不動産の名義変更は、売買や相続、生前贈与、離婚による財産分与など、さまざまなシーンで必要になります。
しかしその手続きは複雑で、何から始めればよいかわからない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、それぞれのケースにおける名義変更の手順、必要な書類、かかる費用と税金について、わかりやすく解説します。
自分でもできるよう説明しつつ、専門家に依頼したほうがいい場合にも触れ、不動産名義変更をスムーズに進めるためのポイントをご紹介。
この記事を最後まで読めば、不動産の名義変更に関する疑問を解決し、安心して手続きを進められるようになります。
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不動産の名義変更とは
不動産の名義変更とは、何らかの理由で不動産の所有者が変わったときに行う手続きです。
所有権は法務局で登記簿として管理されており、不動産の名義変更は正式には所有権移転登記といいます。
法務局で所有権が移転したということを申請すると、登記簿の名義を変更できます。
不動産の名義が誰になっているかわからないときは、法務局で登記簿謄本を発行してもらえば、関係者でなくても、いつでもだれでも確認可能です。
不動産の名義変更は自分でやるか司法書士に依頼する
不動産の名義変更は、司法書士に依頼するのが一般的ですが、手間と時間をかければ自分でもできます。
それぞれのメリット・デメリットは以下の通りです。
自分でやる | 司法書士に依頼する | |
費用 | 書類の取得費用 ・交通費など実費 |
実費+司法書士への報酬(5~10万円) |
手間 | 法務局や役所に行き書類を すべて自分で揃えるため手間がかかる |
依頼するだけなので手間がかからない |
時間 | 書類を揃えたり、書類作成したりする ため時間がかかる |
スピーディに手続きができる |
正確性 | 正確でない可能性もある | 専門家なので正確 |
不動産の名義変更が必要なケース
不動産の名義変更が必要なケースは、以下の4つです。
- 不動産売買:不動産を購入したとき
- 遺産相続:不動産を所有していた故人から遺産として相続したとき
- 生前贈与:生前に子供や配偶者に不動産の名義を変更するとき
- 財産分与:離婚などで不動産の名義を変更するとき
次の章から、それぞれ詳しく解説します。
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不動産の名義変更(不動産売買)
不動産売買において不動産の名義を変更する際の手順、必要書類、費用について解説します。
不動産売買における名義変更の手順
不動産売買で名義変更が必要になった場合、一般的には以下のような流れで手続きが行われます。
- 売買契約の締結:売主と買主が不動産売買契約を締結
- 司法書士へ依頼:不動産会社か当事者が司法書士へ名義変更の手続きを依頼
- 必要書類の収集:司法書士が売買契約書や身分証明書など必要書類を収集
- 登記申請書の作成:司法書士が登記に必要な書類を作成
- 登記の申請:司法書士が法務局で登記申請
- 登記完了:登記が完了し、当事者が司法書士へ報酬を支払う
自分で司法書士を見つけることもできますが、不動産会社の仲介で不動産売買を行うと、不動産会社が提携の司法書士を紹介してくれるケースが大半です。
不動産売買における名義変更に必要な書類
不動産売買で名義変更する際は、売主と買主の双方が書類を揃える必要があります。
必要書類 | 概要(提出が必要な人) |
印鑑証明書 | 取引日から遡ること3カ月以内に取得したもの(売主・買主) |
住民票 | (売主・買主) |
本人確認書類 | 運転免許証やパスポートなど顔写真つきのもの(売主・買主) |
登記済権利証 (登記識別情報) |
不動産を取得した際発行された権利証(売主) |
登記原因証明情報 (売買契約書) |
売主が買主に不動産を売ったことを証明する証書(売主) |
代理権限証書 | 名義変更の作業を依頼したことを証明する委任状(売主・買主) |
固定資産税 評価証明書 |
固定資産税の評価額を確認する書類(売主) |
不動産売買における名義変更にかかる費用
不動産売買で名義変更する際、かかる費用には以下のようなものがあります。
項目 | 内容 | 費用 |
必要書類 の取得費 |
戸籍謄本、住民票、印鑑証明書、 登記簿謄本、固定資産評価額証明書など |
それぞれ300~600円程度 |
実費 | 役所や法務局までの往復交通費 | 距離により異なる |
司法書士 報酬 |
名義変更手続を依頼した場合 | 司法事務所や案件の複雑さにより異なるが、相場は5~10万円 |
税金 (買主) |
登録免許税:所有権移転 | 土地の評価額の2%※1 建物の評価額の2%※2※3 |
登録免許税:抵当権設定 | 融資額の0.4%※4 | |
不動産取得税 | 不動産評価額の4%※5 | |
税金 (売主) |
登録免許税:抵当権抹消 | 土地のみ:1,000円 建物のみ:1,000円 土地と建物:2,000円 |
譲渡所得税※6 (売却で利益がでたとき) 長期か短期いずれかと復興特別所得税 |
長期譲渡所得(取得して5年超): 課税長期譲渡所得金額×15% 短期譲渡所得(取得して5年以内): 課税短期譲渡所得金額×30% 復興特別所得税:各年分の基準所得税額の2.1%※7 |
※1 令和8年3月31日までは1.5%
※2 令和6年3月31日までは0.3%
※3 特定認定長期優良住宅は0.2%、認定低炭素住宅は0.1%(令和6年3月31日まで)
※4 令和8年3月31日までは0.1%
※5 令和8年3月31日までは3%
※6 マイホームを売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例あり
※7 令和19年まで
引用元:国税庁|土地の売買や住宅用家屋の所有権の保存登記などに係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ
引用元:国税庁|特定の住宅用家屋の所有権の保存登記に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ
引用元:国税庁|№1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)
不動産の名義変更(遺産相続)
遺産相続によって不動産の名義を変更するケースの手順、必要書類、費用について解説します。
遺産相続における不動産の名義変更の手順
不動産を遺産相続したことで名義変更が必要になった場合、遺言書の有無、相続人と故人との関係、分割の方法など手続きが複雑なため、最初の段階から相続に詳しい司法書士に依頼するのが一般的です。
一般的には以下のような流れで手続きが行われます。
- 遺言書の有無の確認:
・ある場合は内容に沿って手続きを進める
・ない場合は法定相続人による相続として手続きを進める - 相続人の確定:相続人全員を特定し、相続割合を決める
- 遺産分割協議:
相続人の間で遺産の分割について協議を行い、遺産分割協議書を作成する - 相続登記の必要書の準備:被相続人の死亡証明書、相続人の戸籍謄本なども揃える
- 登記申請の提出:司法書士が法務局で相続登記の申請を行う
- 登記完了:登記が完了し、当事者が司法書士へ報酬を支払う
遺産相続における不動産の名義変更に必要な書類
遺産相続で不動産の名義を変更する際は、状況に応じてさまざまな書類が必要です。
ケース | 必要書類 |
遺言に基づく相続 | 遺言書 固定資産税評価証明書 被相続人の死亡時の戸籍謄本 住民票の除票 相続人の戸籍謄本、住民票 |
遺産分割協議に基づく相続 | 遺産分割協議書 固定資産税証明書 被相続人の出生~死亡までのすべての戸籍謄本 住民票の除票 相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書 不動産を相続する人の住民票 |
法定相続分で相続 | 固定資産税証明書 被相続人の出生~死亡までのすべての戸籍謄本 住民票の除票 相続人全員の戸籍謄本、住民票 |
このほか、すべてのケースで司法書士に手続きを依頼したことを証明する代理権限証書も必要です。
遺産相続における不動産の名義変更にかかる費用
遺産相続で不動産の名義を変更する際、かかる費用には以下のようなものがあります。
項目 | 内容 | 費用 |
必要書類 の取得費 |
戸籍謄本、住民票、印鑑証明書、 登記簿謄本、固定資産評価額証明書など |
それぞれ300~600円程度 |
実費 | 役所や法務局までの往復交通費 | 距離により異なる |
司法書士 報酬 |
名義変更手続を依頼した場合 | 司法事務所や案件の複雑さにより異なるが、相場は5~10万円 |
税金 | 登録免許税 | 固定資産税評価額の0.4% |
相続税 | 土地:路線価から算出 建物:固定資産税評価額から算出 (専門的な知識が必要) |
引用元:国税庁|№4155 相続税の税率
法定相続人が不動産を相続した場合、不動産取得税はかかりませんが、遺言などによって法定相続人以外が相続した場合はかかります。
遺産相続で不動産を名義変更するのは、故人の子供が相続するケースだけでなく、代襲相続(本来相続するはずだった人が既に亡くなっている場合などにその子が代わりに相続する精度)など、複雑なケースがあるため、手続きは専門家に依頼するのがおすすめです。
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不動産の名義変更(生前贈与)
生前贈与とは、被相続人が自分が所有する不動産を親族などに無償で譲り渡すことです。
生前贈与によって不動産を名義変更するケースの手順、必要書類、費用について解説します。
生前贈与における不動産の名義変更の手順
生前贈与における不動産の名義変更の手順は、以下の通りです。
- 贈与契約の締結:贈与する人と贈与を受ける人の間で贈与契約書を作成
- 司法書士に依頼:司法書士に相談後に贈与契約書を作成することも可能
- 必要書類の収集:司法書士が必要書類を収集
- 登記申請書の作成:司法書士が登記に必要な書類を作成
- 登記の申請:司法書士が法務局で登記申請
- 登記完了:登記が完了し、当事者が司法書士へ報酬を支払う
生前贈与における不動産の名義変更に必要な書類
生前贈与で不動産の名義を変更する際は、以下のような書類を揃える必要があります。
必要書類 | 概要 |
贈与契約書 | 手順1. で作成 |
印鑑証明書 | 発行から3カ月以内に取得したもの(贈与した人=登記名義人) |
住民票 | 贈与を受けた人のもの |
登記済権利証 (登記識別情報) |
不動産を取得した際発行された権利証 |
代理権限証書 | 名義変更の作業を依頼したことを証明する委任状 |
固定資産税 評価証明書 |
固定資産税の評価額を確認する書類 |
生前贈与における不動産の名義変更にかかる費用
生前贈与で不動産の名義を変更する際、かかる費用には以下のようなものがあります。
項目 | 内容 | 費用 |
必要書類 の取得費 |
印鑑証明書、住民票、 固定資産評価額証明書、印紙代など |
それぞれ200~600円程度 |
実費 | 役所や法務局までの 往復交通費 |
距離により異なる |
司法書士 報酬 |
名義変更手続を 依頼した場合 |
司法事務所や案件の複雑さにより異なるが、相場は5~10万円 |
税金 (贈与された人) |
登録免許税 | 固定資産税評価額の2% |
贈与税※1※2 | 土地:路線価から算出 建物:固定資産税評価額から算出 (専門的な知識が必要) |
|
不動産取得税 | 土地の固定資産税評価額×税率4%※3 建物部分の固定資産税評価額×4%※4 |
※1 評価額から110万円の基礎控除あり
※2 婚姻期間が20年超の夫婦間での贈与は基礎控除からさらに最高2,000万円の控除あり
※3 令和6年3月31日までに住宅として取得したものは税率を3%にする軽減措置あり
※4 令和6年3月31日までに取得したものは固定資産税評価額を1/2に減額し、税率を3%にする軽減措置あり
引用元:国税庁|№4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
不動産の名義変更(財産分与)
財産分与とは、離婚などにより夫婦の財産を清算・分配することです。
財産分与で不動産の名義を変更する際の手順、必要書類、費用について解説します。
離婚における不動産の名義変更の手順
離婚における不動産の名義変更する手順は、以下の通りです。
- 司法書士に依頼:場合によっては財産分与協議書作成も相談
- 必要書類の収集:司法書士が必要書類を収集
- 登記申請書の作成:司法書士が登記に必要な書類を作成
- 登記の申請:司法書士が法務局で登記申請
- 登記完了:登記が完了し、当事者が司法書士へ報酬を支払う
離婚に伴う財産分与で不動産の名義を変更する場合、直接協力しあって進めるのは難しいケースが多いので、専門家に依頼するほうがスムーズです。
離婚における不動産の名義変更に必要な書類
離婚で不動産の名義を変更する際は、以下のような書類を揃える必要があります。
必要書類 | 概要 |
財産分与協議書 | 手順1. で作成 |
印鑑証明書 | 発行から3カ月以内に取得したもの(登記名義人) |
住民票 | 財産分与された人のもの |
登記済権利証 (登記識別情報) |
不動産を取得した際発行された権利証 |
代理権限証書 | 名義変更の作業を依頼したことを証明する委任状 |
固定資産税 評価証明書 |
固定資産税の評価額を確認する書類 |
戸籍謄本 | 離婚したことがわかるもの |
離婚における不動産の名義変更にかかる費用
離婚で不動産の名義を変更する際、不動産取得税と贈与税は基本的にかかりません。
離婚後も生活を保障されるための財産分与請求権があり、離婚後は他人になるため不動産取得税や贈与税の対象ではないと考えられるからです。
ただし、受け取った財産が精算的財産分与とするにはあまりに多額である場合や、離婚が贈与税や相続税を免れるためと判断された場合、この限りではありません。
かかる費用には以下のようなものがあります。
項目 | 内容 | 費用 |
必要書類 の取得費 |
印鑑証明書、住民票、 固定資産評価額証明書、印紙代など |
それぞれ200~600円程度 |
実費 | 役所や法務局までの往復交通費 | 距離により異なる |
司法書士 報酬 |
名義変更手続を依頼した場合 | 司法事務所や案件の複雑さにより異なるが、相場は5~10万円 |
税金 (贈与された人) |
登録免許税 | 固定資産税評価額の2% |
譲渡所得税※ | 長期譲渡所得(取得して5年超):課税長期譲渡所得金額×15% 短期譲渡所得(取得して5年以内):課税短期譲渡所得金額×30% 復興特別所得税:各年分の基準所得税額の2.1%※7 |
※売買と同じように3,000万円の特別控除が受けられる
不動産の名義変更に関する注意点
不動産の名義変更に期限はありませんが、第三者に所有権を行使されるなどのトラブルに発展する可能性があります。
また遺産相続の場合は2024年4月1日以降に義務化されるため、なるべく早く名義変更を済ませましょう。
相続発生から3年以内に正当な理由なく名義変更しない場合、10万円以下の過料が課せられるため、注意が必要です。
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まとめ
不動産の名義変更は、自分で行うことも可能ですが、大変な手間と時間がかかります。
適切な必要書類が揃っていないと、受理されず二度手間になる可能性もあります。
経験豊かな司法書士に依頼すれば、ストレスもなく短期間で済むため、費用対効果は絶大です。
この記事を読んでいただくことで、不動産の名義変更について理解が深まり、スムーズな手続きをするきっかけになるとうれしいです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
参考:不動産の「名義変更」。
手続きの流れや必要書類など、相続や離婚などケース別に解説参考:登記の名義変更は自分でもできる?期間・費用・必要書類について解説
参考:不動産の名義変更【ケース別】手続きから必要書類・費用まで徹底解説