住宅ローンの残っている住宅を売却して住み替えたいと考えている方も多いのではないでしょうか?
そのような方は「ダブルローン」という方法を利用することで、住み替えが可能です。
ダブルローンとは、その名の通り2つのローンを同時に組む方法で、この方法を使用すれば住宅ローンが残っている家も住み替えができます。
しかしダブルローンを組むと返済額が上昇するなど、リスクも大きいため注意が必要です。
この記事ではダブルローンが利用される場面やメリットとデメリット、そしてダブルローンを組む際に抑えておきたいポイントについて詳しく解説していきます。
ダブルローンとは?ダブルローンになる2つのケース
ダブルローンとはその名のとおり、2つの住宅ローンを組むことです。
住宅ローンが残っている住宅から新しい住宅へ住み替える際、古い住宅ローンを完済せずに新しい住宅を購入するローンを組んだ場合には、ダブルローンになります。
ダブルローンが起こる状況は基本的に以下の2つです。
- 買い先行で住み替えをする
- 古い家を売ってもローンが残った
ダブルローンが起こるこの2つの状況を詳しく解説していきます。
買い先行で住み替えをする
買い先行で住み替えをおこなう場合には、ダブルローンになることがあります。
買い先行とは、新たに住み替える物件を先に購入し、その後、これまで居住していた物件を売却する住み替えの方法です。
先に新たに住み替える物件を購入するため、既存の住宅のローンと、新居のローンを2本借りている状況となります。
なお、先にこれまで居住していた物件を売却して、新たに居住する物件を購入する方法を「売り先行」といいます。
売り先行の場合、売却代金でローンが完済できるのであればダブルローンにはなりません。
古い家を売ってもローンが残った
古い住宅を売却してもローンを完済できないケースでもダブルローンになってしまいます。
これは売り先行でも、買い先行でも起こり得る状況です。
例えば残高2,000万円のローンがある住宅を1,500万円で売却した場合、500万円のローンが残ります。
ここに、新たに3,000万円の住宅ローンを組んだ場合には、500万円のローンと3,000万円のローンのダブルローンになります。
住宅ローンが残っている不動産を売却する場合には、売却額でローンを完済できるかどうかを必ず確認しましょう。
ダブルローンのメリット
ダブルローンによって住み替えをおこなうことには以下の3つのメリットがあります。
- 住み替えを進めやすい
- 仮住まいが必要ない
- 空き家の状態で売却できる
スムーズに住み替えを進めることができるため、売却時に有利な条件で進められることがあります。
ダブルローンの3つのメリットについて詳しく見ていきましょう。
住み替えを進めやすい
ダブルローンで住み替えをおこなうことによって、住み替えを進めやすい点がメリットです。
ダブルローンを利用すれば、簡単に言えば「欲しいタイミングで住宅を購入できる」ためです。
ダブルローンにならないように住み替えを進める場合には、売価が住宅ローン残高を上回るようにタイミングや買い手を探さなければなりません。
しかしダブルローンであれば、買い優先で欲しい時に欲しい物件を購入できるので、住み替え自体は非常にスムーズに進めることが可能です。
仮住まいが必要ない
ダブルローンを使用した買い優先の住み替えは、新たに住み替える住宅を先に購入するため、これまで居住していた住宅から新しい住宅へすぐに引っ越しができます。
売り優先であれば、先に古い住宅を売却するので新たな住宅を購入する前に居住する仮住まいが必要です。
ダブルローンを利用して住み替えをすることで、仮住まいを探す手間や引越しの回数や費用を節約できます。
空き家の状態で売却できる
ダブルローンで買い先行にて住み替えを進めると、これまで居住していた物件を空き家の状態で売りに出せます。
売り先行で住宅を売りに出すと、購入希望者が内覧に来た際に、自宅の居住スペースを見せなければなりません。
他人の生活空間を内覧しても購入後のイメージが湧かないので、空室の方が売りやすく、有利な条件で売却できる可能性があります。
また、居住している家族にとっても、生活空間を他人が見に来ることはストレスがかかります。
ダブルローンを利用して買い先行で住み替えを進めることで、空室の状態で売却できるので有利に売却活動を進められるでしょう。
ダブルローンのデメリット
ダブルローンはスムーズに住み替えができる一方、以下のようなデメリットも多いので注意が必要です。
- 返済額が高額になる
- 古い家では住宅ローン控除を受けられない
- 古い家を賃貸に出しにくい
- 住宅ローン審査に通過しにくい
返済額が大きくなるので金銭的な負担は増えますし、そもそも審査に通過することが簡単ではありません。
ダブルローンの4つのデメリットについて解説します。
返済額が高額になる
ダブルローンを借りるということは、2つの住宅ローンを返済していかなければならないということです。
そのため、返済額は高額になってしまいます。
ただ「2本目も借りられればそれでいい」ということではなく、返済額が2本分になるということも考慮し、返済していけるかどうかをしっかりと検討したうえで利用する必要があります。
古い家では住宅ローン控除を受けられない
これまで住宅ローン控除を受けていた家から、新しい住宅へ住み替える場合は、これまで受けていた住宅ローン控除は受けられなくなります。
住宅ローン控除は居住している家を担保とした融資に対して、住宅ローン残高の0.7%を所得税から税額控除する仕組みです。
住み替えてしまった住宅は、居住している住宅ではなくなるので住宅ローン控除の対象外です。
そのため住み替えをおこなうと、これまで居住していた住宅にかかるローンに対しては控除を受けられません。
ただし、新しい住宅については一定の条件を満たしていれば住宅ローン控除を受けられます。
そのため、ダブルローンによって税金の優遇で必ずしも損をしてしまうことはありません。
古い家を賃貸に出しにくい
ダブルローンを組んで新しい家に居住しても、古い家を賃貸に出して家賃収入を得るということは簡単ではありません。
古い家に住宅ローンが残っており、住宅ローンは「借主が居住する目的で購入するための融資」だからです。
古い家も賃貸に出したら、その物件は個人の居住用の物件ではなく、不動産賃貸用の事業用の物件になるため、融資の質も根本的に異なるものとなってしまいます。
古い家の住宅ローンを借りている銀行に相談し、承諾が得られれば賃貸に出しても問題ありませんが、必ずしも承諾が得られるとは限りません。
無許可で賃貸に出すと、期限の利益を喪失し「全額を一括で返済せよ」という請求が行われるリスクもあるので、古い物件の運用には十分注意しましょう。
住宅ローン審査に通過しにくい
ダブルローンは、そもそもローン審査に通過しにくいのが実情です。
返済額が倍になるので、それだけの返済に耐えられるだけの収入がなければなりませんし、完済時年齢が高齢になると審査で不利になります。
1本目の住宅ローンを借りたときよりもかなり審査は厳しくなるので、誰もが借りられるとは限らない点もダブルローンのデメリットです。
ダブルローンの審査ポイント
ダブルローンは通常の住宅ローン審査よりも厳しくなります。
審査基準は金融機関によって異なるものの、主なポイントは次の3点です。
- 金融機関の申込条件に合致している
- 2つのローンの返済額が返済負担率の範囲内
- 既存の住宅ローンを借りている金融機関も同意している
3つの審査ポイントについて解説していきます。
金融機関の申込条件に合致している
金融機関が決めた住宅ローン利用の条件に合致しているかどうかが重要です。
- 完済時年齢
- 勤続年数
- 居住要件
これらの住宅ローンの申込条件に合致しているか確認しましょう。
2つのローンの返済額が返済負担率の範囲内
2つのローン返済額の合計が返済負担率の範囲内である必要があります。
返済負担率とは「年間ローン返済額÷年収」で計算する指標で、ローン返済額が年収の何%なのかを示すものです。
一般的には30%以下である必要があります。
例えば年収500万円の方であれば、2本の住宅ローンの合計返済額が150万円(月12.5万円)以下でなければなりません。
2本のローン返済額の合計が、返済負担率の基準内に収めなければならないという点は非常に高いハードルですので、この点がダブルローンの審査が厳しいと言われる大きな理由です。
既存の住宅ローンを借りている金融機関も同意している
これまで住宅ローンを借りていた金融機関からダブルローンに同意してもらう必要があります。
ダブルローンを利用して住み替えるということは、既存の住宅には居住しなくなるということです。
住宅ローンは居住する住宅を購入するためのローンですので、居住しなくなるのであれば契約違反になる可能性があります。
将来的に売却する予定で短期間だけダブルローンになるのであれば、承諾を得られる可能性は高いので、2本目の住宅ローンを借りる前には必ず相談しておきましょう。
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ダブルローン借入時の返済シミュレーション
ダブルローンを借りた際に、どの程度の返済額になるのかをシミュレーションすることは非常に簡単です。
- 新しい住宅ローンの返済額をシミュレーションする
- 既存の住宅ローン返済額と新しい住宅ローンの返済額を合算する
新しい住宅ローンの返済額のシミュレーションは金融機関などのホームページで簡単におこなうことができます。
例えば、三井住友銀行のホームページでは以下の情報を入力するだけで簡単にシミュレーションが可能です。
- 借入希望額
- 金利
- 返済期間
- 返済方法
たったこれだけの情報を入力するだけで簡単に返済額を算出できます。
すでに借りている住宅ローンの返済額との合計で、ダブルローンの返済額が把握できるので、返済可能かどうかしっかりと検討するようにしてください。
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ダブルローンで住み替える際の4つのポイント
ダブルローンを利用して住み替えを検討している方は以下の4つのポイントを意識して手続きを進めてください。
- 住宅ローン金利が低いときに借り入れる
- 不動産価格の上昇時に売却する
- 古い家が売れなくても返済可能な計画を立てる
- ダブルローンのリスクを避けたいなら住み替えローンも検討する
高く売却して、低コストの際に借り入れるのが基本です。
また、無理なく返済していくためにはダブルローンだけでなく、住み替えローンも検討すべきでしょう。
ダブルローンで住み替える際の4つのポイントについて詳しく解説していきます。
住宅ローン金利が低いときに借り入れる
2本目のローンはできる限り住宅ローンの金利が低いタイミングで借り入れるようにしてください。
住宅ローンは高額かつ返済期間が長期ですので、少しの金利の違いで返済額は大きく変わります。
たとえば、借入額3,000万円、返済期間30年の住宅ローンを借りた場合の返済額の違いは以下のとおりです。
金利 | 毎月返済額 | 返済総額 | 利息負担額 |
1.00% | 96,491円 | 34,736,908円 | 4,736,908円 |
1.50% | 103,536円 | 37,272,768円 | 7,272,768円 |
2.00% | 110,885円 | 39,918,769円 | 9,918,769円 |
金利がたった1%異なるだけで、毎月の返済額は1万円以上異なりますし、利息の負担総額には500万円以上の違いが生じます。
ダブルローンはただでさえ、毎月の負担が重くなるので、できる限り金利の低いローンを利用して毎月の負担を抑えましょう。
不動産価格の上昇時に売却する
古い住宅は不動産価格の上昇に合わせて売却するのがベストです。
売却価格が住宅ローン残高を下回ってしまったら、住宅を売却してもダブルローン状態を解消できないためです。
景気が上向いている時や、2月〜3月は需要が高まり売価が高くなることがあるので、可能な限り高く売却できるタイミングで住宅を売却することを心がけましょう。
古い家が売れなくても返済可能な計画を立てる
もしも古い住宅が売却できなかった場合も、返済には問題にない計画を立てるようにしてください。
中古住宅が計画通りに売却できる保証はないためです。
特に、今地方都市は空き家が急増して中古住宅を売却することは非常に難しくなっています。
そのため、必ず売却できることありきでダブルローンを組むのではなく、万が一売却できなかったとしても2本のローンを返済していけるような計画を立てた上でダブルローンを組んだ方が安心です。
ダブルローンのリスクを避けたいなら住み替えローンも検討する
ダブルローンは返済額が2倍になるので、万が一、古い住宅が売却できない場合には、新しいローンの返済も難しくなるおそれがあるリスクの高い方法です。
そのため、住み替えによって新たなローンを借りるのであれば、ダブルローンではなく住み替えローンも検討しましょう。
住み替えローンとは、ローンの残っている住宅から住み替える際に、古いローンと新しいローンを1つのローンとして借入をおこなうものです。
返済期間が長くなってしまうなどのデメリットはありますが、ダブルローンよりも返済額を抑えられるので、返済できずに破綻してしまうリスクを大きく軽減できます。
また、古い住宅が売却できた際には、繰り上げ返済によって通常の住宅ローンへの実質的な切り替えも可能です。
ダブルローンはリスクが高いため、よほど収入的に余裕がないのであれば、住み替えローンを利用した方がよいでしょう。
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まとめ
ダブルローンは買い先行で住み替えを進める際に、古い家のローンと新しい家のローンの2本を借りた状態になることです。
スムーズに住み替えを進められ、有利な条件で売却できるというメリットがある一方、返済額が高額になり、そもそも審査に通過することが難しいというデメリットもあります。
収入的によほど余裕がある場合以外は、ダブルローンはおすすめできません。
ローンが残っている家からの住み替えを検討する場合には、ダブルローンではなく住み替えローンを利用するなど、できる限りリスクの低い方法で住み替えを進めるようにしてください。
参考:ダブルローンとは?基礎知識とメリット・デメリットを解説「イエウール(家を売る)」