転勤で現在所有しているマンションを引っ越すことになった方や、住む予定のないマンションを相続した方のなかには、今後マンションを売るべきか貸すべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
「マンションに思い入れがありなかなか決断できない」「不動産市況を踏まえてどのような判断をするべきか迷っている」といったように、マンションを売るか貸すかの判断は簡単にはできません。
そこで本記事ではこれまで売買仲介の営業として、数多くの取引をサポートしてきた筆者が、マンションを売るか貸すかの判断基準や、それぞれのメリット・デメリット、注意点を解説します。
本記事を読んでいただければ、マンションを売るか貸すかの判断基準がわかり、自分に合った方法を選択できるでしょう。
現在マンションを売るか貸すか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
- マンションを売るか貸すかの判断基準について
- マンションを売るメリット・デメリットについて
- マンションを貸すメリット・デメリットについて
- マンションを売るか、貸すか決める際の注意点
マンションを売るか貸すかの判断基準
マンションを売るか貸すかの判断基準は以下の3つです。
- 将来的に使用する予定
- 現在の不動産市況
- 次の住まいと家計
3つの判断基準について詳しく解説します。
将来的に使用する予定
将来的にマンションを使用する予定がある場合は賃貸がおすすめです。
賃貸に出すことで将来使用するまでの期間、家賃収入を得られます。しかし、賃貸に出す場合は契約の種類に注意しましょう。
賃貸借契約は大きく2種類に分けられます。
- 普通借家契約:借主が希望する限り契約が更新される契約
- 定期借家契約:契約期間満了後は契約が更新されない契約
普通借家契約は借主が希望する限り契約が更新されるため、借主が退去しない限り空室になりません。
一方で、定期借家契約は更新がなく、借主は期間満了に合わせて退去します。そのため、マンションを使用する時期に合わせて契約期間を設定することで、問題なくマンションを使用できます。
マンションを使用する時期が決まっている場合は定期借家契約、決まっていない場合は普通借家契約がおすすめです。
しかし、普通借家契約はいつ借主が退去するかわかりません。自分がマンションを使用できるか不安な方は定期借家契約にしておくのもいいでしょう。
定期借家契約は普通借家契約よりも家賃が低くなるため、収益性は下がりますが、その分契約の自由度は高くなります。
現在の不動産市況
将来的にマンションを使用する予定がない方は、売却を検討するのがおすすめです。しかし、不動産は現物資産で価格が変動するため、売却するタイミングを考えなければいけません。
マンションを手放せればいいという方は問題ありませんが、なるべく高く売却したい方は不動産市況をチェックしましょう。
不動産市況のチェック方法は大きく分けて2つです。
- 不動産ポータルサイト
- 不動産会社の査定
不動産ポータルサイトでは、同じマンション内や近隣マンションの売却物件を日々チェックしておきましょう。売却に出ている物件の価格をチェックすることで、価格のトレンドを把握できます。
また、不動産会社による査定は無料で行ってもらえるため、定期的に依頼するのがおすすめです。
現在の不動産市況を判断するためにも、相場は常に把握しておきましょう。
次の住まいと家計
マンションを売るか貸すかの判断は、次の住まいと家計によります。
例えば、現在のマンションにローンの残債がある状態では、新たに購入する物件のローンを組めない可能性があります。
なぜなら、ローンを組む際には金融機関から返済比率(年収に占めるローン返済の割合)をチェックされるためです。
結果として、新居購入で返済比率がオーバーしないように現在のマンションを売却しなければならない方も多いでしょう。
また、売るか貸すかの判断は家計状況にもよります。
マンションを売ることでまとまった資金が入るため、手持ち資金を増やしたい方は売却の方がおすすめです。一方で、家計に余裕がある方はマンションを資産として所有し家賃収入を得るのもいいでしょう。
マンションを売るメリット・デメリット
マンションを売るか貸すかの判断基準を解説しましたが、自分はどうするべきかまだ決断できていない方も多いでしょう。
そのような方は、マンションを売る場合のメリット・デメリットを踏まえて決断しましょう。
マンションを売るメリット
マンションを売るメリットは以下の2つです。
マンションを売るメリット
- まとまった資金が手に入る
- 管理の手間やコストがかからなくなる
それぞれについて解説します。
まとまった資金が手に入る
マンションを売ることでまとまった資金が手に入ります。
ローンの残債にもよりますが、場合によっては何百万円、何千万円というお金が手元に残る方もいるでしょう。
現在の家計状況的にマンションを現金化したい方や、不動産市況の先行きが不安でなるべく早く現金化したい方は売却を検討しましょう。
しかし、購入時よりもマンション価格が大幅に下落している場合は、手元に残る資金が少なくなる恐れもあります。
売却を開始する前には、必ずローン返済などを踏まえて、いくらの資金が手元に残るのかを計算しましょう。
売却にかかる費用の詳細は以下の記事で詳しく解説しています。
管理の手間やコストがかからなくなる
マンションを売ることで、管理の手間やコストがかからなくなります。
具体的には以下のような内容です。
- マンションの固定資産税や管理費、修繕積立金
- 室内のメンテナンス
- 管理組合の総会への出席
賃貸に出す場合も入居者とのやり取りや、管理会社とのやり取りが発生するため、管理の手間やコストがかかってしまいます。
管理の手間やコストを気にしたくない方は、売却を検討しましょう。
マンションを売るデメリット
マンションを売るデメリットは以下の2つです。
マンションを売るデメリット
- 不動産という資産を手放すことになる
- 売却までに時間がかかるケースがある
それぞれについて解説します。
不動産という資産を手放すことになる
マンションを売るということは、不動産という大きな資産を手放すことです。
もちろんのことながら、マンションを売ることでその分の資金が手元に入ってきますが、継続した家賃収入は得られなくなります。
世の中多くの投資先がありますが、不動産のように安定した収益を生み出し続ける資産は多くありません。
不動産は高額であり再度購入するハードルが高いため、売るべきかどうかを慎重に判断しましょう。
売却までに時間がかかるケースがある
マンションは売却までに時間がかかるケースがあります。
公益社団法人不動産流通機構の調査によると2021年度の中古マンションの平均成約日数は72.1日との結果が出ています。
しかし、72.1日というのはあくまでも平均であるため、さらに時間がかかることも考えられます。
また、売れるか売れないかというのは売却期間中の心理的ストレスにもなります。マンションはすぐに売れる訳ではないと理解したうえで売却を検討しましょう。
マンションを貸すメリット・デメリット
マンションを売るメリット・デメリットに続き、マンションを貸すメリット・デメリットについて解説します。
それぞれのメリット・デメリットを踏まえて、売るべきか貸すべきかを判断しましょう。
マンションを貸すメリット
マンションを貸すメリットは以下の2つです。
マンションを貸すメリット
- 家賃収入が得られる
- 一部の費用が経費として認められる
それぞれについて解説します。
家賃収入が得られる
家賃収入はストック収入であるため、自分が働かずとも半自動的に収入を得られます。
ケガや病気で一時的に働けなくなった際にも収入が入ってくるのは、精神的な安心にも繋がるでしょう。
また、現在の日本では将来的に年金が減額されるかもしれないという不安もあり、個人での資産形成が重要視されています。
マンションから得られる収入は資産形成にも役立つため、自分ならではのポートフォリオを作れるでしょう。
一部の費用が経費として認められる
マンションを貸すことは賃貸事業であるため、一部の費用が経費として認められます。
これまではただ支払うだけであった費用が経費扱いになるのは、節税面でも大きな効果があります。
- ローンの金利
- 管理費、修繕積立金
- 固定資産税
マンションを所有しているだけでかかる上記の費用も、マンションを貸すことで経費扱いとなります。
また、不動産所得はほかの所得と損益通算できるため、リフォームや設備の修繕で赤字が出ても給与所得などと相殺できます。
なお、住宅ローンのままで賃貸に出すと規約違反になり、ローンの一括返済を求められることもあるため注意しましょう。
マンションを貸す場合には、住宅ローンから投資用ローンに切り替える必要があります。
マンションを貸すデメリット
マンションを貸すデメリットは以下の3つです。
マンションを貸すデメリット
- 管理の手間やコストが発生する
- 空室リスクがある
- 売却時に不利になる可能性がある
それぞれについて解説します。
管理の手間やコストが発生する
マンションを貸す場合は、以下のような管理の手間やコストが発生します。
- 管理会社との打ち合わせ
- 入居者とのやりとり
- 管理会社への管理委託料
- リフォーム費用
管理会社に管理を委託することで、入居者とのやり取りや入居者募集は一任できますが、その分の管理委託料がかかります。
管理委託料の相場は月々の家賃の5%ほどです。
空室リスクがある
マンションを貸すことで家賃収入を得られますが、空室リスクには注意しましょう。
入居者が退去して空室になると家賃収入はゼロになってしまいます。そのため、家賃収入をあてにしたローン返済には注意が必要です。
次の入居者が決まるまでの期間は自己資金でローンを返済しなければいけません。自己資金がない状態ではローン返済が滞ってしまう恐れがあるため、少なくとも数ヶ月分の自己資金は確保しておきましょう。
売却時に不利になる可能性がある
マンションを人に貸した状態だと売却時に不利になる可能性があります。
入居者がいる状態でも売却はできますが、居住用物件ではなく投資用物件として見られるため、価格の算定基準が異なります。
- 居住用物件:取引事例比較法
- 投資用物件:収益還元法
居住用物件は周辺の類似したマンションの取引事例を参考に価格を算出しますが、投資用物件は得られる年間収益を適正利回りで割り戻して価格を算出します。
例えば、年間家賃収入180万円でエリアや築年数から見た適正利回りが5%のマンションがあったとしましょう。
この場合の計算式は「180万円÷5%=3,600万円」です。収益還元法で計算する投資用物件は、相場よりも家賃設定が低いと不動産価格が大きく下がってしまいます。
一般的に投資用物件は居住用物件よりも価格が低くなる傾向にあるため、売却時には注意しましょう。
マンションを売る時の全体像
- 売却の準備
- 査定依頼
- 媒介契約の締結
- 売却活動
- 売買契約
- 残代金の決済・引き渡し
- 確定申告
マンションを売却する際には、売却条件の整理や相場の勉強を行ったうえで、不動産会社に査定を依頼しましょう。
その後信頼できる不動産会社とマンションを売るための契約である「媒介契約」を締結し、売却活動をスタートします。
買主と売買契約を行った後は、1〜2ヶ月後に残代金の決済・引き渡しを行います。マンションを売却して利益が出た際には、売却の翌年に確定申告をしなければならないため注意しましょう。
マンションを売る時の全体像は以下の記事で詳しく解説しています。
マンションを貸す時の全体像
- 賃料査定依頼
- 媒介契約の締結
- 契約の種類を選択
- 入居者募集
- 契約
大まかな流れは売却と変わりません。
1点大きく異なるのは、賃貸の場合は契約の種類を選択することです。先述のとおり賃貸の契約は大きく2種類に分けられます。
- 普通借家契約:借主が希望する限り契約が更新される契約
- 定期借家契約:契約期間満了後は契約が更新されない契約
このほかにも、不動産会社に貸し出す「サブリース」という契約方法もあります。それぞれの特徴を把握したうえで、自分に合った契約の種類を選びましょう。
マンションを売るか貸すか決める際の注意点
マンションを売るか貸すか決める際の注意点は以下の3つです。
- 長期的な資産価値を見る
- 持ち家と賃貸の需要を考える
- 時間的余裕を持って判断する
それぞれについて解説します。
長期的な資産価値を見る
マンションを売るか貸すか決める際には長期的な資産価値が重要です。
不動産は築年数の経過によって資産価値が減少します。土地の価格が上がらない限り価格は下落していくと考えましょう。
そのため、築年数が経過しているマンションを貸す場合、将来売却する際に資産価値が大きく下がってしまう可能性があります。
築年数によってはローンが組めずに買い手が見つからない恐れもあるため、マンションの築年数などを踏まえて長期的な資産価値を判断しましょう。
持ち家と賃貸の需要を考える
マンションを売るか貸すかは、そのエリアの持ち家と賃貸の需要を踏まえて判断しましょう。
一般的に郊外は持ち家の比率が高い傾向にあるため、賃貸よりも売却の方が需要は高いと考えられます。
しかし、立地やマンションの広さによっても異なるため、そのエリアに詳しい不動産会社と相談しながら決めるのがおすすめです。
時間的余裕も持って判断する
マンションを売る場合も貸す場合も、時間的余裕を持って判断しましょう。
マンションは売却を開始してすぐに売れるものではありません。また、賃貸も春先のトップシーズンを逃すと入居まで時間がかかることもあります。
いつまでに売らなければならない、貸さなければならないと決まっている場合は、価格を大幅に下げざるを得ないこともあるでしょう。
場合によっては賃貸・売買同時募集という方法もあるため、不動産会社に相談してみましょう。
まとめ
本記事ではマンションを売るか貸すかの判断基準や、それぞれのメリット・デメリット、注意点を解説しました。
マンションを売るか貸すか決める際には3つの判断基準が重要です。
- 将来的に使用する予定
- 現在の不動産市況
- 次の住まいと家計
不動産は高額な資産であるため、売るか貸すかは慎重に決める必要があります。本記事で解説したメリット・デメリットや注意点を踏まえて、自分に合った最適な選択をしましょう。