要

出典:総務省統計局|統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-

2025年問題とは、1947年~1949年生まれの、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となることにより付随して発生する問題のことです。

総務省の資料によると、2025年には75歳以上の人口が2,155万人と予想され、総人口1億2,326万人のおよそ17.5%、約5.7人に1人が75歳以上という超高齢化社会を迎えることとなります。

総人口の17%あまりが75歳以上となることで、医療および介護などの社会保障費が増大する点が懸念要因です。

政府は、2025年問題に対応すべく、2023年5月に「全世代社会保障法」が成立し、高齢者医療を全世代で公平に支え合うための高齢者医療制度の見直し等を行っていきます。

参考:厚生労働省|全世代型社会保障改革

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2025年問題が不動産にもたらす影響

2025年問題は不動産にどのような影響をもたらすのでしょうか。

以下の3点について解説します。

  • 高齢化に伴う空き家の増加
  • 相続登記の義務化がスタート
  • 相続不動産の売却

高齢化に伴う相続および空き家の増加

空き家は1988年以降、増加の一途をたどっています。

今後2025年以降どのように推移していくのでしょうか。

高齢者の住居形態を含め紹介します。

高齢者の住居形態

高齢者の住居形態

出典:内閣府|令和5年版高齢社会白書

令和5年版高齢社会白書によると、65歳以上の住居形態の75%あまりが持ち家一戸建てといった結果が出ています。

高齢化とともに、高齢者施設に入居することが考えられ、持ち家が空き家となる比率が増えると考えられます。

空き家の現状

出典:国土交通省|空き家政策の現状と課題及び検討の方向性

国土交通省によると、空き家の総数は、1998年~2018年の20年間で576万戸から849万戸に約1.5倍の増加となっています。

その内、二次的利用や賃貸用、または売却用の住宅を除いた長期にわたって不在の住宅である「その他空き家」においては、およそ1.9倍に増加しているのが現状です。

今後の空き家の推移および対応策

【その他空き家の推移】

【その他空き家の推移】

出典:国土交通省|空き家政策の現状と課題及び検討の方向性

2020年以降の「その他空き家」の推移について、国土交通省では、2025年には約420万戸、2030年には470万戸程度と予測しています。

増加する空き家対策として政府は令和3年3月19日、「住生活基本計画」を閣議決定しました。

「住生活基本計画」では、2030年に予測されているおよそ470万戸を400万戸程度に抑える目標を掲げています。

取り組み内容は以下の通りです。

取り組み内容 戸数
簡単な手入れにより活用可能なその他空き家の利用
(空き家継続期間10年以下等)
50万戸
管理不全の空き家除却等(空き家継続期間20年以上等) 20万戸
合計 70万戸

出典:国土交通省|空き家政策の現状と課題及び検討の方向性より筆者作成

2024年には相続登記の義務化がスタート

2024年より、相続登記の義務化がスタートします。

今まで、費用が掛かる等の理由で、相続により不動産を取得しても、相続登記の手続きを行わないケースがありました。

政府は2021年2月に、民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案(案)が決定され、同年4月21日の参議院本会議で成立し、2024年4月1日より施行します。

成立の背景には、政府として所有者が特定できないため有効な不動産活用が正当な理由がなくできなかった背景があります。

相続等にを義務化することで、所有者が確定でき、有効な土地活用のはずもいになるメリットがあります。

この法律には罰則があり、相続により、不動産の取得を知った日から3年以内に正当な理由がなく相続登記の手続きを行っていない場合、10万円以下の過料となるので注意が必要です。

参考:法務省|所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法

相続不動産の売却

相続した不動産が空き家で有効活用が難しく、管理が厳しい場合、考えられるのが相続不動産の売却です。

相続不動産を売却する場合、要件に該当すれば、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例が利用可能で、譲渡所得税が不要となる場合があります。

一方で、住宅需要の高い30代、40代の人口が減少する傾向となるため、供給が需要を上回ることとなります。

不動産の価格が下落する恐れもあるので注意が必要です。

参考:国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

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2025年問題がもたらす不動産売却の見通し

少子高齢化に伴い、30代・40代の人口が減少する中、住宅のニーズが減少し、不動産が下落していくといわれていますが本当なのでしょうか。

ここでは、不動産売却について見ていきます。

不動産価格の現状

不動産価格の現状

出典:国土交通省|不動産価格指数(令和5年7月・令和5年第2四半期分)

国土交通省が令和5年10月に発表した不動産価格指数の推移によると、2013年から住宅全体に価格の上昇が見られます。

特にマンションの価格の上昇が顕著です。

2020年以降のコロナ禍においても、不動産価格は下落することなく上昇を続けています。

住宅全体において、不動産売却には適しているといえそうです。

立地適正化計画

立地適正化計画

出典:国土交通省|立地適正化計画作成の手引き

立地適正化計画とは、2014年に政府が打ち出した計画です。

居住機能や医療・福祉・商業、公共交通等のさまざまな都市機能を誘導することで、人口が減少しても、都市機能が維持できる「コンパクトシティ」を構築する制度です。

立地適正化計画の特徴として、各自治体が都市機能を集中させるエリア(立地適正化区域)やそれ以外のエリアを区別する点があります。

立地適正化区域は「都市機能誘導区域」「居住誘導区域」に細分化して都市機能の構築を図ります。

立地適正化区域かそれ以外のエリアであるかにより、不動産の価格に大きく影響を及ぼす可能性があると考えられます。

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2025年問題がもたらす不動産投資への影響

2025年問題がもたらす不動産投資への影響について以下の4点が考えられます。

  • 空き家が増えることによる物件価値の低下
  • 入居率の低下リスク
  • エリアによって人口減少が異なる
  • 高齢者向けの賃貸需要が高くなる

それぞれ解説します。

空き家が増えることによる物件価値の低下

前述の通り、2025年には、空き家の戸数がおよそ420万戸になると予測されています。

投資物件の近隣に空き家が増えると、不動産の物件価値が低下することが考えられます。

逆に、空き家の有効活用することで不動産投資が活性化すれば、物件価値の低下を招くことが抑えられるでしょう。

不動産投資を検討する場合、投資物件近辺の状況を把握する必要があるでしょう。

入居率の低下リスク

不動産投資の中心となっているのは、アパートおよびマンション投資です。

少子高齢化が加速することで、賃貸物件へのニーズが低下することが考えられます。

賃貸物件の供給過多により空室が増え、入居率が低下するリスクが発生する恐れがあります。

エリアによって人口減少が異なる

エリアによって人口減少が異なる

出典:東京都|予測結果の概要

エリアによっては、賃貸物件の入居率の低下が起こりにくいエリアもあります。

例えば東京都の場合、区部における一般世帯数は2025年以降もほぼ横ばいに推移することが予測されています。

人口減少は世帯数の減少につながり、入居率の低下の原因となるのが一般的です。

一方で、エリアによっては一定の住宅需要があります。

東京都の事例より明らかです。

不動産投資を行う場合、投資物件エリアの世帯数が、今後どのように推移するのかを十分考慮することが重要です。

高齢者向けの賃貸需要が高くなる

高齢化社会が進んでいくことで、高齢者向けの賃貸住宅の需要が高くなります。

需要に対応するため、高齢者が安心して暮らせるように工夫された賃貸物件に人気が集まるでしょう。

具体例として、身体機能の低下に対応したバリアフリーに対応した、低層階の賃貸マンションがあります。

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まとめ

2025年問題は、高齢化社会を加速するだけでなく、不動産の価格にも大きく影響します。

空き家の増加や相続不動産の売却による供給過多、および住居需要の低下により、不動産価格は下落するのが一般的です。

一方で、高齢者向けの賃貸需要や都市部での世帯数の推移、立地適正化計画により、不動産評価がさほど下落しない側面もあわせ持っています。

不動産の売却や投資において、該当エリアがどのような状況であるのか注視して行動を取ることが重要でしょう。

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