競売物件が”やばい”と言われる理由とは?基礎知識から実際の取引の流れまで銀行員が徹底解説

  競売物件が”やばい”と言われる理由とは?基礎知識から実際の取引の流れまで銀行員が徹底解説

「競売物件はやばいと言われているのはなぜ?」本記事ではその疑問に対して、銀行員が実際にあったケースを複数交えながら詳しく解説していきます。

加藤 隆二
【執筆・監修】加藤 隆二

渉外融資担当経験を勤続30年以上。 業績良好な事業性・個人ローン貸出取り扱いから業績不振・リストラ等での法人・個人リスケまで、融資関連の入り口から出口まで経験あり。

【保有資格】ファイナンシャルプランナー

「競売物件はやばいと言われているのはなぜですか?」

「競売物件はやばいから安く買えるんでしょ?」

「競売物件はどこで売っているんですか?」

これらはお客様から、銀行員へ実際に合った質問です。

競売物件がすべてやばいわけではありませんが、中にはやばい物件もあります。

そのため、まず競売物件のことを知らないと、やばい競売物件に当たってしまうかも知れません。

そこでこの記事ではなぜ「競売物件がやばい」と言われるのか?その具体的な理由や、競売物件を購入する際のリスクを、実際に競売の手続きや競売物件購入の融資に対処してきた銀行員がわかりやすく解説します。

不動産投資に関心があって、競売物件購入について具体的な知識を求めている人や、競売物件に関するリスクをしっかりと知りたい人などは、ぜひ参考にしてください。

競売物件の基本的な定義

まず競売物件とは何か?など基本的な定義から解説します。

競売とは?競売物件とは?

「競売とは、債権回収のため債権者が権利行使して、債務者所有の不動産を強制売却する旨を裁判所に申し立てしたうえで、売却すること」です。

(競売はケイバイと読みます)

冒頭の定義は法律的、あるいは銀行で使うような表現で、もう少し柔らかく表現するなら、借金が返せなくなった人が担保にしていた不動産や、税金の滞納で差し押さえた不動産を強制的に売却することで資金を回収することが競売で、要は借金のカタに土地を取り上げられ、売られてしまうということにもなります。

そして競売物件は、この競売で対象になる不動産のことを指します。

ひとことで競売といっても、債権者の権利行使の違いから「担保不動産競売」と「強制競売」の2種類があります。

担保不動産競売は、返済ができなくなったローン利用者(債務者)に対して債権者(住宅ローンでは銀行などの金融機関が債権者)が、融資している住宅ローン融資金(これが債権になる)を回収するため、裁判所に競売の「申し立て(申し込みと意味は同じだが「権利の行使を求める」というニュアンスがある)」をし、担保になっている不動産を強制的に売却することです。

ちなみに裁判所で取り扱っている案件を「事件」と呼び、競売も事件の一つであり、不動産担保競売の場合、事件番号の符号は「ケ」になります。

いっぽう強制競売は、税金の滞納処分で用いられるもので、こちらの事件番号は「ヌ」になります。

競売物件の情報は裁判所管轄の「BIT不動産競売物件情報サイト」に掲載されていますが、ここで事件番号から競売の原因が分かり、そこからリスクや対策(後半で解説)も類推することも可能です。

【参考①】裁判所/BIT不動産競売物件情報サイト

競売は2段階~競売する側から入札する側へ

競売では、まず債権者が競売する(競売にかける)ところからスタートし、競売にかけられたあとは、その物件を手に入れるために購入希望者が入札する側にバトンが渡されるという流れ、言ってみれば前半戦と後半戦に分かれるというイメージです。

入札については、公共工事の入札やネットオークションなどと同様に「希望者が提示したなかで、一番高い値段の人が競り落とす(落札)」仕組みです。

ただし競売の場合はネットオークションより注意が必要な事項が多く、そのため予備知識が欠かせないのです。

競売・取引の流れ〜①競売開始まで

競売のスタートからゴールまでの流れは以下の通りです。

ここでは住宅ローンの支払いができなくなり、銀行が担保にしていた一戸建ての土地建物を競売にかけるケースをイメージしながら説明していきます。

なおこの記事では競売物件の購入について解説しますので、この前半部分と、入札という後半部分に分けて解説します。

<競売手続の流れ(全体)>

(競売開始まで)

  1. 申立て
  2. 開始決定・差押え
  3. 裁判所による売却の準備

(入札から物件購入まで)

  1. 競売の募集(期間入札公告)
  2. 物件の調査
  3. 購入代金支払(代金納付)
  4. 物件の購入(引き渡し)

競売の流れ(競売まで)1.申立て

競売をするための書類を、管轄する地方裁判所に提出して競売の申立をします。【参考②】

申立てをする債権者は予納金を納付しなければいけません。

予納金とは、裁判所が競売手続をすすめる際の費用(現況調査手数料,評価料,売却手数料など)に充てられるもので,売却代金の配当(注)が行われる場合は,競売手続費用として優先的に支払を受けることができます。(注)配当

債権者が複数存在する場合(事業資金融資で複数の金融機関で担保設定がある場合など)に、その順位(担保は最初に設定した債務者が順位1番、以下2番3番とつづき、順位が早いほうの権利が優先される。

要は「早い者勝ち」)に応じて売却代金を受け取ること。

この場合、順位1番が受け取って残りがあれば次の2番、というように進むので、順位が後ろ(後順位)の債務者になると、配当があっても融資したお金が回収できないこともある。

【参考②】裁判所/不動産競売事件(担保不動産競売,強制競売)の申立てについて/担保不動産競売申立書

競売の流れ(競売まで)2.開始決定・差押え

競売の申立てが認められると、 裁判所では競売の手続き(「執行」と表現)を開始すること、そして競売する不動産を差し押さえるという「開始決定」を行います。

差押えとは、競売予定の不動産を所有者が勝手に処分したり、第三者に居座られたり(不法占拠)されないように、権利を証明するものです。

たとえば土地や建物に「◯◯銀行管理物件」といった看板や貼り紙があるのは、こうした差押えがされている物件(他にも有刺鉄線などで厳重に立ち入りを禁止している場合も)である場合があります。

なおこうした差押え物件は立ち入りを禁止しているので、絶対に土地・建物内に立ち入らないようにしてください。

競売の流れ(競売まで)3.裁判所による売却の準備

裁判所では、競売物件の詳細な調査資料を作成し、最低入札価格を決めるなど売却に向けた準備をします。

購入希望者への資料として「3点セット(詳細は後述)を作成します。

3点セットとは、一般的な不動産取引で物件の詳細な内容を説明している「重要事項説明書」にあたるものですが、裁判所の調査では執行官など現地調査する人が建物の中まで入り、内部も撮影しますので、このあたりは最近増えている「オンライン内見」と似たようなイメージです。

(現実がそんなに明るいものではありませんが・・・)

ちなみに裁判所の調査では、所有者が行方不明などの場合も内部の調査をします。

そのため「裁判所が競売物件調査のため建物に立ち入ったところ、変死体を発見」などといった事件に発展することもあります。

そして調査が終わると、裁判所が競売の「売却基準価額」「(売却基準価額)買受可能額」を決定します。

売却基準価額とは、競売の価格設定で基準となる金額といった意味です。

いっぽう「買受可能価額」は、売却基準価額からその10分の2に相当する額を控除した価額のことで、要は「定価の八割引き」が最低入札価格といえます。

入札を希望する場合には、この買受可能額以上に金額を提示しないと買えません。

競売・取引の流れ〜②入札から物件購入まで

ここからは、入札から競売物件を購入するまでの流れになります。

競売の流れ(入札から物件購入まで)4.競売の募集(期間入札公告)

競売を「期間入札の公告(入札があることのお知らせ)」という形で、入札期間を決めて購入希望者を募集(期間入札)します。

こうした期間入札の公告や入札の情報は裁判所のホームページや「BIT不動産競売物件情報サイト」(上述)や、新聞などでも確認できます。

一般人が入札に参加することはもちろん可能ですが、そもそも競売物件など「曰く付き」の不動産を専門に取り扱う不動産業者などの「その道のプロ」がひしめき合う場所であるということは、ぜひ覚えておいてください。

なお期間入札の公告について【参考③】を添付しますが、こちらに3点セットの説明も網羅されていますので、参考にしてください。

<期間入札公告に記載されている主な内容>

1.売却日程
入札期間、開札期日(落札者が決定する日)
2.物件番号
競売物件の整理番号で、住宅ローンなど不動産担保競売の符号は「ケ」からはじまり、税金滞納処分などの強制競売は「ヌ」から始まる番号になる(前出)
3.売却基準価額、買受可能価額(前出)

【参考③】裁判所/BIT不動産競売物件情報サイト/競売ファイル・競売手続説明書

競売の流れ(入札から物件購入まで)5.入札(期間入札)

競売を「期間入札の公告(入札があることのお知らせ)」という形で、入札期間を決めて購入希望者を募集(期間入札)します。

こうした期間入札の公告や入札の情報は裁判所のホームページや「BIT不動産競売物件情報サイト」(上述)や、新聞などでも確認できます。

入札のタイムスケジュールや手続きは、以下のとおりです。

<入札>

  1. 手続きの窓口
  2. 保証金の支払い
  3. 必要書類の準備
  4. 必要書類の提出
  5. 入札の実施

手続きの窓口

入札及び、物件購入手続きの窓口は、その競売を取り扱っている裁判所になる。

保証金の支払い

入札に参加するために、保証金を裁判所の指定する口座に振込で支払う。【参考④】

保証金は売却基準価額(前出)の10分の2以上が原則で、具体的な保証金額や指定口座などは、期間入札の公告の「買受申出保証額」(保証金のこと)で確認できる。

必要書類の準備

必要書類は原則として以下の3つ及び自分で準備する公的証明書等。

  • 『入札書』【参考⑤】
  • 『暴力団員等に該当しない旨の陳述書』【参考⑥】
  • 『入札保証金振込証明書』【参考⑦】
  • その他の添付書類
  • (個人の場合)住民票・発行より3ヶ月以内
  • (法人の場合)代表者事項証明書又は登記事項証明書・発行より3ヶ月以内

他にも、個別に書類が必要な場合もあるので管轄の裁判所に確認が必要。

必要書類の提出

必要書類は持参か郵送で提出する。

提出先は個別に指定がある。

(持参)執行官室等に持参する

(郵送)郵便または「信書便」【参考⑧】で送付する

入札の実施

開札期日(公告日の2週間から1ヶ月後)に最高価買受申出人(最も高い金額を提示した人・会社)と次順位買受申出資格者(最高価買受申出人が売却代金を支払わなかった場合に、次の順位として購入できる)が決定される。

入札書(上記)の開封は、裁判所等の管轄部署で原則として午前中に行われる。

落札後は、売却代金の支払時期や手続きについて、約10日後に郵便で通知される。

ここまでが入札のタイムスケジュールです。

いっぽう期間内に入札する人が現れなかったならば、その入札は不成立となり、これを「不落(ふらく)」と呼びます。

入札が不落になったあと、債権者が再び競売の申立てをして受理されれば、2回目の入札へと進みます。

この場合、1回目よりも最低売却価格を値下げするのが一般的です。

期間入札は3回までが限度となっていて、3回競売にかけても不落だった場合は競売中止になります。

(ちなみに3回の競売にかけても売れなかった(不落)のばあいには「特別売却」といって、違う形で売却する場合もありますが、あくまで例外的な扱いなので、この記事では説明を省略します)

【参考④】裁判所/BIT不動産競売物件情報サイト/入札等の手続について/図1:振込依頼書

【参考⑤】裁判所/BIT不動産競売物件情報サイト/入札等の手続について/図2:入札書

【参考⑥】裁判所/BIT不動産競売物件情報サイト/入札等の手続について/図3:陳述書

【参考⑦】裁判所/BIT不動産競売物件情報サイト/入札等の手続について/図5:入札保証金振込証明書

【参考⑧】総務省/信書便制度について

競売の流れ(入札から物件購入まで)5.物件の調査

競売物件の購入を考える場合、まずは自分で物件の調査をする必要があります。

具体的に競売物件の購入を検討する場合には、まず目的となる不動産の権利関係(今の所有者は誰か?担保の内容は?など)を登記簿で確認します。

登記簿は法務局に出向く、インターネットで入手する、司法書士に依頼するなどの方法で手に入れることができます。

また物件の詳細な資料である「3点セット」でも内容が確認できます。

また、そもそも競売物件は強制的に売却される不動産なので、物件の内容を把握することは重要になってきます。

そのため、現地に行って自分の目で物件を確認することが欠かせないと、銀行員は考えています。

また権利関係が複雑な場合など、自分だけで不安なら、司法書士や弁護士などに相談するのも一つの手です。

なお繰り返しになりますが、自分自身で競売物件を現地へ見に行く場合には、差押え(前述)されている不動産ですから、原則として敷地の外から見る程度しかできません。

許可なく立ち入るとトラブルに発展する可能性もありますので注意してください。

(ちなみに私など銀行員が競売物件の不動産を調査する際も、敷地内には絶対に入りません。

【解説】競売の「3点セット」

競売物件について、裁判所が作成した詳細な資料が「3点セット」【参考④】と呼ばれるものです。

3点セットとは「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」の3つで、主な内容は以下のとおりです。

<競売の3点セット>

1.物件明細書(基本事項の説明)

事件番号(前出)、不動産の表示・登記簿記載事項(甲区:所有者、建物の新築年月日 乙区:担保の内容、他にも差押えなど)などの基本事項が記載されている。

また購入後もそのまま引き継がなければならない権利(アパートなど賃貸物件なら賃借権、あるいは上空を通過している高圧電線や電柱使用の地役権など)もわかる。

《記載例》

『転借人(又は転使用借人)◯◯が占有している。』

土地や建物を貸していた人(賃借人)が、さらに別の人に貸して(転貸、転使用借などと表現、要は「又貸し」)いる状況で、購入後は大家としての地位を引き継ぐが権利関係などが複雑になる可能性がある。

『氏名不詳者が占有している。同人の占有権原は買受人に対抗できない』

いわゆる「不法占拠者」(土地を手放したくない所有者から依頼を受けた、賃貸借とは無関係の第三者)が居座っている状態が含まれる。

『競売で購入した場合には退去を求めることはできるが、手続きの手間や時間、費用が必要になる。』

また居座っている人が反社会的勢力などの場合は、さらにトラブルが想定される。

2.現況調査報告書(現状の調査報告)

土地の種類(宅地や農地などの地目)や建物の種類(居宅、共同住宅、工場など)構造(木造、鉄筋工事など)など不動産の現在の状況が記載されている。

また不動産を占有している相手(占有とは使用しているといった意味合いで、アパートなら入居者、貸物件なら入居している人間や店舗など)の氏名が記載されている。

そして、物件が建物なら調査者が内部を調査した内容や、写真が添付されている。

《記載例》

『物件の占有者である所有者〇〇同席のもと、建物内部を調査。家族4人(妻・中学生男子、小学生女子)が暮らしている相応の家財道具があった。壁や床など日常生活による劣化や修復歴も見受けられるが、著しく損傷が激しいレベルではないと見受けられる』

家族構成か等建物設備の劣化や損傷などが日常生活レベルのものか?あるいは深刻な問題箇所の有無などを記載している。

『占有者はおらず空き家の状態に付き、管理委託を受けている不動産業者▲▲担当者により玄関のカギを開錠したうえで内部を調査。』

占有者はいない模様で、人間の生活感は感じられず長期間空き家であったことが想像できる。

『また内部には家財以外に雑誌、紙類やゴミなども散乱し、全体的に整理ができていない状況である。』

空き家の場合、不法占拠者がいないか?あるいは内部がいわゆる「ゴミ屋敷(ただしゴミ屋敷であってもそのものずばりゴミ屋敷とは表現しない)」であればその点が記載されている。

3.評価書(法律関係の説明)

評価書には、裁判所で算定した競売物件の評価や、周囲の環境、あるいは法律上の規制・制限などが記載されている。

また不動産の図面等も添付されているので、競売物件に関する法律関係の概要が分かるようになっている。

《記載例》

『対象物件建物は、その用途が特殊な点を考慮し、通常の建築物と同様の評価額とはなっていない。』

特殊な建築物の場合、評価額算出で注釈を加えている。

『対象物件は最寄り◯◯駅より直線距離で200m程度と交通の便が比較的良好で、小規模な住宅が立ち並ぶ中に商店や病院、学校などもほど近く利便性はまずまず良好な地域に存している。』

物件に関して交通の便や生活の利便性など評価に影響する現況が記載されている。

『対象に該当する地価公示価格を参考として、以下の計算式で評価額を算出した。』

評価額を算出する根拠や参考価格、そして算出に使用した計算式など評価の根拠が記載されている。

【参考④】裁判所/BIT不動産競売物件情報サイト/競売ファイル・競売手続説明書

競売の流れ(入札から物件購入まで)6.購入代金支払(代金納付)

入札に参加して、落札できた人(競売物件を落札できたことを「競落」と呼び、これは文字通り競り落とせたという意味です)は、裁判所から示された期限までに、必要な金額を納付することになります。

不動産を購入するわけではありますが、裁判所が取り扱う「事件」なので、代金の支払いをあえて税金のように「納付」と言う表現を使います。

競売の流れ(入札から物件購入まで)7.物件の購入(引き渡し)

購入した競売物件を自分に名義変更する登記(所有権移転登記)などの手続きは裁判所で行いますが、そのための費用(登録免許税)は購入する人が払うことになります。

ここまでの手続きが終わると、晴れて物件を購入できたことになります。

【解説】引渡命令の申立て

物件購入(引き渡し)では、スムーズに取引が完結しない時もあります。

例えば競売物件に以前から住んでいた人(前所有者)が居座っていたり、悪質な不法占拠をされたりした場合には、競売の時と同じように裁判所「引渡命令」の申し立てをして受理されれば、裁判所があいだに立って退去させることができます。

を得ることができれば、執行官に申立てをして、その人を立ち退かせることができます。

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続いて、なぜ「競売物件はやばい」と言われるのか?と言う点について、実際に銀行では競売物件をどう扱っているか?と言う視点で説明します。

リスク1.安全性~法的・物的にやばい物件ではないか?

安全性と言っても、競売物件が危険だなどという意味では無く、物件に法的な問題がないか?と言う安全面で、競売物件はリスクを内包していると銀行では考えます。

たとえば建物が建築基準法に違反している場合(居宅を建てられない地域に家がある、無許可で増築してあるので、建ぺい率や容積率がその地域の上限を超えているなど)など、競売物件ではよくあるケースです。

それは、建物を建てたあとで増築したら役所などにと溶け出るとともに、建物面積が増えたり、種類が変更(居宅が店舗になったなど)となったりした場合には登記が必要になるのですが、基本的には自己申告の世界で、登記をしなかったとしても特に本人は困らないからです。

それに加えて、競売になるような人や会社は資金に余裕がないので、登記が必要なことを知っていてもその費用がないのでそのままにしていた、というパターンもあるのです。

地や建物など不動産を取り巻く法律や制限は多岐土にわたりますし、全てをチェックするにはある程度の知識も必要になってきますので、その点は注意が必要です。

銀行員が見た実例

分譲地の中に競売物件の更地があり、一見すると回ると同じような区画で問題は無さそうだったが、実は土地の上空を高圧電線が通過していて、その真下の土地なので建物を建築できない土地でした。

送電線の直下や電柱などを設置する場合には、電力会社などがその土地を利用する権利(「地役権」という)が設定されていうる場合があり、このケースのように建物が建てられない土地は当然ながら売れにくくなります。

リスク2.流動性〜次の人に売ることはできるのか?

流動性とは、自分が競売物件を購入した場合、その物件が不要になったり、資金が必要なので売りに出したりした場合に「売れるのか」という点であり、「処分可能性」などとも表現されます。

競売も売却の一種ではありますが、ここまで説明した通り債権者が債権を回収するため強制的に売却するわけで、そもそも一般的な売買とは意味が違ってきます。

たとえば事業資金融資を受けるために、郊外の駐車場や広大な工場などを担保にしていて、それらが競売担った場合。

広すぎる土地は売れにくいと言われます。

(一戸建てを新築できる区画に小分け分譲するなど費用が必要になるので)また工場等の場合、製造・加工していたモノや使用していた薬品、燃料などで土壌が汚染されていないか?などの調査が必要となるので、やはり売買では敬遠されがちです。

逆に狭すぎる土地や、三角形など形が悪い(一般に土地は正方形や長方形のほうが売れやすい)土地も売れにくいとされています。

実際のところ、競売物件ではこのような「売れにくい物件」もよくあります。

それというのも、借金をするとき、できれば自宅以外の遊休地を担保にしておけば、万一返済不可能となり担保を失ったとしても自宅だけは残るわけです。

そのため、複数の不動産を所有している人は、自分の持ち物の中でも重要度が低い=手放しすことになってもあきらめがつく物件を担保にするものなのです。

したがってそうした競売物件は入札でもなかなか売れない、つまり流動性が低いということになります。

銀行員が見た実例

こちらは、土地付き一戸建ての競売物件を調査したときのケースです。

前の所有者が住宅ローンを払えずに競売となったのですが、競売になる前から他人に賃貸していたことが発覚して、銀行からは即刻返済してほしいと揉めていたような家でした。

私が調査に行く前に聞いていた情報では、現在その家には外国人が住んでいて、競売になっていることも知らないようで、訪問時に居住者と鉢合わせしないように注意してほしいとの内容でした。

私自身、この調査は気が進まなかったのですが、仕事なので仕方なく現地に行きました。

そして、通常の調査なら敷地のそばで写真撮影をしたり道幅を測ったりなど調査をするのですが、このときは100メートルほど離れたところから望遠で撮影し、建物には近づきませんでした。

銀行の調査ですらこの調子だったので、競売で落札した人は入居者に立ち退いてもらう必要があり、最悪では引渡命令(上述)に発展するリスクもあり、結局私のお客様は入札をあきらめました。

リスク3.市場性~それなりの価格で売り出せるか?

市場性も「売れるか」という観点ですが、こちらは売れるか売れないかではなく「いくらくらいで売れそうか?それなりの値段がつくか?」というものです。

上記したように売れにくい物件でなくても、交通の便が悪いとか、土地が急斜面だとか、土地自体に難があるような場合は、売れたとしても低い価格になってしまいます。

また隣が墓地、線路際の土地など立地や周りの環境も価格を下げるマイナス要素になります。

競売物件ではこういった値段がつきにくい(値段がつかない)物件も多く、その理由は上述したのと同じように、持っている物件の中でもよくないものを担保にしている場合があるからです。

銀行員が見た実例

競売物件として郊外の資材置き場を調査に行ったときのケースです。

このときは敷地内への立ち入りが可能だったので、調査をしながら土地の奥まで進んでいきました。

上空に電線など無いか(前述)上を見て歩いていたときのことです。

足元に違和感を感じ目を下に向けたところ、土地がそこから急斜面、というよりガケになっていて、自分のつま先がはみ出していて、あと一歩足を進めていたら転げ落ちていたかも知れません。

またその斜面ではあちこちで小石や砂がポロポロと崩れているような状態でした。

こういった急斜面や軟弱な地盤では売却でも値段がつかない場合が多く、そもそも売れないかも知れません。

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安全性:自分で調べることもできる

まず、資料があれば自分でもある程度のことは調べることができます。

たとえば競売物件で土地の地目が少なくとも「宅地」であるなら、建物が建てられる土地であると考えられます(例外もあるので注意は必要です)

また競売物件が街中にあるのか?あるいは郊外や山中ではないかなどは?インターネットの地図検索サイトや衛星写真サイトなどで見ることができます。

また道を進んでいくような形態なら、目的の競売物件まで最寄り駅から車で向かうシミュレーションもできます。

ちなみに銀行の担保調査でも、現地に行く前にこうした衛星写真などで確認することがあります。

これは一例ですが、資料と知識を駆使して自分でもある程度は競売物件の内容を掴むことはできます。

ちなみに銀行で私が競売物件を取り扱う場合、各種の資料・とくに「3点セット」を熟読するところから始めますが、それらの資料でほとんど必要な情報は掴めますので、あとは現地で情報と自分の判断を確認するといった流れです。

流動性、市場性~頼れる相手を探す

競売物件の購入を考えるなら、頼れる相手を探すのが重要になってきます。

まず思い浮かぶのは不動産業者で、親身になってくれる不動産業者なら頼れるパートナーだと言えます。

ただし、あくまで不動産業者は売買を取り持つなど手数料で成り立っているので、売り買いが発生しないといつまでも力になってもらえるか?は疑問です。

とはいえこれも商売としてはある意味当然で、不動産業者が悪いというわけではありません。

そうした点から、実は銀行に頼むのが一番だと言えます。

これは自画自賛や宣伝ではなく、銀行員として本気でそう考えているからです。

たとえば銀行に不動産投資として競売物件の購入を考えていると相談すれば、融資の担保として的確か?など調査する、というよりあなたに代わって競売物件を調査してくれるとも言えるのです。

不動産担保を扱う銀行員という、ある意味プロが(しかも無料で)競売物件を調査してくれるとも考えられます。

不動産投資の融資では、対象となる不動産が銀行の担保に適していない(「担保不適格」などと呼びます)と判断したなら、どれほど年収が高い人であっても、審査に通らない可能性があります。

ですから、融資審査が通った場合には、ある意味で購入希望の競売物件がやばいものではないと銀行がお墨付きをくれたとも考えられるのです。

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まとめ

今回は、実際に競売物件に触れてきた銀行員の視点で競売物件について説明した来ました。

競売物件も、その基本事項や注意事項、そしてリスクを管理できるなら決して「やばい」ものではありません。

とはいえ、知識だけでなく経験も伴わないと、競売物件に手を出すのはやめた方が良いと銀行員の私は考えています。

競売物件に限らず不動産投資などは経験が重要なのですが、失敗の経験が次に活かせる程度の浅いキズならまだいいのですが、不動産投資は金額も大きいので、たった一度の失敗が命取りにもなりかねません。

だからこそ、リスクを理解し、その対策まで見据えたうえで競売物件の購入を検討すべきだと思います。

この記事が参考になれば幸いです。

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