不動産相続の失敗を避けるための完全ガイド|よくあるケースと対策も解説

  不動産相続の失敗を避けるための完全ガイド|よくあるケースと対策も解説

この記事では不動産相続のよくある失敗と、それらの対策について解説していきます。知識として持っておくだけ非常に役立つ内容になっていますのでぜひご活用ください。

濱田 真理
【執筆・監修】濱田 真理

阪神大震災で全壊した実家の再建をきっかけに、宅地建物取引士の資格を取得しました。 不動産会社勤務を経て、現在は不動産系SEOライターをしております。 分かりやすい解説と確かなエビデンスにより、信頼される記事の執筆が可能です。

【保有資格】宅地建物取引士

不動産相続における失敗は誰にでも起こり得る問題です。

基本的な知識が不足していることで計算や手続きを間違えると、高額な相続税を払うことになりかねません。

この記事では相続でよくある失敗例だけでなく、相続手続きの正しい手順から、相続税の計算方法、必要な書類まで、基礎知識をわかりやすく解説。

さらに土地や戸建て、マンションの具体的な相続に関するポイントも紹介します。

この記事を読むことで、不動産相続の不安を解消し、自信を持ってスムーズな手続きへと進めます。

不動産相続でよくある失敗

不動産相続でよくある失敗として、以下の3つのケースがあります。

  • 相続放棄に関する失敗
  • 相続税に関する失敗
  • 共同相続に関する失敗

それぞれ解説します。

相続放棄に関する失敗

相続する不動産以外に多額の債務があった場合、債務も相続することになります。

ただし相続の事実を知った日から3ヶ月以内に相続放棄が可能です。

3ヶ月は相続について検討するための熟慮期間ですが、家庭裁判所に申告すれば、熟慮期間を延長できます。

家庭裁判所に熟慮期間の延長を申告せず3ヶ月が経過した場合、債務もすべて相続しなければなりません。

納得いかない場合は家庭裁判所に申告できますが、正当な理由を裏付ける証拠を合わせて提出する必要があります。

期限があることを知らなかっただけでは認められません。

また複数の相続人がいるなかで自分だけが相続放棄すると、他の相続人が債務をすべて相続することになり、あとあともめる原因にもなりかねません。

債務の相続放棄は全員が一度に相続放棄を申し出ることをおすすめします。

参考元:ベンナビ|相続放棄の失敗が不幸を招く!6つの失敗例と6つの対策をチェックしよう

相続税に関する失敗

不動産相続税の計算ミスや評価の誤りは、多額の課税につながる可能性があります

特に不動産の評価額を適切に把握せずに進めると、相続税が高額になりかねません。

また生前贈与で相続税対策をしておかなかったために、相続税が高額になるケースもあります。

相続税対策としては、贈与や遺言の活用、相続に詳しい専門家との連携が不可欠です。

共同分割に関する失敗

不動産を複数の相続人で共同相続する際のよくあるケースは、相続人同士の意見が揃わないというトラブルです。

特にマンションや借家の共同相続について意見が揃わないと、相続した不動産を適切に活用できず、維持費だけがかさむ事態になりかねません。

一部の相続人が売却や改修を望む一方で、他の相続人が反対した場合、なかなか相続が解決できないこともあります。

不動産は均等に分割できないため、相続前に共同相続について全員でよく話し合って決めておくことが重要です。

不動産相続での具体的な失敗例

不動産相続での具体的な失敗例として、以下の3つのケースを紹介します。

  • 小規模宅地等の特例を受けられなかったケース
  • 不動産を一人っ子が相続したケース
  • 不動産の名義が変更されていなかったケース

それぞれ解説します。

小規模宅地等の特例を受けられなかったケース

不動産を相続する場合、一定条件を満たす小規模な事業用や居住用の宅地等は、最大80%減額できる特例措置があります。

被相続人が亡くなるまで同居していた相続人や、被相続人が所有していた小規模アパートや借家であることが条件です。

この特例を知らずに不動産を売却し、現金を複数の相続人で分割相続した場合、この特例は利用できません

また相続人の一人が被相続人と同居していたが、他の相続人は別居していた場合、同居していた相続人は80%の減額が可能です。

しかし別居していた相続人は特例を受けられません。

参考元:THE GOLD ONLINE|相続に伴う「税」に関するよくある失敗事例
国税庁|№4124相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

不動産を一人っ子が相続したケース

相続した財産について配偶者特別控除を利用すると、不動産評価額の1億6,000万円までを非課税にできます。

例えば父が所有する1億6,000万円の不動産を母親が相続した場合、配偶者である母親は全額非課税で相続が可能です。

しかしその後母親が亡くなって、1人息子がそのまま相続すると非課税枠は3,600万円なので、評価額が同じだった場合1億2,400万円に対して相続税が発生します

生前贈与するなどして対策しておけば、大きな節税ができた可能性があります。

参考元:相続トータルサポート@東京|よくある相続対策の失敗例
国税庁|№4158 配偶者の税額の軽減

不動産の名義が変更されていなかったケース

相続できるのは被相続人の名義になっている不動産だけです。

被相続人が亡くなったのに被相続人に相続登記していなかった場合、相続できません。

例えば被相続人が亡くなったあと何代にも渡って相続登記が行われなかった不動産は、相続に関係する人が数十人にもなることがあり、全員の合意を得ない限り相続登記できません

また被相続人が所有していたと思っていた不動産が、土地だけ他人の名義だった場合、被相続人が土地の権利も有していたと証明できる契約書などが見つからない限り、相続登記できません。

参考元:千葉あんしん相続相談センター|#129 相続登記の未了が原因で起きた失敗例

不動産相続で失敗しないための基礎知識

不動産相続で失敗しないための基礎知識として、以下の3点を紹介します。

  • 不動産相続の手続きの手順
  • 相続税の計算方法
  • 不動産の相続登記に必要な書類

それぞれ解説します。

不動産相続の手続きの手順

不動産を相続する手続きの流れは以下の通りです。

  • 遺言書を確認する
    被相続人が書いた遺言書があるか確認する
    ある場合:遺言に基づいて財産を分割
    ない場合:民法で定められた割合によって法定相続人で分割
  • 相続人を特定する
    遺言書がある場合:遺言書に従う
    遺言書がない場合:被相続人の戸籍謄本を取り寄せ正確に相続人を特定する
  • 財産を特定する
    被相続人が所有していた不動産がある市区町村で確認する
  • 遺産分割協議を行う
    遺言書がある場合:原則としてそれに従う
    遺言書がない場合:必ず相続人全員で遺産分割協議を行う
    協議の結果分割方法などの内容を遺産分割協議書にまとめ全員が署名・押印する
  • 不動産の相続登記を行う
    不動産の所有者を相続人に変更するための相続登記をする
  • 相続税を申告・納税する
    相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内に相続を申告し相続税を納付する

参考元:⑤リライト済 不動産 相続のドキュメント

相続税の計算方法

不動産は現金とは異なり額が一定ではありません。

相続税を計算するには、まず相続時点の固定資産税評価額を基に不動産の価値を調べます。

固定資産税評価額の調べ方は以下の4通りです。

調べ方 概要
固定資産税課税
明細書で確認する
毎年4月~6月頃に送付される納税通知書に同封されている
固定資産税課税明細書に記載されている
固定資産税評価
証明書を取得する
各自治体の窓口か各自治体のサイトから申請する
申請できるのは本人か家族・相続人で本人確認書類が必要
固定資産税課税
台帳を閲覧する
各自治体の窓口にて無料で閲覧可能
閲覧できるのは不動産所有者本人・相続人・遺言執行者・
相続財産管理人・代理人で本人確認書類が必要
本人以外が閲覧する場合不動産所有者との身分関係を
証明する書類も必要
代理人が閲覧する場合委任状も必要
全国地価マップ
調べる
サイトにアクセス→固定資産税路線価→
所有する不動産の住所を検索→固定資産税路線価
(1㎡あたりの固定資産税評価額)が分かるので
面積をかけると実際の固定資産税評価額が算出できる

固定資産税評価額や特例を利用するかどうかなど申告の方法により相続税の金額は異なります。

通常は以下の式で計算されます。
(固定資産税評価額ー基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数))×税率

しかし「不動産を一人っ子が相続したケース」で紹介したとおり、配偶者特別控除を利用すると、配偶者である相続人は1億6,000万円の控除が受けられます。

また「小規模宅地等の特例を受けられなかったケース」で紹介したとおり、小規模宅地等の特別控除を使用すると、被相続人と同居していた相続人は80%もの控除を受けられます。

特例を知らないで申告すると高額の相続税を払うことになりかねません。

利用できる特例があるかは、相続に詳しい専門家に相談するのが一番です

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不動産の相続登記に必要な書類

不動産の相続登記に必要な書類は、以下の通りです。

必要書類 概要
被相続人の出生から
死亡までの戸籍謄本
登記申請は生殖年齢の13歳前後のものから
揃っていれば基本的にはOK
相続人全員の戸籍謄本
(現在のもの)
相続人が存命である証拠として発行日が被相続人の
死亡日以降の戸籍謄本が必要
被相続人の戸籍の附票 ある本籍地にいる間に住所を何回か移転しても、その住所の
変遷が記載されている書類で本籍地の
市区町村で取得可能
不動産を取得する
相続人の住民票
架空の人物ではないという証拠として必要
不動産の登記事項
証明書
法務局の登記簿に記録された土地や建物の所有者情報を
記載したもので管轄の法務局で取得可能
不動産の
固定資産評価証明書
土地や建物などの固定資産の評価額が記載された
証明書で不動産所在の市区町村で取得可能

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不動産相続で失敗しないためのポイント

不動産を複数の相続人で相続する場合、現金のように均等に分割できません。

そこで以下の4つの方法のいずれかで相続します。

相続方法 内容
現物分割 不動産を含む財産をそのままの形で相続する方法
不動産が2つあり相続人二人がそれぞれ相続するようなケース
評価額に差がある場合、トラブルになる可能性あり
土地のみの相続に適している
代償分割 特定の相続人が相続財産の一部を単独で取得し、代わりに
他の相続人に対して代償金を支払う方法
相続人が不動産を相続し、他の相続人は現金を得られる
相続人が代償分を払えない場合は分割できない
換価分割 相続財産である不動産を売却して現金化し、その代金を相続人で
均等に分割
相続人全員が不動産の相続を望んでいない場合や相続税の支払いに
現金が必要な場合に有効
共有名義 相続人が「共有名義」で相続する
各相続人の所有割合を持分割合として登記する
将来的に不動産の売却や賃貸の際には全ての共有名義者の同意が必要
不動産の管理や処分が難しくなる可能性がある

以上を踏まえたうえで、不動産相続で失敗しないためのポイントを以下の3つにまとめました。

  • 土地の相続に関するポイント
  • 戸建ての相続に関するポイント
  • マンションの相続に関するポイント

それぞれ解説します。

土地の相続に関するポイント

土地の相続に関するポイントは以下の通りです。

ポイント 確認事項
利用計画の確認 自分で利用する・賃貸や売却するなど相続する土地をどのように
利用するかを検討する
利用方法によって税金や管理費などについても対策が必要
地目の確認 地目が宅地か農地かによって転用可能か売却に有利かなどが変わる
固定資産税・
都市計画税の確認
土地の固定資産税評価額から将来負担する税額の把握が必要

戸建ての相続に関するポイント

戸建ての相続に関するポイントは以下の通りです。

ポイント 確認事項
建物の状態の把握 建物の老朽化状態・ガス水道など設備の安全性を確認し
リフォームか売却かを検討
登記簿謄本の確認 「不動産の名義が変更されていなかったケース」で解説したとおり
土地と建物の両方の名義が被相続人になっているのか確認が必要
固定資産税・
都市計画税の確認
土地の固定資産税評価額から将来負担する税額の把握が必要

マンションの相続に関するポイント

マンションの相続に関するポイントは以下の通りです。

ポイント 確認事項
建物・室内の
状態の把握
建物(共有部分)と室内(占有部分)の
老朽化状態・ガス水道など設備の安全性を確認し
リフォームか売却かを検討
共有部分はいつごろ大規模修繕を行ったか確認も重要
大規模修繕の時期によって売却価格も変わってくる
管理費・
修繕積立金の
確認
マンションの管理費・修繕積立金の確認が必要
土地や建物にはない経費のため売却か所有かの見極めのため必要
管理組合の
確認
マンション内のルール
(共有部分の清掃は住人が当番制で担当する場合もある)や
管理組合総会の内容や時期の確認
(理事が当番制で回ってくる場合もある)

不動産相続で失敗しないために専門家に相談しよう

この記事では不動産相続での失敗例、手続きの手順などの基礎知識、相続で失敗しないためのポイントなどを解説しました。

不動産相続で失敗するケースのほとんどは、知識不足で特例を利用できなかったことが原因です。

相続は一生に何度もないことで、不動産会社や税理士事務所でも相続に関する知識や経験がない専門家もいます。

不動産の相続に関しては、なじみの税理士に一任するのではなく、相続に詳しい専門家に相談することが重要です。

この記事を参考にして不動産の相続に関する知識を身につけ、スムーズな不動産相続のヒントにしていただければ幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

参考元:
不動産の相続でよくある3つの失敗と注意すべきポイント

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