根抵当権とは?抵当権との違いや抹消方法をわかりやすく解説!

  根抵当権とは?抵当権との違いや抹消方法をわかりやすく解説!

不動産を担保に入れるという意味合いで「抵当権」をつけると表現します。この記事では抵当権と根抵当権の違いを解説しつつ、それぞれの抹消の仕方などの詳しい情報までお伝えしていきます。不動産投資などを検討している方に必須の情報になりますので、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

手塚 大輔
【執筆・監修】手塚 大輔

地方銀行に10年弱勤務した後、現在は飲食店を起業しており、プロのライターとしてもSEO記事、コピーライティングなどを行なっております。 銀行では、預金業務、カードローン、住宅ローン、企業の運転資金、設備資金、起業開業支援、保険販売、投資信託販売などの他、企業の決算書の審査など経験。

【保有資格】ファイナンシャルプランナー

不動産投資の際には、購入する不動産を担保に入れるのが基本です。

この際に「抵当権」とか「根抵当権」という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか?

いわゆる不動産を担保に入れることを、不動産に抵当権をつけるということです。

しかし抵当権には通常の抵当権と根抵当権という2つの種類があるので、それぞれの違いを理解しておくことが重要です。

抵当権と根抵当権は、当該不動産を担保に入れるという点は同じですが、費用も手間も、その不動産を売買できるかどうかも大きく異なるためです。

この記事では根抵当権と抵当権の違いや根抵当権を設定して抹消する流れについて解説していきます。

不動産投資では抵当権への知識は欠かせませんので、不動産投資をしている人だけでなく、これから不動産投資を検討している方はぜひご覧ください。

抵当権と根抵当権の違いとは

抵当とは、財産や権利などを、借金などの保証に充てることを指します。

もしも借金などの債務が弁済されない場合には、抵当に入れた財産で弁済します。

これを財産に設定し、もしも債務が弁済されない場合に優先して弁済を受ける権利が「抵当権」です。

抵当権には「抵当権」と「根抵当権」という2つの権利があるので、まずはそれぞれの特徴を解説していきます。

抵当権とは

抵当権とは財産や権利などを借金の保証に充てるための権利のことです。

ここでは目的物は不動産として説明していきます。

例えば、銀行から5,000万円を借り入れてマンションを購入した場合、当該マンションに5,000万円の抵当権を銀行は設定します。

もしも5,000万円の融資金の返済が滞ったら、銀行は抵当権を行使してマンションを差し押さえて競売で売却して融資金の返済に充当可能です。

債務(借入金)が期日通りに問題なく返済されている限りは、抵当権が設定されている不動産は普通に使用できます。

抵当権は1つの債権に対してのみ対応する権利です。

そのため、このケースでは5,000万円のマンション購入ローンが完済したら、抵当権も抹消され、当該マンションは担保から外れることになります。

根抵当権とは

根抵当権とは一定の限度額を決めており、将来確定する債権をその範囲内で債券を保全できる抵当権の1つです。

分かりやすく言えば、不動産に5,000万円の根抵当権を設定した場合、この5,000万円を限度として債務者が不動産担保融資を受けられます。

例えば、債権者が根抵当権の範囲内で1,000万円、500万円、2,000万円、800万円の合計4本の融資を行った場合、これらの融資は全てまとめて根抵当権で保証されます。

もしもの場合、債権者は根抵当権を行使して不動産を競売に出して、売却代金で融資金の完済できます。

抵当権が1つの債権に対して対応する抵当権であるのに対して、根抵当権は限度額の範囲内で複数本、繰り返し利用できる担保です。

根抵当権の極度額と増減方法

根抵当権では極度額を設定します。

極度額は不動産の評価額の範囲内かつ金融機関側の融資予定金額の120%程度で設定されることが一般的です。

銀行などの金融機関は、根抵当権が設定されていれば極度額の範囲内であれば何度でも借入できます。

抵当権のように、1つの借入金が完済される都度、抵当権を抹消して、次の借入時には新たなに設定するという手間がかかりません。

また、極度額は増加させたり減少させることも可能です。

債務者の業況がよく、根抵当権が設定されている不動産の評価額に対して極度額に余裕があるのであれば増額に応じてもらえる可能性があります。

一方、債務者の業況が悪い場合には「高額の融資を行うのはリスクが高い」と金融機関が判断するため、極度額が縮小されるリスクがあります。

抵当権と根抵当権の違い

抵当権も根抵当権も債務が弁済されない場合に、権利行使して優先的に抵当権を設定した財産から弁済を受ける権利という点は同じです。

しかし抵当権と根抵当権では次の5つの大きな違いがあります。

  • 対象となる債権が限定されているか否か
  • 債務者からの権利移譲の許可が必要か否か
  • 連帯債務者をつけられるか否か
  • 優先弁済の範囲
  • 登記にかかる時間や費用

債権に対するリスクヘッジという点では抵当権は根抵当権と同義です。しかし中身では違いがいくつもあります。

抵当権と根抵当権の5つの違いを詳しく解説していきます。

対象となる債権が限定されているか否か

抵当権は1つの債権にしか対応できないので、対象となる債権が限定されています。

5,000万円の不動産担保ローンに対して抵当権を設定した場合、当該ローンを完済したら抵当権も抹消しなければなりません。

しかし根抵当権は対象となる債権について限定されているわけではありません。

極度額の範囲内であれば、複数の債権に利用できますし、借入金がなくなっても根抵当権をそのまま残して、必要になったタイミングで新規で借り入れることも可能です。

抵当権は1つの債権に対してのみ設定されるのに対して、根抵当権は対象となる債権が限定されずに極度額の範囲内で何本でも何回でも利用できます。

債務者からの権利移譲の許可が必要か否か

債権者が抵当権を第3者へ移譲する際に、債務者からの許可が必要かどうかという点も異なります。

抵当権は債務者の許可なしで権利移譲が可能です。

抵当権は対応する借入金があらかじめ決まっているので、弁済期日や金額が明確だからです。

しかし、根抵当権については元本確定になるまで権利移譲に当たって債務者からの許可が必要になります。

根抵当権は弁済期限と金額が抵当権のようにあらかじめ決まっていないためです。

権利移譲の際、抵当権は債務者の許可が不要、根抵当権は債務者の許可が必要と整理しておきましょう。

連帯債務者をつけられるか否か

抵当権と根抵当権では連帯債務者をつけられるかどうかも異なります。

抵当権は連帯債務者をつけることができますが根抵当権は連帯債務者の設定が不可能です。

あらかじめ弁済金額と期日が決まっている抵当権では借入当初の連帯債務者をつけても問題ありません。

連帯債務者は自分の義務やリスクの範囲を認識した上で債務者になれるためです。

しかし根抵当権の場合には借入時には金額も弁済期日も決まっていないので、連帯債務者を設定できないという点を把握しておきましょう。

義務やリスクの範囲が不明瞭な状態で連帯債務者を設定することは現実的とは言えません。

抵当権は連帯債務者を設定でき、根抵当権では連帯債務者の設定は不可能と整理しておきましょう。

優先弁済の範囲

優先弁済とは、もしも権利を行使した時に、どこまで優先的に弁済を受けられるのかの範囲のことです。

抵当権で優先弁済を受けられるのは「債権の元本および最後の2年間分の利息・損害金」のみで、2年以上前に発生した利息・損害金は抵当権で強制的に回収することはできません。

一方、根抵当権では極度額の上限であれば期限に関係なく、元本や利息や遅延損害金の弁済を受けられます。

ただし、利息や遅延損害金が極度額をオーバーする場合には根抵当権を行使した金額からの回収はできません。

登記にかかる時間や費用

登記にかかる時間や費用は最初の設定時には大きく変わりません。

司法書士に依頼する場合には司法書士報酬と、登録免許税などが必要になります。

なお、登録免許税は抵当権と根抵当権でそれぞれ次のように定められています。

  • 抵当権:借入額×0.4%
  • 根抵当権:極度額×0.4%

つまり、費用面ではほとんど同じです。

しかし抵当権は債務を弁済したら抹消して、新たに借入をする場合には再度設定するため手間と費用がかかりますが、根抵当権は一度設定したらそのまま継続利用できます。

複数回金融機関からお金を借りるのであれば、根抵当権の方が手間と費用を節約できます。

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根抵当権のメリット・デメリット

根抵当権はメリットとデメリットがはっきりと分かれる権利です。

繰り返し利用できる担保ですので便利であることは間違いありませんが、デメリットも多い権利ですので、メリットとデメリットをしっかり理解しておきましょう。

根抵当権のメリット

根抵当権のメリットは主に次の3つです。

  • 極度額の範囲内で何度でも借り入れできる
  • さまざまな種類の債権を担保にできる
  • 登記設定の手間と費用を節約できる

1つの権利で繰り返し借入と返済ができるので、手間と費用を節約できるのが最大のメリットです。

根抵当権の3つのメリットについて詳しく解説していきます。

極度額の範囲内で何度でも借り入れできる

根抵当権は極度額の範囲内で何度でも借り入れできます。

そのため、金融機関と借入と返済を繰り返して継続して取引する際には便利です。

不動産投資においても根抵当権を設定しておけば、物件購入費用や修繕費用などさまざまな用途の資金を1つの根抵当権で借入可能です。

カードローンのようなイメージで、必要な時に簡単に借入ができるのは事業者にとっては非常に利便性が高いと言えるでしょう。

さまざまな種類の債権を担保にできる

根抵当権では証書貸付や手形貸付など、さまざまな種類の債権の担保とすることができます。

資金使途や返済までの期間によって最適な借入金の種類は異なります。

根抵当権であれば1つの抵当権で多様な借入方法を選択できるので、状況にあった最適な借入が可能です。

登記設定の手間と費用を節約できる

根抵当権は一度設定すれば、極度額の範囲内で何度も借入と返済が可能です。

お金を借りる都度、抵当権を設定する手間も費用もかからないので非常に簡単です。

特に返済期限が1年未満の借入の際によく利用される手形貸付を利用する場合は、その都度抵当権を設定していたら手間と費用が膨大になります。

根抵当権であれば手形貸付などの期限が短い借入金を繰り返し利用する際に、登記の手間と費用がかからないので便利です。

根抵当権のデメリット

根抵当権にはデメリットも多いので、デメリットも理解した上で権利設定を決めるようにしてください。

主なデメリットは次の3点です。

  • 抹消登記手続きが面倒
  • 根抵当権付きのままでは売却できない
  • 他の金融機関の担保がつけにくい

1番のデメリットは債務が残っている場合には、抹消が非常に面倒という点です。

根抵当権の3つのデメリットについて詳しく解説していきます。

抹消登記手続きが面倒

根抵当権は抹消の手続きが少々面倒です。

一方的に抹消することはできず、金融機関と話し合いを行い金融機関の合意を得て、元本を確定させ、必要な書類を全て揃えなければ抹消できません。

抵当権の場合には、対応する借入金を返済すればすぐに抹消できますが、根抵当権は必ず金融機関との話し合いが必要になるので、抹消が面倒です。

根抵当権付きのままでは売却できない

根抵当権がついたままの不動産は売却できません。

仮に金融機関からの借入がなくても、一度根抵当権が設定されてしまったら、抹消しなければそのまま根抵当権は設定され続けます。

根抵当権がついている不動産は売却できないので、抹消のためだけに金融機関と話し合いを行い面倒な抹消の手続きが必要になるのはデメリットです。

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他の金融機関の担保がつけにくい

根抵当権がすでに設定されている不動産には、他の金融機関の担保がつけにくくなります。

1円もお金を借りていなかったとしても、当該不動産に根抵当権が設定されていたら、その不動産には「先順位がついている」ということになります。

例えば、評価額5,000万円の不動産に3,000万円の根抵当権がついていたら、担保余力は2,000万円しかありません。

この場合、根抵当権を使用してお金を借りていなかったとしても、担保余力は2,000万円しかありませんので、2,000万円を超える借入をすることは難しくなります。

このような理由から、根抵当権がついている不動産は他の金融機関から不動産を担保とした融資を受けにくいのが実情です。

使っていない根抵当権は早めに抹消しておいた方がよいでしょう。

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根抵当権の設定について

根抵当権を設定する際には、様々な書類が必要になり、登記費用も発生します。

根抵当権の設定にかかる費用や書類を詳細にご紹介していきます。

根抵当権設定に必要な書類

根抵当権の設定に必要な書類は次の通りです。

  • 登記済権利証、もしくは登記識別情報
  • 根抵当権設定契約書
  • 不動産所有者の印鑑証明書
  • 根抵当権者の資格証明書
  • 根抵当権者の登記委任状(司法書士へ依頼する場合)

登記済権利証、もしくは登記識別情報とは不動産を取得した際に法務局から発行される書類です。

根抵当権設定契約書は金融機関との間で締結する書類で、金融機関から交付されます。

根抵当権設定に必要な費用

根抵当権設定には司法書士報酬と登録免許税が必要になります。

司法書士報酬は根抵当権設定と同時の場合は3万円程度、不動産購入と同時に設定する場合は10万円程度です。

また、登録免許税は「極度額×0.4%」で、5,000万円の極度額を設定するのであれば20万円必要になります。

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根抵当権抹消の流れ

根抵当権は抵当権の抹消よりもかなり手続きが煩雑です。

抹消の主な流れは次の通りです。

  1. 債務や評価額を確認し金融機関と抹消の交渉を行う
  2. 交渉締結後に元本を確定する
  3. 必要書類を持参して法務局で抹消登記を行うか司法書士へ依頼する

それぞれの流れの中で重要になるポイントについて詳しく解説していきます。

①債務や評価額を確認し金融機関と抹消の交渉を行う

根抵当権の抹消を行う際には、まずは金融機関へ「根抵当権の抹消を行いたい」と申し出ます。

借入残金が残っていないのであれば、抹消にはすぐに応じてくれます。

根抵当権が設定されており、借入残高が残っている場合には、当該不動産の売却額と、借入残高を比較し、売却額が上回っているのであれば根抵当権の抹消に応じてくれる可能性が高いと言えます。

いずれにせよ、根抵当権を抹消したい場合には、まずは金融機関へ交渉してください。

②交渉締結後に元本を確定する

しかし借入残金が残っている場合には、借入残高を確認し、元本を確定します。

元本確定後が抵当権と同じ扱いになり、確定した元本を返済すれば債務はなくなり、根抵当権を解除する準備が整います。

③必要書類を持参して法務局で抹消登記を行うか司法書士へ依頼する

債務を完済したら、金融機関から登記原因証明情報(解除証書)という書類が送られてきます。

この書類で根抵当権を解除できます。

根抵当権解除に必要なそのほかの書類は次の通りです。

  • 抵当権設定契約書
  • 不動産所有者の委任状(司法書士に手続きを依頼する場合)
  • 根抵当権者(金融機関)の委任状

これらの書類を揃えて司法書士に委任するか、自分で法務局に行き抵当権の解除を行います。

なお抵当権解除にかかる費用は登録免許税1,000円と1万円程度の司法書士報酬のみです。

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まとめ

根抵当権も抵当権も、お金を借りた時に万が一の場合に、担保となっている不動産などで金融機関が弁済を受ける権利です。

抵当権は1つの権利に対して1つの借入金のみ設定可能です。

そのため、対応する借入金を弁済した場合には、抵当権も抹消されます。

一方、根抵当権は極度額を設定し、その範囲内で何度でも繰り返し借入と返済ができる権利です。

金融機関からの融資を繰り返し利用する場合には便利で、抵当権設定の手間もコストもかかりません。

ただし、根抵当権は借入金がなくても、抹消の手続きをしなければ設定されっぱなしになってしまうので、売却や他の金融機関からの借入時に障害となります。

根抵当権と抵当権の違いを理解して適切に使い分けることで、手間とコストを抑えながらスムーズに借入金を利用しましょう。

参考:根抵当権と抵当権の違いとは?比較や登記・抹消方法まとめ

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