不動産売却で手にする金額は?具体的なシミュレーションと計算方法を解説

  不動産売却で手にする金額は?具体的なシミュレーションと計算方法を解説

不動産売却の際にはさまざまな諸費用がかかります。この記事では実際のケースをもとに不動産売却時に手に入る金額について詳しく解説してきます。

シンタロウ
【執筆・監修】シンタロウ

不動産会社の宅建士2年目、賃貸、売買、空き家の管理、宿泊などさまざまな空き家の活用に取り組んでいる。 教員から転職して不動産会社に勤務しています。 宅建士以外にもFP3級を取得しており、今後は法律関係の資格を取得予定です。 最近できるようになったことは事故物件が感覚でわかるようになったこと。

【保有資格】宅建士

不動産を売却する際には、さまざまな諸費用や税金の支払いなどがあり、売却した金額と実際の手取り金額が大きく異なることがあります。

不動産の売却に関する諸費用と、譲渡所得税を正確に計算することで不動産売却による最終的な手取り金額をシミュレーションすることが可能です。

この記事では不動産売却で最終的に手にする金額に関する以下の内容について解説します。

  • 不動産売却の流れ
  • 不動産売却の諸経費
  • 譲渡所得税の計算方法
  • 実例をもとにした不動産売却の手取り金額シミュレーション

不動産の売却を検討しているが、売却にかかる諸費用がどれくらいあるか不安で決断できないという方はぜひご覧ください。

不動産売却の流れ

不動産売却の流れは、売却の方法によって変わりますがおおむね以下のように進んでいきます。

  • 不動産会社に査定依頼
  • 依頼する不動産会社の決定
  • 買主の決定
  • 契約、決済、引き渡し

それぞれの段階の概要を説明します。

まずは、不動産売却がどのように行われるかを確認しておきましょう。

不動産会社に査定依頼をする

まずは、売却したい不動産の査定を不動産会社に依頼します。

不動産会社は基本的には無料で査定を行ってくれます。

査定の際には、固定資産税の課税明細があれば準備しておくと査定がスムーズに進みます。

建物がある場合には、建築当時の図面や設計図や各種申請書類が残っていれば不動産会社に見せましょう。

書類が残っていることは査定にとってプラスに働く場合があります。

また、過去に事件、事故、自殺など購入の判断に重大な影響を与える内容や、水道、電気、ガスなどのインフラの状態などは売却時にトラブルになることが多いので、売買に不利に働きそうなことでも必ず伝えるようにしましょう。

査定金額に影響するだけでなく、そのような事実を伝えず売却をした場合にトラブルになり、売主の責任が問われる場合があります。

査定金額は不動産会社によって異なるので、複数社に査定を依頼しましょう。

複数社に依頼する際には、大手不動産会社と個人経営の地元に強い不動産屋というように、異なる規模や特徴を持った不動産会社に査定を依頼するのがおすすめです。

また、不動産会社には大きく分けて2種類の会社が存在し、それぞれによって査定金額に少し違いがあります。

不動産仲介会社

不動産仲介会社は、不動産売買に関して、契約成立に向けて仲介をする会社です。

不動産仲介会社に依頼することで、不動産仲介会社は不動産の広告をして、物件の案内をすることにより買い手を見つけてくれます。

契約について、書類の作成や決済のサポートをするのも仲介会社の仕事です。

広く広告をして買い手を見つけるので、査定金額が比較的高くなり、高い金額で売却ができる可能性が高いのが仲介会社に依頼するメリットです。

不動産が無事売買できた場合に、仲介手数料という報酬を不動産会社に支払う必要があります。

不動産買取会社

不動産買取会社は、文字通り不動産を買い取る会社です。

不動産買取会社は、不動産を買い取るため、査定金額は不動産会社が買い取れる金額を提示します。

一般的に、不動産買取会社の査定は不動産仲介会社よりも金額が低くなることが多いです。

その代わりに、仲介手数料の支払いが必要ないことや仲介した場合の買い手を見つける手間がないのでスピーディーに売却できるといったメリットがあります。

一般的な不動産の評価や価格決定に関しては、後で詳しく解説します。

依頼する不動産会社の決定

査定金額や、不動産会社の実績、知名度などを総合的に判断して依頼する不動産会社を決定します。

依頼後の業務に関しては基本的には不動産会社が行ってくれます。

ただし、実際に売買代金が支払われ、所有権が移転するまでは不動産の維持や管理の責任は所有者にあります。

特に空き家の場合は火災保険に加入したり、見回りを行うなどして管理を怠らないようにしましょう。

買主の決定

不動産会社で買主を決定したり、不動産会社の買取が決定したら契約に移ります。

不動産仲介会社に依頼している場合は、値下げの交渉や細かい条件の設定などがある場合がありますが、それらは全て不動産仲介会社が間に入ってくれます。

不動産仲介会社からのアドバイスをもとに交渉を進めましょう。

条件が決定したら契約に移ります。

契約、決済、引き渡し

売却の最後のステップとして、契約、決済、引渡しが行われます。

不動産会社が作成した売買契約書をもとに、契約が行われます。

基本的には売買契約の日に売買代金の決済や、所有権移転の登記申請が行われます。

いくつかの手続きを同時に行うため、事前に下記の書類を用意する必要があります。

  • 権利証または登記識別情報
  • 本人確認書類(免許証、マイナンバーカードなど)
  • 固定資産税納税通知書の写し
  • 印鑑証明
  • 住民票
  • 売買代金の振込先の情報(銀行口座の通帳の写しなど)

売買の方法によってはこれ以外に別途書類が必要となる場合があります。

書類が不足すると、当日の決済が行えず、さまざまなトラブルの原因となります。

事前に不動産会社に書類を確認してもらうなどして、契約日に書類がそろうようにしましょう。

不動産の価格決定の要因

不動産の価格決定の際には、土地や建物に関してさまざまな指標や方法があります。

土地と建物それぞれに分けて解説します。

土地の価格決定の要因

土地の価格を決定する場合には、土地の評価額が参考になります。

土地の評価額とは、公的な機関によって公表される指標となる土地の価格のことです。

土地の評価額には以下の5種類があります。

  • 公示価格
  • 実勢価格
  • 固定資産税評価額
  • 相続税評価額
  • 基準値標準価格

それぞれに算定の基準が異なりますが、売買で特に重要なのは実勢価格です。

実勢価格とは、実際の取引事例をもとに算出される価格のことであり、実際に売れた金額をもとにしているため、実際に売却できる金額に最も近い評価額といえます。

不動産会社の査定は以上の評価額をベースとして、土地の立地、広さ、形状、周辺環境を踏まえて総合的に評価がされます。

一般の人でも、不動産ポータルサイトで売却したい不動産の近隣で売買されている不動産の情報を参照することで、おおよその相場をシミュレーションできます。

建物の価格決定の要因

建物の価格決定については、以下の要因があげられます。

  • 固定資産税評価額
  • 築年数
  • デザイン
  • 構造

建物の価格を決定する際には、土地とは異なり、固定資産税評価額を用いることはほとんどありません。

それよりも、重視されるのは、築年数、デザイン、構造です。

その中でも最も重要なのは築年数です。

建物は土地と異なり、年月の経過によって劣化が進んでいきます。

実際に、法律によって耐用年数が、木造の戸建の場合は約22年、鉄筋コンクリート造の場合には約47年と定められており、これを超える築年数の建物は基本的には価値がないと判断されます。

そのため、築年数が相当経過した土地建物を売る場合は、土地の価格が重要になってきます。

また、内装や外観のデザインが特定の需要しか見込まれないものに関しては、需要が狭まり評価が低くなる傾向があります。

注文住宅などで、自分好みにデザインした建物が意外と評価が低くなることがあるため注意が必要です。

建物の評価額は、以上のようにさまざまな要因が関係しているため、一般の人がシミュレーションすることは困難です。

そのため、建物がある場合には複数の不動産会社による査定が必要不可欠です。

譲渡所得税

不動産を手取り金額をシミュレーションする上で最も重要なのは譲渡所得税を正確に算出する方法です。

譲渡所得とは、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得をいいます。

譲渡所得に対して、一定の割合で課税がされます。

不動産を売却した際の譲渡所得は以下の方法で計算されます。

譲渡所得=売却金額-(不動産の取得にかかった費用+売却にかかった諸経費)-特別控除額

課税される金額は、不動産の所有期間が5年以内の場合は譲渡所得の39.63%、5年を超える場合は20.315%が課税されます。

譲渡所得の計算に必要な各項目について説明します。

参考:土地や建物を売ったとき|国税庁

売却金額

不動産の売却金額とは、契約書に書かれた金額のことです。

不動産売買の際には、固定資産税の日割り精算が発生するため、実際に支払われた金額と契約書に書かれた金額が異なる可能性があります。

売却金額は、必ず契約書を参考にしましょう。

不動産の取得にかかった費用

不動産の取得にかかった費用とは、土地や建物を購入した代金や購入時に支払った手数料、建築にかかった費用や設備費、改修にかかった費用が該当し、譲渡所得の計算の際に、売却金額から取得にかかった費用を控除できます。

土地に関しては、購入時にかかった費用がそのまま取得にかかった費用となりますが、建物に関しては購入代金から所有期間中に価値が落ちた分を踏まえて取得費用が決定されます。

また、これ以外にも取得費用に換算できる費用がありますが、それらを証明できる書類が必要なため事前に不動産の購入時や建築時の書類を全て確認し、必要に応じて税務署や税理士に相談をしましょう。

不動産の取得にかかった費用がわからない場合

築年数が相当経過した建物や、相続によって代々引き継がれてきた土地に関しては取得にかかった費用が分からない場合があります。

その場合には、売却した金額の5%に相当する金額を取得にかかった費用とすることができます。

例えば、土地建物を2000万円で売った場合には、取得費を100万円にできます。

取得費がわかっていてもそれを証明する書類が無ければ、取得費がわからないと処理されます。

例えば、3000万円で購入した土地を2500万円で売った場合、本来であれば、購入代金が売却代金を上回っているので、譲渡所得はマイナスとなります。

しかし、取得費不明となると、2500万円の5%である125万円が取得費となるため譲渡所得はマイナスにはならず、結果として課税されてしまいます。

課税されれば当然不動産を売却した場合の手取り金額は下がってしまうので、事前に不動産の購入や建築に関する書類がないか探しておきましょう。

売却にかかった諸経費

売却にかかった諸経費についても、譲渡所得の計算の際に売買代金から控除できます。

不動産の売却にかかった諸経費には、主に以下の費用が該当します。

  • 仲介手数料
  • 契約書に貼った印紙代
  • 土地を売るための建物解体費用と建物の損失額

これ以外にも特殊な条件下での売買において上記以外の費用が諸経費に該当する場合があります。

売却にかかった諸経費は、売却に直接関係があった費用のことであり、建物の修繕費や固定資産税については維持や管理のための費用となるため該当しません。

特別控除

一定の条件を満たすことで、売却金額から一定の金額を控除することが可能です。

特別控除は多くの種類がありますが、居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例について説明します。

これ以外にもさまざまな特別控除があるので、売却前に適用できる特例がないか事前に調べておきましょう。

税務署や税理士に相談することで、適用できる特例について教えてもらえます。

居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例

居住用財産、すなわちマイホームを売却した際に譲渡所得から最高3000万円まで控除できる特例があります。

特例の適用を受けるためには、自分が住んでいる家屋とその敷地や借地権を売却する必要があります。

さらに、同様の特例を2年以内に適用を受けていないことも必要です。

また、以前に住んでいたが今は住んでいない居住用財産についても適用を受けることが可能ですが、住まなくなってから3年を経過する年の年末までに売却する必要があるなど、さらに厳しい条件が課せられます。

しかし、適用を受けられれば、譲渡所得から3000万円が控除されるため節税効果が高い特例といえます。

特例を受けるには、確定申告時に譲渡所得の内訳書と呼ばれる書類が必要となります。

節税効果が高い特例のため、売却前に税理士や税務署に適用を受けられるか相談に行くことがおすすめです。

場合によっては、税理士に確定申告を依頼しても、依頼費用を上回る節税効果が期待できます。

       

不動産売却シミュレーション

それでは、上記の情報をもとに、実際の不動産売却の手取り金額をシミュレーションしてみましょう。

シミュレーションを参考に、自身の場合にあてはめてみてください。

シミュレーションの条件

今回のシミュレーションでは以下の売買を想定します。

  1. 不動産売却価格 3500万円
  2. 取得費     3000万円
  3. 仲介手数料   105万6000円
  4. 印紙代     1万円
  5. 建物解体代   200万円
  6. 特別控除    適用なし
  7. 所有期間    3年

譲渡所得の計算

はじめに譲渡所得を計算します。

今回の場合、売却にかかった費用として、仲介手数料、印紙代、建物解体代が該当します。

よって売却にかかった諸経費は、このようになります。

売却にかかった諸経費=105万6000円+1万円+200万円=306万6000円

したがって譲渡所得は譲渡所得=売却金額-(不動産の取得にかかった費用+売却にかかった諸経費)-特別控除額より、譲渡所得=3500万円-(3000万円+306万6000円)=193万4000円となります。

所有期間が3年なので、税率は39.63%となります。

よって、譲渡所得税の税額は、譲渡所得税の税額=193万4000円×0.3963=76万6444円となります。

したがって、不動産売却の手取り金額は、売却金額-売却にかかった諸経費-譲渡所得税の金額によって計算できるため、実際の手取り金額は、手取り金額=3500万円-306万6000円-76万6444円=3116万7556円となります。

もし、仮に取得費が不明の場合は、取得費が売買代金の5%である175万円と計算されるため、譲渡所得は譲渡所得=3500万円-(175万円+306万6000円)=3018万4000円となります

譲渡所得税額は譲渡所得税額=3018万4000円×0.3963=1196万1919円となり、取得費が3000万円の場合の10倍以上の税金が徴収される事となります。

このシミュレーションはあくまで一般的な売買を想定しており、売却する不動産や売却の方法によっては、特別控除が利用できたり、意外な費用が諸経費にできたりします。

ぜひ、詳しいシミュレーションは税理士に相談してください。

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まとめ

この記事では、不動産売却の手取り金額のシミュレーションに必要な、売却の流れ、譲渡所得の計算について解説し、それらを踏まえた実例をもとにした不動産売却の手取り金額のシミュレーションを行いました。

不動産の売却には、さまざまな方法や、価格の決定要因があります。

また、売却の際には、譲渡所得に対して課税されます。

譲渡所得は、売買の諸経費や特別控除を売却金額から控除することにより金額を抑えることができ、節税につながります。

諸経費や税金のシミュレーションを誤ってしまうと、売却しても結果として利益がなく、赤字となってしまうケースも少なくありません。

自分で不動産売却のシミュレーションをするだけでなく、不動産会社や税理士に相談したうえで適切な金額で売却を行えるように準備しましょう。

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