不動産を売却する際には、売却代金を先に銀行から借りる「つなぎ融資」を借りることができるとご存じでしょうか?
不動産の売却代金を当てにして住み替える住宅を探したりする場合、つなぎ融資を利用することによってスムーズに住み替えができるケースがあります。
住み替えをする際に、手元にお金がないのであれば、つなぎ融資の利用も検討すべきでしょう。
不動産売却時のつなぎ融資のメリット・デメリットや活用できる場面等について詳しく解説していきます。
不動産売却におけるつなぎ融資とは?
つなぎ融資とは「将来的に入金になる予定が入ってくるまでの短期間だけ借りるお金」という意味です。
不動産売却時のつなぎ融資とはどのような資金で、つなぎ融資はどんな場面で活用されるのか、詳しく解説していきます。
売却完了までの期間に必要資金を借りること
不動産売却におけるつなぎ融資とは、不動産の売却が行われるまでに必要な資金を借りることを指します。
例えば、住み替えのために今の住宅を売却して新しい住宅を購入する場合、つなぎ融資を利用することによって売却前に売却代金を手にすることができます。
例えば、売却見込み額が1,000万円であれば、つなぎ融資で1,000万円を借りることによって先に必要資金を調達することができます。
なぜつなぎ融資が必要なのか(つなぎ融資が必要な場面)
つなぎ融資は「売却前に購入代金が必要」というケースで活用できます。
不動産の売却前に購入代金が必要な場面として次のようなケースをあげることができます。
- 住み替え
- 売却する不動産をリフォームしたいとき
- 不動産の売却前に現金が必要
- 相続税を支払うお金がない
- 離婚する際の財産分与など
- 老人ホーム等に入居する場合
不動産売却時につなぎ融資が必要になる6つの場面について詳しく見ていきましょう。
住み替え
住み替えの際にはつなぎ融資を利用することによってスムーズに住み替えを進めることができます。
先に購入代金をつなぎ融資によって調達できるので、これまで住んでいた家を売却する前に新居を購入することが可能です。
手元に新居を購入する現金がない人でも買い先行で住み替えを進めることができます。
売却する不動産をリフォームしたいとき
売却する不動産をリフォームしてから売却すれば、高値で売却できることがあります。
このような場面においてもつなぎ融資を活用できます。
つなぎ融資でリフォームに必要な資金を借りることで、リフォーム資金を売却前に調達することが可能です。
手元にリフォームや修繕費用がない人も、つなぎ融資は有効に活用できます。
不動産の売却前に現金が必要
不動産を売却して、売却代金で何かを始めよう、購入しよう、借金を返済しようなどの目的がある人もつなぎ融資が有効です。
つなぎ融資は売却代金を先に受け取ることができるため、「早く売却代金が欲しい」という方も銀行へつなぎ融資の相談をするのがよいでしょう。
相続税を支払うお金がない
相続財産が高額になり、多額の相続税を支払うために相続した不動産の一部を売却するという人も少なくありません。
このような場合もつなぎ融資が活用できます。
相続税は被相続人の死亡の日の翌日から10か月以内が申告期限となっています。
しかし売却活動を行っている不動産が期限までに売却できるとは限りません。
この際につなぎ融資を利用することによって、相続税の支払いを行うことが可能です。
離婚する際の財産分与など
離婚する際には財産分与が行われ、婚姻期間中に取得した不動産も財産分与の対象になります。
しかし不動産を分けることはできないため、売却して売却代金を分けることも珍しくありません。
この場合もつなぎ融資が活用できます。
先に売却代金をつなぎ融資で借りており、借り入れたお金を夫婦で分けることによって、スムーズに財産分与や離婚手続きを進めることができるでしょう。
老人ホーム等に入居する場合
老人ホームなどの福祉施設へ入居する際の資金調達にもつなぎ融資は活用できます。
もちろん、不動産を売却してから入居することもできますが、その場合、売却と同時に受け入れてくれる施設を探さなければ施設が決まるまでの間に居住場所を失ってしまうことになります。
つなぎ融資を利用すれば、入居後に売却活動をすることができるので、スムーズに施設への入居をすることができます。
社会全体が高齢化していく中で、老人ホームなどの施設を探すことは次第に難しくなります。
つなぎ融資を活用することで、安心して入居できる施設を探すことが可能です。
売却時に売却代金で返済する
つなぎ融資は、不動産の売却が完了した際に、売却代金で返済します。
そのため、基本的には借入金が1年以内の短期で融資を受けるのが基本です。
例えば、1,000万円で売却できる見込みであれば、1,000万円を限度として融資を受け、不動産の売却代金が入金になった時点でつなぎ融資を返済します。
短期の融資で、不動産を担保にするため金利も低いため、少ない利息負担で借りることができるのも特徴です。
つなぎ融資を受けるための条件
つなぎ融資は短期間だけの融資ですが、審査は厳格に行われます。
どのような条件で融資を受けることができるのでしょうか?
売却する物件の担保評価額の範囲内
つなぎ融資は必ず売却する物件を担保にします。
当該物件を売却するまでの売却代金を立て替える資金であるため、担保にしておかなければ売却代金を返済金以外へ流用してしまうリスクがあるためです。
また、売却できなかった場合には不動産を差し押さえて回収に充てることもできます。
そのため、融資金額は担保に入れる売却物件の評価額の範囲内です。
例えば、売却物件の評価額が1,000万円であれば、つなぎ融資で借入できる金額も1,000万円が限度だと考えておきましょう。
利息を支払うことができる人
つなぎ融資は元金の返済は不動産を売却した代金で行いますが、利息の支払義務は発生します。
そのため、最低限利息を支払える程度の収入や資産があることも融資の条件になります。
とはいえ例えば1,000万円を金利3%で1年間借りても利息は30万円です。
それほど高額になるわけではないので、普通に働いている人であれば、ここは問題ないでしょう。
資金使途が適正か
つなぎ融資で借りたお金を何に使うのかという点も重要です。
住み替えや老人ホーム入居など、使い道が公序良俗に反しておらず、必然性のあるものであれば問題ありません。
しかし、つなぎ融資のお金をギャンブル資金にするなど、公序良俗に反した使い道の場合には融資が認められない可能性もあります。
不動産売却時につなぎ融資を利用するメリット
不動産売却時につなぎ融資を利用するメリットは次の通りです。
- 欲しい物件を購入するタイミングを逃さない
- 買い先行で住み替えができるので引っ越し費用を節約できる
- 売却の手間がかからない
- 時間をかけて買い手を探すことができる
スピーディーに次に物件を探したい場合や、売却活動に手間をかけたくない人には向いています。
つなぎ融資を利用する4つのメリットについて詳しく解説していきます。
欲しい物件を購入するタイミングを逃さない
つなぎ融資を利用すれば売却代金を前もって手にすることができます。
そのため、住み替えなどの際に欲しい物件を見つけた時、タイミングを逃さずタイムリーに購入することが可能です。
売り先行で住み替えを進めた場合には、物件が売れた頃には欲しい物件がすでに売れてしまっているということも珍しくありません。
不動産の購入はタイミングが非常に重要ですので、つなぎ融資はタイミングを逃さずに購入できるのが大きなメリットです。
買い先行で住み替えができるので引っ越し費用を節約できる
つなぎ融資を利用すれば、売却前に住み替え先の新しい物件を購入できます。
新居が決まってから引っ越しできるので、1度の引っ越しで済ますことが可能です。
ところが、つなぎ融資を利用せずに売り先行で住み替えた場合、住宅の売却から新居の購入までにタイムラグがあるので、一度仮住まいへ引っ越さなければなりません。
この場合は引っ越しが2回になるので、買い先行よりも引っ越し費用の負担は大きくなります。
つなぎ融資を利用すれば利息の負担は必要になりますが、その分引っ越し費用を節約できます。
また、引っ越しの手間や労力も節約できるのはメリットです。
売却の手間がかからない
売り先行で住み替えをする場合には、自宅に居住している状態で内覧がくるので、常に家を綺麗にしておかなければならないなど、主に内覧対応のための手間がかかります。
つなぎ融資を利用して買い先行で住み替えを進めれば、新居へ引っ越した後に売却活動を始めることができるので、内覧対応に追われる心配はありません。
売却の手間をかけずにスムーズに売却活動を進めることができるのも、つなぎ融資を利用して買い先行で住み替えができるメリットです。
時間をかけて新居を探すことができる
つなぎ融資を利用して買い先行で住み替えをする場合、時間をかけて新居を探した後に売却活動を行うことができます。
売り先行で売却活動を進めた場合には、早く新居を見つけなければ家賃負担がどんどん増えてしまうので、じっくりと新居を探すことが難しくなります。
納得がいくまで購入したい物件を選ぶことができるという点も、つなぎ融資を利用して住み替えをするメリットです。
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不動産売却時につなぎ融資を利用するデメリット
不動産売却時につなぎ融資を利用するデメリットは次の3つです。
- 利息や登記費用が必要になる
- 借入期間内に売却できないとコストがかかる
- 取り扱っている銀行が少ない
つなぎ融資にはコストとリスクがあるので、利用する際にはデメリットについてもしっかりと把握しておきましょう。
利息や登記費用が必要になる
つなぎ融資を利用すれば、利息負担や登記費用が必要になります。
つなぎ融資では必ず売却する物件に抵当権を設定し、担保に入れます。
抵当権とは、融資したお金が返済されなかった場合、抵当権を設定した不動産を競売にかけて回収に充てることができる権利です。
つまり、万が一つなぎ融資が返済されない場合には、担保に入れた不動産で返済を行います。
この抵当権を設定する際には以下の式で算出された登録免許税が必要です。
借入金額×0.4%
つまり、1,000万円のつなぎ融資を借りた場合には登録免許税として4万円必要で、さらに司法書士報酬が5万円程度かかります。
利息+登記費用で数十万円程度の負担になる点はデメリットです。
借入期間内に売却できないとコストがかかる
つなぎ融資は基本的には借入期間1年以内の短期資金で融資が行われます。
原則として、借入期間内に住宅を売却し、つなぎ融資を返済しなければなりません。
しかし、不動産の売却が期日通りに完了するかどうかは非常に不透明です。
そして、借入期間内に売却できずにつなぎ融資の返済が不可能な場合には遅延損害金が発生します。
遅延損害金とは、返済期日に遅れた場合の罰金のようなもので、銀行によっては14%以上の利率を設定しているところもあります。
例えば1,000万円を借りて14.6%の遅延損害金が発生した場合、1日あたり4,000円もの遅延損害金が発生します。
不動産会社としっかりと話し合い、どの程度の期間で売却できるかを入念に検討した上でつなぎ融資を利用しましょう。
取り扱っている銀行が少ない
つなぎ融資は住み替えには非常に便利ですが、そもそも取り扱っている銀行が少ないという点が大きなデメリットです。
お住まいの地域によっては、地域をテリトリーとしている銀行につなぎ融資がない可能性もあるので、まずは金融機関に相談した上で住み替えの手続きを進めた方がよいでしょう。
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つなぎ融資の流れと必要書類
つなぎ融資がどのような流れで行われるのか、また必要書類としてどのようなものが必要なのかについても見ていきましょう。
つなぎ融資の流れ
つなぎ融資は次のような流れで行われます。
- 融資の相談
- 不動産の調査や担保評価
- 審査
- 契約と融資実行
基本的には銀行へ相談に行くと、銀行が調査を行い、融資ができる見込みなのであれば申込と審査に入ります。
最初の相談から融資までに1ヶ月程度で融資が実行されます。
相談時には、どのような不動産を売却するのかが分かるように、自宅の登記簿謄本や購入時の売買契約書など、できる限り自宅の情報が分かる書類を用意しておきましょう。
つなぎ融資に必要な書類
不動産売却時に必要になる書類としては次のようなものがあります。
- 住民票の写し
- 身分証明書
- 源泉徴収票
- 確定申告書類
- 不動産の登記事項証明書
- 公図・地積測量図・建物図面
- 物件案内図(住宅地図)
- 不動産売買関係書類(売買契約書・媒介契約書等)
この他、不動産会社の査定結果が分かる書類など、銀行によって提出すべき書類は異なります。
必要書類については銀行が一覧にしてくれるので、漏れのないように書類を集めてください。
また、査定結果は不動産会社によって異なり、査定額が高いほど銀行から借入できる金額が多くなる傾向にあります。
できる限り複数の不動産会社から査定を得た方がよいため、一括査定サイトなども活用しましょう。
まとめ
住み替えの際には、つなぎ融資を利用することによって買い先行で売買を進めることができます。
買い先行で進めることによって、時間をかけて新居を選ぶことができ、引っ越しも1回だけで住み替えることができます。
住み替えの際に、買い先行で進める資金力がない場合には、つなぎ融資の利用も検討するとよいでしょう。
なお、取り扱っている金融機関の数は少ないので、複数の金融機関へ相談するようにしましょう。