田舎の土地活用は、都市部での土地活用と同じ感覚で取り組むと失敗します。
土地活用ビジネスの代表例はアパートや賃貸マンションの経営ですが、田舎では需要が見込めるとは限らず、利益が出ない可能性もあります。
その地域の特性に合わせた土地活用方法を探ることが利益を出すための秘訣です。
田舎の土地活用が難しい理由
田舎の土地を相続したけど、使い道がなくて困っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
使い道のない空き地を所有しているだけでは、固定資産税や管理コストがかかるだけの負動産になってしまいます。
そこで、田舎の土地を活用してビジネスを行い、利益を上げたいと思う方も多いと思います。
しかし、田舎だと、土地活用もうまくいかないこともあります。
田舎の土地活用が難しい理由を見ていきましょう。
田舎の土地活用が難しい理由1 需要がない
田舎だと、人口が少ない上に高齢化が深刻なところが多く、そもそも、ビジネスの需要が少ないことが最大のネックです。
また、交通の便も悪いため、魅力的な観光資源がない限り、観光客相手のビジネスも成り立ちません。
企業なども地元の中小企業がほとんどなので、従業員を目当てにしたビジネスも成り立ちにくいです。
需要が限られている中で、何をやればビジネスとして成り立つのか、入念な検討が必要です。
田舎の土地活用が難しい理由2 法規制が厳しい
田舎の土地は、土地関係の法律により用途が限定されていることが多く、土地を活用したビジネスを展開しにくいことが挙げられます。
代表例が都市計画法により、市街化調整区域に指定されていて、むやみに建物を建てられないケースです。(都市計画法7条)
また、農地法による農地に該当する場合は、農地以外の用途に転用するには都道府県知事の許可が必要になるなどの大変厳しい制約が課せられています。(農地法4条)
そのため、田舎の土地活用を検討する場合は、土地の現状を維持したまま活用できる方法を検討することが基本になります。
田舎の土地活用が難しい理由3 コストがかかる
田舎の土地を活用して、ビジネスを始めるには土地の整備や整地からスタートしなければなりませんが、田舎の土地は条件が良くない上に、面積が広すぎるケースもあり、整備のために多大なコストがかかることも珍しくありません。
土石流災害の危険がある土地だと、盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)により、土地の整備の段階から様々な制約を受けてしまうこともあります。
田舎の土地活用によるメリット
田舎の土地を活用した何らかのビジネスを始めた場合は、様々なメリットが得られます。
税負担や管理コストを相殺できる
田舎の土地を活用したビジネスによりわずかでも利益を得られれば、その利益から、固定資産税や土地の管理コストを出すことができ、土地を持っていても得も損もしない状態を維持できます。
大きな利益が得られれば、税負担や管理コストを相殺するばかりでなく、安定した副収入や不労所得になります。
地域への貢献につながる
ビジネスの内容によっては、土地周辺の利便性が高まったり、新たな需要を呼び込んだりして、地域への貢献につながることもあります。
田舎の土地周辺の人たちに話を聞いて、困っていることやこんなのがあったらいいなといった話をヒントに土地活用方法を検討しましょう。
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田舎の土地活用によるデメリット
田舎の土地を活用したビジネスを始めるにしても様々なデメリットもあります。
初期投資回収不能のリスク
田舎の土地を活用してビジネスを始めても需要が少ないため、見込んでいた利益が得られない可能性も高いです。
特に、多額の初期投資を行うビジネスの場合は、初期投資が回収不能となるリスクも考えられます。
やはり、田舎の土地活用では、初期投資を抑えることがポイントです。
周辺住民からの反対や反発
田舎の土地を活用したビジネスを始めるには、近隣の住民の理解を得ておくことが大切です。
近隣の住民に前もって話しておけば、協力してくれることもあり、ビジネスが軌道に乗りやすくなります。
根回しをせずにいきなり勝手に土地活用ビジネスを始めてしまうと、反対や反発の声が出たりして、利益が出るどころではなくなってしまいます。
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田舎の土地活用ビジネス10選
それでは、田舎の土地を活用してどのようなビジネスを展開すれば利益が得られるのか検討していきましょう。
農地なら貸し農園・市民農園経営
田舎の土地が農地なら農地のまま活用を検討するのがベストです。
自分で農地を経営できない場合は、農地を探している人に貸しましょう。
周辺も農地ならば、農地の拡張を考えている人がないか、声をかけてみましょう。
周辺に借りてくれる人がいない場合は、農地中間管理機構(農地バンク)を介して借り手を見つける方法もあります。
農業をやっている人が借りてくれれば、農地を荒らさずに済みますし、コメなどの収穫物を一定量得られる上、収入も期待できます。
借り手がいない場合の第二の選択肢として上がるのが貸し農園・市民農園の経営です。
貸し農園や市民農園は、プロの農家ではなく、農業経験をしたい一般の方に貸し出す形態ですが、借りた方から一定の利用料を得ることができます。
大きな利益は期待できませんが、農地を未活用のまま放置するよりは可能性があるでしょう。
空家なら戸建て賃貸経営
田舎の土地に一戸建てが建っているなら、一戸建てを活用したビジネスを検討しましょう。
一戸建てがいわゆる古民家であれば、古民家の良さを生かしたリフォームを行なえば、借り手が付きやすくなります。
田舎暮らしにあこがれる方は増えていますし、二拠点生活といい、田舎に別荘のような建物を借りる生活をしている方もいます。
田舎の物件の仲介を専門に行う不動産会社もあるので、どのような方向性がよいか、相談してみるとよいでしょう。
空家を活用した民泊経営
田舎の土地に一戸建てが建っている場合のもう一つのビジネスとして民泊経営が挙げられます。
その地域に外国人観光客にも注目されている観光資源がある場合は、戸建て賃貸経営よりも、民泊経営の方が利益を出せる可能性があります。
ただ、民泊経営ではいくつか注意点があります。
まず、民泊は、一年の半分しか経営が認められないという180日ルールがあることです。
残りの半年はどのようにして利益を上げるべきか検討が必要です。
また、民泊は戸建て賃貸と異なり、貸しっ放しにするわけにはいきません。
宿泊施設と同じですから、定期的な清掃や管理が必要です。
さらに、外国人観光客をターゲットとする場合、利用方法についてよく周知しないと、近所の人たちとトラブルになります。
空家をサブスク住宅として活用する
サブスクとは、サブスクリプションの略称で、一定の料金を支払って、商品やサービスを利用するビジネスモデルのことです。
商品を所有するのではなく、利用するだけなので、気軽に契約できる点が注目されていて、車のサブスクといったサービスもあります。
住宅もサブスクの形態で借りるケースが増えています。
賃貸物件を借りるよりも手続きが簡単で費用も抑えられることから、特に、テレワーク(リモートワーク)が可能な職種の間で、ワーケーション(観光地などで休暇を取りながらテレワークする働き方)の拠点としての利用が広がっています。
田舎でも観光地が近くにあるなら、民泊経営と共に有望な土地と空家の活用方法です。
空家を活用した高齢者向け介護施設の経営
田舎の土地に一戸建てが建っている場合で、その一戸建てが十分な広さを有している場合に検討できる活用方法が高齢者向け介護施設の経営です。
高齢者向け介護施設の代表例は、デイサービスです。
それなりの広さがあれば、普通の一戸建てをリフォームしてデイサービス用の施設にすることもできます。
ただ、デイサービスは、原則として、市街化区域内でなければ設置が難しいため、事前によく調査し、自治体とも相談しましょう。
デイサービス以外には、サービス付き高齢者向け住宅、老人ホームとしての活用も考えられますが、いずれも事前調査や自治体への相談が大切です。
駐車場経営
空家がなく、農地でもない更地の活用方法としてオーソドックスなのが、駐車場経営です。
田舎の場合、車がなければ生活できない地域が多く、家族が一人ずつ車を所有していることも珍しくなく、駐車スペースがなくて困っている家庭もあります。
そのため、空き地を放置するよりは、月極駐車場として貸し出した方がそれなりの利益が見込めます。
田舎といっても商業施設や中心部に近い立地ならば、コインパーキングとして貸し出す形態も有望です。
コンビニ・自動販売機経営
田舎の土地が大規模な更地で国道などのメイン道路に面している場合に有望なのが、コンビニや自動販売機経営です。
大型トラックも駐車できるスペースがあれば、トラック運転手が休憩場所として活用してくれることもあります。
営業車が昼間の休憩に立ち寄ることも想定できます。
トラックや車を留めるだけでは、土地所有者に利益はありませんが、自動販売機経営を合わせて行っていれば、利益が見込めます。
飲み物だけでなく、食べ物も提供できるようにすると、より大きな利益が期待できます。
自動販売機経営で需要が見込めることが分かったら、コンビニ経営に拡張していくことも検討してよいでしょう。
コインランドリー経営
田舎でも需要があるのがコインランドリーです。
特に雪国だと冬は洗濯物を外に干せないため、コインランドリーの需要は高いです。
家庭では洗濯しにくい毛布やふとんの洗濯需要は、どの地域でもありますし、田舎の場合、車で持ち運びするのがスタンダードですから、中心部に立地していなくてもそれなりの需要が見込めます。
まずは、小さく始めて、需要が見込めたら規模を拡張していきましょう。
キャンプ場経営
田舎の土地が山奥にあると、さすがに活用方法はないだろうとお考えかもしれませんが、意外に需要があるのがキャンプ場経営です。
焼き場を提供するだけのキャンプ場なら、飲食店業の許可は必要ないですし、利用者が自分でテントを張って宿泊することが前提なら、旅館業法の許可も必要なく手軽に始められます。
キャンプ場だけでなく、山林の地形を活用したアスレチック施設、サバイバルゲーム場といったエンターテインメント施設と併設するとより集客が見込めます。
山奥という不利な条件をメリットに変えてしまう土地活用方法なので、ぜひ、検討してみてください。
太陽光発電
田舎の土地が広大ならば、太陽光発電パネルを並べて、売電するビジネスも有望です。
日当たりが良ければ山奥でも設置できますし、農地でも、営農型太陽光発電といい、農地の間に支柱を立てて、上部空間を活用して太陽光発電パネルを設置する方法もあります。
ただ、太陽光発電パネルの設置は山林を破壊し、土砂災害の原因になっているとの報道もあるため、地元の理解を得ることが大切です。
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戸建て賃貸経営、民泊経営、サブスク住宅、高齢者向け介護施設の経営はいずれも、空き家を活用することを前提にしています。
需要が見込まれるか予測できない状況でこうした建物を新築してしまうのは大変なリスクを伴います。
コンビニ・自動販売機経営やコインランドリー経営も小さな規模でスタートし、需要に応じて拡張するのが失敗しないコツです。
まとめ
田舎の土地を活用してビジネスを始めたいと考えている方は、まず、田舎の土地活用に詳しい専門家に相談するのが賢明です。
また、地元の不動産会社にも相談し、どのような土地活用方法が有望かヒントを教えてもらうとよいでしょう。
実際に、土地活用の方向性が決まったら、近隣の人たちに挨拶し、協力してもらえる関係を築くことも大切です。
参考:【田舎の土地でも諦めない!】おすすめの土地活用アイデア5選