不動産を売却するときには大きなお金が動くこともあり、大小さまざまなトラブルが起こります。
希望の価格で売れたからといって安心していても、売却したあとのトラブルにより違約金などが発生する場合もあるのです。
そのような事態を避けるためには、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。
今回の記事では、不動産売却でよく起こるトラブルとその対処法や回避策をしっかりお伝えしたいと思います。
ぜひ参考にしてくださいね。
不動産売却でよく起こるトラブルを解説
不動産売却に関するトラブルは、よく起こるものが多く、ある程度予測することができます。事前にトラブルの内容について把握しておけば、いざという時に冷静に対処することができるでしょう。
そこで、不動産の売却時によく起こるトラブルについて、売却前、手続き中、売却後と時系列に分けてご紹介します。
また、それを回避するために気を付けたいことなどを併せてお伝えしていきます。
不動産売却前に起こるトラブル
不動産を売却する前によく起こるトラブルとしては、境界確定に関するものや土地の権利に関するものが挙げられます。
相続した土地などでは、土地の境界や権利について詳細に把握していない場合もあると思いますが、後々のトラブルに連鎖しますので、売却前にしっかり解消しておきましょう。
- 近隣との境界に関するトラブル
- 借地権、底地権に関するトラブル
上記2点を詳しく確認していきましょう。
近隣との境界に関するトラブル
近隣との境界に関するトラブルとして考えられるのは、土地を売却する前に行っておくべき境界確定がなされておらず、隣地の所有者との間でトラブルが発生してしまうケースです。
例えば、昔は境界を隔てるコンクリートブロックの真ん中に境界があるパターンが多かったのですが、それだとどちらがそのブロックを所有しているのか分かりません。
どういうときに問題かというと、コンクリートブロックが破損した場合や撤去する場合などです。
その度にどちらが費用負担するか?が問題となりますので、できれば売買を考えたタイミングで境界をどちらの所有であるかをはっきりさせ、ブロックの端に設定しておくことをおすすめします。
境界杭はホームセンターなどにも売っていますが、話し合いも含めて自分たちだけで解決できない場合は、土地家屋調査士などに依頼し境界立会いを行って、土地境界を明確にしておきましょう。
借地権・底地権に関するトラブル
土地の権利関係は見た目以上に複雑な場合があり、売却前はしっかり整理をする必要があります。
特に気をつけたい権利が、借地権と抵当権です。
1. 借地権が設定されている土地を売却する場合
借地権が設定されているということは、土地の所有者の他、その土地を借りている人がいるということです。
借地権が設定されている土地を売ろうとした場合、買い手は土地を利用している借地権者が存在しているため自由に利用できません。
借地権者が土地を借りて建物を建てている場合であれば、借地権を設定している借地権者に土地ごと売るか、借地権者と協力して建物ごと売却する方法もあります。
いずれにしても複雑ですので、不動産業者などの専門家に依頼するのも一つの手です。
なお、土地を”借りている”人は所有者ではないので、自分の意思で売買などの処分をおこなうことは出来ません。
2. 抵当権が設定されている土地を売却する場合
抵当権とはローンを借りてその土地を購入した場合、銀行などの金融機関が設定する権利のことです。
抵当権がついている場合はそのままの状態では売却できません。売却した利益をもってローンを一括返済するか、自己資金にて返済して抵当権を抹消する必要があります。
権利関係は法務局で取得できる「登記事項証明書」などで確認することができます。売却前には確認して、抵当権抹消の段取りをしておきましょう。
不動産売却手続き中に起こるトラブル
不動産売却中に起こるトラブルとしては、仲介手数料の額や契約の解除についてなど、不動産会社との間での取り決めが原因となるものがあります。
トラブルを避けるためには、契約時にしっかり納得いくまで説明を聞きましょう。
- 重要事項の説明に関するトラブル
- 売買契約の解除に関するトラブル
- 仲介手数料に関するトラブル
上記の項目でのよくあるトラブルの例と、契約する際のポイントを併せて紹介します。
重要事項の説明に関するトラブル
重要事項説明等のトラブルに関しては、重要事項で定められているものの不告知が一番多いと思われます。
不動産売買では、契約までの間に、買主へ不動産についての重要事項を説明する重要事項説明をしなければなりません。
例えば過去に事故があった物件であったり、騒音のある物件だったりすると、重要事項の告知として、売主(売主を担当する不動産会社)から買主にその旨を伝えなければならないのです。
しかし、こうしたマイナスとなる情報を買主に伝えると契約がなしになる可能性もありますし、特に騒音に関する問題などは住む人によって感じ方が変わるものなので、そのことが伝えられないこと(不告知)があります。
不告知だったものを新居に住んでから初めて知り、トラブルになるケースも。
重要事項については、過去に事故があったり騒音があったりしても、事前に伝えた上で買主が契約していたのであれば問題ないのですが、伝えていなかった場合には問題となってしまいますので気をつけましょう。
売買契約の解除に関するトラブル
売買契約においてみられるのが、契約を締結してから解約となるケースです。
仮に売買契約を買主の都合で解約する場合、定められた期限内であれば、「解約手付」として、買主が支払った手付金を解約金として売主が受領することで、解約となります。
また、不動産の売買契約では「住宅ローンの審査が否承認の場合は解約できる」旨の住宅ローン特約を盛り込むことがありますが、この特約も期限付きとなります。
どのような場合に解約になる可能性があるのか、またその期限はいつまでか、というのは売主・買主双方が把握しておかなければなりません。
基本的には売買契約書に書かれている内容に沿って結論が決まりますので、その内容に不備がないよう売主としてもしっかり目を通しておくことが大切でしょう。
仲介手数料に関するトラブル
仲介手数料は法律でその上限額を売買価格×3%+6万円+消費税と定められていますが、あくまでも上限額なので、それより低い額でも構いません。
仲介手数料は上限額で請求する不動産業者が多く、値引き交渉可能な場合もありますが、値引き交渉するタイミングが遅く、トラブルになるケースも見受けられます。
仲介手数料の交渉は物件の媒介契約の前、かつその不動産業者に依頼する前提で値引き交渉すると上手くいきやすいので、参考にしてみてください。
また、仲介手数料の支払いについて、売買契約時にするのか、決済時にするのか、またその割合はどうするのかといった内容を取り決めしていないと、売主と不動産会社とで認識の違いが生じ、最終的にトラブルとなる可能性があります。
売買契約が一度成立したものの、その後に解約となってしまった場合、売主としては仲介手数料を支払わなくてもよいと思うかもしれません。実際、そのようにしてくれる不動産会社もいるでしょう。
しかし、不動産会社が受け取る仲介手数料はあくまでも売買契約が成立したことに対する報酬なので、後に解約になろうが条件は満たしているとして仲介手数料の支払いを求められることがあります。
この辺りも媒介契約時に取り決めがなされていない場合には、その取り扱いについてトラブルになる可能性があるため注意が必要です。
不動産売却後に起こるトラブル
不動産売却後には、契約内容や重要事項説明の内容と引き渡しされた目的物(土地/建物など)の現状が異なっている場合などに、買主との間でトラブルが起こる可能性があります。
重大なものだと契約解除や損害賠償請求などを求められる場合もあり、注意が必要です。
- 瑕疵担保責任
- 設備故障
- 環境的瑕疵
- 残地予定物
上記の要素について、トラブルの原因と回避策をお伝えしていきます。
契約不適合責任
契約不適合責任とは、目的物の種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであるときに売主が負う責任のことです。
実際に引渡しを受けたものが契約内容と異なる場合には、買主が売主に対して、責任追及(追完請求、代金減額請求、解除、損害賠償請求)を行えるというものです。
※追完請求:買主負担ではなく、売主負担で不具合を修理してもらう権利。
例えば、契約書で数量を100個と記載があるにも関わらず、実際には95個しか売らなかった場合は、契約内容と数量が異なるため、売主は契約不適合責任を負うことになります。
また中古住宅等の場合、具体的には雨漏りやシロアリによる床下の腐食等が「ある」にも関わらず、「ない」ものとして売却した場合は売主が契約不適合責任を負います。
なお、売主が宅建業者でない売買では契約不適合責任は任意規定であるため、売主と買主の双方が合意すれば免責することも可能です。
ただし、契約不適合となる点について売主が知っていたのにも関わらず、買主に通知しなかった場合は信義則に反するため、契約不適合責任から逃れることはできない点には注意が必要です。
売主として、売却する不動産の内容および責任を負う範囲や期間を明確にして、買主に伝える誠意が大切です。
設備故障
中古住宅など建物の売買が含まれるとき、売主は、重要事項説明に加えて、キッチンなどの設備状況を買主に説明する必要があります。
キッチンのレンジフードやコンロは問題なく使えるか、トイレのウォシュレットは動作するかなど、売主が使っているときの状況を詳しく記載します。
引き渡す前に壊れていたものもそのまま記入することで、買主は壊れた状況も含めて購入の意思決定ができますし、壊れていたものの修理費用を負担するということもありません。
壊れていたものを伝えずに引き渡しをしてしまうと、その修理費用を売主・買主どちらが負担するかでトラブルになる可能性がありますので、しっかり伝えるようにしましょう。
環境的瑕疵
環境的瑕疵とは、売買対象となる不動産そのものには問題がないものの、その不動産の近隣建物からの騒音・振動・異臭・日照や眺望障害,あるいは,近隣にごみ焼却場や廃棄物処理施設,遊戯施設等の施設があることにより環境上の問題となりうるような場合をいいます。
特に騒音やにおいは住む人によって感じ方が変わるため、住んでいるときに感じなかったとしても、そういった施設がある場合はそのことを伝え漏れしないようにしましょう。
残置予定物
中古住宅など住んでいた物件を売却する場合、敷地内に置きっぱなしにしているものがトラブルの原因となる場合があります。
特に、地中に埋まっているものなどはなかなか気づきにくく、撤去が必要になった場合はどちらの費用負担かが問題になるケースも。
売買契約書には、地中埋設物などは買主の負担で撤去するなど明示しておけば、後々のトラブルを避けられます。
不動産売却のトラブルを回避するための対策
では、実際に不動産売却でトラブルに遭ってしまった場合にはどうすればよいのでしょうか。
突然売主や売主の不動産会社から連絡がきて、クレームを付けられたような場合にはまずは仲介を担当した不動産会社に連絡しましょう。
仲介を担当した不動産会社がしっかり動いてくれない時は、その不動産会社を管轄する宅建協会などに相談すると、宅建協会から不動産会社へ働きかけもしてくれます。
しっかり対応してくれる不動産会社であれば、不動産会社から売主や売主側の不動産会社と話をしてくれ、場合によっては弁護士や司法書士などの紹介もしてくれるでしょう。
そのほか、以下のポイントも押さえておきましょう。
- 売買契約書をしっかり確認する
- 知っていることはすべて不動産業者に伝える
- 不動産業者選びもトラブル回避には重要
売買契約書で契約解除について確認する
不動産売買において、契約後に何らかのトラブルに発展してしまった場合には、基本的には売買契約書に沿って結論が決められます。
特に確認しておかなければいけない項目としては、「契約解除」や「住宅ローン特約」の部分です。
解約手付については、契約書の約款で「売主から買主へ契約解除を申し出る時は手付金の2倍、買主から売主へ契約解除する時は手付金の放棄」といった旨が書かれているか確認しましょう。
また、住宅ローン特約については住宅ローン特約がある旨を約款で確認(住宅ローンが否決の場合は白紙解約という内容)し、「住宅ローン特約に関する期限」の記載があるかをチェックしましょう。
上記以外にも、売買する土地によっては、さまざまな解除要件を付けることがあります。
「地中埋設物や地盤改良工事については買主負担とする」などといった特約も有効です。
これらの内容は、買主から売主に対する要望に基づいて決められることで、売主が許可するものですが、あいまいにするのではなく、許可したことは明確にしておくことで後々のトラブルを防げるでしょう。
知っていることはすべて不動産会社に伝える
重要事項の不告知についてお伝えしましたが、売買に不利になることを知っているのにも関わらず、そのことを黙っていたのであれば、後々トラブルになりかねません。場合によっては損害賠償請求など、売買前に契約が破談になるより大変な事態になることも考えられるでしょう。
なお、こうした重要事項については、基本的に売主の不動産会社から買主に対して伝えられるものです。
中には、わざわざ買主に伝えなくてもよい情報もありますが、売主から不動産会社に気になることを伝えておけばそれを買主に伝えるかどうかは不動産会社が決めてくれるでしょう。
これについてはなかなか難しいのですが、売却・購入に際して相手に伝えづらいことでも先に伝えておくことが大切です。
たとえば、次のようなことが挙げられます。
- 夜になると電車やトラックの音がうるさい
- 隣の家の人のいびきがうるさい
- 土地の状態があまりよくないので、建物を建てる際はそこから改善することになる
少し言いにくいことではありますが、前もって伝えておくことでトラブル回避に繋がります。
売主の立場からすると、先に伝えておくことで、あとになって違約金を支払うことや販売価格の値下げといった事態を避けられますので、言いづらくても伝えておきましょう。
不動産会社選びもトラブル回避には必須
売主と買主で何らかのトラブルが起こった時、その契約を担当している不動産会社も当事者となります。
優秀な不動産会社であれば、売主を巻き込むことなくうまくトラブルを収めてくれるはずです。
仲介を依頼する不動産会社を選ぶ時は、その担当者の人柄や対応などを含めて慎重に選ぶようにするとよいでしょう。
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まとめ
不動産売却におけるトラブルについてお伝えしてきました。
不動産売買に関するトラブルは、同じようなトラブルも多く、その内容や事例についてはここでご紹介していますし、インターネットで検索すれば似たような事例が見られるはずです。
本記事でご紹介したトラブル例を参考に、不動産売却時には対策していただき、それでもトラブルが起こった時は不動産会社や専門機関に相談するなど冷静に対処するようにしましょう。