不動産業界は、AI(人工知能)の導入により大きく変わろうとしています。
この記事では、不動産業界におけるAIの活用方法、大手不動産会社を中心としたAIの活用事例の紹介、不動産業界におけるAIの導入方法について紹介します。
不動産業界でも進むAIの導入
様々な業界で、AIの導入が進められています。
2024年働き方改革を初めとする様々な課題がある中で、企業はAIを導入することにより、業務効率化や生産性の向上を図っています。
企業がAIを導入するメリット
AIは、定型化された業務を確実にこなすことを得意としています。
人のようにケアレスミスをすることなく、24時間365日稼働できるので、業務処理量が飛躍的に増加します。
また、膨大なデータを学習し、このデータを元に、売上や需要を高い精度で予測することもできます。
その結果、
- 業務(特に定型化された業務)を効率化できる。
- 新サービスを提供できるようになる。
- 労働環境の改善を図ることができる。
このようなメリットを享受できます。
企業がAIを導入するデメリット
AIは人間の業務を代替えできますが、人間の雇用が失われることにもなります。
特に、定型化された業務を行っていた人が必要なくなるため、人材の配置転換などを考えなければなりません。
また、AIの導入には、設備投資コストがかかるため、中小企業では費用対効果を考慮する必要があります。
さらに、サイバーセキュリティリスク増大への対処、AIを運用する人材の配置なども必要になります。
つまり、
- 雇用の調整や人材の配置転換が必要になる。
- 設備投資コストがかかる。
- AIの運用やセキュリティーの専門人材が必要になる。
このようにコストと人材面で大きな影響を及ぼすことになります。
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不動産業界でのAIの導入
不動産業界でのAIの導入は遅れています。
宅地建物取引業者は中小企業が多いことから、AIの導入コストの高さが障壁になっている面もあります。
しかし、同業他社に先立ってAIを導入することにより、多くのメリットを享受できることもあります。
不動産業界のAI活用領域
不動産業界でAIを活用することで業務の効率化を図れることが期待できるのは次のような領域です。
不動産の査定
不動産の査定は、経験を積んだプロの人が直接物件を確認し、様々な観点を考慮して行っています。
しかし、不動産の価格を決定することは、簡単なことではなく、高すぎても低すぎても売りにくくなるなど、プロでも決めるのが大変な作業です。
その点、AIならば、高い精度で不動産査定を行えるようになります。
過去の膨大な取引情報などをAIに機械学習させておけば、物件情報を入力するだけで、AIが類似物件の取引データを基に査定価格を行ってくれます。
AIに不動産査定を行わせることで、人が行うよりも短時間で価格を算出できる点が最大のメリットです。
また、不動産のAI査定のシステムはネット上で公開しておくこともでき、クライアントが匿名で利用できる点も特徴です。
一方で、不動産のAI査定は、物件の個別の特徴を価格に反映させることができないこともあります。
例えば古民家は築年数が経過していても価値がありますが、AI査定だと、築年数が長いだけで低く評価することもあります。
人が不動産査定を行う場合は、様々な根拠を示しますが、AI査定だと具体的な根拠が示されないこともあります。
不動産の仲介
不動産の仲介は、人間が行うものだというイメージがあるかもしれませんが、実は、AIにより効率化できる業務の一つです。
宅建業者がクライアントに物件を紹介する際は、クライアントの要望を聞き取ったうえで、膨大な物件情報の中から、条件に合う物件をいくつかピックアップして紹介しています。
AIを活用すれば、宅建業者が物件を検索する手間が省けるうえに、時間もかかりません。
あらかじめ、AIに膨大な物件情報を機械学習させておき、クライアントの要望を入力するだけで、瞬時に条件に合った物件をピックアップできるようになります。
また、ネット上で不動産仲介機能を備えたAIを公開しておくことで、クライアント自身が情報を入力して、最適な物件を見つけることができるようになっています。
データ管理もAIで一括して行うこともできるため、情報セキュリティの面でもメリットがあります。
お問い合わせへの対応
不動産業界は、クライアントに不動産の情報を提供するサービスなので、クライアントから不動産に関する様々なお問い合わせが寄せられます。
取引につながるお問い合わせもありますが、そうではないものも多いため、従業員がその一つ一つに対応するのは大変です。
AIのチャットボットを導入することにより、簡単な質問に対しては、AIに回答を任せて、取引につながるお問い合わせのみ従業員が対応する形で、業務の効率化を図ることができます。
また、AIのチャットボットならば、24時間365日稼働できるため、回答が迅速化され、顧客満足度の上昇につながるメリットもあります。
帯替えなどバックオフィス業務の効率化
帯替えとは、他社の物件を仲介する際に、物件案内図に自社情報を張り付ける作業です。
誰でもできる単純な作業ですが、膨大な量の帯替えを行う場合は、ミスが発生しがちですし、こうした作業を従業員に行わせることにより、従業員を疲弊させてしまいがちです。
その点、AIは、帯替えのような単純な作業を効率よく大量に処理することを得意としているので、AIに任せることにより、従業員に他の仕事をやってもらうことができるうえ、ミスの発生を最小限に抑えることもできます。
その他、物件情報や顧客情報の管理もAIを組み込んだツールを利用することで、データベースで効率的に共有、一括管理できるようになるため、業務の効率化が期待できます。
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不動産業界のAI導入事例
不動産業界でのAI導入事例を紹介していきます。
AI導入にはコストがかかることもあり、先行して導入しているのは大手不動産会社が多いです。
三井のリハウス「リハウスAI査定」
三井不動産リアルティが運営する「三井のリハウス」ウェブサイトで公開している不動産AI査定システムです。
マンション限定ですが、マンション名、所在地、所在階数などを入力するだけで、AIが過去の取引事例や成約事例の膨大なデータを基にマンションの査定額を算出してくれるサービスです。
マンションの所有者が、マンションを売却する際に、宅建業者に相談する前に、おおよその査定価格を知っておきたいというニーズに答えています。
取引事例の多いマンションほど、AI査定の精度が高いとされ、大規模マンション、築10年以上のマンションの査定に向いていると紹介されています。
また、AI査定では物件を見ずに査定するため、リフォームしていないマンションの方が精度が高いとのことです。
参考 マンションAI査定とは?利用時のメリットや注意点、おすすめの物件もご紹介
東急リバブル「AI相性診断」
「物件探しは“検索”から“AI提案”へ」をキーワードに、物件探しをするクライアントに向けて、AIにより物件情報を提案するサービスを提供しています。
検索機能では、クライアントが入力した希望条件に合致した物件のみが表示されますが、AI相性診断では、完全一致していなくても、気に入ってもらえそうな物件をAIが選んで提案できる点が異なっています。
例えば、クライアントが「渋谷駅」近くの物件を探している場合に、AIが「渋谷駅」ではなく隣の「原宿駅」なら、クライアントの希望に近い物件がある。
といった提案を行います。
このように、あたかも人間の営業担当者とやり取りしているかのような精度でAIが物件情報を紹介できる仕組みになっています。
参考 物件探しは“検索”から“AI提案”へ この物件との相性は何%?「AI相性診断」機能を導入
野村不動産「住みかえアシスタント AI ANSWER Plus」
AI ANSWER Plusは、お問い合わせへの対応を対話型AIが対応するシステムです。
物件探し、段取り、物件の比較検討、専門用語の解説といった不動産取引に関する幅広い質問に対して、あたかも人間の営業担当者が回答しているかのように精度の高い対話が可能だとのことです。
不動産売買に関する相談や質問を人間の営業担当者に対してするには、心理的なハードルが高いですが、対話型AIであれば、気軽に相談できるうえに、24時間365日いつでも質問できるメリットがあります。
参考 野村不動産ソリューションズ×LIFULL の共同開発 11月29日より「AI ANSWER Plus(ベータ版)」の提供開始
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不動産業者がAIの導入に踏み切るには?
AIを導入する不動産業者は今後も増え続けるでしょう。
AIの導入が不動産業界で生き残るためのカギになるといっても過言ではありません。
中小規模の不動産業者もAIの導入を検討すべきですが、そのためには、二つのステップを踏む必要があります。
ステップ1 AI導入の目的を明確化する
不動産業者のAI活用方法は、上記で紹介した、不動産の査定、不動産の仲介、お問い合わせへの対応、帯替えなどバックオフィス業務の効率化などが主なものになります。
今後も、AIの性能の向上により、他の活用方法も出てきます。
いずれにしても、AIの導入により、何をしたいのかを明確にすることが大切です。
AIの導入には高額な費用がかかるため、明確な目標と計画を立てなければ、導入コストの回収ができなくなります。
ステップ2 AIに詳しい人材の育成と確保
導入したAIを運用するためには、AIシステムの構築や運用などを担当する人材が必要です。
自社内にAIに詳しい人材がいない場合は、育成するか、新たに採用する必要があります。
また、自社内で人材を育てたり、AI部門を育てる余裕や時間がない場合は、AI運用に強いIT系企業との業務提携やM&Aも視野に入れるべきです。
AIの進化により不動産業者の仕事が無くなるのか?
不動産業界では将来的には、AIが物件を仲介するようになるから、不動産の仲介業が無くなるのではないかとの懸念も出ています。
既に、不動産仲介機能を備えたAIも実用化されています。
AIならば扱える情報量は膨大ですから、人間が紹介するよりも精度の高い物件の紹介も可能になっています。
しかも、24時間365日休みなしでの稼働も可能です。
しかし、AIは人間ではないため、物件に住んだ人が感じる住み心地、満足度といった感情を推し量ることは難しいという側面があります。
その点を考慮すると、不動産の仲介業がAIに完全に置き換えられることはなく、AIによって物件探しを効率化させつつも、最終的には、人間の営業担当者がクライアントの感情をくみ取って提案を行っていくことが必須と言えます。
そのため、AIにより、不動産の仲介業が無くなることは現時点ではないと考えてよいでしょう。
まとめ
AIは、膨大な物件情報を扱う不動産業界と相性が良いため、今後も不動産業界におけるAIの活用は広がっていきます。
不動産業者が行っている仕事の多くが、AIに置き換えられるので、不動産業者としては仕事が、AIに奪われてしまうとの懸念を抱くかもしれません。
しかし、不動産業界におけるAI導入の流れを止めることはできません。
今後は、AIを活用して業務の効率化を図りつつ、AIにはできないことに人材を振り向けられる不動産業者が生き残っていくことになるはずです。
AIの導入を検討している不動産業者の方は参考にしてください。