現役銀行員が出会った瑕疵物件|変な物件、ヤバい物件

  現役銀行員が出会った瑕疵物件|変な物件、ヤバい物件

約30年の銀行員経験の中で、実際にあったヤバイ不動産をご紹介していきます。契約後では取り返しがつかない最悪のケースもあるので、事前に知識として蓄えておきましょう。これから自宅を手に入れようと考えている方、不動産投資を検討している方に少しでもお役立ていただければ幸いです。

加藤 隆二
【執筆・監修】加藤 隆二

渉外融資担当経験を勤続30年以上。 業績良好な事業性・個人ローン貸出取り扱いから業績不振・リストラ等での法人・個人リスケまで、融資関連の入り口から出口まで経験あり。

【保有資格】ファイナンシャルプランナー

わたしは勤続30年の銀行員です。

長く銀行員をしていると、仕事のなかでさまざまな不動産に出会います。

その中には「瑕疵(かし)物件」つまり「キズ物の不動産」もいくつかありました。

そこで今回は、銀行員が困るようなヤバい不動産を紹介していきます。

これから自宅を手に入れようと考えている人、あるいは不動産投資を検討している人も、ぜひ参考にしてください。

この記事を読むとわかること
  • 不動産における瑕疵とは?
  • 銀行員が出会った瑕疵不動産〜ヤバい物件5選

はじめに不動産の瑕疵を知ろう

ヤバい不動産の実例紹介に入る前に、まずはじめは「不動産の瑕疵」について知りましょう。そのほうが、これから説明する実例がどのくらいヤバいか?が実感できると思います。

(*2020年の民法改正により「瑕疵」は「契約不適合」に、そして「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へと改正され、その定義や取扱いも変わっています。しかしながら、まだまだ一般的に用語として通用している「瑕疵」「瑕疵担保責任」のほうが理解しやすいので、この記事ではそのまま使用しています。不動産に関する民法改正については、こちらにわかりやすく説明されていますので、興味のある人は参考にしてください)

参照:一般財団法人住宅金融普及協会  瑕疵担保責任から契約不適合責任へ

不動産の瑕疵とは?~言葉の意味

瑕疵(かし)とは「通常なら当然あるべき機能が備わっていないこと」で、欠陥と同じ意味です。

ここから、不動産の瑕疵とは「物件(土地や建物)に何かしらのキズ(瑕疵)があること」を意味します。

銀行融資で不動産を担保にする場合、こうした瑕疵は重要な問題になります。瑕疵の程度にもよりますが、担保の評価額が下がってしまい希望した融資額に足りなくなったり、最悪の場合は融資を受けられなくなったりしてしまいます。

不動産の売買では、不動産の瑕疵を買主が承知し納得していれば取引は成立しますが、銀行の担保とする場合はハードルになる可能性もあるのです。

不動産という大きな買い物では、多くのケースで融資が必要になるので、瑕疵についてはしっかり確認する必要があります。

また自己資金で購入するとしても、これから自分のものとなる不動産に瑕疵があるのか?瑕疵があるならその「ヤバさのレベル」はどのくらいか?を確認せずに取引すべきでないことは、言うまでもありません。

(法改正で「瑕疵」の表現が「種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない状態」へと変わっていますが、その意味するところは同じです)

参照:一般財団法人住宅金融普及協会  瑕疵担保責任から契約不適合責任へ

不動産の瑕疵~「瑕疵担保責任」とは?

「瑕疵担保責任」という言葉を、聞いたことはあるでしょうか?

瑕疵担保責任とは「不動産の売買取引で瑕疵が判明したとき、不動産の売主が負うべき責任」といった意味です。

こちらも民法改正により取扱いが変更されました。

まず表現が「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」となり、取扱いも変わっています。

そこで瑕疵担保責任と契約不適合責任を比較した表を引用しました。

改正前民法の瑕疵担保責任 改正民法の契約不適合責任
責任の性質 法定責任 債務不履行責任
責任対象 「隠れた瑕疵」が前提 契約不適合には「隠れた」は不要
損害賠償 帰責事由は不要 帰責事由が必要
契約解除 契約目的が達成できない場合に限り解除が可能。
帰責事由は不要。
帰責事由が必要契約の目的が不達成との要件はなく、
軽微なものではない限り解除は可能。
修補請求権 なし あり
代金減額請求権 なし あり
責任の保全 知った時から1年以内に権利行使が必要 知った時から1年以内に契約不適合を通知すれば足りる

参照:一般財団法人住宅金融普及協会  瑕疵担保責任から契約不適合責任へ

上表をすべて説明すると、内容が法解釈寄りになってしまいますので割愛しますが、瑕疵についての責任やその時期などで買主が不利益とならずに、安心して不動産を購入できるような改正となっているようです。

とはいえ、不動産を購入する側がもっとも気になるのは、自分が損せずに契約を解除できるか?という点でしょう。

法改正前の瑕疵担保責任は、売買の当事者間で不公平とならないように、定められたきまりごとでした。

以前の瑕疵担保責任では「隠れた瑕疵」(売主も知らなかった瑕疵)に限って、売主の責任が発生するとされていましたが、契約不適合責任では隠れた瑕疵との限定はなく、瑕疵全体になっているのが大きな変更部分で、ここでも買主を保護する目的が強い変更になっていることがわかります。

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不動産の瑕疵~銀行員は不動産契約書類をこう読みます

銀行員は売買契約書や重要事項説明書をうしろから逆に読みます。

売買契約書(銀行では売契・バイケイとも呼びます)や重要事項説明書(こちらは重説・ジュウセツ)では、瑕疵については、ほとんどの場合、後半から最後の部分で説明されています。瑕疵は「特約条項」「別紙」「状況報告書」といった箇所にあり、こうした記述がこと細かであるほど銀行員としてはむしろ安心です。

それとは逆に、説明がなにもない場合は、書類を疑いの目で見ることもあります。

不動産業者が物件の売買で、銀行に住宅ローンを紹介することはよくあります。

そしてこのとき、まだ契約前なので顧客の署名捺印がない契約書(「ひな型」と呼びます)を提出するケースもあります。しかしその場合、住宅ローンを融資するまでに、契約後の正式な書類提出が必須となります。

そして事前のものと契約書の内容が変わり、瑕疵などが発覚した場合には審査のやり直しや、融資ができなくなることもあります。

また、署名捺印がある正式書類のコピーであっても、都合の悪いページを悪質な業者が隠蔽する場合もあります。

これは私の経験ですが、FAXで送られてきた契約書を通し番号(例:15/35→全35ページの15ページ目と言う意味)を並べたら、1ページだけ抜けているのを発見したことがあります。

案の定というか、抜けていたページには重大な瑕疵の記載があり、結果的にその融資はお断りしました。

このようなケースは極端な例ですが、銀行提出書類で虚偽や隠ぺいをする業者が信頼できないのは言うまでもありませんので、注意してください。

(ツメが甘いこの業者は、意図的に都合の悪いページを隠蔽したことがわかり、私の勤務する銀行では要注意扱いとなりました)

不動産の瑕疵~あとから審査がダメになる場合も

前項で説明した通り、ローンの審査では未完成の契約書などの資料で審査を進めることもあります。

ここで上記のような瑕疵について、隠蔽とまでいかなくても、結果として銀行が知らなかったことで、あとから担保評価が下がってしまい、ローンが満額おりなかったり、最悪審査がダメになったりすることすらありますので、ここはぜひ覚えておいて下さい。

たとえば銀行が発行する書類に「融資証明(業者に対してローンの審査がほぼ通ったと証明するもの)」がありますが、こちらの証明書には注意書きとして「現時点で入手している情報をもとに審査した結果であり、不動産に瑕疵があった場合などは審査結果を取り消すこともあり得る」と書かれている場合が多いのです。

銀行が融資や住宅ローンで不動産を担保にするのは、返済できなくなった場合には担保になっている不動産を売却して融資を回収するからです(これを「担保権の行使」と言います)。

銀行が担保を評価するときには、売却することを想定して不動産に値踏みします。

したがって処分できる不動産、つまり他人に売れる物件でなければ、担保にしないのが大原則なのです。

銀行の不動産評価は厳正で、物件の現状から法律など多方面でまさに「微に入り細を穿つ」ように綿密な調査をします。

そこで、もし銀行から「この不動産には瑕疵があります」と言われたなら、この物件はそのままでは売れないという意味になります。

そして銀行が担保にできなければ、住宅ローンなら融資を受けられなくなる恐れもあります。

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銀行員が出会った瑕疵不動産~ヤバい物件5選

では、ここから銀行員が見た瑕疵不動産「ヤバい物件」を紹介していきます。

ただしヤバいといっても、現実には不動産として取引されているので、違法という意味ではありません。

ここまで説明したような、あくまで銀行として担保にできない物件という意味であり、基本的には建築基準法に照らし問題がある物件とイメージして下さい。

参照:国土交通省/建築関係法の概要

ヤバい物件1:自分の家は5年後に消滅?

私の窓口に「自宅を建てるための土地を見つけた」と住宅ローン相談のお客様が来ました。

持参された重要事項説明書には特約条項として次のような記載がありました。

「この土地は大規模開発予定地で、開発が開始された場合は速やかに土地を相当の価格で売り渡すことを条件に、それまでのあいだは家を建てて住んでも良い」

そこで私が確認すると、大規模開発計画とは、5年以内に公共施設を建てるという内容でした。

この点をお客様に聞いてみたところ、なんとお客様はこの事実を知らなかった!のです。

良く聞いてみると、物件について業者と話しを進めていくなかで、書類の記載事項などをよく読まずに、ただハンコを押しただけだったことが判明しました。

とはいえ、不動産取引について第三者の銀行員が面と向かって指摘をすると、契約妨害だと言われかねないので、私も対応に困りました。

そしてどうなった?~この物件の結末

この業者が悪質なのは明白でしたので、お客様を応接に通し、1対1でお話しすることにしました。

そして「私は仕事中にひとりごとが多いと上司に叱られていますが、そうなったらすみません。では今から独り言を言います」と前置きし、この物件を買うべきではないことを説明しました。

お客様は理解してくださり、物件購入を思いとどまってくれました。

数ヶ月後、別の不動産屋さんに頼んで、良い物件が見つかったと相談にいらっしゃいました。経験が活かされたのか、今度は問題のない土地でした。

その日は小学生のお子さんと一緒にいらっしゃった。

そこで私(少し意地悪に)「お子さんが大人になるまで住める土地で良かったですね!」

お客様(照れくさそうに)「ためになるひとりごと、ありがとうございました」

と最後はお礼の言葉を頂きました。

ヤバい物件2:道がつながるはずだったのに

こちらは、資産家の人が相続対策として土地を買い、アパートを建てるという融資相談です。

購入予定の土地は、そのとき道路(建築基準法上の道路・詳細後述)につながっていませんでしたが、半年以内には目の前を市道が通る計画になっていました。

ところが直後に市予算の関係で、市道計画が無期限延長となってしまったのです。

結局、その土地は道路がつながるまで建物建築ができなくなってしまいました。

土地の上に建物を建てる行為はいくつかの法律により規制されています。こうして法律の代表格が「建築基準法」で、道路に関するルールが定められています。

道路に関するルール 建築基準法

敷地(土地をこう表現)は道路に2m以上接していないと建物は建築できない建築基準法でいう道路は幅員(道路の幅)4m以上で、主なものは下記のとおり。

・道路法による道路(いわゆる公道)

・都市計画法や土地区画整理法又は都市再開発法等による道路

・既存道路(昭和25年11月23日において既にあった道、現に一般の用に供しているもの)

・都市計画法・土地区画整理法等による新設又は変更の事業計画のある道路で、2年以内にその事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したもの

・みなし道路 (*) *幅員が4m未満でも、 建築基準法の施行前から建物が立ち並んでいる道で特定行政庁の指定するものは建物建築が可能

道路に関する規定は建築基準法では第42条の条項で定められています。この点から、建築業界や銀行などでは道路を

  • 「(42条を略して)1項1号道路」(上表の1.公道)
  • 「42条2項道路」(上表の5.みなし道路)

などと呼んでいます。

参照:名古屋市  知っておきたい建築の法規  〔1〕敷地と道路

そしてどうなった?~この物件の結末

この話しでは、本来の予定は1年後にアパートが完成し家賃で返済する計画になっていました。

結果的に道路が通じず建物建築が不可能となり、いつ可能となるか?も見通しが立ちません。しかし、土地の重要事項説明書には「道路の計画は延長あるいは変更される場合もあります」という説明があり、それを承知のうえで契約していましたので、売主にも不動産業者にも落ち度はない、つまり瑕疵担保責任(契約不適合責任)がないということで、売買を取り消すことはできませんでした。

このとき銀行は、道路がつながるという前提で土地を評価し、融資をしていました。

しかしお客様はアパート建築ができなくなり、かといってその土地を他に売ることもできず、幸いにも資産家だったお客様は価値がゼロとなった土地のローン返済を続けました。

このケースでは、道路の計画が変更になるという想定外の事態が起きたのですが、売主、不動産業者もまさかそんなことになるとは想像しておらず、お客様も相手に不満をぶつけることはできませんでした。そして、想定外という点ではローンを扱った銀行員の私も同感でした。

その後数年たってから道路計画が元通りに進み、やっとアパート建築ができたと聞き、ホッとしたことを、今でも鮮明に覚えています。

ヤバい物件3:役所に内緒で増改築

こちらは中古のマンションビルを一棟まるごと購入するというケースです。

それまでのオーナーが鷹揚(悪く言えば大雑把)な人だったようで、増改築などし放題の、いわば「違法建築の見本」のような建物でした。

たとえば:

  • ベランダにコンクリート製の大きな犬小屋が作りつけてある
  • ビル一階の駐車場部分に、あとからラーメン店が作られていた
  • ビルの屋上にこぢんまりとした家が建っている
  • ビルの後ろ、隣のビルとの隙間(幅2メートル)に部屋数分の倉庫がある

これらの増改築は、すべてがしっかりとした構造で、登記が必要なものばかりでした。

そして増改築を登記すると、建ぺい率(建蔽率)や容積率が基準を超え、つまり違法建築となります。

このケースでは予想通り、増築などの登記をまったくおこなっていませんでした。

と言うより、届け出ても許可されないことは明白なので役所に内緒で増改築したのでした。

これら内緒の増改築は、当時銀行の担保書類を点検する部署にいた私が、融資をしたあとの書類チェックで重要事項説明書の記載事項の中から発見しました。

建物は、その土地の属する地域の決まり(用途地域といい、建てられる建築物の種類や建ぺい率、容積率がそれぞれ定められている)どおりに建てなければいけません。

たとえば一般的な個人住宅を建てられる地域(用途地域では第一種住居地域、第二種住居地域など)なら建ぺい率は60%、容積率は200%と決められています。

ちなみに建ぺい率とは「土地面積に対する建物面積の割合」です。

土地を上空から見下ろすイメージで、平面で100㎡の土地に床面積60㎡の建物を建てると建ぺい率は60%となります。

いっぽう容積率は「敷地面積に対する建物の立体的な容積比率」のことです。

こちらは3次元の立体的イメージで、土地面積100㎡の土地に総面積200㎡の建物を建てると容積率は200%になります。

建ぺい率は2次元(平面)、容積率は3次元(立体)と覚えておいてください。

参照:名古屋市 知っておきたい建築の法規 〔5〕建ぺい率制限

参照:名古屋市  知っておきたい建築の法規  〔6〕容積率制限

このケースでは、知らなかったのは銀行員だけという点が問題でした。

ビル売買の話しを進める中で、売主は正直に増築などについて申告し、不動産業者も重要事項説明書にしっかり記載し説明していました。そして買主であるお客様もこうした説明を受け、理解納得したうえで融資を申し込んでいたのです。

しかし、融資の審査段階で重要事項説明書をもらっていた担当銀行員は、重要事項説明書を読むこともせず、その結果担保調査でも増築に気づくことはありませんでした。

この点は、書類チェックで違法な増築に気づいた私が担当者に問いただし発覚したのですが、銀行としては大問題になりました。

建ぺい率や容積率が基準を超えている違法建築物は、銀行の担保に不適格で、最悪融資はできません。こうした場合、違法状態を是正(増築部分を撤去するなど)することを求めるのが一般的です。

しかし、今回のケースでは違法な増築を見落として(銀行では看過と表現します)融資してしまいました。融資する前に気づいていれば、是正を求めることも可能でしたが、こうなるともう「あとの祭り」です。

そしてどうなった?~この物件の結末

担当者は是正を求めましたが揉めました。

なぜなら今回の増改築については売主、不動産業者、お客様は全員承知しているのに銀行員だけ知らなかったわけです。

しかも、重要事項説明書事前に銀行へ提出してあったので、知りませんでしたという銀行員の説明にお客様は納得しませんでした。(私もお客様なら納得などできません)

お客様との交渉は難航しましたが、最終的に不足した担保を補うためお客様の実家を追加の担保にすることで決着しました。しかしその後、今回の銀行対応に不満を抱いたお客様は、結局他の銀行で借り換えし、取引はなくなってしまいました。

ちなみに担当した銀行員は、さすがにクビにはなりませんでしたが、同期より出世は遅れていると聞いています。往々にしてこのように「やらかしてしまった」社員の出世が遅くなるのは銀行も他の企業と変わりません。

ヤバい物件4:由緒正しいオマケがついてくる

これは大きな幹線道路沿いの土地を買って、レストランを建てたケースです。

この土地には、道路から見て奥のほうに古い祠(ほこら)がありました。神社ほどの規模ではありませんが、地元では由緒正しい土地神様のようで、ときどき近所の人がお参りしているような場所でした。

この土地の売買条件の中に「祠はそのままで、これからも大事にする」という一文があったそうです。

購入したお客様は工事も終わり、レストランも無事オープンしましたが、結果として長続きせず、店をたたむことになってしまいました。

そしてどうなった?~この物件の結末

店の経営や客入りなど、うまくいかなかった原因はそのあたりなのでしょうが、私にはどうしても「やっぱり神様を大事にしなかったからかなあ?」という思いが拭いきれませんでした。というのも、そのあと土地を購入した店が神様を大事にした御利益からか?大繁盛したからです。

最初のお客様が店をたたんだあと、次にその土地を購入した人は、同じようにレストランを建てましたが、このときの工事で祠までの参道をわざわざ新しく作ったそうです。

その結果、この祠に向かう参道が駐車場のど真ん中を突っ切る形で残りましたので、せっかくの広い駐車場が半分に分断された形になってしまいました。

しかし、駐車場の利便性が下がったはずなのに、レストランの客入りは良く店も繁盛しているようです。

成功の原因はもちろん経営手腕によるところが大きいのでしょうが、このように土地の神様を大事にする姿勢は地元民にも歓迎されるでしょうから、来店客増加にもつながっているはずです。詳しく述べると特定されてしまうので場所は言えませんが、神様との相性も良かったのかも知れません。

ヤバい物件5:病院や学校は敬遠されがち~瑕疵ではないけどイヤ

最後は、山奥の分校跡を買取り、ドッグラン付きの宿泊施設を運営したいという話しです。

事業計画などはそれほど問題がない反面、担保としての評価はほぼゼロでしたが、それは使い勝手が悪いからです。

学校以外にも病院や寺社などは総じて建物と土地の規模が大きく、また建物自体も特殊な構造になっていることがあり、一般的に売買するのが難しいとされています。

それとは別に、そもそも病院や学校は補助金、助成金などで運営し、資金が潤沢で借金する必要が無いので、つまり銀行から借金して不動産を担保にする必要もない、というこれまでの実態もありました。

しかしながら、最近は競争も激しくなり、たとえばお寺が本堂を新しくするために銀行から融資を受けるケースも増えています。そしてこのさいお寺の敷地を担保にするのですが、その中にはお墓も含まれることがあり、お寺が破綻したために問題となるケースが時々報道されることもあります。

このケースでは、銀行は違法な取り扱いをしているわけではないのですが、結果的には「銀行が先祖代々のお墓を借金のカタに取り上げた」と叩かれる場合もあります。

こういった理由もあって、寺社、病院や学校などは銀行の担保には向いていないのです。

そしてどうなった?~この物件の結末

担保価値が無く、融資審査は難航しましたが、幸いこの人は手広く宿泊施設を運営していましたので、他の物件を担保に追加することで、無事融資を受けることができました。

ところで銀行の不動産担保では「嫌悪施設」と呼ばれる物件があります。

ひとことで言うと「周りから嫌がられるモノ」といった意味で、鉄道、産廃処理場、養豚場、墓地などがあげられます。

もちろんこれは違法と言う意味ではなく、あくまで銀行に担保評価では近くにこうした物件があると価値が下がってしまうのです。

たとえばひっきりなしに電車が通る線路沿いや踏切の近く、駅近でも線路際だと騒音が問題となります。

産廃処理場や養豚場など畜産施設で匂いが気になります。もっとも養豚場が住宅地にできたのではなく、以前には人里離れた場所だったのに、宅地化が進んだ結果住宅街に取り込まれてしまったケースもあります。

そして墓地は心理的に嫌悪される代表格で、この点では病院も含まれることがあります。

また、学校も嫌悪施設になってしまう場合があります。

たとえば休み時間や放課後の賑わいを人によっては「騒音」と感じることもあるでしょうし、校庭の砂ぼこりが問題になっていると聞いたこともあります。

こうした嫌悪施設は、瑕疵まではいかなくても、人によっては深刻な問題となるのです。

【参考】心理的瑕疵について

ところでいわゆる「心理的瑕疵」は、私の勤務する銀行では担保評価にあまり影響しません。これは、科学的根拠がハッキリしない精神的なものは、人によって感じ方が違うので数値化しにくいという理由からです。

たとえばいわゆる「事故物件」についての記載を目にしたことは何度もあります。

「住人が室内で首をつって死亡」

「〇〇号室で殺人事件が発生し、1名死亡」

「住人が風呂場で死亡し、数ヶ月後に発見された」

こうした記述も重要事項説明書に記載(※)があります。

(※ これら事件・事故についての記載は告知事項と呼ばれ、不動産取引においては、直後に購入する人には告知する義務があっても、その次の購入者には伝える義務がないといった慣習があり、問題ともなっています。またそうした事故物件の情報を専門にあつかうサイトもあり、購入希望者だけでなく、不動産業者も利用しています)

仮にこうした事故物件だとわかっても、住みたいとその人が思えば取引は成立しますし、銀行でも「あの部屋には出る」といった要素が担保評価を左右することはありません。

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まとめ

今回は「瑕疵」についてお話ししてきました。

ここまでをまとめると次のようになります。

  • 瑕疵とは不動産のキズ
  • キズがある不動産はそのキズを直さなければ銀行は担保にできない
  • 担保にできなければ融資を受けられないのでキズを直すか、他のキズがない担保が必要
  • 物理的、法律的な瑕疵があり、直せるキズと直せないキズがあるので注意が必要
  • 心理的瑕疵は深刻な問題になることもあるが、銀行の担保評価には影響しない

そしていちばん強くお伝えしたいのは、

まとめ・ポイント

いろいろな瑕疵を説明している重要事項説明書は重要

と言う点です。

銀行は、融資するからといって、瑕疵があることを騒ぎたてたり強権発動したりすることはありません。同様に瑕疵があり売買が上手くいかなくても、銀行は一切関与しません。

ですから、重要事項説明書はそれこそ「穴が空くほど」良く見てください。

そして、自分だけではわからず判断に迷うときは、なるべく早い段階で銀行員に重要事項説明書を見せるようにおすすめします。

「融資に審査にマイナスとなるんじゃないか?」

「いろいろチェックされて断わられるんじゃないか?」

こういったことを心配するより、大きな買い物をして痛手を負うことのほうがもっと一大事です。

銀行員なら、自分が欲しい物件を専門家の目で厳しくチェックしてもらえる(しかもタダで)と考えてみてはいかがでしょう。

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