急な転勤で引越し!?住宅ローン返済中の家を賢く扱う方法

  急な転勤で引越し!?住宅ローン返済中の家を賢く扱う方法

住宅ローン返済中のマイホームがある場合に転勤が決まった場合どうするのが正解なのでしょうか?本記事ではそんなケースでの賢い活用方法について詳しく解説してきます。

大滝義雄
【執筆・監修】大滝義雄

普段は、業務歴20年の建設業支援専門の行政書士です。文章を書くことが好き&得意で、行政書士業務の傍ら、公的機関などで不動産、法律関係の専門性の高い記事を執筆。専門的な資料を精読したうえで、一般の方に向けて、正確かつ分かりやすく書くことを心がけており、好評を頂いております。ライターの仕事は知識を吸収し整理することにもつながるので、これからもコツコツ続けていきます。

【保有資格】行政書士&法律行政専門ライター

転勤はキャリアアップのチャンスであると同時に、住環境やライフスタイルを大きく変化させる出来事です。

しかし、マイホームを購入されている方は不安もありますよね?

特に、住宅ローン返済中のマイホームがある場合は、転勤に伴う引っ越しに頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、転勤と住宅ローン返済中の自宅管理の3つの選択肢を行政書士業務に1年半携わっていた筆者が解説します。

不動産関係の専門性の高い記事を執筆している経験を活かし、それぞれの選択肢のメリットとデメリットや具体的な手続きの流れなどを分かりやすく説明します。

さらに、実際に自宅を賃貸に出した場合の収益性評価や金利、税金の影響も解説しているため、転勤に伴う住宅ローン返済中の自宅管理を賢く行うための参考にしてください。

転勤と住宅ローン返済中の自宅管理:3つの選択肢

転勤で引越が必要な際の自宅管理には、以下の3つの選択肢があります。

  • 自宅を賃貸に出す
  • 自宅を売却する
  • 空き家として管理する

それぞれ説明します。

自宅を賃貸に出す

転勤で家を空ける間、自宅を賃貸に出すことは、家賃収入を得られるだけではなく、空き家によるリスクを抑える有効な手段です。

しかし、住宅ローン返済中の自宅を賃貸するには、以下の点に注意が必要です。

  • 金融機関への事前確認
  • 賃貸借契約の締結
  • 住宅ローン控除の確認
  • 賃貸経営の収益性評価
  • 確定申告

それぞれ解説します。

金融機関への事前確認

住宅ローン契約書には、多くの場合「賃貸不可条項」が記載されています。

これは、金融機関が住宅ローンを借りる目的を「自己居住」と限定しているためです。

転勤などで自宅を賃貸に出す場合は、必ず事前に金融機関に許可を得る必要があります。

許可を得ずに賃貸に出してしまうと、契約違反となり、以下のようなリスクが生じる可能性があります。

  • ローン返済の全額一括返済を要求される
  • 今後の住宅ローン利用が制限される
  • 他のローン審査に影響が出る

最悪の場合は、一括返済を要求される可能性もありますので、金融機関に無断で賃貸を決めないよう注意してください。

賃貸借契約の締結

入居者募集で希望者が見つかったら、賃貸借契約を締結しましょう。

賃貸借契約には、大きく分けて3つの種類があります。

普通借家
契約
  • 借主は、正当な理由があればいつでも解約できる
  • 貸主は、原則として2年ごとに家賃を改定できる
  • 契約期間の定めがない
定期借家
契約
  • 契約期間が定められており、期間満了時には
    借主は退去しなければならない
  • 借主は、正当な理由があっても契約期間内に
    解約できない
  • 貸主は、家賃を改定できない
一時使用
賃貸借契約
  • 2年以下の期間を定めて締結する契約
  • 借主は、正当な理由があっても契約期間内に
    解約できない
  • 貸主は、家賃を改定できない

いずれの契約を締結する際にも、契約書はしっかりと作成しておきましょう。

参考:民間賃貸住宅 – 国土交通省

住宅ローン控除の確認

転勤に伴い自宅を賃貸に出す場合、住宅ローン控除の適用を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。

転勤で自宅を賃貸に出す際の住宅ローン控除の適用条件は以下のとおりです。

概要 条件
単身赴任等の
場合
やむを得ない事情で
自宅に住めなくなった
場合でも、一定の条件を
満たせば、住宅ローン
控除を受けられる
  • 家族が年末まで引き続き
    自宅に住んでいること
  • 転勤先から自宅までの
    距離が100kmを
    超えていること
居住の用に供した
日の属する年の
12月31日までに、
家族と共に居住の
用に供しなくなった
場合
家族と共に自宅に
住めなくなった後、
再び自宅に住むように
なった場合、一定の条件を
満たせば、住宅ローン
控除の再適用を
受けられる
  • 再び自宅に住み始めた
    年の12月31日までに、
    所有期間が10年(または
    13年)を超えていないこと
  • 再び居住の用に供した年の
    翌年以降、引き続き
    5年間居住すること
居住の用に供した
日の属する年の
12月31日までに、
家族と共に居住の
用に供しなくなった
場合
上記2つのケースに
該当しない場合でも、
一定の条件を満たせば、
住宅ローン控除を
受けられる
  • 再び自宅に住み始めた
    年の翌年以降、引き続き
    10年間(または
    13年間)居住すること

参考引用:No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等|国税庁

ご自身の状況に照らし合わせて、住宅ローン控除が受けられるか確認しておきましょう。

確定申告

自宅を賃貸に出して家賃収入を得た場合は、所得税と住民税の申告が必要です。

申告漏れは、追徴課税や加算税の対象となるため注意してください。

以下のいずれかに該当する場合は、確定申告が必要です。

  • 年間の家賃収入が20万円を超える場合
  • 青色申告を選択している場合

確定申告では、家賃収入から必要経費を差し引いた所得を申告します。

必要経費には、ローン返済額や修繕費、管理費、固定資産税、火災保険料などがあります。

確定申告書は、国税庁のホームページからダウンロード可能です

税務署への申告は、2月16日から3月15日までの期間に行います。

申告期限までに申告できない場合は、延滞税が課税されるため注意が必要です。

参考:所得税の確定申告|国税庁

自宅賃貸に関連するよくある質問

家賃はどのように決めれば良いですか?

周辺の類似物件の家賃相場を参考に、築年数、立地条件、設備などを考慮して決定します。
家賃査定サービスを利用するのも良いでしょう。

空室リスクを減らすにはどうすれば良いですか?

適切な家賃設定、清潔感のある室内環境、充実した設備、迅速な対応などが重要です。
また、インターネット広告やチラシ配布など、積極的な募集活動も行いましょう。

入居者の募集はどうすれば良いですか?

不動産会社に依頼する、インターネット広告を利用する、知人に紹介してもらうなどいくつかの方法があります。
入居審査はしっかりと行い、トラブルを未然に防ぎましょう。

修繕費などの費用負担は誰がどのように行うのですか?

通常、通常の修繕費は貸主が負担し、入居者の故意または過失による損害は入居者が負担します。
賃貸借契約書に費用負担について明記しておきましょう。

賃貸経営で注意すべきことは何ですか?

法令遵守、税務申告、入居者とのトラブル対応など、注意すべき点がいくつかあります。
必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。

自宅を売却する

急な転勤で引越しが必要になった場合、自宅を売却することも選択肢の一つです。

自宅を売却する際には、以下の点に注意が必要です。

査定価格 不動産会社に査定を依頼し、自宅の適正価格を
把握しましょう。
ローン残高と
売却価格
住宅ローンが残っている場合、売却価格がローン残高よりも
低い場合は、差額を自己資金で補う必要があります。
売却時期 売却時期は、市場の状況によって大きく左右されます。
一般的に、春と秋は需要が高く、売却しやすいと
言われています。
参考:不動産価格指数-国土交通省
仲介手数料と
諸費用
売却には、仲介手数料や登記費用などの
諸費用がかかります。
これらの費用は、売却価格から差し引かれるため、事前に
把握しておきましょう。
住み替えの場合の
仮住まい
売却が決まるまで、住み替えの場合は仮住まいが
必要となります。
税金 売却益が出た場合は、譲渡所得税がかかります。
3,000万円特別控除を利用することで、一定の利益までは
税金がかかりません。
参考:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁

空き家として管理する

転勤で家を空ける期間が長期間にわたる場合、空き家として管理することも選択肢の一つです。

しかし、そのまま放置すると、空き家特有のリスクや問題が発生する可能性があります。

空き家を放置すると、以下のようなリスクがあります。

老朽化 カビや腐食などによる老朽化が進行し、修繕費用が
高額になる可能性があります。
不法侵入 空き家は不法侵入の標的になりやすいです。
近隣トラブル 空き家からゴミや害虫が発生すると、近隣トラブルに
発展する可能性があります。
固定資産税 住んでいない場合でも、固定資産税は支払い続ける
必要があります。

空き家管理の具体的な対策には、以下のようなものが挙げられます。

防犯対策
  • 窓やドアに鍵をかけ、防犯カメラを設置する
  • 防犯警備システムを導入する
  • 外灯を設置する
巡回
  • 定期的な換気と清掃
  • 掃除
近隣に挨拶
  • 家を空けることを伝える
  • 空き家管理を依頼している場合は、管理会社の
    連絡先を伝える
  • 何かあった場合は連絡してもらうよう
    お願いする

空き家を自分で管理するのは大変な場合もあります。

そのような場合は、空き家管理サービスを利用するのも一つの方法です。

空き家管理サービスは、定期的な換気や掃除、防犯対策などの管理業務を代行してくれます。

賃貸・売却・空き家のメリット・デメリット

転勤時で住宅ローン返済中の自宅管理については、賃貸・売却・空き家の選択肢が挙げられます。

しかし、どの選択が自分にとって最適かを判断するのは難しいですよね。

いずれの方法にもメリット・デメリットが存在します。

それぞれのメリット・デメリットをわかりやすく紹介します。

賃貸

転勤で家を離れる場合、自宅を賃貸に出すのは有効な選択肢の一つです。

自宅を賃貸に出す場合は、以下のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

  • 家賃収入を得られる
  • 住宅ローン金利を事業所得から控除できる
  • 自宅を維持し、帰任後に再び住める

デメリット

  • 手間(入居者募集・契約手続き・退去後の清掃など)がかかる
  • 家賃収入の変動により損益が増減する
  • 入居者トラブルの可能性がある

賃貸は、家賃収入を得られるメリットがある一方、手間やリスクも伴います。

売却

転勤で自宅を売却する場合は、以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリット

  • 資産を現金化できる
  • 二重ローンを回避できる
  • 維持管理費の負担から解放される

デメリット

  • 売却価格が購入価格より低くなる可能性がある
  • 売却の手続きに時間がかかる
  • 譲渡所得税が発生する可能性がある

自宅の売却は、住宅ローン完済や新居購入資金に役立つ一方、価格や活動時間のリスクも考慮する必要があります。

空き家

空き家にするメリット・デメリットには、以下の点が挙げられます。

メリット

  • 将来の住居として活用できる
  • 売却するタイミングを待てる

デメリット

  • 管理の負担が軽減できる
  • 建物の劣化が早まる
  • 固定資産税などの維持費がかかる

空き家は手間と費用がかかる選択肢ですが、将来の住み替えや子供への譲渡などを視野に入れている場合は、有効な選択肢の一つです。

メリットとデメリットをよく理解し、慎重に判断することが重要です。

賃貸・売却・空き家の注意点

住宅ローンが完済していない自宅を賃貸に出したり売却したりする際には以下の点に注意しましょう。

  • 【賃貸】法的な手続きが必要
  • 【賃貸】金融機関との交渉の仕方・ポイント
  • 【売却】売却時の注意点
  • 【空き家】リスク回避のための対策

それぞれのポイントを紹介します。

【賃貸】法的な手続きが必要

持ち家を賃貸に出す場合、以下のような法的な手続きが必要です。

賃貸借契約書の
作成
契約書には、賃料、敷金・礼金、入居期間、解約条件、
修繕費の負担など、賃貸借関係に関する重要な
事項を記載します。
重要事項説明 契約書の内容や、賃貸物件に関する重要事項を
説明します。説明内容は、宅地建物取引業法で
定められています。
登記申請 賃貸に出す物件が所有権保存登記の対象と
なっている場合、賃貸借契約の登記申請が
必要です。

他にも、以下のような義務も定められています。

  • 火災保険への加入
  • 賃貸物件の修繕・管理
  • 入居者とのトラブル

義務を怠ると罰則を受ける可能性もあります。

また、トラブルに発展するリスクも高くなります。

必要な手続きを事前に確認し、適切な手続きを行いましょう。

【賃貸】金融機関との交渉の仕方・ポイント

住宅ローン返済中の家を賃貸に出す場合、金融機関との事前交渉が必要です。

無断で賃貸に出してしまうと、契約違反となり、ローンの一括返済を求められる可能性もあります。

金融機関との交渉をする際には以下のような点に気を付けましょう。

■事前に相談する

転勤が決まったら、できるだけ早めに金融機関に相談しましょう。

■必要書類を準備する

金融機関に相談する際には、以下のような書類を準備しておきましょう。

  • 住宅ローン契約書
  • 金利優遇措置を受けている場合は、その証明書
  • 転勤命令書
  • 新居の賃貸借契約書
  • 家賃査定書

ただし、各金融機関で準備する書類が異なるため、事前相談の際に確認しておきましょう。

金融機関との交渉では、以下のポイントを抑えることも大切です。

  • 転勤によるやむを得ない事情であることを説明する
  • 家賃収入はローン返済に充てることを伝える
  • 空室リスクや家賃滞納リスクへの対策を伝える
  • 賃貸期間を明確にする

金融機関に各項目をきちんと説明できるよう、準備しておきましょう。

■借り換えも検討する

金融機関によっては、賃貸住宅向けのローン商品を提供している場合があります。

金利が低い場合もあるため、借り換えも検討してみましょう。

参考:住宅ローン | 一般社団法人 全国銀行協会

金融機関に相談に行く前に税理士やファイナンシャルプランナーのような専門家に相談してみるのもいいでしょう。

【売却】住宅ローン返済中の売却の注意点

住宅ローン返済中の家を売却する場合、以下のような点に注意しましょう。

残債と売却価格 住宅ローン返済中の家を売却する際には、まず残債と
売却価格を確認する必要があります。
諸費用 売却には、仲介手数料や印紙税、登記費用などさまざまな
諸費用がかかります。
住宅ローン完済後の
手続き
住宅ローンを完済したら、抵当権抹消登記が必要です。
譲渡所得税 売却によって利益が出た場合は、譲渡所得税がかかります。
譲渡所得税は、売却価格から取得価額などを差し引いた
課税標準額に税率を乗じて算出されます。

これらの注意点を理解した上で、慎重に検討することが重要です。

【空き家】特定空き家・管理不全空き家に注意

空き家となった場合、固定資産税が増額される可能性があります。

これは、特定空き家及び管理不全空き家に指定された場合に適用される措置です。

特定空き家と管理不全空き家の違いは以下のとおりです。

特定空き家 2018年に施行された「空き家対策特別措置法」に
基づき、市町村が「特定空き家」と認定した空き家
管理不全空き家 2023年12月13日施工された「空家等対策の推進に
関する特別措置法の一部を改正する法律」により
新設された空き家区分

特定空き家と管理不全空き家の違いは、行政が直接介入するかどうかです。

「特定空き家」に関しては、所有者に対して直接介入しますが、「管理不全空き家」の場合は、空き家の管理を促す措置です。

市町村が「特定空き家」と認定した空き家には、固定資産税等の住宅用地特例が適用されません。

特例が適用されない場合、土地に対する固定資産税は最大6倍に増加します。

管理不全空き家と認定された場合、市町村から勧告を受け改善命令に従わない場合は、翌年度から固定資産税等の住宅用地特例が適用除外されます。

空き家による税負担の増加を防ぐためには、以下の対策が有効です。

  • 定期的に管理する
  • 賃貸に出す
  • 売却する
  • 自治体の空き家対策相談窓口に相談する

空き家問題は、所有者にとってだけでなく、地域にとっても大きな課題です。

空き家となった場合は、早急に適切な対策を講じるようにしてください。

詳細は国土交通省の「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」で確認しましょう。

転勤期間終了後の自宅の扱い方

転勤期間が終了し、自宅に戻る場合の主な選択肢は以下の3つです。

自宅に戻る 転勤前に賃貸に出していた場合は、借主と話し合いトラブルに
発展しないように注意しましょう。
賃貸に出す 転勤先で家賃を払いながら自宅を賃貸に出すことは、家計の負担を
軽減できます。
売却する 住宅ローン返済中の場合は、売却価格が住宅ローン残高よりも
高いことが条件です。

最適な選択肢は、家族構成や住宅ローン残高、今後のライフプランなどによって異なります。

どの選択肢を選ぶべきか迷っている場合は、不動産会社やファイナンシャルプランナーのような専門家に相談してみましょう。

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まとめ

住宅ローン返済中の家を扱う方法について紹介しました。

転勤は会社都合のため、自身の都合ではどうにもできません。

特に、住宅ローン返済中などの場合は、どうするのが最適かは簡単には判断できませんよね。

賃貸・売却・空き家として管理のいずれの場合も、メリット・デメリットがあります。

税金関係や法的な手続き、住宅ローン控除などとご自身の状況を照らし合わせ、選択するようにしてください。

不安を感じる場合は、不動産会社やライフプランナー、税理士などの専門家に相談してみましょう。

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