不動産を相続した方の中には、「今後どのような手続きを行えばいいのだろうか」「売却にはどれくらいの費用がかかるのだろうか」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
相続が発生した際には、不動産だけでなく様々な身辺整理や手続きを行う必要があるため、限られた時間の中で行動しなければなりません。
そこで本記事では、相続が発生した際にスムーズに行動できるようにの不動産売却の流れや費用について解説します。
不動産仲介業でこれまでに数多くの取引を行ってきた筆者の経験をもとに解説するため、ぜひ参考にしてください。
相続が発生した際には、何よりもスピードが重要です。相続税の申告・納税には期間があることに加え、相続人にもそれぞれの生活があるため、限られた時間の中で話し合いを進めなければなりません。
本記事を読んでいただければ、急な相続が発生した際にも、落ち着いて1つずつ手続きを進めることができます。それでは始めていきましょう!
目次
不動産の相続が発生した後の流れ
不動産の相続が発生した後の流れは以下のとおりです。
- 相続財産と相続人を確認する
- 必要書類を準備する
- 遺産分割協議をする
- 不動産の名義変更をする
- 相続税を申告・納付する
相続発生後は葬儀の準備や各種手続きなど多忙な日々が続きますが、1つずつ順番に進めていきましょう。それぞれについて詳しく解説します。
相続財産と相続人を確認する
相続が発生した際には、相続財産と相続人を確認しましょう。相続財産と相続人が明確にならなければ、これから行う遺産分割協議が行えず、相続手続きが進まなくなってしまいます。
相続人を確認するためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本を取得する必要があります。相続人になるのは家族や兄弟だけと考えがちですが、亡くなった被相続人に「嫡出子」や「認知された非嫡出子」がいるケースも。
また、相続の対象になるのはプラスの財産だけではありません。プラスの財産からマイナスの財産や葬儀にかかった費用を差し引いた金額に対して税金が発生します。
このように、まずは相続財産と相続人を全て洗い出しましょう。被相続人が亡くなった際には、死亡届の提出や葬儀、各種名義変更などやるべきことが多いですが、並行して進める必要があります。
必要書類を準備する
相続財産と相続人が確定した後は、各自で必要書類を準備しましょう。相続時に必要になる書類は以下のとおりです。
- 被相続人の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 遺言書(ある場合)
- 戸籍謄本
- 印鑑証明書
- 住民票
- 不動産の登記事項証明書
- 固定資産評価証明書
本籍地が遠方の場合は取得に時間がかかることもあるため、早めの対応を心がけましょう。
遺産分割協議をする
遺産分割協議には3種類の方法があります。
分割方法 | 特徴 |
---|---|
現物分割 | 相続人の中で誰が相続するかを決める例:Aさんは現金、Bさんは不動産 |
代償分割 | 特定の相続人が相続し、他の相続人には相応の金額を支払う |
換価分割 | 不動産を売却し、相続人で分割する |
3種類の中からどの方法で相続をするか話し合いましょう。
相続財産が不動産だけの場合や、不動産以外にも財産がある場合、相続人の数によって適した分割方法は異なるため、弁護士や税理士、行政書士といったプロを交えて相談するのもおすすめです。
遺産分割協議は相続人全員の署名捺印が必要になるため、話がまとまらない場合は、最終的に家庭裁判所で遺産分割調停を行うことになります。
不動産の名義変更をする
遺産分割協議を経て誰が不動産を相続するかが決まった後は、不動産の名義を変更しましょう。
不動産の名義は被相続人のままであるため、速やかに名義変更を行わなければ所有者不明の不動産となってしまいます。
不動産の名義変更は相続登記申請書を作成し、法務局に持参、もしくは郵送で申請できます。自分で行うことも可能ですが、手続きが複雑でわからない方は司法書士に依頼しましょう。
相続登記の費用
相続登記には「登録免許税」という税金がかかり、不動産を相続によって取得した際には、以下の計算式で税金が求められます。
固定資産税評価額×0.4%
固定資産税評価額は、固定資産評価証明書で確認できます。土地と建物それぞれに費用がかかるため注意しましょう。
相続税を申告・納付する
相続に関わる一連の手続きが完了した後は、期限までに相続税の申告・納付をしましょう。
相続税の申告・納付は、相続の発生から10ヶ月以内に行わなければなりません。期限を過ぎてしまうと、延滞税や加算税がかかることもあるため注意しましょう。
相続税の計算方法
不動産の相続では、建物と土地で計算方法が異なります。
- 建物の金額=固定資産税評価額
- 土地の金額=路線価方式もしくは倍率方式で算出された金額の約80%
建物の金額は固定資産税評価額と同じであるため、固定資産評価証明書で確認できます。
なお、土地の場合は以下の計算方法を用います。
土地の評価額=路線価×面積×補正率
土地の評価額=固定資産評価額×国税局長が地域ごとに定める倍率
路線価とは道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額です。路線価に対して土地の面積や、土地の形状毎に定められている補正率をかけて算出します。
倍率方式は路線価が定められていない地域に適用される計算方法です。土地と建物の価格がわかった後は、以下の順番で計算を進めていきましょう。
- 課税遺産総額を計算する
- 課税遺産総額を法定相続分で分ける
- 相続税率をかける
例として相続財産が1億円、相続人が2人、それぞれの相続分は1/2ずつで計算してみます。
CASE:相続財産が1億円、相続人が2人、相続分は1/2ずつ
- 課税遺産総額=相続財産−基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数) 1億円−基礎控除(3,000万円+600万円×2)=5,800万円
課税遺産総額を法定相続分で分ける。
- 5,800万円×1/2=2,900万円(1人あたり)
相続税率をかける。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | ー |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50%% | 4,200万円 |
9億円以下 | 55% | 7,200万円 |
- 2,900万円×15%−50万円=385万円(1人あたり)
このように1人あたり385万円、2人で770万円の相続税がかかることがわかりました。
なお、建物が賃貸中である場合や、小規模宅地に該当する場合には減額を受けられます。
相続した不動産を売却する流れ
不動産を相続した際の一般的な手続きや流れについて解説しましたが、ここからは相続した不動産を売却する流れについて解説します。
相続した不動産を売却する際のポイントは以下の2つです。
- 遺産分割協議を行い売却を開始する
- 売却後は確定申告が必要なケースがある
売却のタイミングや相続税の申告・納税といった違いはあるものの、基本的な流れは通常の不動産売却と変わりません。
通常の不動産売却の流れは以下のステップで進みます。
- 売却の準備
- 査定依頼
- 媒介契約の締結
- 売却活動
- 売買契約
- 残代金の決済・引き渡し
- 確定申告
具体的な流れは以下の記事で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
マンション売却の流れを解説!良い条件で売却するポイント。
遺産分割協議を行い売却を開始する
不動産の売却は遺産分割協議後に開始しましょう。不動産の売却は不動産の所有者でなければ行えません。
相続が発生した際には、次の所有者が未定であるため、まずは誰が相続するのかを決める必要があります。
また、売却資金をどのように分配するのかについても決めなければ、後々トラブルになってしまうため、まずは遺産分割協議が必要です。
売却後は確定申告が必要なケースがある
相続した不動産を売却した後には、確定申告が必要なケースがあります。
確定申告が必要なのは、売却時に購入時よりも高い価格で売れ、利益が出た場合です。不動産の売却で利益が出た場合は、譲渡所得税を納めなければなりません。
確定申告の時期は売却した翌年の2月16日〜3月15日です。相続人全員が確定申告をする必要があるため注意しましょう。
オススメ記事
不動産を相続した場合において、その手続きの流れと必要書類、不動産の相続時に発生する税金、相続した不動産に関するトラブルを回避するための遺産分割方法などの注意すべきことをご紹介。
相続不動産の売却時にかかる費用・税金
相続不動産の売却時にかかる費用・税金は以下のとおりです。
- 印紙税
- 登録免許税
- 譲渡所得税
- 仲介手数料
それぞれについて解説します。
印紙税
印紙税とは不動産の売買契約書に貼付する印紙の代金です。印紙税の金額は取引する不動産の価格によって異なります。
不動産の価格 | 印紙代(本則) | 印紙代(軽減措置) |
---|---|---|
1万円未満 | 非課税 | 非課税 |
50万円以下 | 400円 | 200円 |
100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 |
50億円以下 | 400,000円 | 320,000円 |
※令和4年3月31日までの間に作成される契約書については軽減措置が適用。
登録免許税
不動産を売却する際には、一度被相続人から相続人に名義変更をする必要があります。この時にかかる費用が登録免許税です。
不動産を相続によって取得した際には、以下の計算式で税金が求められます。
固定資産税評価額×0.4%
名義変更を司法書士に依頼する際には別途費用がかかるため注意しましょう。
なお、不動産を売却し買主の名義に変更する費用は、通常買主の負担となります。
譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)
譲渡所得税は不動産の売却時に購入時よりも高い価格で売れ、利益が出た際に納める税金です。
不動産の価格だけでなく、購入時や売却時の諸費用も踏まえて計算をします。
売却価格 −(取得費+譲渡費用)
課税譲渡所得 × 税率
※取得費
購入時の価格と購入時にかかった諸費用の合計。
※譲渡費用
売却時にかかった諸費用。
税率は所有期間によって異なります。
区分 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 |
---|---|---|---|---|
長期譲渡(所有期間5年超え) | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
短期譲渡(所有期間5年以下) | 30& | 9% | 0.63% | 39.63% |
所有期間については被相続人が所有していた期間がそのまま引き継がれます。
それでは、以下の内容で譲渡所得税のシミュレーションをしてみましょう。
- 売却価格:4,000万円
- 取得費:3,500万円
- 譲渡費用:150万円
- 所有期間:15年(長期譲渡)
シミュレーション結果は以下のとおりです。
- 課税譲渡所得:4,000万円 −(3,500万円+150万円)=350万円
- 譲渡所得税:350万円×20.315%=711,025円
譲渡所得税を算出するためには、被相続人がいつ不動産を購入したのか、いくらで購入したのかを調べる必要があります。
購入した時期は登記簿謄本で確認できますが、いくらで購入したのかは当時の契約書がなければわかりません。
もし購入時の契約書や領収書が見当たらない場合は、売却価格の5%を取得費とみなして算出することになります。
つまり4,000万円で不動産を売却した場合、その不動産を200万円で購入したとみなされるため、多くの利益が出てしまい納める税金も増えてしまいます。
取得費がわからない場合の詳細は国税庁のホームページをご確認ください。
仲介手数料
不動産を売却する際には、不動産会社への報酬として仲介手数料を支払う必要があります。
仲介手数料は不動産会社によって異なりますが、上限は以下のとおりです。
売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税
3,000万円の不動産を売却した際には「3,000万円×3%+6万円」に消費税を加えた105.6万円を支払う計算になります。
ここまで解説した費用や税金を踏まえたうえで、手残り金額を意識した売却価格を設定しましょう。
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仲介手数料の仕組みと安く抑える方法
不動産売却における費用のなかで、仲介手数料は多くの割合を占めます。
「仲介手数料を安く抑えられれば、手元に残る金額も増えるのに」と悩んでいる方も多いでしょう。
ここからは仲介手数料の仕組みと安く抑える方法について解説します。
仲介手数料の仕組み
仲介手数料は「売買価格×3%+6万円+消費税」で求められますが、この計算式はあくまでも仲介手数料の上限です。
つまり「売買価格×3%+6万円+消費税」以下であれば自由に価格を決められます。
通常の不動産会社は仲介手数料を上限金額で設定していますが、本来であれば相談の余地があることを認識しましょう。
また、不動産会社は仲介手数料を受領する際に2つのパターンがあります。
- 売主(もしくは買主)の片方から受領する(片手取引)
- 売主・買主の両方から受領する(両手取引)
売主から不動産を預かったA社が広告を出すものの買主が見つからず、他の不動産会社B社のお客さんが購入するパターンは片手取引となります。
この場合A社のお客さんは売主、B社のお客さんは買主となるため、A社は売主から、B社は買主から仲介手数料を受領します。
一方でA社が販売活動を行い、A社が買主を見つけた場合、A社は売主・買主の両方から仲介手数料を受領できるため、一度の取引で得られる報酬が倍になるのです。
片手取引か両手取引かは仲介手数料を抑えるために重要なポイントであるため、取引の際には他の不動産会社が関わっているかを確認しましょう。
仲介手数料を安く抑える方法
仲介手数料の仕組みがわかったところで、ここからは仲介手数料を安く抑える方法について解説します。
仲介手数料を安く抑える方法は以下の2つです
- 不動産会社に交渉する
- 不動産会社を比較検討する
それぞれについて解説します。
不動産会社に交渉する
仲介手数料を抑えたい場合にはその旨を不動産会社に伝えましょう。
「不動産会社としては利益が減るため、あまり快く思われないのでは」と考える方も多いですが、不動産会社としては「よくある相談」の1つであるため、気軽に相談に乗ってもらえます。
しかし、不動産会社もなるべく仲介手数料を下げたくないため、仲介手数料を下げる正当な理由をしっかりと伝えましょう。
また、不動産取引が両手取引であれば、仲介手数料の交渉がうまくいく可能性が高いです。
両手取引の場合は不動産会社が得られる報酬が片手取引の倍になり、利益が大きくなるため、多少の値下げ交渉であればスムーズに進むことも。
片手取引の場合は、不動産会社が得られる報酬がそもそも少ないため、仲介手数料の交渉は難しくなるでしょう。
さらに、仲介手数料を交渉する際にはタイミングに注意が必要です。
不動産の売却は、売却を開始する際に媒介契約という契約を交わします。
その際に仲介手数料についても取り決めを行うため、媒介契約後の交渉は困難になります。聞いてみる程度であれば問題ありませんが、無理な要求は避けましょう。
絶対にやってはいけないことは仲介手数料を下げさせるために、不動産会社の対応にあれこれと文句をつけて値下げを要求することです。
不動産会社との信頼関係が壊れるだけでなく、訴訟など別のトラブルに発展するケースもあるため注意しましょう。
不動産会社を比較検討する
仲介手数料を安く抑えるためには、不動産会社を比較検討しましょう。
不動産会社は数が多いため、他社との差別化として仲介手数料の割引を行っている会社も多いです。
仲介手数料を「売買価格×3%+6万円+消費税」で設定している不動産会社に交渉するよりも、最初から仲介手数料2%や、仲介手数料半額とアピールしている会社に依頼しましょう。
しかし、仲介手数料を割引している会社は、上限で設定している会社よりもサービス面で劣るケースもあります。
仲介手数料を上限で設定している会社は、その分豊富なサービスを提供しているケースが多いです。
- 壁や床の無料補修
- 設備の保証サービス
- プロカメラマンによる写真撮影…など
このようなサービスは仲介手数料を割引している会社では行っていないことが多いため、仲介手数料の価格だけでなく、トータルのサービス面で比較検討しましょう。
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仲介手数料を交渉するメリット・デメリット
仲介手数料を安く抑えるために交渉するのは有効な手段ですが、メリット・デメリットを理解したうえで交渉しましょう。
仲介手数料を交渉するメリット・デメリットについて解説します。
仲介手数料を交渉するメリット
仲介手数料を交渉するメリットは3つです。
- 仲介手数料が安くなる可能性がある
- 手残り金額を増やせる
- 交渉に失敗しても損はしない
仲介手数料は、交渉しなければ不動産会社が定める金額で話が進んでいきます。上限価格では多くの費用を支払うことになるため、安く抑えるためにも交渉をしてみましょう。
交渉がうまくいけば仲介手数料が安くなり、最終的な手残り金額を増やせます。仮に、交渉がうまくいかなかったとしても、損をすることはないため一度交渉するのがおすすめです。
仲介手数料を交渉するデメリット
仲介手数料を交渉するデメリットは2つです。
- 不動産会社が積極的な販売活動をしてくれないリスクがある
- 営業担当者のモチベーションが下がる
不動産会社は多くの不動産を取り扱っているため、予算の関係から折込広告や投げ込みチラシを作成する際には物件を絞らなければなりません。
その際に仲介手数料が安い物件は、費用対効果が下がるため販売活動を後回しにされる可能性があります。
また、不動産会社の営業マンの給与は歩合制であることが多いです。
つまり、仲介手数料が下がるということは、給与が下がることに直結します。そのため、仲介手数料を交渉すると営業担当者のモチベーションが下がってしまうこともあるでしょう。
仲介手数料の値下げ交渉は無理やりではなく、互いに納得した状態で行う必要があります。
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相続税を節税するための代表的な3つの方法
仲介手数料を安く抑える方法について解説しましたが、相続した不動産を売却する際に手残り金額を増やすためには、仲介手数料以外にも押さえておくべきポイントがあります。
それが「節税」です。
ここからは相続税を節税するための代表的な3つの方法を解説します。
- 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
- 居住用の家を売却した場合の3,000万円控除
- 相続した空き家を売却した場合の3,000万円控除
それぞれの制度を理解して、有効活用しましょう。
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続した不動産を売却して利益が出た際には、譲渡所得税を納める必要があるため、相続税と譲渡所得税で税金の二重取りをされているように感じるでしょう。
しかし、取得費の特例を利用することで譲渡所得税を軽減できます。
取得費の特例とは、相続が発生した日から3年10ヶ月以内に不動産を売却することで、相続税の一部を取得費用として計算できる制度です。
譲渡所得税は以下の計算式で求められます。
売却価格 −(取得費+譲渡費用)
課税譲渡所得 × 税率
取得費とは本来であれば不動産の購入価格と購入時にかかった諸費用ですが、取得費の特例を利用することで、既に支払った相続税の一部を取得費に組み込めます。
相続税の一部を取得費に組み込むことで、課税譲渡所得が少なくなり、結果として譲渡所得税を節税できます。
居住用の家を売却した場合の3,000万円控除
自己居住用の不動産を売却した際には、譲渡所得から3,000万円を控除できます。
つまり売却時の利益が3,000万円以下であれば、税額は0円になります。
多くの金額を節税できる制度であるため、相続した不動産が自己居住用の場合は3,000万円控除を利用しましょう。
もし自己居住用不動産の要件を満たすか不安な方は、不動産会社や税理士、税務署に相談してみましょう。
相続した空き家を売却した場合の3,000万円控除
自己居住用の不動産ではない場合も一定の要件を満たすことで、3,000万円控除を利用できます。
それが「相続空き家の3,000万円控除」です。
相続空き家の3,000万円控除を利用するための主な要件は以下のとおりです。
- 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
- 相続開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
- 相続の開始から売却まで引き続き空き家であること
- 一定の耐震基準を満たすものであること
- 売却代金が1億円以下であること
- 相続の開始があった日から3年後の12月31日までに売ること
このような条件を満たすことで制度を利用できます。
今回解説した3つの制度以外にも、買い替えの際に利用できる制度や、所有期間による軽減制度など様々な節税方法があります。
制度によって併用できるものやできないものがあるため、どの制度を利用するか比較検討しましょう。
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まとめ
本記事では、相続が発生した際の不動産売却の流れや費用について解説しました。
相続が発生した際には死亡届の提出や葬儀の準備、各種手続きに追われてしまいますが、並行して相続財産や相続人の確認をしなければなりません。
忙しいタイミングではありますが、相続人でしっかりと今後の流れについて話し合いましょう。
相続した不動産を売却する際には、かかる費用や税金を計算し、手残り金額を踏まえたうえで売却価格を決める必要があります。
仲介手数料の割引や節税方法など、お得な仕組みは数多くあるため、制度を活用しながら売却を進めていきましょう。