省エネ基準適合の義務化は住宅が消費するエネルギーをゼロに近づけ、脱炭素社会を実現させる政策です。
基準は段階的に引き上げられ、基準を満たしていない住宅は建てることができなくなります。
この記事では、省エネ基準適合とは何かや必要性、省エネ住宅の種類、適合のメリット、利用する際のお得な情報まで、詳細にわたって解説しています。
省エネ基準適合がもたらす経済的メリットや注意点も含め、これから省エネ住宅の取得を検討中の方に必要な情報を盛り込みました。
この記事を最後まで読めば、省エネ基準適合の義務化について理解が進み、高品質な住宅取得やリフォームをスムーズに計画できます。
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省エネ基準とは
住宅に関する省エネ基準(正式名称:省エネルギー基準)は、家の設計、建築、改修段階からエネルギー効率を高めるために国が定めたガイドラインです。
これらの基準は、住宅が消費するエネルギー量を減少させ、快適な居住環境を維持しつつ環境負荷を低減することを目的としています。
2021年10月22日の閣議で、地球温暖化対策推進法に基づく政府の総合計画として、2025年4月から「省エネ基準適合の義務化」が決定しました。
この章では、「省エネ基準適合の義務化」について詳しく解説します。
省エネ基準適合を義務化する必要性
2030年度は、温室効果ガスを2013年度に比べて46%削減、さらに2050年までには80%の削減を目指しています。
この目標実現のための施策が、住宅に関する「省エネ基準適合の義務化」です。
引用元:環境省|2050年カーボンニュートラルに向けた日本の気候変動対策
省エネ住宅には2つの基準がある
省エネ住宅に関する基準には「外皮性能」と「一次エネルギー消費量」があります。
外皮性能(断熱性能)
外皮とは、住宅の壁・床・屋根・天井・窓などのことです。
外皮性能には「外皮平均熱貫流率(UA)」と「冷房期の平均日射熱取得率(ηAC)」という2つの基準があります。
UA(ユーエー)値は、住宅の中から壁や床など外皮を通過して外へ逃げる熱量を、外皮全体の面積で平均した値です。
ηAC(イータエーシー)値は、窓から直接入ってきたり、日射の影響で熱伝導により壁などから入ってきたりした熱量を冷房期間で平均し、外皮全体の面積で割った値です。
どちらも数値が小さいほど快適な住環境が保て、数値によって等級が変わります。
温暖地や寒冷地では大きな差があるため、8つの地域にわけて地域ごとの基準値を定めています。
一次エネルギー消費量
一次エネルギーとは、加工されていないエネルギーのことで、石油や天然ガス、石炭などの採掘資源や、太陽光、水力、風力などの再生可能エネルギー、原子力エネルギーも含みます。
一次エネルギーを加工したものであるガソリン、都市ガス、電気などは、二次エネルギーです。
一次エネルギー消費量とは、1年間に住宅で使われている設備機器の消費エネルギー量を熱量に換算した値のことで、冷暖房・換気・給湯・照明などの合計値を指します。
一次エネルギー消費量には1〜6までの等級があり、数字が大きくなるほど省エネ性能が高くなります。
省エネ住宅の種類
省エネ住宅には以下の5種類があります。
- ZEH住宅
- LCCM住宅
- 認定長期優良住宅
- 認定低炭素住宅
- 性能向上計画認定住宅
- スマートハウス
それぞれ解説します。
ZEH住宅
ZEH住宅のZEHは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略でゼッチと読み、1年間で消費するエネルギー量と、太陽光発電など再生可能エネルギーによって創出されるエネルギー量が相殺してゼロになる住宅のことです。
高い断熱性能やエネルギー効率の良い設備を備え、自然エネルギーの活用を最大限に行います。
ZEH住宅の詳細は、国土交通省がわかりやすくマンガで解説しています。
LCCM住宅
LCCM住宅のLCCMは「ライフ・サイクル・カーボン・マイナス」の略で、建築から解体までのライフサイクル全体での二酸化炭素排出量が、マイナスになるように設計された住宅です。
これは建築材料の選定、エネルギー消費の削減、再生可能エネルギーの利用などで実現します。
認定長期優良住宅
認定長期優良住宅は、耐久性や維持管理のしやすさ、バリアフリー、耐震性能、省エネルギー性能など、認定基準を満たした高品質で長寿命な住宅です。
長期にわたり快適な居住環境を維持し、維持・更新コストの削減にもつながります。
認定低炭素住宅
認定低炭素住宅は、省エネ性能に加えて、二酸化炭素の排出量を認定基準以内に抑える対策が取られている住宅です。
高い断熱性能、エネルギー効率の良い設備、再生可能エネルギーの利用などにより、二酸化炭素の排出量を大幅に削減します。
性能向上認定住宅
性能向上認定住宅は、省エネ法の一定基準を満たしていると認定された住宅です。
これにはエネルギー効率の向上、耐震性や耐久性の強化など、様々な性能向上の目標が含まれます。
スマートハウス
スマートハウスは、ICT(情報通信技術)を活用して家庭内のエネルギー消費を効率的に管理し、快適で省エネルギーな居住環境を実現する住宅です。
エネルギー管理システム(HEMS: Home Energy Management System)を利用し、スマホやパソコンで、エネルギー消費量を確認でき、エネルギー消費量の制御が行えます。
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省エネ基準適合義務化でどう変わる?
現行法では、延べ床面積300㎡以上の中規模・大規模建築物(非住宅)までが、省エネ基準への適合義務対象となっており、延べ床面積300㎡以下の住宅に関しては義務ではありませんでした。
しかし2025年4月以降に着工する、原則すべての建築物に、省エネ基準適合が義務化されます。
引用元:国土交通省|住宅性能表示における省エネ性能に係る上位等級の創設
建築確認手続き中に省エネ基準への適合性審査が行われ、基準を満たしていない場合は着工できません。
適合性審査については「適合性審査が実施される」で解説します。
では義務化によってどう変わるかを見ていきましょう。
今後は段階的に引き上げられる
現行の省エネ等級では断熱等性能等級が等級4、一次エネルギー消費量等級は等級5がそれぞれ最高等級でした。
しかし新たに一次エネルギー消費量では等級6、断熱等性能では等級6と7が創設され、2025年以降は、等級4が最低になり、省エネ基準が引き上げられます。
さらに2030年以降、省エネ基準をZEH(ネットゼロ・エネルギー・ハウス)水準まで引き上げられます。
これは「省エネ基準適合義務化の必要性」で紹介した図のとおり、温室効果ガスを2030年に2013年度比で26%、2050年までに80%削減することを目標にしているためです。
適合性審査が実施される
2025年4月より着工する住宅に関して、適合性審査が実施されます。
その際建築主は、省エネ性能確保の計画書を所管行政庁か登録省エネ判定機関への提出が必須となり、書面の整備ができていなかったり、確認審査に通過できなかったりすると、着工できません。
引用元:国土交通省|住宅性能表示における省エネ性能に係る上位等級の創設
省エネ性能表示制度がスタート
2024年4月から「建築物の省エネ性能表示制度」がスタートし、事業者は広告などに省エネ性能表示ラベルの表示が必須になります。
不動産会社などの事業者が建築物の省エネ性能を広告などで表示することで、消費者が省エネ性能の把握や比較ができるようにする制度です。
引用元:国土交通省|消費者向けチラシ|家選びに「省エネ性能」という視点を
省エネ基準適合のメリット
省エネ基準に適合した住宅を建てるメリットは、環境にやさしいだけでなく、快適に暮らせることです。
具体的には以下のようなメリットがあります。
- 外気の影響を受けにくく光熱費を抑えられる
- ふろ場やトイレなどでの急激な温度変化で心筋梗塞や脳卒中を起こすリスクが減る
- 結露しにくく喘息の原因になるカビの発生が抑えられるため健康に良い
- 災害時にも電気を確保できる
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省エネ基準適合をお得に利用する
省エネ基準に適合した住宅を建てるデメリットは、コストがかかる点です。
例えば120㎡の住宅を省エネ基準に適合するように、窓を複層ガラスにしたり、天井・外壁・床を厚い素材に変えたりして建てると、追加コストは全体の約4%(約87万円)になるという試算があります。
光熱費が年間約2.5万円減額しますが、これだけでの回収機関は35年と長期間です。
参考元:国土交通省|省エネ基準への適合のための追加コスト等の試算例について(住宅)
しかし省エネ基準適合住宅を建てる際、補助金や減税をお得に利用できるため、初期投資分は早期に回収できます。
補助金が受けられる
補助金には経済産業省、国土交通省、環境省が連携して行う「住宅省エネ2024キャンペーン」、各省が独自で行うもの、各地方自治体の補助金などがあります。
以下の補助金事業は一例です。
補助金事業名 | 対象 |
子育てエコホーム支援事業 住宅省エネ2024キャンペーン |
・申請時に2025年4月2日以降に出生した子を有する世帯 ・申請時に夫婦でありどちらかが1983年4月2日以降に生まれた世帯 |
先進的窓リノベ2024事業 住宅省エネ2024キャンペーン |
住宅の所有者が窓リノベ事業者と契約し窓ガラスを断熱改修するリフォームが対象 |
給湯省エネ2024事業 住宅省エネ2024キャンペーン |
対象機器を設置する住宅の所有者(賃借人や家主も含む)が給湯省エネ事業者と契約し、高効率給湯機を導入する場合 |
賃貸集合給湯省エネ2024事業 住宅省エネ2024キャンペーン |
賃貸住宅のオーナーまたは管理会社が給湯省エネ事業者と契約し、補助対象機器に交換する場合 |
地域型住宅グリーン化事業 | ゼロ・エネルギー住宅型(木造住宅) 長寿命型長期優良住宅(木造住宅) |
東京ゼロエミ住宅導入促進事業 | 新築住宅の建築主(個人・事業者) |
減税の対象になる
省エネ基準適合住宅は補助金以外に、減税の対象になります。
年間所得が2,000万円以下の方が対象で、控除期間は13年と長期です。
フラット35の借り入れ金利が下がる
フラット35は住宅支援機構が民間金融機関と提携して融資する住宅ローンで、保証人や保証料が不要で収入の最低制限がありません。
フラット35なら高性能の省エネ住宅を取得する際、金利が以下のようにお得になります。
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省エネ基準適合義務化の注意点
省エネ基準適合の義務化については以下の2点に注意が必要です。
- 必ず補助金やローン減税を受けられるとは限らない
- 断熱等級4では不十分
それぞれ解説します。
必ず補助金やローン減税を受けられるとは限らない
省エネ基準適合審査に合格しなければ、住宅ローン減税は受けられません。
また、補助金は、申請者が一定数に達すると受付は終了してしまいます。
条件をクリアしていても、応募が締め切られていると補助金を受けられませんので、注意が必要です。
断熱等級4では不十分
2022年3月まで省エネ基準適合の断熱等級は等級4が最高等級でしたが、2025年以降は等級4が最低等級になります。
さらに2030年以降は省エネ基準の最低等級は5に引き上げられるため、等級4では不十分です。
2025年にギリギリ等級4で家を建てたとしても、2030年以降は基準を満たしていないため、資産価値は大幅に下がります。
また等級の水準は地域によって異なるため、同じ等級4でも壁の厚さや素材などが異なります。
参考元:国土交通省|③住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示制度におけるZEH水準を上回る等級について
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まとめ
カーボンニュートラルとは、カーボン(炭素)をニュートラル(中立)にするという意味です。
人間が排出する二酸化炭素と、吸収・除去する量を同じにする、つまり排出量をプラスマイナスでゼロにするということを意味します。
日本は2050年までにカーボンニュートラルを達成し、脱炭素社会の実現を目指しています。
省エネ基準適合の義務化はそのための重要な施策です。
実現のために現在政府は多額の補助金や減税を進めていますが、2年後3年後と進めば補助金や減税額は少なくなることが予想されます。
また最低等級が引き上げられることが決まっているため、省エネに対応していない住宅は、資産価値がどんどん下がります。
この記事では省エネ基準適合の義務化について、解説しました。
この記事を参考にしていただき、将来家族が健康で快適に暮らす住宅を手に入れるための参考にしていただければうれしいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
参考元:2025年「省エネ基準適合義務化」に!2024年からは「省エネ性能表示制度」で物件表示も変わる! – Lnote(エルノート) Presented by 東急リバブル
参考元:住宅の省エネ化は必須対策!2025年適合義務化と新基準について解説します!
参考元:2025年の省エネ住宅の義務化で変わることは?基準・種類や気を付けたい点も紹介 | 一誠商事株式会社