不動産を相続した場合、どうしていいか分からないといった方は多いのではないでしょうか。
相続できる不動産があるというのは、家を建てる場合や資産という意味では、とてもありがたいものですが、一方で処分に困ってしまうということも。
不動産は相続した場合、所有する場合も売却する場合も、相続不動産ならではの特例措置が用意されています。
所有したままだと固定資産税などの諸費用が発生するため、相続した不動産は利用しない場合、そのままにせず売却を検討してみましょう。
そこで気をつけたいのが、売却をするとそれに伴い費用が発生するということ。売却時にかかる手数料や、税金などです。
誰しもが、売却時にかかる費用はなるべく抑えて、手元に残るお金を増やしたいですよね。
そこで今回は、相続した不動産を売却する場合において、失敗しない売却の手順と売却の費用や節税対策までご紹介していきます。
相続不動産を売却する時のポイント
相続した不動産を売却する場合、自分の持ち物だった不動産を売却する場合とは少し違います。
また、相続不動産はトラブルの原因となる場合も。
特に遺言がない場合の遺産分割協議などでは、誰が管理するのか、どの割合で所有するのか、売却した場合手残り金の分配はどうするかなど、お金が絡むため長引く場合も多いのです。
一般的に、相続不動産で気をつけなければいけないポイントなどを解説していきます。
相続不動産のメリット
家を建てる場合、土地代がかからない
相続した土地の大きなメリットとしては、家を建築する際の土地費用がまるまるかからない、ということです。
一般的に土地代は、住宅費の中でも建物と同じくらい大きな割合を占めます。
土地を購入するエリアにもよりますが、バランスがいい割合は土地40%:建物40%:諸経費20%程度です。
その土地購入費および仲介手数料がかからなくなると、より希望通りの住宅を建てやすくなります。
ただし、住宅を建てる場合は、そのエリアで将来困らないか?ずっと住み続けられるか?を相続する際に考えておかなければなりません。
資産を不動産で相続する場合、支払う相続税が少なくなる
亡くなった方の相続財産の価値の計算の際、土地や建物の価値は時価よりも7〜8割程度安く評価されます。
土地などの不動産で相続する場合、現金で相続する場合よりも支払う相続税は少なくても良いということですね。
不動産を相続する場合の注意点
相続不動産を管理する相続人を決める
不動産などの遺産は相続人で配分を決めますが、その話し合いに時間を要することもあります。
その場合、正式に相続する人が決まるまでの間、相続不動産などの遺産を管理する人を決めておきましょう。
この遺産の管理ですが、相続人が共同で行うこともできますし、共同相続人全員の合意により、相続人の一人かあるいは第三者を管理人とすることもできます。
管理していた間の費用は、最終的には相続財産の中から支出されることになります。
売却する場合、手残り金の分配を決めておく
売却の場合は、売却した経費を差し引いた手残り金を相続人で分配する方法が一般的には揉めにくいです。
遺産分割協議を専門家に依頼するというのも手段の一つです。
遺産分割協議とは、遺産を相続する権利のある人が集まり、誰がどの財産を、どのくらいの割合で相続するのか話し合う手続きのことです。
相続人だけでは揉めてしまい、配分が決まらない場合は専門家に頼ることも検討しておきましょう。
相続した不動産の売却手順
遺言書があるか
まずは、遺言書があるかどうかを確認しましょう。
遺言書とは、亡くなった方が自分の死後に自分の財産を誰に対し、どのように分配するかなどを記載したものです。
遺言書が有効なものであった場合、遺言書の内容が相続の際に適用されます。
遺言書があってその遺言通りに相続する場合、次に記載する遺産分割協議や、相続登記時に通常必要な戸籍謄本等の書類が不要になります。
有効な遺言書の主な項目は以下の通りです。
自筆証書遺言
遺言者が、①書面に、②遺言書の作成年月日、遺言者の氏名、遺言の内容を、③自署(パソコンは不可)で記入し、④自身の印鑑を押印する、という遺言方式です。
この遺言を有効にするためには、開封の際に家庭裁判所での検認が必要になります。
自筆証書遺言のポイント
- 原則自筆で作成したもの
- 開封の際は家庭裁判所にて検認が必要
なお、これらの書き方を満たしていない場合、遺言書自体の効力がありません。
そのほか、相続人が偽造していたり、一部がパソコンで作成されていたりしても無効となります。
自筆証書遺言は簡単に作成できる一方、無効になるケースが増えているのです。
公正証書遺言
公正証書遺言とは、以下のような遺言書のことを指します。
- 2人の証人立会いでの作成
- 公証人役場で保管される
- 公正証書作成の費用が発生する
公正証書遺言の場合、家庭裁判所での遺言の検認という手続きも不要になります。
秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、自筆もしくはパソコンなどで遺言の内容を記載し、公証人役場で保管されたもの。作成時は公証人は内容を確認しないため、開封の際は家庭裁判所の検認が必要です。
遺産分割協議をする
遺産分割協議は、必ず相続人全員で行い、その遺産相続について「全員が合意している」必要があります。
同意がまとまり次第、「遺産分割協議書」を作成します。
相続した不動産の売却には、遺産分割協議書の提出が必要となり、同時に共同相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書を添付しなければなりません。
相続人同士で話がまとまらなかったり、話し合いに全く応じてもらえないような場合には、裁判に進むことになります。
しかし、調停や審判は弁護士の費用と時間をかけたうえに、法定相続分でわけることに落ち着くケースが多いことから、可能な限り話し合いで解決することが望ましいです。
なお、相続人が一人の場合や、法定相続分といわれる、法律で定められた配分で相続する場合は遺産分割協議は不要となります。
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
相続登記をする
不動産を相続する際、法律上でその不動産の所有者が変わり名義変更したことを届け出しなければなりませんが、その手続きを「相続登記」といいます。
不動産の所有者が記載された「不動産登記簿」は、所有者が亡くなったからといって自動的に次の所有者へ変更されるものではありません。
相続した人が手続きを行わないと、亡くなった人が所有者としていつまでも記録に残ってしまいます。
不動産の相続登記は主に司法書士が行います。依頼をせずに自力で行うことも可能ですが、手間と時間が多くかかります。
相続登記費用の相場としては、不動産の価格やどこまで依頼するかにもよりますが3〜10万円です。この中には、登記費用として絶対かかる実費(登録免許税など)と司法書士への報酬が含まれています。
登記は必要書類も多く、集めるのにも苦労するためメリット、デメリットを考慮して専門家への依頼を検討してみてください。
自分で行う場合
メリット
- 費用は実費だけで済む
デメリット
- 登記手続きについて勉強する必要がある
- 役所が稼働している平日に行動しないといけない
- 書類作成や書類収集を自分で行わなければならない
司法書士に依頼する場合
メリット
- 相続に関するアドバイスを受けられる
- 手続きのために時間を割く必要がない
- 書類収集も行ってくれる
デメリット
- 司法書士への報酬を支払わなければならない
このように、司法書士に依頼するメリットとしては面倒な手続きを代わりに行ってくれるため、時間の節約になるということです。
仲介を依頼する
相続登記が変更されれば、名義人には固定資産税等が課税されます。
それをふまえ、今後その不動産が必要でない場合は、売却を検討しましょう。
売却をする場合、多くの人は不動産業者へ仲介を依頼すると思います。
売却の際は「仲介」もしくは「買取」を選べるので、売却までの期間や金額を考慮して、選択をしてください。
売却方法の特徴とポイント
「仲介」は買い手を探すため売れるまでの期間が長い傾向にあるが、流通価格に近い価格で売ることができる
→売却は急いでいないが、なるべく高く売却したい方におすすめ
「買取」は契約を結んだ不動産業者が購入するため即売却できるが、流通価格と比べて7〜8割程度の査定金額になる場合が多い。
→売却を急いでおり、すぐに現金が欲しい方におすすめ
また、不動産を売却する際は複数の不動産業者へ査定を依頼することをおすすめします。
売却金額の相場感を知ることができるのもメリットですが、担当者とのやりとりが少なからず発生するため、この人に任せていいか?も併せて考えておくと良いでしょう。
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相続した土地を売却する際の注意点
不動産を売却する場合、いくつかの注意点があります。
- 不動産には土地の区分があり、建築に制限がある
- 不動産売却の費用は意外とかかる
- 不動産を売却した際の申告をお忘れなく
順番に解説していきます。
土地の区分を把握する
不動産では、土地の区分を「地目」とよび区分分けしています。
代表的なものは宅地、田、畑、雑種地などですが、不動産売却の際に注意する必要があるのは特に「田」「畑」の場合です。
これらは「農地」扱いになり、この地目のままでは住宅などの建物を建築することが認められていません。
基本的には農地として売却することになり、買い手側は畑や田んぼなどの農地として購入することになります。
そこで、田、畑などの農地から宅地などにする手続きである「農地転用」を行い、住宅などの建物を建築できるようにすることで売却の可能性を高める方法があります。
農地転用は、農地法の規定に従い、原則として都道府県知事または指定市町村長の許可が必要になります。
農地転用は所有者本人もしくは行政書士に依頼して手続きを行う必要があります。
行政書士は、役所に提出する書類の収集から作成、代行して申請の手続きを行ってくれます。
農地転用は資料収集がかなり困難な手続きの一つ。専門家に依頼することも検討してみましょう。
相続した土地の売却にかかる費用
不動産の売却には、意外と費用がかかります。
その理由としては、専門家が必要な場面が多く、依頼料が発生するからです。
専門家に依頼しなければ費用は浮くことになりますが、その分ご自身の負担が増えるということを覚えておいて下さい。
売却にかかる費用は必要経費として割り切っておくと良いでしょう。
仲介手数料
仲介手数料とは、不動産売買の際に不動産業者と媒介契約を結び、購入希望者と売却希望者の間に入り契約を成立させた場合の成功報酬のこと。
仲介手数料は、受領できる手数料の上限が定められており、
- 売買価格200万以下の部分:売買価格の5%以内
- 売買価格200万を超え400万以下の部分:売買価格の4%以内
- 売買価格400万を超える部分:取引額の3%以内
この計算式ををもっと簡単にして仲介手数料を算出すると、
売主側が支払う仲介手数料は『売買代金×3%+6万円(税別)』が相場となります。
印紙税
印紙税は、契約が成立した場合の売買契約において課税される税金のこと。印紙を購入して契約書に貼ることで、納税の証明となります。
印紙税は契約の金額によって税額が異なるため、次の表で確認しておきましょう。
参考:印紙税の額
売買金額 | 印紙税額 |
---|---|
100万を超えて500万以下 | 2,000円 |
500万円を超えて1000万円以下 | 10,000円 |
1000万円を超えて5000万円以下 | 20,000円 |
抵当権抹消費用
不動産にローンがあったり、その不動産を担保に借入れしていると、不動産に抵当権が付記されていることがあります。
抵当権とは、ローンの借入先の銀行などが行使できる権利のことで、お金を借りた方がローンの返済できなくなった場合、抵当権を設定している銀行などがその不動産を担保に優先的に貸した金額を回収できます。
売買する際には、その抵当権抹消が一般的となります。
測量費用
売却する際、隣地との境界を確定させることと正しい面積を測ることが必要になります。
不動産売却には必須になるため、媒介契約をした不動産業者が手配してくれることが多いです。
測量費用は面積によって異なるため、不動産業者に見積もりをお願いしておくと良いでしょう。
解体費用
不動産に建物などが残っている場合、解体更地渡しが売買の条件になることがよくあります。
解体費用は買主側でみてほしいという希望もアリですが、解体更地渡しの方が売れやすくなることも事実です。
解体費用は建物の規模や残存物(植栽)の有無によって異なりますので、数社の解体業者に見積もりを取っておきましょう。
登録免許税
登録免許税とは、売買・相続などによる所有権移転の登記や所有権保存の登記などの登記手続きを行う際に納める税金のことです。
登録免許税は課税標準に税率を掛け合わせて求められ、申請する登記の種類ごとに、不動産の価額、債権金額、不動産の個数などによって決まります。
登記手続きを司法書士など専門家に依頼する場合は、登録免許税を含めた額を司法書士事務所へ支払うのが一般的です。
譲渡所得税
①譲渡所得税の計算
譲渡所得税とは、土地などの不動産を売却した際に得た利益に課される税金のこと。
利益に対して課税されるため、売却後に税額が決定します。このとき「譲渡所得」は「売却価格」から「取得費と譲渡費用を足した金額」を引いて求めます。
また、その不動産を長期(5年超)で所有しているかによっても譲渡所得税は異なります。
所有期間が5年以下の短期譲渡の場合、所得税と住民税に課税される割合が大きくなります。
ここでいう所有期間とは、被相続人(亡くなった方)からの所有期間になります。
仮に、物件価格が1000万円の場合のシミュレーションをしてみます。
取得費は当時の取得額(※)もしくは取得額が不明の場合は取得価格の5%を取得費としてみなします。
※住宅・土地の購入の際にかかった費用(手数料を含む)、建築費用、住宅設備や改良にかかった費用などを合計したものです。
住宅の場合にのみ、購入代金や建築費用から“減価償却費相当額”が差し引かれることになります。
譲渡所得
概要 | 費用 |
---|---|
売却価格 | 10,000,000 円 |
合計(A) = 譲渡所得 | 10,000,000 円 |
譲渡費用
項目 | 費用 |
---|---|
契約書印紙代 | 10,000円 |
司法書士登記費用 | 約50,000円 |
仲介手数料 | 396,000円 |
その他、解体費用、測量費用など | |
合計(B) = 譲渡費用 | 456,000 円 |
概要 | 費用 |
---|---|
取得費 | 1000万円の5% |
合計(C) = 取得費 | 500,000 円 |
A – (B+C) = 10,000,000 – (456,000 + 500,000) =9,044,000円(a)
長期譲渡の場合(所有が5年超) | 短期譲渡の場合(所有が5年以下) | |
---|---|---|
所得税 | (a)×15%=1,356,600円(b) | (a)×30%=2,713,200円(b) |
復興特別所得税 | (b)×2.1%=28,488円 | (b)×2.1%=28,488円 |
住民税 | (a)×5%=452,200円 | (a)×9%=813,960円 |
支払税額 | 1,837,288円 | 3,555,648円 |
なお、上記はあくまで参考目安となり、正確な税額が知りたい場合は税理士かお近くの税務署窓口までお問合せください。
また、過去に利用した税制優遇によってはこの特別控除が受けられなかったり、マイホーム特別控除を利用すると住宅ローン控除など別の税制優遇が受けられなくなる場合がありますので、ご注意ください。
また、マイホームを売った場合や、空き家を相続した場合、一定の特例措置が受けられる場合があります。次の章で詳しく説明していきます。
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相続した不動産に利用できる税金特例
相続した不動産には、相続時に課税される「相続税」、不動産を保有中に支払う義務がある「固定資産税」「都市計画税」、売却時に支払いが必要な「譲渡所得税」などの税金が発生します。
そのうち、一定の条件を満たせば「相続税」「譲渡所得税」に対して特例を利用することができます。
相続時:小規模宅地の特例
相続税における不動産に関する特例で一番重要な特例が、小規模宅地等の特例です。
小規模宅地等の特例とは、亡くなった人が住んでいた土地、事業をしていた土地、貸していた土地について、一定の要件を満たす人が相続したときに最大80%減額できる特例なのです。
ここでは、亡くなった方が住んでいた土地に焦点を当てて説明していきます。
特例を利用できる条件
まず、亡くなった人が住んでいた土地であることを前提に、次の三つのうち一つでも当てはまることが必須です。
- 被相続人の配偶者が土地を相続
- 被相続人と同居していた人が土地を相続
- 被相続人に配偶者も同居人もいない場合、3年間借家住まいの相続人が取得(*家なき子特例)
特例を利用できる限度
減額は80%、適用される限度面積は330㎡までです。※約100坪まで適用可。
例えば、400㎡の自宅を相続したら、そのうちの330㎡までが80%減額され、残りの70㎡は通常の課税率で税金がかかります。
特例を利用するための必要書類
小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、相続税申告書に下記の書類を添付する必要があります。
必ず添付が必要なのは、下記3つとなります。
- 「被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本」又は「法定相続情報一覧図(図形式のものに限ります)」
- 遺言書の写し又は遺産分割協議書の写し
- 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)
その他、ケースによって必要なもの例はこちらです。
- 居住家屋の登記簿謄本(※家なき子の場合)
- 遺言書の写し又は遺産分割協議書の写し
- 介護保険証や老人ホームの入居契約書(※被相続人が老人ホームに入居していた場合)
売却時:マイホームを売った場合の3000万円特別控除
控除を利用できるケース
マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。
これを、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。
相続でこの控除を利用したい場合、注意点があります。
この控除は「不動産所有者」が「自らが居住するため」に使っていた建物や敷地を売却した場合にのみ適用されるという点です。
例えば、被相続人である親と相続人である子が同居しており、親が亡くなって子が相続したケースを考えてみましょう。
このケースでは、相続人は実際に住んでいる家を相続することになるため、土地・建物をその子(相続人)に名義変更すれば条件は満たされ、控除を利用することができます。
一方、元々親子が別の家で暮らしていた場合はこの控除は適用外になります。
実際に住んでいたかどうか?が適用の条件になるというわけですね。
特例を利用できる条件
下記の条件を満たす場合は、不動産の売却益が3000万円以上であれば3000万円が控除され、3000万円以下であれば、その金額全てが控除されます。
また、こちらの特例を利用する場合、住宅ローン控除との併用は不可になりますので注意してください!
参考:国税庁
[1] 下記のいずれかを満たすマイホームであること
a. 現在、主に住んでいる自宅である
b. 転居済みの場合、転居後3年目の年末までの売却である
c. かつ土地の売却契約締結が解体から1年以内であり、その土地を賃貸していない
d. 単身赴任の場合、配偶者が住んでいる建物である
[2] 物件の買主が親族や夫婦、同族会社など、特殊な関係でないこと
[3] 売却した年の前年、前々年に、3000万円の特別控除又はマイホームの譲渡損失が出た場合の損益通算及び損失の繰越控除の特例の適用を受けていないこと
[4] 売った年、その前年及び前々年に、マイホームの買換えや交換の特例を受けていないこと
[5] 売却した不動産に関して、収用等の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと
[6] 災害によって売却する場合、住まなくなった日から3年後の年の12月31日までに売ること
特例を利用するための必要書類
まず、3000万円の特別控除を受けるには、不動産を売却した翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告を申請する必要があります。
たとえば、令和3年に売却したのであれば、令和4年の2月16日~3月15日の間に確定申告を行わなければなりません。
- 確定申告書・譲渡所得の内訳書
- 戸籍の附票
- 譲渡した土地・建物の全部事項証明書
- 売却時の書類の写し
- 取得時の書類の写し
- 住民票の写しあるいはマイナンバー
売却時:被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
先ほど紹介した特例は、実際に相続人が居住していた不動産に対する特例措置です。
しかし、相続の場合は被相続人が一人で住んでいた物件(空き家)を売却することも少なくありません。
全国に増え続ける空き家問題の対策として、空き家に対する3000万円控除の特例が受けられるようになりました。
空き家の3000万円控除を利用できるケース
1981年5月31日以前に建築された建物であり、相続開始直前まで相続人の親など被相続人が1人で住んでいた家屋や土地でなければなりません。
さらに、1億円以下で譲渡された物件で、かつマンションなどの区分所有建物以外の家屋であることも条件になります。
現段階では平成28年4月1日から令和5年12月31日までの譲渡かつ相続の時から相続開始日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡に限られています。
他の制度との併用
居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除の特例の適用を受けた場合、その年、その翌年及びその翌々年に住宅ローン控除の適用を受けることができません。
しかし、空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例の適用は併用できます。
特例を利用するための必要書類
空き家の3000万円控除を利用するためには、まず空き家の所在する市町村から「被相続人居住用家屋等確認書(確認書)」を交付してもらう必要があります。
- 被相続人居住用家屋等確認申請書(申請書)
- ※ 国土交通省HPより入手可能。
- 被相続人の除票住民票の写し
- 当該家屋の取壊し・除却・滅失時の相続人の住民票の写し
- 当該家屋の取壊し・除却・滅失後の敷地等の売買契約書コピー等
- 当該家屋の除却工事の請負契約書コピー
- 以下の書類のいずれか
- 電気ガスの閉栓証明書
- 水道の使用廃止届出書
- 宅建業者による 「空き家で、かつ、除却又は取壊しの予定があること」 を表示して広告していることを証する書面のコピー
- 取壊し・除却・滅失時から~敷地等の譲渡時 までの当該敷地等の使用状況が分かる写真
- 取壊し・除却・滅失時から~敷地等の譲渡時までの間の当該敷地等における相続人の固定資産課税台帳(又は固定資産税課税明細書)コピー
そして、譲渡翌年の2/16~3/15に、上記の書類を併せて提出する必要があります。
- 被相続人居住用家屋等確認書(確認書)
- 確定申告書
- 譲渡所得の金額に関する計算の明細書
- 登記事項証明書等
- ※ 家屋を取り壊し更地にして譲渡する場合、『耐震基準適合証明書等』は不要。
- 売買契約書のコピー等
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まとめ
相続した不動産を売却する際、専門的な範囲が多く自分で全てを行うことは困難と言えます。
この記事に記載した基礎知識を抑え、実際の業務は専門家に依頼するとスムーズです。
相続した不動産を売却する時のポイントは、
- 不動産を所有した場合と売却した場合のメリットデメリットを考える。
- 相続した不動産の売却は相続時、売却時、申告時それぞれ専門家に依頼することで手間が省ける。
- 相続した不動産の税制優遇としては、相続時の小規模宅地の特例、マイホームの売却時もしくは空き家の売却時の3000万円特別控除などが利用できる。